視点変更注意。
ではどうぞっ!
翌日、俺は創顕の神社の一室で目を覚ました。いつもよりも若干気温が高く感じる。どうやら精神的な疲れの所為か普段よりも遅くに起きてしまった様だ。
「おはよう創顕…」
「何がおはようだ、もう昼近くだぞ双也。ショックなのは分かるが生活の順序を乱してはならん。早く着替えて出てこい」
俺が起きて居間に行くと、創顕は上の服を脱いで日に照らされながら大量の汗を流していた。素振りをしていたらしい。
俺は創顕の言う通り着替えを済ませ、庭に出た。
……ん?いやおかしくないか?
「なぁ創顕、流れでお前の言う通りにしちゃったけど、俺これから白玉楼に戻るつもりなんだけど。なんで庭に出させたんだよ」
創顕は素振りをやめ、俺に笑って言った。
「お前、まだ気持ちが整っていないだろう?そんな状態で戻っても良い案など浮かばぬ。気分転換でもすると良い」
「………と言うと?」
創顕は再び木刀を構え、笑みを一層深くして言った。
「我と組み手だ」
「せいっ! はぁ!!」
…うん分かってた。"庭に出させて気分転換"って事を聞いた時から薄々分かってた。
「やっ! そこだ!」
「っと!」
創顕は確かにいい人だし、知り合いになれたのは嬉しく思う。戦い好きだが喧嘩っ早い訳でもなく、接しやすい人だ。
「はっ! そらぁ!」
だが…だが一つ言いたいのは………
「いくら何でも
「何を言っている双也!! 我はお前への仕返しを諦めてなどいないのだぞ!!」
創顕は作り出した神剣を横に薙ぎながら言った。多分…というか絶対諏訪大戦の時の事だろう。
難なく避けてから俺も反論する。
「お前組み手って言ったじゃねぇか!! 組み手ってのは素手でやるモンなの!! お前分かってねぇな!?」
「この世の中そんなことを言っていて生き残れると思っているのか!? それに、お前との戦いは緊張感が無くては意味が無い!!」
「それただの殺し合いだから!! 組み手の範疇超えてるから!!」
アレだ、こいつ脳筋バカだ。強いのは認めるけどこういう行動は勘弁願いたい。バカと天才は紙一重って言うけど、多分創顕のような存在の事を指すのだと思う。バカみたいに突き進んだ結果強くなった、みたいな…
ガキンッ「あぶねっ」
「ふっ、やっと抜いたな。待っていた甲斐があった」
「…へぇ」
創顕の一言が俺のセンサーに引っかかった。要は俺に刀を使って戦えと?
「お前の"無限流"と言うのはその刀を使うのだろう?一目見てみたくてな」
「なるほど…そんなに本気が見たいのか…イイぜ創顕…
ボッコボコにしてやる」
この後、創顕が傷だらけになって神社に戻ったのは言うまでもない。
俺はとっっっても清々しい気分だったけどなっ!でめたしでめたし。
「そう言えば双也よ」
「ん?」
組み手を終えて、玄関にて白玉楼に戻る準備をしていると創顕に声をかけられた。
何?
「最近妖怪が大規模に移動している様なのだが…何か知らないか?」
「大規模に移動?いや知らないな。て言うか、そもそもなんでそんな事を?」
「いや、たまに移動途中で腹を空かせた妖怪どもがこの都に入って来ることがあるのだ。原因がわかれば我が直接潰しにいく所なのだが…」
「ああ、だから…」
俺は昨日の事を思い出した。突然斬りかかってきたのはそういう理由だったか。てっきりトチ○ったのかと…いやいやコレはさすがに失礼だな。仮にも神様に。
「その妖怪たちはどこに向かって行ってるんだ?」
「…向こうのようだな」
ふと気になった俺の質問に、創顕は指をさしながら言った。それは……俺が通って来た道、つまり白玉楼のある方角だ。
何だ…妙に胸騒ぎがする…。
俺の様子を察してか、創顕が心配したような声色で聞いてきた。
「? どうした双也?」
「いや…胸騒ぎがする。早く戻ったほうがいいかもしれない」
「あ、待て双也!」
俺が駆け出そうとすると、創顕に呼び止められた。
何だよ早く帰りたいのに。
創顕は俺の手を取ると何かを握らせた。コレは……御守り?
「いざという時に、その刀でこれを斬れ。きっと役に立つ」
「役に立つって…どういう時に?」
「そうだな……窮地に陥った時だな」
この御守り…どうやら創顕が何か仕掛けた物の様だが、まぁ一応貰っておこう。悪い物は渡さないだろうコイツなら。
「じゃあまたいつかな!!」
「ああ、またな!」
そう別れを告げ、白玉楼に急いだ。
〜紫の住居〜
「もうすぐで全ての準備が整うわね…」
スキマの中、私はそこにある椅子に座って計画の確認をしていた。
机の上にはお茶とおやつが置いてある。
…え?もちろん人の肉よ?やっぱり一番美味しいのはこれなのよねぇ♪固いところと柔らかいところのバランスがもう…
っと話を戻しましょう。
「穢れの存在しない所ならば…巨大な器を持つ媒体が存在しても何ら不思議は無い。成功させるしかないわね」
穢れの存在しない場所、それはズバリ月だ。神力の様に清らかで神々しいモノは器が大きくなりやすいが、実は穢れが少ない事でも器は大きくなる。清らかであることに変わりは無いからだ。月に巨大な器がある可能性は十分にあるのだ。
「それにしても…穢れ、か…もしかしたら、双也に出会わなかったらこの方法を思いつきもしなかったのかしらね」
双也に出会い、今まで行動を共にしてきた。強くもして貰った。
その中であの月人たちに出会い、穢れの存在を知り、そこから月の情報を得た。
双也に出会わずに幽々子に会っていたら、もしかしたら私は幽々子の事を諦めていたのかもしれない。今まで人間を殺して生きながらえてきたのだから、私がそうしないとは言い切れない。
双也に出会わずに生活していたら、能力の事もろくに分からずに今頃死んでいたかもしれない。
双也に出会わなかったら…………今の私は存在しない。
「……今まで支えてきて貰ったからこそ…今の私を認めて貰いたい!」
妖力弾を放った。それは真っ直ぐ進み、スキマを通って外の地面に衝突。後には抉られて大きく穴が空いていた。
「双也、私は強くなったのよ。月を攻め落として、媒体を見つけ出して、今度こそあなたに認めさせてやるわ!!」
私は、身に溢れる力が高ぶっているのを感じた。
「ただいま〜!」
創顕の神社を発って四日、漸く白玉楼に戻ってくることができた。道中では特に問題もなく、スムーズに来れた。まぁ結果二週間近くかかったわけだが。
俺は玄関から上がって廊下を進んでいった。
「あら、お帰り双也」
「お帰りなさいませ双也殿」
居間に行ったら居なかったので縁側に向かった。そこでは幽々子が縁側に座り、その側で妖忌が立っていた。
「どう双也?収穫はあった?」
「…いや、残念ながらダメだった。作ることは出来るが時間がかかり過ぎるらしいんだ。だから一晩泊めてもらって帰ってきた。悪い」
「謝る必要なんて無いわよ。頑張ってくれたみたいだしね。寧ろご褒美あげたいくらいよ?」
幽々子は悪戯をする子供のような顔をした。…何だか俺をからかう時の紫に似てる気がする…。
ってそう言えば
「なぁ二人とも、紫はどこに行ったんだ?」
「紫様ですか。双也殿が出て行かれた頃からはあまり見かけませんな。最後に見たのは昨日でしたかな?」
俺が出て行った後から? 何で?
「幽々子はどうだ?」
「う〜ん…妖怪さんをたくさん集めてた様だけど…居場所までは知らないわね」
妖怪を…? 創顕が言ってた妖怪の大移動ってのは紫が仕組んだ事だったのか?
…まずい、胸騒ぎがどんどん大きくなってきている。
何だ…何かを忘れてる……原作の紫が…昔起こした出来事………!!!
「まさか……」
俺は庭に出て霊力を完全解放し、日本中に霊力を飛ばした。感知能力完全放出だ。俺は妖力の反応に注意して紫を探す。
…………しかし紫は見つからなかった。ここから導き出される紫の行き先。
………月。
「アイツ……あれだけ言い聞かせたのに…!!」
俺は霊力をしまい、怒りの篭った声を漏らした。
事を察したのか、幽々子と妖忌が近寄ってきた。
「何か、まずい事になってるみたいね」
「双也殿、ワシらは何か…」
そう言う幽々子達の方に少し顔を向け、言った。
「妖忌、布団とケガの手当をする道具を用意しといてくれ」
「うむ」
妖忌は頷いて白玉楼の中へ戻っていった。
続いて幽々子にも声をかける。
「幽々子は………アイツの好きな物を用意してくれ。それと…………帰ってきた紫の世話頼む。俺じゃダメそうだ」
「…分かったわ」
幽々子は言葉の意味を察したようで、ちゃんと頼まれてくれた。
「双也」
「ん?」
「紫の事……お願いね」
「…ああ、任せとけ!」
そう返事し、天御雷を上にあげる。霊力を大量に込め、能力を付加する。
(あそこに行く方法は思いついてるが…難しいな。下手に使ったら霊力が空っぽになりそうだ。…でもそんな事は言ってられない…!)
俺は天御雷を振り下ろしながら言った。
「
目の前の空間に線が入り、バクッと開いた。スキマのような感じだが、中は真っ暗な様だ。
俺は一気にその中へ駆け込んだ。
「待ってろ紫…絶対に死なせねぇ!!」
スキマっぽいのを駆け抜けると、そこは広い荒野だった。だが普通の荒野と違うのは……血の臭いが充満していること。辺りは一面妖怪たちの死体で埋め尽くされていた。
そして俺の目が映した風景は……………
ボロボロで膝をつき、今まさに斬り殺されようとしている紫の姿だった。
もはや展開がお察しですねw
分かってても読んでいただけると私嬉しいですw
ではでは。