東方双神録   作:ぎんがぁ!

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閑話です。以上っ

ではどうぞっ!!


第六十六話 容赦無い裁判

「ん? 新しい仕事?」

 

告げられた言葉に、あり得ない速度で走らせていたペンを止める。

俺の前で言葉を告げたのは厳治だった。

 

「ああ。双也殿はいつも早くに書類を片付けてしまうだろう? 追加しても問題ないと思うんだが」

 

「いや問題あるんだけど。仕事終わった後に修行してるの知ってるだろ?」

 

「後回しでいい」

 

「良くねぇよ。日々の積み重ねが大事…っておい!引っ張るなよ!」

 

「話は歩きながらする」

 

「は!? 決定事項なのかコレ!?」

 

反論するも、彼の完璧なスルースキルに敢えなく敗北。

終わっていない書類を残して連れて行かれた。

 

修行を始めて早三百年…つまり裁判所での生活も六百年に達した。

仕事の事も修行の事も、部下の管理でさえ板に付いてきて、百年ほど前からは一般の死神達からも普通に話しかけられるようになった。

もう立場とか関係なくなってきている。

このまま進んで、死神と裁判長たちとの上下ですら崩壊してしまわないか心配が募る今日この頃である。

 

そうそう、最近十人目の新しい裁判長が入ってきた。

一般閻魔からの昇進らしいが、その子がまだ俺のとこに挨拶とかしに来ない為名前とか顔が分からない。

なんか凄いドジを踏みまくるとか聞いたけど……暮弥とキャラ被らないと良いな。

つーか"ドジを踏みまくる新入り"とかテンプレ設定だなぁ。作者もうちょっと頭働かなかったのか?

……なんてシミュレーション仮説みたいな発言もしてみたり。

大丈夫、俺はどこかの人外ではないから。

 

「……ど…! …うや…の! 双也殿!」

 

「ん?」

 

「気付いたか。ぼうっとしていたようだが大丈夫か?」

 

「ああ大丈夫大丈夫、考え事してただけだ」

 

「そうか」

 

今までを振り返っていたら自分の世界に入ってしまっていたようだ。

厳治は少しため息をついて話し始めた。

 

「それで、ワシの話は聞いていたか?」

 

「ああいや、悪い…」

 

「……仕方ないな、もう一度言うぞ?今度はちゃんと聞けよ?」

 

厳治は掴んでいた俺の襟を離した。

歩いていく厳治に付いていく。

 

「仕事を頼んだ本当の理由だがな、早い話が人手が足りなくなったんだ」

 

「は? なんで?」

 

「ここ百年程の現世では技術が進歩していてな。その副作用でそれらを悪用する輩が増えたのだ」

 

技術の悪用……この時代の現世じゃあ戦争は当たり前か。

そりゃ死人も増えるわな。

でもそれだけじゃ仕事量が増えただけだろ?

 

「そんな輩が数多の人を殺し、その輩も別の者に殺される…そんな連鎖が続いた結果、所謂"殺人鬼"と言われるような輩がここにも溢れてしまってな。裁判の際に暴れるそ奴らを抑える為に人数を割いた所為で、人手が足りなくなってしまったのだ」

 

「……殺人鬼ね……」

 

人を殺す。それは明確な罪だ。

人を殺すと言うことは、その人と繋がっていた人たちを絶望のドン底に突き落とすという事。計り知れない悲しみを無理矢理背負わせるという事だ。

よっぽどの理由がない限り、俺はそんな奴を許したことはない。許すつもりもない。

 

「気が変わった。待機室で様子を見て、暴れそうな奴は俺の所に連れて来てくれ。俺が直に裁く」

 

「……そうか、分かった。監視役の死神を一人待機させておこう」

 

「よろしくな。…俺用の裁判所は…もちろん用意してあるんだろ?」

 

「もちろんだ」

 

そう言うと、厳治は目の前のドアを開け放った。

 

「ここが天罰神の最高裁判所だ!」

 

さぁ、判決を下してやろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、一人目である。

俺と数人の閻魔がいる裁判所の扉を開けてズカズカと歩いてきたのは、如何にも罪を犯しそうなゴツい顔をした三十代くらいの男。

 

「あぁん? 何見てんだコラ。裁判だかなんだか知んねぇけど、舐めた真似してっとぶっ殺すぞ」

 

うん、こいつ死刑♪

 

「っ!? 何だおま----」

 

「法廷で裁判長に刃向かったらダメだぜ?」

 

裁判長席から瞬歩で移動。降り立ったのは被告人の目の前。

神格化しながら、中指を親指で抑えた状態の手をそいつの額に突き出す。

 

「ヒゲダルマ秘技『鬼デコピン』」

 

額に向けて指を弾く。

裁判所には、ピンッと弾いた音ではなくズドォォオン!!と言う爆音が響いた。

見ていた閻魔たちは開いた口が塞がらなくなっている。

 

コレは本当はただのデコピンである。

"罪人を超越する程度の能力"によって、威力が超々強化されただけの話。

うん、アイツ全然善行積んでなかったみたいだね。威力が全然軽減されてない。生きてたら死ぬレベルに痛いかもしれないけど、"仕事"だからね。

因みに、発動するのに必要な"相手の罪を認識する"事は、裁判前にそいつの資料を見たからクリア済みだ。

 

さぁどんどん行こう。

 

 

 

二人目。

 

「何だただのにいちゃんじゃねぇか。裁判なんてやめてこの白い粉ヤらねぇか?」

 

「鬼デコピン」ズドォォオン!

 

三人目。

 

「ねぇねぇ知ってる!? 腹も懐も肥えてる金持ちのバカってね、私が股開くだけで簡単に金くれるんだよ!? そのあとは殺しとけば----」

 

「ギルティジャッジメント」ドガァァアン!

 

四人目。

 

「私が開発した兵器はそりゃもう凄いものでね!? 感染するとゾンビの様になってドンドン増えていくんですよ! お兄さんも使ってみない----」

 

「それはアウトだ!! 蒼火堕!!」チュドォォオン!

 

五人目。

 

「I Love Rocket artillery so much! And killing people to use it is very very very fun!!」

 

「何で外国人が居るんだよ! しかも言ってることかなり危険だし! 断咎一閃の剣(結界刃ver)!」ドガァァアン!

 

 

 

 

「ふぅ…ふぅ…疲れてきた…」

 

もう何人裁いただろうか。五十人から先は数えてないから…おそらく二百人は超えたと思う。

俺がストレス発散と共に天罰神の力を振るった所為で裁判所は結構ズタズタになっている。

このまま一人一人やっていたら裁判所壊れるかも…よし…

 

「閻魔さんたちよ、待機室の残ってるヤツ全員集めてくれ」

 

「え?」

 

「ここで全員相手するから」

 

「ええ!?」

 

もう面倒くさくなってきたのだ。

この仕事を引き受けて後悔はしていないが、どうしても疲労は溜まっていくもの。

疲れの原因は纏めて処理した方がいい。

 

というわけで集めて貰った。

総勢五十人くらいの暴れん坊たちが目の前にいる。

んだよ、ガン飛ばしてくんなよ。

 

「さてお前ら、裁判とか面倒なのは抜きで行く。俺の精神の健康と他の裁判長達のために裁かれて(散って)くれ」

 

そう言うと、前の方にいた特にゴツい人たちが怒鳴ってきた。

 

「あぁん!? 散るのはワレじゃボケぃ!! 目ん玉くり抜いたろか!?」

 

「調子こいてんじゃねぇぞボウズ!! こちとら今までやんごとねぇ事してきたんじゃい!! おめぇ一人でどうにかなるもんかい!!」

 

………うんうん、個人的にムカついてきた。

覚悟しろよテメェら、マジの地獄見せたるぞ。

 

「ドンと来いやこの腐れヤクザ共ォ!!」

 

「「「オラァァァアアア!!!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

………結果は言うまでもないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「や り す ぎ で す ! !」

 

「………はい」

 

現在自室。暮弥に正座させられている俺です。どうも。

 

「なんですかアレは!! せっかくの裁判所がメチャクチャじゃないですか!! 罰を与える為に能力を使って傷つけてしまったのは仕方ないでしょう! ですが大乱戦で壊したなんていうのは論外です!! 分かってるんですか!?」

 

「はい…すいません……」

 

被告達を一気に相手した結果、天罰神の最高裁判所なる物は過去の遺物となってしまった。

ちょっとやり過ぎたとは思っている。でもさ?あんなゴツい人たちが鬼の形相で向かってきたら力加減間違えるのも仕方なくない?

焚きつけたのは俺だけどもさ。

 

「聞いてるんですか!?」

 

「はいっ すいませんっ」

 

少し話を聞き逃したらしい。

怒られてる時って妙に聞き逃すの怖く感じるよな。何でだろう。

っとまた現実逃避しそうになった。

暮弥を見てみると、眉間にシワを寄せてふんぞりかえっていた。

 

「もう、今日の所はこのくらいにしておいてあげます。仕事終わりで疲れているでしょうし、何より反省しているみたいですからね!」

 

暮弥はバタンッと扉を閉めて出て行った。

残ったのは、正座している俺と偶然居合わせた流廻、そして何故か部屋に居た陽依と夜淑。

 

「だ、大丈夫双也様? 暮弥お姉ちゃん凄い怒鳴ってたけど…」

 

「……ん。大丈夫…」

 

「無理したらダメですよ双也様。何か欲しいものありますか?」

 

慰めてくる夜淑と流廻。陽依は暮弥に気圧されたのか黙っている。

取り敢えず…

 

「流廻…」

 

「はい」

 

「……なんか美味しいもの作ってくれ…」

 

「…はいはい」

 

その日は結局、流廻の手料理をたくさん食べて元気を取り戻したのだった。

 

 

 

 

 

 




だんだん流廻の株が上がっていく…w

ヒゲダルマは…まぁあの人です。わかる人には分かるはず。

ではでは。

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