東方双神録   作:ぎんがぁ!

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有名な人妖大戦です!戦闘描写は初めてなので上手く表現出来てるか心配でなりません…。

三人称視点。

では第五話!どうぞー!


第五話 裁きを下す者

進み過ぎた科学力を持つ町の外壁より向こう、おびただしい数の妖怪達が人間の肉を求めて侵攻していた。

 

「やっとあの邪魔っけな壁の内側に居る人間たちを貪れるんだな!」

 

「ああ、ワクワクするぜぇ、絶望に満ちた顔のまま殺す時程快感なことはないからなぁ!」

 

「アッハッハ!そうだな!何人殺せるか勝負しねぇか!?」

 

「お、いいねぇ!俺はそうだなぁ……」

 

妖怪たちはこちらの気分が悪くなる様な会話を続けていた。余程人間を殺すのは手慣れているらしく、余裕があるようだ。妖怪達が歩を進めていると、町の近くに千人程の人間が立ちはだかるように待ち構えていた。双也達迎撃隊だ。妖怪達はそれを見つけると早速獲物が居たと我先に走り出した。

 

双也は怯えることなく迫ってくる妖怪の波を見据え…

 

「止まれぇぇええええ!!!」

 

そう叫び、祇園様の剣を霊力を込めて地面に突き刺した。

すると双也達の足元から妖怪達に向かって無数の刃が突き出した。妖怪達は突然の出来事に止まることも出来ず、前の方を走っていった妖怪達は無惨に命を散らした。

運良く刺さらずに済んだ妖怪達は足を止め、双也達を凝視する。

そこで双也が声を張り上げた。

 

「妖怪共ォ!こっから先は通さねぇ!人間の力を思い知れ!いくぞォ!!」

 

双也は地面から剣を抜きながら大群に突っ込んで行った。それに続いて依姫、隊員たちが攻めていく。

 

 

 

こうして人妖大戦の幕が切って落とされた。

 

 

 

双也は手始めに目の前に居た妖怪に袈裟斬りを仕掛けた。

妖怪は硬い皮膚を持つ者が多い。その妖怪も例に漏れないようで腕を使って防御をした"筈だった"

 

「そんなモンじゃあ防げねぇよ!」

 

神器である祇園様の剣は切れ味も凄まじく、刃は妖怪の腕ごと斬り落とし、胴体を深く斬りつけていた。妖怪はその場に倒れていく。と、その後ろから別の妖怪が鋭い爪を双也に伸ばしていた。しかしそれを難なく身体をそらして避け、妖怪の勢いを使って横へ切り抜いた。間髪入れず妖怪達が攻めてくる。今度は三体同時に飛びかかってきた。

 

「「「これならどうだ!」」」

 

妖怪達は声を揃えて爪を振り下ろす。双也はただただ冷静に…

 

「お前たち、俺の初撃を見てなかったのか?」

 

薄く笑みすら浮かべ、霊力を込めた剣を地へ突き刺す。すると三体の妖怪の真下から百本程の刃が突き出し、妖怪達は空中で縫いとめられた。

 

(みんな…頑張ってくれ!)

 

双也は妖怪の鮮血を浴びながらもそう願い、剣を抜いてまた群れに突っ込んでいく。

 

その後ろでは依姫が猛威を振るっていた。

 

「はぁぁああああ!!」

 

ゴウッと刀身から炎が噴き出る。それは瞬く間に広がり、十数体の妖怪を一気に包む。炎の後には塵しか残っては居なかった。

依姫の刀は『愛宕様の剣』。迦具土神の炎を操る神殺しの刀だ。噴き出る炎はあらゆるものを焼き尽くす、妖怪を屠るなど造作もない事だった。

 

「炎龍『迦具土』!!」

 

依姫が刀を横に一閃すると、龍の様な巨大な爆炎がとぐろを巻くように広がっていく。そして依姫が刀を鞘に収めたチンッという音と共に炎が弾け、大爆発を起こした。煙が晴れたあとにはただ依姫が立ち尽くすのみ。

それを横目で見ていた隊員達は思う。

 

(なんだあれ?反則級じゃねぇか!依姫様に抗えるヤツなんてこの場にいるのか!?)

 

あまりの無双っぷりに隊員たちは呆れていた。しかしよそ見をするわけにも行かない。すぐに切り替え、戦闘に集中した。

双也や依姫ばかり目立っているが他の隊員たちも決して妖怪を倒せていないわけではない。永琳による(キチ○イ)超乱闘のお陰かうまくコンビネーションして確実に数を減らしていた。

 

「お二人が頑張っているんだ!俺たちも役に立つぞォォ!」

 

「「「うぉぉぉおおお!!!」」」

 

隊員の一人が上げた叫びにより、全体の士気が上がっていく。戦いも人間側に有利な様に見えた。

しかし忘れてはいけない。相手は妖怪。しかも数ではこちらの何十倍の数。人間はいくら鍛えても妖怪を超えることは出来ない上、徐々にだが隊員の数も減ってきた。今はざっと五百人くらいしか居ない。

 

(くそっ!いくら時間稼ぎとは言っても不利過ぎる!もうみんなの限界も近い…ロケットはまだなのか!?)

 

双也がそう思った直後、町の方から炎が噴出する音が聞こえた。

 

「ッ!! ロケットが上がった!全員退避ー!!ロケットへ駆け込めーー!!」

 

双也がそう叫ぶと、残った隊員たちは時々妖怪からの攻撃を受け流しながらも退避していった。しかし、その中に依姫の姿が見えない。

 

「!? 依姫はどこだ!?」

 

双也が見つけた時には、依姫は数十体の妖怪に襲われ、受けた愛宕様の剣があまりの圧力にパキンッと折れてしまったところだった。

 

「ッ!? 剣が!!」

 

「よそ見してる場合じゃねぇぜお嬢ちゃん!!」

 

「がはっ! ぐっ、うぅ…」

 

依姫は妖怪の回し蹴りで吹き飛ばされ、木に叩きつけられた。依姫の霊力は火の多用によって底をつきかけ、最早抵抗する手段が無くなっていた。

 

「さぁお嬢ちゃん、塵にされた仲間達の仇を打たせてもらうぜぇ!」

 

「くっ、まともな仲間意識など持っていないくせにっ!」

 

「よくわかってるじゃねぇか!八つ当たりと思ってくれていいぜぇ?やっちまえ!!」

 

数十体の妖怪が一斉に飛びかかった。が、その中の誰一人として依姫に届いた者は居なかった。

 

「ぐあぁぁあ!」

 

「俺の仲間に手ェ出すな」

 

依姫の前には双也が立っていた。依姫に攻撃が届く寸前に滑り込み、間一髪で蹴りによる衝撃を妖怪達に繋げて吹っ飛ばしたのだ。妖怪たちが吹き飛んだのを確認すると、双也は祇園様の剣を鞘に収めて依姫に投げ渡した。

 

「え?」

 

「持っていけ。ココは俺が食い止める。依姫はロケットへ走れ。その刀で隊員たちや人々…永琳を…守ってくれ」

 

「で、でも双也さんが…」

 

「行け!!」

 

「っ! はい、ご武運を!」

 

依姫はロケットへ走っていった。

丁度そこへ吹き飛ばした妖怪達が集まってきた。どの妖怪も額に青筋を立てている。

 

「よくもやってくれたなぁ…お前らの所為で俺らの数も少し減っちまったぁ…」

 

「そうか、俺らとしちゃ減っていてくれないと困る。でもここからは俺が相手だ」

 

双也は炭素を大量に繋げて作った剣を手に持ち、再び戦闘を始めた。

それから数分後、

 

 

そこには地に這いつくばる双也の姿があった。

 

 

「おお?兄ちゃん大したことねぇなぁ?もう限界かぁ?アッハッハッハッハッハ!」

 

とても不快な笑い声が聞こえてくる。双也は拳を握りしめていた。だが確かに、双也には限界が来ていた。いくら現人神として霊力が膨大になったからといっても、数が数である。一人で未だに一万体以上は軽く残っている妖怪たちを相手に出来るほど双也の力は強くないし、そんな気力も残ってはいなかった。

 

(くそっ、くそっ、くそぉ!ここで終わりなのか!?こんな不快な奴らを倒すこともできずに!ここで死ぬのか!?)

 

双也が悔しさに顔を歪めている時、妖怪達の話し声が耳に入ってきた。

 

「あ〜あ、こんな事ならコイツほっといてさっきの女殺しに行けばよかったなぁ〜」

 

ピクッ

 

「それ俺も思ってたんだ!あんなゴツい男どもとかコイツとか、殺してもあんま面白くないんだよなー」

 

ピクピクッ

 

「そうそう、あの女とかさぁ、ずっと強気な感じだったじゃん?ああいうのを絶望に叩き落とした後に殺すのが一番いいんだよな!」

 

ビキッ

 

双也はスッと立ち上がった。妖怪達が少し驚いている中、双也は一言尋ねた。

 

「一つ聞く、お前たちは殺すのを娯楽か何かだと思ってるのか?」

 

「ああ?何言ってんだ?そんなん当たり前だろ?人間は弱い!俺たちより遥かにな!そんな"下等生物"を殺して何が悪い?アハハハハ!」

 

妖怪達は気付かない。双也の髪が少しずつ白くなって輝き始めていることに。

 

妖怪達は気づかない。満身創痍だった筈の双也が挙げた手に強大な力が集まっていく事に。

 

妖怪達は気づかない。双也の力が、

 

 

 

 

 

霊力ではない、別の"何か"になっている事に。

 

 

 

 

 

瞬間、話していた妖怪達に雷が落ち、一瞬で絶命させた。周りに居た妖怪達は突然の出来事についていけず、ただ立ち尽くすのみだった。

 

「殺しが娯楽…?ふざけんなよ…隊員の中には家庭を持つ者たちも沢山いた。年老いた両親を置いてまで参加してくれたヤツ、一歳にも満たない子とその妻を守るために参加したヤツ!そんな澄んだ心を持ったヤツらが"下等生物"?お前達クズの娯楽の為に死んでいった?冗談じゃねぇぞ!!テメェら全員、此処でぶっ潰す。手加減なんてして貰えると思うな」

 

双也は珍しく怒りに怒っていた。自分の大切な物を守るため、この危険な戦いに参加してくれた隊員…いや"戦友"を下等生物呼ばわりされた事、そしてそんな彼らが妖怪たちの娯楽なんぞの為に散っていった事に。

双也の目は凄まじい殺意に満ちていた。

 

「さ、さっき迄死にかけてたヤツが何言ってんだ!行くぞオメェら!」

 

双也に向かって何十体もの妖怪が飛びかかり、双也の五体をバラバラにしようと爪を伸ばした。そして確かに、妖怪たちの攻撃は双也に届いた。が、それは届いただけだった。

 

「お、お前…なんでそんな平気な面してんだ!?」

 

「邪魔だ、退け」

 

飛びかかった妖怪達は双也の腕の一振りで吹っ飛ばされた。妖怪たちの目には、徐々に上空へ上がっていく双也の姿が写っていた。

 

「お前たち一体ずつを相手にするのは面倒だ。纏めて葬ってやる」

 

双也が片手を挙げると見ているだけで震えが走るような強大な力が集まっていき、空も黒雲が立ち込めてきた。

それは絶え間なくゴロゴロと鳴っている。

 

「俺の戦友を下等生物呼ばわりしたこと、あの世で後悔しろ。

墜天『ギルティジャッジメント』!!!」

 

双也が挙げていた手を下ろすと、黒雲から超巨大な雷の束が落ちてきた。そう、まるで"天"が"堕ちてくる"ような、巨大な雷。妖怪達は成すすべなく、その閃光の中に全て消えていった。

 

 

 

 

「ハァ…ハァ…ハァ…うぐっ、くっ…」

 

双也はゆっくり地に降り立ち、荒い呼吸のまま倒れこんだ。慣れない力を使い、とうとう体力が尽きてしまったのだ。

 

(永琳たちはもう行ったな。依姫達のロケットの発射音もだいぶ前に聞こえた。依姫が俺の覚悟を悟ってくれたんだな。よかった……)

 

双也は自分達が守った者達の安否を思い、一つ深いため息を零した。

 

(でも、もう無理だな…疲れて…眠くなってきた……永琳、依姫…みん、な……じゃあ…な………)

 

双也は最後に今まで過ごしてきた友たちに別れを告げ、深い深い眠りについた。

 

 

 

 

 

 

その様子を遥か上空、"月の近く"で見つめる者が一人。

 

「双也……怒りが引き金となって目覚めたか…」

 

その名はツクヨミ。町に君臨する神であり、双也達に妖怪の迎撃を頼んだ張本人。ツクヨミは遠く離れた双也に向けて呟いた。

 

「済まぬ…双也。我はお前を見た時から、戦力になるとまるで道具のように思っていた。だがお前はそんな我の頼みを受け入れ、民を月へ送る為に死力を尽くしてくれた。この恩は決して忘れぬ…! 本当に、ありがとう、双也!」

 

ツクヨミはしばらくの間地球を見つめていた。

 

 

この言葉が当の本人に届いたかどうかは、定かではない。

 

 

 

 




は、初の4000文字オーバー……想像以上にキツかったです。他の作者さん達はこんなことをやってたの…?

次回の投稿と同時に双也くんのプロフィール?を上げたいと思います。まぁ今回の覚醒についてはタイトルで分かっちゃう人も居るかもしれませんが。

あ、忘れがちかと思うので一応言っときますね。この作品のツクヨミは"女性"です! 初登場あたりでちょっとしか言わなかったからひょっとしたら知らない人も居るかと思って。

ではでは。

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