東方双神録   作:ぎんがぁ!

78 / 219
ほのぼの回(?)です。

ではどうぞー!


第七十四話 初のマイホーム(仮)

博麗神社を後にして、俺は幻想郷を歩いてみた。

家を建てるのに良い場所を探していたのだが、キョロキョロしているうちにいつの間にか周りの景色に気を取られてしまって、正直集中できなかった。

うん、自然の美しさはホントに素晴らしいと思う。

でも今回ばかりは気が散って場所探しどころじゃない。

 

ーーと言うことで

 

「魔法の森…なんかすごいジメジメしてるな」

 

最初に紹介された魔法の森まで来ていた。因みに少し奥に進んだところだ。

周りを見ても木、もしくは変なキノコばかりで薄暗く、とてもジメジメしている。

確かに、こんな場所なら人は寄り付かないな。

 

「オマケに…ちょっとクラクラするなぁ」

 

柊華の言っていた"瘴気"とやらの影響なのか、視界がぼやけてクラクラする。

…このままじゃヤバそうだ。

 

「うぅ…"身体から瘴気を遮断"っと…」

 

身体がフッと軽くなった気がした。

ボヤけも良くなり、クラクラしなくなった。

……いやでも、ここで暮らす以上慣れないといけないか。少しずつ能力を解除しながら身体を慣らしてこう。

 

さて、それじゃここで場所探そうか。

俺はもう少し先に進んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし…ここにしよう」

 

しばらく進んでいくと、少しだけ開けた場所があった。

それこそ直径5mほどの小さな場所だが、どうせ木は切るし問題ない。

入り口からも離れた場所なので静かに暮らせるし、うってつけだ。

 

「じゃ、始めようか!」

 

俺は袖捲りをし、作業を開始した。

 

まず材料(木)の調達。

結界刃で広場を中心に切り倒していく。もちろん一太刀。

広場はだいたい直径10mほどになって、木もたくさん集まった。

 

次、木を任意の形に切る。

ぶっちゃけ簡単作業だ。手で触れて、原子を遮断してやれば簡単に好きな形に出来る。

少し大きめに切って、後で工夫できるようにした。

 

三つ目、家の構想を練る。

やっぱ一軒家がいいな。

階段はもう要らないって決めたし…。和室とか…襖とかあってもいいな。

間取りとか理想の家を考え、設計を考える。

そんなに複雑でなくも良い…パーツだけ揃えてやれば、俺なら簡単に作ることができる。

 

最後、組み立て。

構想を元に木を組み立てる。

形を変えたかったりした時には能力で切り取ったりくっ付けたりして、パーツを揃えながら組み立てた。

木同士の接合部は、能力で原子同士をくっつけて切断面を完全に無くし、どんな木造建築よりも頑丈にした。

木の面がむきだしなので、朽ちないように遮断能力でコーティングをして……

 

「完成!!」

 

所要時間、約四時間にしてマイホームが完成した。

……まぁ、畳とか襖とか、あと家具とかも揃ってないから本当に形だけなんだけど。

部屋は居間、寝室、キッチン(が入る予定の場所)、風呂場、あと数えて良いか分からないけどテラス、縁側など、約六部屋。居間は八畳間になっていて、寝室と襖(があるはずの桟)で分けられている。ちゃぶ台とかあればだいたい完成かな。

 

「ん〜…今は大体四時ごろ? じゃあ家具作ってもらいに行こうかな…」

 

マイホームの真の完成に向け、家に認識遮断の結界を張ってから森の入り口(・・・・・)に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔法の森の入り口には一軒の家が立っている。

幻想郷の住民たちでは全く分からない、しかし外来人にとっては手に取るようにわかる、そんな物が溢れかえったその一軒家は、"香霖堂"という看板を掲げて営業している古道具屋である。

 

幻想郷で唯一、結界の中と外両方の道具を扱う香霖堂は、一応外来人である俺にとってはもってこいの場所で、そこの店主、森近霖之助(もりちかりんのすけ)は頼めば色々なものを作ってくれる良い店主だそうだ。

魔法の森に入る時にチラッと見かけたその香霖堂に、俺は足を運んだ。

 

で、入り口。

 

「ホンットにグチャグチャしてるなここ…」

 

特に右側だ。

標識やテレビやタイヤや…とにかく俺の見知った道具が散乱していた。原作で聞いた香霖堂のイメージ以上だった。

階段の横に置いてあるたぬきの置物を横目に、俺は香霖堂へ入った。

 

「ごめんくださーー暗っ!」

 

中に入ってみると、夕方ではあるが昼間とは思えない暗さをしていた。

真っ暗というわけではないが何かと見え辛い。

 

「え〜っと…店主さんは…どこだ?」

 

「ここだよ、お客さん」

 

「うおっ」

 

目を凝らして薄暗い中を歩きながら探すと、声と共に目の前の椅子に座っている男性を見つけた。

 

「今灯りをつけるから待ってて」

 

「あ、はい」

 

そう言って店主さん…霖之助は奥へと火を取りに行った。

目が慣れてきたので周りを見回すと、いろいろな道具が所狭しと並べられていた。まぁ、そのほとんどは埃をかぶっているようだが。

……チラホラと俺の見知った外界の道具も見られる。

道具はここから仕入れると良さそうだ。

 

そう考えていると、いつの間にか戻ってきていた霖之助が灯をともしたところだった。

特別明るくなったわけではないが、何となくモダン?な室内になった。

 

「さて、君は初めて見る顔だね。僕は霖之助、ここの店主をやってる。よろしく」

 

「ああ、うん、俺は双也。よろしく霖之助」

 

軽く握手した。

霖之助は勘定をするっぽい所に移動し、話しかけてきた。

 

「それで双也。今日は何をお求めで?」

 

「あうん、えーっと、霖之助って頼めば大体のものは作ってくれるって聞いたことがあるんだけどさ」

 

「ああ、一応作れるよ。あんまり専門的な物は出来ないけどね」

 

霖之助は自嘲気味に言ったが、それでも十分だ。俺が作ってもらいたいのは全然専門的なものじゃないし。

 

「あのな、畳と襖を作ってもらいたいんだ」

 

「畳と襖か…それなら人里に行くと良いんじゃないかな。僕が作るよりも良い物を売ってくれると思うよ」

 

あ〜そっか、人里には畳屋もあるんだ。…じゃあ畳と襖はそっちで買おう。金は作れるし。それなら……

 

「じゃあ、便利そうな家具を作ってくれない?」

 

そう言うと、霖之助は悩んだ顔からパッと明るくなった。

 

「それなら出来るよ。どんな家具が良い?」

 

「そうだな…箪笥(たんす)、机、台所ーー」

 

「台所もかい!?」

 

なんかすごい驚かれた。

どんだけ凝ったものを想像してるんだろ?

まぁ凝ったものなら凝ったもので、俺にとってはプラスにしかならないから良いんだけどね。

 

「ああ、簡単な物でも良いけど…なんか工夫してくれるってんなら、そこは霖之助の良心に任せるよ」

 

「うぅ…そう言われたら凝って作るしかなくなるじゃないか…」

 

とまぁ少しおねだりしてみた。

金はたくさん出すんだから良いと思うんだよちょっとくらい。

 

「あとは…障子を八枚程…かな。とりあえずは」

 

「う〜ん…箪笥に机、台所に障子八枚…大仕事だね、いつ終わるか分からないよ?」

 

「それでも良いよ。気長に待つさ」

 

「そうかい」

 

霖之助は少し厳しそうな表情をしていたが、きっと彼ならやり遂げてくれる…と思う。

まぁ最終手段は"自分で作る"だ。

 

「勘定は…これ位だね」

 

そう言って見せてきた紙に書いてあった値段……おかしいな、0が六個ほど見える。さすがに引きつるぞコレは。

 

「…どんだけ凝った物作る気?」

 

「君がそうさせたんだろう。頼まれるからには良いものを作らせてもらうよ」

 

「しょうがないか…」

 

俺はポケットに手を突っ込み、金を出すフリをして札束を作り、取り出した。

 

「おお、今そんなに持ち合わせがあるのかい? てっきり後払いなのかと思っていたけど」

 

「いや、そんな大金は持ってないよ(・・・・・・)

 

「え? どういう事だい?」

 

「いや、そういう事なんだよ」

 

不思議そうにしている霖之助。

今は"そういう事"って事で納得してもらう。

能力で作った、なんて言ったら、商売で金を稼いでいるであろう霖之助が落ち込んでしまうかもしれない。

考えすぎかも知んないけども。

 

「じゃ、頼んだよ霖之助。出来の良いヤツを期待してるよ」

 

「まいど〜。また来なよ双也」

 

依頼も終わったので、取り敢えずマイホームに帰って寝よう。

硬い床に雑魚寝でも俺にとっては苦にならないし。野宿より全然良いし。

……こんな感覚になってしまった事が妙に悲しいな。

 

(ま、障子とか無くてもログハウスって言えばそれっぽいんだけどね)

 

自作マイホームに感想を抱きながら、俺は眠りについた。

 

 

 

 

 




東方香霖堂読むと、霖之助の間違いを訂正したくてウズウズしませんか?w

ではでは。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。