東方双神録   作:ぎんがぁ!

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…正直、今回のお話を書くのは悩みました。
登場人物の年齢的に。

ではどうぞー


第七十五話 人里へ

「ん…うん…?」

 

目を開く。俺は目にかかる光で目が覚めた。

障子のはまっていない窓の下で雑魚寝したため、光が直接当たるのだ。

しかもなんか妙に黄色い光だし……黄色い…光?

 

ガバッ「うっわ! 寝過ごした…ってかもう午後じゃねぇかっ!」

 

昨日建築に能力を使い過ぎて脳に負担をかけてしまったらしい。

俺が起きたのは日が傾いた頃…だいたい二時頃だった。

……うん、今日は眠れそうにないね。

 

「今日は買い出し行くつもりだったのに…いや、二時ならまだ歩いても間に合うだろ。今すぐ行こうそうしよう!」

 

俺はすぐに起き上がり、まだ足りていない生活用品の買い出しの為に人里に向けて森の中を歩き始めた。

少し能力を解除して歩いているが、最初よりは慣れたらしい。

まぁ、完全に能力を解いたらきっとすぐにまたクラクラし始めるだろうけど。

 

「あ、そう言えば場所聞いてないな。香霖堂で聞いてくか」

 

なんでこんな致命的な事忘れてたんだろ。場所も分からないのに行こうなんて考えるあたり俺も少し天然なのだろうか?

まいっか。

 

歩いていると香霖堂が見えてきた。

ガチャッとドアを開けて中に入ると、霖之助は椅子に座って本を読んでいた。

 

「おや、昨日ぶりだね双也。まだ何も出来ていないよ?」

 

「いや、それは分かってるんだけどさ、ちょっと人里の場所を聞きたくて」

 

そう言うと、霖之助は少し不思議そうな顔をした。

 

「…君、人里の場所も知らないのかい? もしかして外来人?」

 

「ん、俺が外来人だって言ってなかったっけ? つい最近…っていうか、昨日幻想郷に入ったばっかりなんだよ」

 

「昨日!? 昨日入ったばっかりだって!? よくそんなに平気で居られるね!?」

 

なんかすごい驚かれたんだけど…そんなに不思議な事なのか…?

ってよく考えてみれば、普通の人だったら異世界だって知った瞬間にパニクるな。

多分霖之助はそれに驚いているんだろう。

 

「で、どこなのさ」

 

「っ、ああごめん、あまりに意外だったものだからついね…」

 

霖之助はメガネをクイっと持ち上げながら椅子に座り直した。本をパタンと閉じて話し始める。

 

「人里はこの店の前の道をまっすぐ行けば辿り着けるよ。たくさんの人が居て賑わってるから行けばわかると思う」

 

「そっか、ありがとな霖之助。あと頼んだ物よろしく」

 

そう言い残してドアに手をかけると、霖之助に呼び止められた。

 

「あ、ちょっと待ってくれ! 一つ忠告しておく事がある!」

 

「忠告?」

 

「ああ、人里には妖怪たちも降りてきていてね。比較的温和な部類の妖怪たちなんだけど、最近の"大結界騒動"で少し荒れているんだ。だから買い物をしたらすぐに立ち去ると良い。万が一妖怪に絡まれても、謝ってすぐに逃げるんだ。間違っても立ち向かってはいけないよ」

 

と、少し真剣な表情で言ってきた。

まぁ俺の身を案じて言ってくれているのだろうけど、心配ない。俺は普通じゃないからね。

気持ちだけ受け取っておくとしよう。

 

「ああ分かった。ありがとな。じゃ」

 

俺は今度こそ香霖堂を出て道を進み始めた。

が、一つ気になる事があった。

 

「さっき、"最近の大結界騒動"って言ってたな…」

 

大結界ってのは、十中八九"博麗大結界"の事だろう。

この幻想郷を現実と幻想の境界で強固に隔離している巨大な結界。俺が冥界へ行くのを阻んだ結界だ。

てっきり幻想郷が出来た時にはもう張られてると思ってたけど…つい最近の事なのか?

 

「う〜ん…原作での博麗大結界っていつ張られたんだっけ? 全然覚えてないな…」

 

転生者として少し不甲斐なくなってきた。

転生した利点を完全に失ってしまってるし。

まぁ原作を覚えてなくても生きる事はできる。

そもそも大まかな異変の内容は覚えてるし、どうにでもなるだろう。

 

「んで、反対派の妖怪が荒れてるって事か」

 

荒れてる原因はきっと、幻想郷が隔離されたからなんだろう。

全員に確認とって行動するなんて面倒な事紫はしないし、多分独断でやったんだろうな。

それが妖怪と人間の共存を考えてやった事だとしても、理解されない限りはきっと反対意見は出続ける。

 

……まぁそうなるのが分かってたから、紫と"約束"したんだけどな。

 

「天罰神の仕事…ね…」

 

……今はまだ、どうにもできないか。

 

俺は人里への足を早めた。

 

 

 

 

 

 

 

「…ホントに賑わってるな…」

 

しばらく歩いていくと、和式の建物が立ち並ぶところが見えてきた。

道にはたくさんの人が行き交い、活気に満ちている。

そして、妖力を感じる人もチラホラと見てとれた。

 

「…まぁ、イラついて悪さしてないなら良いか。俺は買い出しだな」

 

ここは人も妖怪も暮らす幻想郷。

悪さをしてないなら俺の出番はないのだ。

さっさと買い出しを済ませよう。

 

「必要なのは……襖と障子、食材、あとー…鍋とかの道具か」

 

他にも必要な物はありそうだが、まぁそのうち思い出すだろう。

立ち並ぶ店を眺めながら買い出しを始めた。

 

 

 

 

 

 

 

〜???side〜

 

寺子屋からの帰り道。

私はいつもの帰路につきながら、今晩の夕食の事を考えていた。

昨日はごく普通の味噌汁と野菜、そしてご飯。

一人暮らしだし、大食漢でもないので簡単に作った質素なものを食べていたのだが……

 

「そろそろ…別の物も食べたくなってきたな…」

 

教師という役職柄、子供達には"贅沢をし過ぎてはいけない"と教えているが、私も人間だ。

あまり質素な物ばかりでは物足りなくなってしまう。

たまには奮発してみようか。

 

私は今日の晩御飯の食材を調達すべく、帰り道とは少し外れたところにある八百屋に寄っていった。

 

「コレと、コレと…あ、あとアレもだ。その大根も」

 

八百屋に並んでいる食材を的確に見分けて選ぶ。

一人暮らしになってから身につけた技能の一つだ。

全て選び終わると、勘定をしている店主が声をかけてきた。

 

「いやぁ先生! いつも娘がお世話になってます! せっかくですから、今回は少し安くしておきますよ!」

 

「おお、それはありがたい。じゃあ頼むよ」

 

この八百屋は、私が寺子屋で教えている女の子の家なのだ。

だからありがたい事に、たまにこうして値段を安くしてくれる事があるのだ。

こういう日は運が良い、と私の中ではいつの間にか運勢診断になってしまっている。だから今日は運の良い日だ。

気分を良くしながら再び家に帰ろうとしたのだが…

 

…浮かれていたせいで、少々危険を呼び寄せてしまった。

 

ドンッ

 

「あ?」

 

周りが見えていなかったのか、前を歩いてきた三人組の一人にぶつかってしまった。

たまにある事ではあるが、こういう時は謝らなければ。

 

「済まない、少し周りを見ていなかった、気をつけるよ」

 

そう言って立ち去ろうとしたのだが…ぶつかった男に、肩を掴まれた。

 

「待てよ、ぶつかっておいてそれだけか? もう少し詫びって物があるんじゃねぇの?」

 

振り向かされ、男の姿がよく見えた。牙が鋭く光っており、耳もとんがっている。

……よりにもよって、妖怪にぶつかってしまったらしい。

 

「俺たち今イライラしてたんだよねぇ。遊郭にでも行こうかって三人で話してたんだけどよ、ちょうど良いからアンタが相手してくれよ」

 

「おお、それが良いな。それを詫びって事にするなら許してやっても良いぜ?」

 

「………………」

 

……少々マズイ状況になった。

満月の日ならば良かった(・・・・・・・・・・・)かも知れないが、あいにく今日はそうではない。

人間の私では妖怪には敵いようがないのだ。

横目で見る限り、周りの通行人たちもここを避けて行っている。

……懸命な判断ではあるな…。

 

「いや、本当に悪かった。許してくれ」

 

「ダメだね。さぁこっち来いよーー」

 

ズドドドッ

 

妖怪が私に手を伸ばそうとした直後、目の前を何かが横切った。

通り過ぎていった方向を見ると……

………何本もの包丁が木の柱に突き刺さっていた。

 

「おいおい、荒れてるからって八つ当たりはいけないな」

 

飛んできた方向には、フード付きの黒い服を着た一人の少年がこちらを向いて立っていた。

 

 

 

 

 




後半の視点人物は……誰か分かりますよね?

余談ですけど今日誕生日! もう少しで成人かぁ…学生の時間って短いですねw

ではでは。
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