東方双神録   作:ぎんがぁ!

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この章は長くなると思っていましたが、どうやら二、三話多くなるだけになりそうです。

ではどうぞー!


第六十七話 天界

「ふっ はぁ!」

 

ヒュンヒュンと風を斬る。

もう剣舞にも慣れたもので、我ながらかなり美しい舞いが出来ていると思う。

ここに鬼道が混ざる事でものすごい剣舞になるのだ。

 

「せいっ!」

 

旋空で岩を斬りとばす。

浮いた岩は空高くに打ち上がった。

 

「縛道の四『這縄』!」

 

鬼道で縛り、引き寄せる。

岩はかなりの勢いで迫ってきた。

片手で拳を作り、脇に構える。

 

特式(・・)三十一番『赤焔拳』!!」

 

紅い炎がギラギラと光る拳を岩に叩きつけた。

拳からは爆炎が吹き出し、飛んできた岩は爆発による土煙に紛れて文字通りの粉微塵になった。

 

裁判所に来ておよそ八百年。

霊力は予想通り八割程が回復し、あと少しで甦れるというところである。

修行はもちろん欠かす事なく続けてきた。おかげで今の様な鬼道の応用も出来るように。

この説明はまぁ…そのうちしよう。

 

手をグッパして感覚を確認していると、近くから声をかけられた。

 

「あ、あの、双也様!」

 

「ん? ああ伽耶乃(かやの)か。なんだ?」

 

声をかけられた方を見ると、閻魔の服を着た小柄な少女がいた。

彼女は伽耶乃(かやの)

二百年ほど前に、映姫の後任として裁判長となった元閻魔だ。

白髪のセミロングで、身長は映姫よりも少しだけ高いくらい。因みに身長と不釣り合いなくらい胸は大きい。

魅九程ではないが。

……ってアレ? この子の話したっけ? …まぁいいや。

伽耶乃は言葉を少しつっかえながら話し始めた。

 

「え、えと…修行中に申し訳ないのですが…その…頼み事を…聞いてもらえないでしょうか?」

 

「うん? 頼み事? お前ドジは結構踏むけど仕事は出来る方だろ?珍しいな」

 

「あ、ありがとうございます。ど、どうしても、人手を割けなくて…」

 

「ふ〜ん…まぁいいや。それで?」

 

「あ、はい。じ、実はですね………」

 

 

 

 

「で、来てみたは良いけど……ここ広いなぁ…」

 

現在、俺は雲の上(・・・)にいる。

……ん? 聞き逃した?雲の上だよ雲の上。Above the clouds OK?

 

周りを見渡す。

下は一面白で、上は一面青。見事な対比が成り立っている。

でも日差しが直で当たるため少々暑い。だから"暑さを遮断"しておいた。

 

で、なんでこんな所にいるかと言うと……

 

 

 

『天人の寿命狩り?』

 

『は、はい。近年天人たちの寿命も長くなってきまして…その…お迎えの死神を派遣はするんですけど…脅されて追い返されちゃうみたいで…』

 

『他の裁判長たちには?』

 

『頼んでみました。ですが…み、皆さん忙しい様で…部下の死神たちも派遣出来ないらしいんです…』

 

『それで、脅されても平気な上に比較的暇な俺に頼んだと』

 

『す、すいません…失礼だとは思ったのですが…わ、私も仕事が…ありますし…でも! 出来ないのであれば私がどうにか----』

 

『いや、引き受けるよ。正直気は進まないけど……仕事だからな』

 

『あ、ありがとうございます!』

 

 

 

…………という事があったのだ。

ホントこの子熱心だなぁ、他の裁判長と違って凄い綺麗な敬語使うし。

なんて感想を持ったのは俺だけじゃないはず。

 

で、天界があるという雲の上に転送してもらったわけだが……どうにも広過ぎる。

結構歩いているが未だに誰とも会っていない。

俺が来る前に誰かがやっちゃったとかは流石に無いよね?

 

なんて思って歩いていると、少し先に林が見えてきた。

その下には人影も確認できる。

俺は走り出した。

 

「お〜い!そこの天人達〜」

 

近付くと、数人の男女の天人が木の下で鞠をついて遊んでいた。

彼らの一人は、俺に気がつくと少し嫌そうな顔をした。

 

「なんだお前?」

 

「ちょっと聞きたい事があって。ここらであんたらみたいな天人が沢山住んでるとこ教えてくれない?」

 

俺は結構気前の良い感じで話しかけたつもりだった。

当然、普通に答えてくれるとも。

だが現実は違った。

 

「なによ、また死神? 鬱陶しいわねえ。サッサと向こうにお行き! シッシッ」

 

「ここはお前みたいな汚らわしいヤツが来るところじゃないんだよ。さっさと地上に帰れ」

 

「お前みたいな下賤の者に教える義理なんて無いな。知りたかったら土下座しな、ほら!」

 

頭をガシッと掴まれる。

土下座しろって意味なんだろうけど……誰がテメェらみたいな奴に。

 

「縛道の四『這縄』」

 

「な!? なんだこれは!?」

 

身体中を縛られ、身をよじって逃れようとする天人。

でももう遅い。お前らは俺を怒らせた。

 

「破道の十一『綴雷電』」

 

「ぎゃぁあぁああぁぁあ!!?」

 

バリバリバリッと這縄を通して電流が流れた。

残った天人はプスプスと煙をあげて気絶している。

それを見て他の天人達は驚愕していた。

 

「あ、あんた! 私たちにこんな事してタダで済むと思ってんの!?」

 

「そ、そうだ!! 俺たちに手を出したら龍神様が黙って----」

 

「うるさい」

 

焦った様子の男性天人に"破道の一『衝』"をぶつける。

彼は吹っ飛んで木にぶつかり、気絶したようだ。

…脆すぎだろ。最下級の破道だぞ?

 

「ヒィィィ!! お、お前なんかにぃ!!」

 

「破道の四『白雷』」

 

ズドッと女性天人の胸の辺りを貫く。彼女はそのまま倒れた。

手元を見れば、何かのボタンがコロッと落ちていた。

どうやらすでに押されたものらしい。

 

「寿命狩りね……生きすぎる事が悪い事なのかは分からないけど……人を罵るのは明らかに悪い事だな」

 

一連の会話で完全にスイッチが入った。

こっからは"仕事モード"だ。

気絶している三人に"破道の五十四『廃炎』"を飛ばし、燃やし尽くす。

 

「コレは仕事。今までだって許されない事をした奴は天罰で殺してきたんだ。それが俺の神としての使命だし、存在意義。………割り切るしかない」

 

自分に言い聞かせるように、しっかり言葉に出す。

元々殺す事が苦手な俺だ、切り替えを利かせないと途中で失態を犯すだろう。

 

 

理由の無い殺しはただの殺戮。

理由の有る殺しは即ち正義。

 

 

この言葉をまるきり信じるわけではないけど、この言葉には思うところがある。

"殺さなければならない時だけはこの言葉を信じよう"と心に決めているのだ。

 

「ふぅ……ふっ」

 

霊力を解放する。

多数の力を感じるところを発見し、瞬歩で飛んだ。

目を開ければ、そこは中心に宮殿のようなモノの建つ町だった。俺はその外壁の外にいる。

そして……

 

「貴様か!! この天界に背いた死神とやらは!!」

 

俺の周りには、鎧を着込んだ天人たちがいた。

さっきのボタン、恐らくは救護要請の為のボタンだろう。万一のために持っていたわけだな。クズなりに賢い選択をする。

それと……

 

「俺は死神じゃない」

 

「……では何が目的だ!!」

 

怪しむ目でそう言う兵士の一人に、結界刃を発動しながら言った。

 

「寿命狩りさ」

 

「ッ!! かかれぇぇ!!」

 

同時に兵たちが突っ込んでくる。後ろで弓矢隊も構えており、俺狙いの一点集中砲火をかましてきた。

でもまぁ………ぬるい。

 

「縛道の八十一『断空』」

 

突っ込んできた兵、そして放たれた矢もことごとく断空に阻まれ、地に落ちていった。

 

「既に三人狩ったが、もう少し狩っていかないと仕事したうちに入らないんだよ。だから……覚悟しろよ?」

 

刃を構え、兵達に斬り込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宮殿の脇、町よりも少し高い所に建てられたその屋敷の縁側で、一人の少女が外を眺めていた。

 

「全く、騒がしいわね…」

 

彼女の視線は町で我先にと走っていく天人たちに向けられていた。

その視線はだんだんと上がっていき、宮殿の下に注がれる。

 

「どけぃ!! 我が先に行くのだ! 邪魔をするな!!」

 

「ちょっと退きなさいよ!! 早くしないとココに来ちゃうわ!!」

 

町の天人と変わらず、宮殿に住まう貴族ですら慌てて逃げていく。

彼女の視線は酷く冷たいモノだった。

 

「はぁ…どいつもこいつも、反抗者くらいで騒ぎ過ぎよ。普段から上座で踏ん反り返ってるからそうなるのよ」

 

肘をついた手の上に顎を乗せ、明らかな批判の言葉を呟く彼女の視線は、町の外…外壁の向こう側に向けられた。

 

「その反抗者もバカよねぇ…桃で鍛えられた天人の軍に勝てる訳ないのに。ましてや一人だなんて……救いようがないわ」

 

詰まらなそうな表情で言う彼女の後ろから、柔らかな声がかけられた。

 

「総領娘様、皆避難していますよ。私達も参りましょう」

 

「いいわよ衣玖(いく)。どうせコッチまでは来やしないわ。ここにいましょ」

 

赤が基調の羽衣を纏う、衣玖と呼ばれたその女性は困った顔をしながら返事をした。

 

「しかし万が一という事もあります。総領様が心配なされますよ?」

 

「いいのよ! 避難なんて面倒な事したくないわ!」

 

「総領娘様……」

 

我儘な彼女に頭を悩ませる衣玖。

自らが目を掛ける相手だけに万一にでも怪我をさせたくない彼女ではあるが、その目を掛けられている総領娘本人はそんな事を気にも止めていない。

日々その事に頭を悩ませる衣玖であった。

 

しばしの沈黙の中、ゴォォォオという激しい音が静寂を破った。

 

「何…あの黒い箱……」

 

彼女の視線の先には、数10mはあろうかという巨大な黒い物体があった。

それは少しの間そこに鎮座すると、ガシャァァンと音をたてて崩れていった。

 

「……衣玖、宝物庫に行くわよ」

 

「…総領娘様?」

 

そう言った彼女のつまらなそうな目が、楽しみを見つけたような輝きを取り戻したのを衣玖は見逃さなかった。

しかし彼女が声をかける前に、総領娘は横を通り過ぎて行った。

 

「っ! いけません総領娘様!」

 

すぐに追いかけ、立ちはだかる衣玖。

しかし総領娘は衣玖を押しのけて進んでいく。

 

「邪魔しないで衣玖。あの反抗者、唯の死神と思ってたら違うみたい。こんな面白そうな事滅多にあるものじゃないんだから」

 

「いけません!!」

 

ズンズンと進んでいく総領娘。

衣玖はその肩を掴んで止めようとするが、それは振り返った彼女によって払いのけられた。

 

「行くのよ!! 私は今できる事を全力で楽しみたいの!!」

 

そう叫んだ彼女に、最早衣玖は反論する気が失せてしまった。

彼女はすでに知っているのだ。この少女が、よっぽどの事がない限り一度決めたものを曲げない事を。

自分が止めようとする事が無駄に等しい事を。

 

ならば、と衣玖は覚悟を決めた。

 

「……分かりました。そういうのでしたら、私も参りましょう」

 

「いいわよ! 私一人で行くから!」

 

「総領娘様に何かあっては私も総領様も悲しみます。止めても聞いてくださらないなら、せめて私が守らせていただきます」

 

衣玖の強い視線に、総領娘は言葉を詰まらせた。

しばらく押し黙ると、彼女は重そうに口を開いた。

 

「……分かったわよ。二人で行くわよ」

 

「はい♪」

 

衣玖はニコリと笑った。

総領娘は振り返り、宝物庫の扉をゆっくりと開けた。

そこにあったのは……緋色に染まった一振りの剣。

 

「この緋想(ひそう)(つるぎ)と要石があれば、私は無敵よ!!」

 

彼女は剣を手に、再び縁側に戻った。

今度は衣玖も隣に並ぶ。

 

「行くわよ。準備はいい?」

 

「はい、いつでも」

 

「じゃあ、楽しんできましょ!!」

 

衣玖は総領娘を守るという誓いを、

総領娘は未だ見ぬ楽しい戦いへの期待を胸に、

二人は飛び立ち、空へと舞った。

 

 

 

 

 




次回は戦闘でしょうねー。
長さは…分かりません。

ではでは。
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