東方双神録   作:ぎんがぁ!

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書く事無い。以上!

では七十三話どうぞぉ!


第七十三話 すれ違い、"待つ者"の想い

「さぁ、遠慮せず寛いでいって!」

 

「あ、はい…」

 

博麗神社の和室、木と畳の匂いが香るその部屋の真ん中に、ちゃぶ台を前にして座っている。その上にはお茶の入った湯呑みも一つ。

…一口飲んでみる。

 

「ん、おお? 思ったよりも随分うまいな。中々に良い茶葉を使ってるんだな…」

 

「ふふん♪ そうでしょう! ウチはビンボーだけど生活には困ってないからね!」

 

俺の一言に反応したのは、奥の台所らしきところで何か作っている女性。名前は分からないので巫女さんと呼んでおこう。

そう、俺は彼女に誘われて神社に上がらせてもらっている。いや、元々助けてもらおうと思ってたから別に良いんだけどね。

事の始まりは、俺が一万円札を投げ入れた後…

 

 

 

 

 

 

 

 

『うふふふ、久しぶりのお賽銭…これで少しは贅沢できるわ…うふふふふ…』

 

『あのー、ちょっと戻ってきてー』

 

俺をそっちのけで諭吉さんを愛おしそうに眺める巫女さん。なんか自分の世界に入ってしまったようで戻ってこない。

声をかけて肩をポンポンと叩くと、こっちを向いて思い出したかのような表情をした。

 

『ん、ああゴメンなさい、久しぶりのお賽銭だったからつい嬉しくてね』

 

『いや良いけど…』

 

どうやら本当にビンボーらしい。…ビンボーなのにここまで綺麗な外見をしてるってやっぱすごいな博麗の巫女。

なんて考えていると、突然両手を掴まれ、我に帰ると巫女さんの顔がすぐそこにあった。

 

『改めてお賽銭ありがと! これからもこの神社と私をよろしくね!!』

 

『え、あはい』

 

気圧されながらも返事をすると、巫女さんはパッと振り返ってルンルンしながら神社に戻って行こうとしていた。

…ってちょっと待てや!!

 

『いや待てよっ! 俺ちょっと助けて欲しくてここに来たんだけどっ!』

 

そう叫ぶと、巫女さんは止まって振り向いた。その表情は少し不思議そうだった。

 

『なんだ、そうだったの? 先に言いなさいよそういう事は』

 

いやいや、コッチそっちのけで話進めたのあんただろ。なんてツッコミを入れたかったが、なんか助けてくれそうな雰囲気だったので止めておいた。触らぬ神に祟りなし、口答えして機嫌を損ねるのは好ましくない。

……ちょっと警戒し過ぎか。

 

『ん〜…そうねぇ、あなたにはありがたぁ〜いお賽銭してもらった事だし…そうね…ちょっとウチに上がっていきなさい! お賽銭の御礼も含めておもてなししてあげるわ!』

 

……強気に言った彼女の波には逆らえず、神社に上がらせてもらった。

 

 

 

 

 

 

 

(今考えると、この神社の巫女があの子(・・・)じゃないって事は……もしかして原作よりも前の時間軸か?)

 

なんだよ、まだ原作入ってなかったのか。やっと念願だった幻想郷に入れたのに、まだ先は長そうだ。

そう考えていると、お盆にいくつか料理を乗せた巫女さんが台所から戻ってきた。

 

「ちょうどお昼だし、一緒にご飯食べながら話しましょ」

 

「あ、ご飯まで貰えんの? ありがたいね。じゃあお言葉に甘えて」

 

昼飯まで貰えるなんて思っていなかった。博麗の巫女には現金が効果バツグンなんだな。参考にしよう。

いただきます、と言ってから食べ始めた。思ったよりも美味い。

 

「取り敢えず、あなた良い人っぽいから自己紹介するわね。私は博麗(はくれい)柊華(とうか)。この博麗神社の現巫女よ」

 

悪いやつなら自己紹介しないのか、なんて思ったが、深い意味はなさそうなのでスルーした。

おっと、こうなったら俺も自己紹介しないと

 

「俺は神薙双也。好きに呼んでくれ」

 

「じゃあ"双くん"?」

 

「……やっぱり呼び捨てにして」

 

この人中々面白い。自己紹介したからって初対面の人を〜くん呼ばわりとか。このマイペースさが博麗の巫女たる所以なのかねぇ?

 

さて、本題に入ろう。俺の知識不足をここで満たさないとな。

 

「で、柊華、聞きたい事があるんだけどさ」

 

「良いわよ。元々それが目的みたいだしね」

 

「今っていつの時代?」

 

そう聞くと、柊華は腕を組んで首をかしげた。

 

「…質問の意味が分からないわね。なに、時間旅行でもしてたの?」

 

「あ〜いや、そういうわけじゃないんだけど…ちょっと他世界から来たものでね」

 

「ふ〜ん…外来人か。じゃあ…そうね、外の世界の年代でなら、今は"大正"と呼ばれる時代よ」

 

「た、大正…?」

 

「ええ。…どうかしたの?」

 

「いや…」

 

マジ…なのか? 大正っていったら、俺の居た平成よりも百年くらい前……つまり、"原作の開始まで約百年ある"という事…

 

「ん? ちょっと待って、ホントに大正だったかしら…?」

 

「いや、それくらい覚えてないとダメだろ」

 

「う、うるさいわね。幻想郷では年代とか関係ないからうろ覚えなのよっ」

 

頰に一筋汗を垂らしてあーだこーだと悩み始める柊華。本当に博麗の巫女か?なんて疑われかねないシュールな光景だ。

うんうん唸り通した末、柊華は答えを出した。

 

「うー…ん…た、多分大正よ! そういう事にしときなさい!」

 

「結局そうなるのか…」

 

完全に妥協案だと分かり切ってるが、まぁ確かに年代はそこまで気にしなくてもいい。大正って事にしとこう。

これ以上は柊華も見ててかわいそうになってくるし。

 

(しっかし大正か…なんだよ、全然近くなんかじゃないし…また待たなきゃいけないのか…)

 

せめて二十年とかなら許せたのに…やっぱり神様、あなたは意地悪です。

まぁ、年代が分かっただけでも今は大収穫か。開始までゆったり過ごそう。

 

「そっか、大正か。分かった。じゃあもう一つ、家を建てられるような場所ある?」

 

新たな問題、百年間を過ごす家が要る。人里に紛れて暮らすのも落ち着かないし、どこか静かな場所が良いなぁ

柊華は少し悩んだ素振りをした。

 

「ん〜…幻想郷は基本自由だからねぇ…どこに住んでも構わないと思うわよ。静かに暮らしたいなら魔法の森とかでも良いと思うわ。瘴気に耐えられるならだけど」

 

魔法の森か…確かに静かにはなりそうだな。人なんか寄り付かないって聞いた事あるし。瘴気もまぁ…多分だいじょぶだろ。少し考えてみて、無いようなら魔法の森にしよう。

 

「よし分かった。ありがとな柊華」

 

「お礼言われるほどのことじゃないわよ。博麗の巫女として、外来人を助けるのは当たり前のことよ」

 

「そっか。あ、昼飯美味かったよ。飯に困ったらまた来るかも。じゃあな」

 

「ええ。またいつかね」

 

博麗神社を後にし、俺は少しばかり幻想郷を歩いてみることにした。

 

 

 

 

 

 

 

双也が去った後の博麗神社。彼を見送った柊華は、居間で一人お茶をすすっていた。

 

「ふぅ〜…なんか不思議な外来人だったわねぇ…」

 

そう言ってまた一口すする。博麗神社に響くのはズズズズ…っと言う音だけだった。

 

「まぁ、幻想郷は忘れ去られた者が集う場所。誰も拒みゃしないわね」

 

「よく分かってるじゃない、柊華」

 

「……ねぇ、前から言ってるけど、突然出てくるの止めてくれないかしら、()

 

彼女がそう呟いた直後、居間の扉の所に空間が開き、閉じたかと思うとそこには妖怪の賢者、八雲紫が立っていた。

 

柊華は、面倒くさそうに紫を見ながら話しかけた。

 

「いつからいたの?」

 

「ついさっきよ。…誰かいたみたいね。外来人?」

 

「そうよ。"ちょっと不思議な"、ね」

 

紫は机に置いてある二つ目の湯のみを見て話しかけた。

そしてそれに答え、どこか含みがあるような言い方をする柊華。当然紫も疑問に思い、彼女に問いかけた。

 

「不思議って…何がよ」

 

「外来人だって言ったくせに、内包霊力が強過ぎるのよ、その人」

 

柊華は彼と相対した瞬間にそれを感じ取っていた。抑えてはいるものの、底が見えないほどの強力で膨大な霊力の塊。"外来人"と言うには全くもって不釣り合いなほどの力を。

 

しかし、紫はまた別の事に疑問を持っていた。

 

(…? そんな強大な存在が侵入したのに…この私が気付かなかった…?)

 

幻想郷を管理しているのは、代々博麗の巫女、そして妖怪の賢者と言われる紫である。その彼女が、自らの管理する結界の侵入者に気付かないなど、普通はあり得ないことなのだ。その不可思議な事柄と共に湧き上がる不信。紫は眉根を寄せて柊華に問いかけた。

 

「…危険性は?」

 

「それに関しては大丈夫そうよ。なんたって一万円もお賽銭してくれたくらい良い人だったから♪」

 

などと言って雰囲気を明るくする柊華。紫はひとしきり安心するのと同時に、どこか含み笑いを混ぜながら彼女に問いかけた。

 

「そう…でも、強い者好きのあなたがよく挑まなかったわね。戦うの好きでしょう? 歴代最強(・・・・)、第十八代目博麗の巫女、博麗柊華さん?」

 

そう茶化すように言った紫に、柊華はジト目で睨んで言い返した。

 

「…その呼び方もやめてって言ってるでしょ。……挑まなかったんじゃないわ。挑めなかったの」

 

「…どういう事?」

 

「不用意に挑んで戦ったら…多分私じゃ手も足も出ないと思うわ。戦うなら念入りな準備が必要。まぁ、ああいうタイプの人は相手に合わせて戦ってくれると思うけど、仮に全力で戦ったなら……」

 

紫から見れば珍しく、柊華は冷や汗をかいて苦笑いしていた。歴代最強と言われ、今までも数々の異変を解決してきた柊華がここまでになるほど強い存在。その"強大な存在"という単語に、紫は友人の事を思い浮かべていた。

 

(……双也…早く、戻って来なさいよ…)

 

紫の目の前で、"戻ってくる"とだけ言い残して死んだ、友人であり師匠でもある少年、双也。

死んだのに"戻ってくる"と言った意味は紫もよく分かっていなかったが、それでも彼女は待っていた。千年間、一日たりとも彼を忘れず、ずっと。

若干雰囲気が暗くなった紫に気付き、柊華は仕返しとばかりに茶化し始めた。

 

「ん? なぁに紫、まだ"愛しのお師匠様"の事引きずってるのぉ?」

 

それを聞いた紫は、ニヤニヤ顔の柊華に向かって顔を赤くしながら言い返した。

 

「なっ!? 別に愛しくなんかないわよ! アイツは友達なんだから!」

 

「でも、あなたその師匠の話をする時妙に女々しいんだもの♪ ゆかりんってば乙女なのね♪」

 

「〜〜〜〜ッ!」

 

ますます顔が赤くなる紫。十分に眺めて満足したのか、柊華はニヤけた顔から微笑ましそうな顔になり、語りかけた。

 

「大丈夫よ紫。自分が信じた人が"戻ってくる"って言ったんでしょう? なら信じなさい。この世界は、常に"非常識"なんだから」

 

「……そうね。千年間も待ち続けたんですもの。今更諦めたりなんて出来ないわね」

 

そう言った紫の表情は晴れやかだった。その様子を見て柔らかな笑みを浮かべる柊華。彼女は心の内でこう思う。

 

(ま、本人が言うなら本当に"友達"なんでしょうね。………友達、恋人…ねぇ……いいなぁ…)

 

彼女達は、しばし二人でのんびりしていたそうな。

 

 

 

 

 




あ、章名の"幻想郷"のところに"過去"って書き足しときますね。

ではでは。
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