東方双神録   作:ぎんがぁ!

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柊華は一応美人な部類って設定です。

ってかいつの間にかUA30000超えてた。
みなさんご愛読ありがとうございます! これからもこの双神録と私をよろしくお願いします!

ではどうぞ!


第七十八話 悪い予感

夢を、見ていた。

 

 

白くて、暖かい光の中に立っている俺。

その周りはずっと先まで暗闇で、小さな光がポツポツと揺れている。

 

 

その光はだんだんと近づいてきて、俺の立つ光の中に溶ける。でも溶けるのと一緒に、俺の周りの光からも少しずつ光が散って行った。

それが何となく嫌で、それを追いかけて手を伸ばす。

でも、触れる前にはフッと消えてしまって掴めなかった。

 

 

光が近づき、溶けていく。その光も散っていく。

それが繰り返されていくと、気付けば俺の周りの光は、最初よりも小さくなっていた。

 

 

…………イヤだ。

 

 

ふと、そんな言葉が浮かび上がる。

小さくなっていく光を見て、どんどん気持ちが強くなっていく。

 

 

 

それを見ていると、暗闇の方に立つ"人"を見つけた。

 

 

 

気が付いた時には、その人は腕をふるって周りの光を散らしていた(・・・・・・・・・・・)

 

 

 

 

ーーやめろ

 

 

 

 

光を散らし、掻き消して、少しずつ近づいてくる。

 

 

 

 

ーーやめろよ

 

 

 

 

その人が近づいてくるのに比例して、周りから溶けていく光もなくなっていた。

 

 

 

 

ーーやめろって

 

 

 

 

手が勢いを増し、散らす光の量も多くなっていく。近づく速度はますます早くなった。

 

 

 

 

ーーやめてくれ

 

 

 

 

遂に、その人の手が俺に触れた。その瞬間

 

 

残っていた僅かな光もブワッと消えた。

 

 

暗闇の中、顔を上げるその人。

見るのが怖くて、顔を背けたくなる。

でも体が動かない。声も出ない。

 

少しずつ輪郭が見えてくる。

髪、耳、頰、鼻、顎。

顔を上げ、俺を見つめたその人は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

不気味に笑った、俺だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ!! やめろォ!!」

 

「ひゃぁああ!?」

 

起き上がった俺の視界に入ってきたのは、眩しい太陽の光といつもの俺の部屋。

そして…………驚いた表情をした柊華。

 

「ご、ゴメンなさいっ! あんまり柔らかくて気持ちよかったから…止まんなくなっちゃって…」

 

と、寝ぼけた顔を向けた俺に謝ってくる彼女。

いやいや、なんでお前がここに居る。

 

「柊華…なんでお前がここに居るんだよ? ここ俺の家なんだけど? まだまだ早朝なんだけど?」

 

「えっ? えっと…早くに起きちゃったから双也の家に来てみたんだけど、そしたらあなたまだ寝てたのよ。それで…顔覗き込んだら妙に頰が柔らかそうだったからつついてて…止まんなくなっちゃって…」

 

ああ、開幕ゴメンなさいはそう言う理由か。

"やめろ"って寝言みたいなものだったんだけどな、偶然にもタイミングバッチリだった訳か。

 

…………はて、なんで"やめろ"なんて叫んだんだっけ?

なんかものすごく怖い夢を見た気がするんだけど……まぁいいか。

 

 

っていうか

 

 

「んなことより柊華、早起きしたからっていきなり押しかけてくるってどういう事だよ」

 

「え? 友達ならそれくらいするかなと思って…」

 

「いくら友達でも早朝に押しかけるヤツなんていねぇよ」

 

「そうなの!?」

 

鳩が豆鉄砲を食ったように驚愕する柊華。

これくらい常識の範囲内だと思うんだけど…?

…まぁ、柊華は今まで"友達"がいなかったから、どこまでのことをして良いのか分からなかったのかもな。

 

「うぅ〜ん…はぁ、取り敢えず、朝飯にするか」

 

軽く伸びをして、名残惜しくも布団を出る。

…ん? いい匂いがするな。

 

「あ、朝飯なら私が作っておいたわ。ついでだったから」

 

おお、柊華ってここまでするんだ。理由があるとはいえ流石に面食らった。

まぁ作ってもらったなら好都ご……ありがたい。

湯呑みを二つ棚から取り出してお茶を淹れ、柊華の前に置くのと一緒に俺も椅子に座った。

目玉焼きを作ってくれたらしく、早速食べ始めた。

……やっぱ美味え。

 

「〜♪」

 

「…? なんだよ柊華」

 

「いやぁ、友達ってこんなに良いものなんだなって思ってね♪」

 

「…そうだな」

 

柊華の言葉に少しズキッとした。

理由はきっと、その言葉にどれだけの意味が込められてるのか分かるからだろう。

でも、当の本人にはそんな気はサラサラ無いらしい。

いい笑顔をしている。

 

柊華と友達になってから、大体一週間ほど経過した。

あの後、暗くなった頃に柊華は泣き止んで、疲れたのかそのまま寝てしまったのだ。

置いてくことなんて流石に出来ないので、博麗神社まで運んで(もちろん瞬歩)布団に入れてあげた。

 

その日からは柊華と過ごす日が多くなった。

というのも、毎日のように…というか実際毎日彼女が会いに来るからである。

まぁ柊華と居て楽しいってのは嘘じゃないし別に困ってもいないのだが、博麗の巫女としてはそれでいいんだろうか…?

 

疑問に思いつつも朝飯を食べ終え、いつもの服に着替える。

今は懐かしき学校の制服に、映姫にもらった黒いガウン。

今更だがこの裾の彼岸花、中々にオシャレだと思うんだけど…どうだろうか?

 

「それで双也! 今日は何する??」

 

「ん〜…そうだな、特には何もーー

 

 

 

 

シャララララー…・ン

 

 

 

 

ーー先に仕事だな」

 

そう言うと、見るからにガッカリした表情を浮かべる柊華。

仕方ないじゃんか、慧音に頼まれたんだからさ。

 

「んじゃ行くけど……柊華も来るか…?」

 

「………いや、私は遠慮するわ。ここで待ってる」

 

「…そっか」

 

やはり、今でも人里は苦手なようだ。

俺と言う友達が出来たとは言っても、畏怖の視線が無くなったわけではない。

考えてみれば、当たり前のことだ。

 

……いつか、柊華が人里でも笑ってられる日が来ることを願おう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さーて、朝っぱらから騒いでるバカはどこだ?」

 

瞬歩で人里近くまで行き、鈴の鳴らされた場所の探知を始める。

………見つかった。数は大体四体ほどだ。

 

「さっさと終わらせないとドヤされるな」

 

俺は気持ち急いで向かった。が……

 

「ッ! おいお前ら! 行くぞ!」

 

「う、おお!」

 

「………?」

 

その場所にたどり着くと、妖怪たちは俺に気付いた途端逃げて行ったのだ。

守護者になって日は浅いけれども、こんな事は初めてだった。

そもそも、俺を見て逃げ出すんだったら里に降りてきてる他の妖怪達は……

 

「…!?」

 

改めて、里の中を見回してみた。するとどういう訳か妖怪が見つからなかった(・・・・・・・・・・・)

俺の視界に居なかっただけとか、そういうわけじゃない。

人里から妖怪がいなくなっていたのだ(・・・・・・・・・・・・・)

 

(あの時の違和感は妖怪が少なくなっていたからか…)

 

よく思い返せば、ここに訪れる度にだんだんと感じる妖力も少なくなっていったように思う。

多少少なくなっただけなら"降りてくる妖怪が減ったのかな?"で済む話ではあるが、居なくなったのは異常である。

…誰かにに聞いてみよう。

 

「あの、ちょっといいかな?」

 

「はい? あ、守護者様。何ですか?」

 

「なんか妖怪を全然見かけないんだけど、何かあった?」

 

問うと、その若い男性は首をかしげ、少しばかり考え込んだ。

 

「…いえ、特には無いと思います。守護者様を恐れて降りてこなくなったんじゃないですか?」

 

と冗談交じりに言われた。

なるほど、それなら問題は無いだろうが、それだけでは妖怪が居なくなるには理由が足りない気がする。

……何となく、嫌な予感がするのだ。

 

(…まぁ、暴れる妖怪が居なくなったなら…いい…のか…?)

 

現状ではどうしようもない、と心の中で妥協する。

何か起こっても即座に対応すれば良いだけの話だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

その慢心が、取り返しの付かない事に繋がるなんて、今の俺には想像すら出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「"妖怪の喪失"…ねぇ…」

 

机に頬杖をつき、考え込んだ様子の柊華。

家に帰ってきた俺が早速彼女に相談してみたのだ。

 

「なんか心当たりないか? "コレは〜の前兆だ"とか」

 

「無いわよそんなの。自然現象じゃないんだから。ん〜でも、確かに気になるわね…」

 

「現状じゃ対処できないって思ってるんだけどさ」

 

原因は、妖怪退治の専門家たる柊華にも分からないらしい。

こうなると相当手詰まりだ。いよいよどうしようもなくなってきた。

 

 

…そう考えていたのは彼女も同じようで。

 

 

「……そうねぇ…こうも手がかりが無いとお手上げね。異変かどうかも分からないし。何かあるまで待つしか無いんじゃない?」

 

「だよなぁ…」

 

三人揃えば文殊の知恵と言うが、やはり俺たち二人では上手くいかないらしい。仕方ない、と諦めることにした。

 

「それより双也! 帰ってきたんだから遊びに行きましょ! お花畑なんてどうかしら!?」

 

「ん〜別にいいけど、神社空けて大丈夫なのか?」

 

「特別強く結界張ったから大丈夫よ。私を嘗めないで?」

 

「いやそういう問題じゃないんだけどな」

 

今日も変わらず、"寂しがりやな友達"と過ごすことになりそうだ。

 

 

 

 

 




ボソリ(誰か柊華の絵描いてくれる人居ないかな…

ではでは。

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