東方双神録   作:ぎんがぁ!

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また少しばかりシリアスです。

あれ、おっかしいなぁ…書き始めた頃はこんな重い物語にするつもり無かったんだけどなぁ…?

ではどぞっ!


第七十九話 "大親友"へ

「ふんふふ〜ん♪ ふ〜ん♪」

 

ある日の博麗神社。

巫女として朝早くからする事と言えば、境内や庭の掃き掃除だ。

早朝も早朝、今は四時くらいだと思うが、私は鼻歌交じりに掃き掃除をしていた。

 

「は〜やっく行っきたっいなっと!」

 

「ずいぶんご機嫌なのね柊華」

 

「うわぁああ!?」

 

突然後ろから声をかけられた。

完全に自分の世界に入ってたからかなり驚いたわ…。

 

っていうか! 何回言っても突然現れるのをやめない紫色! 良い加減にしないと本気でしばくわよ!」

 

「全部声に出てるわよ柊華」

 

「あらそう? 好都合じゃない。今度同じ風に現れたらいろいろ封印してやるからね」

 

「え!? そこまでしなくてもーー」

 

「するからね」

 

「いやだからーー」

 

「するからね」

 

「ホントに勘弁ーー」

 

「するからね」

 

「………はい」

 

全く、神出鬼没にも程があるわよ。

どうせあのお師匠様ってのにもやってたんでしょうね…。

ホント、可哀想だわ。

 

『は…はふ…ぶぇっくしょいっ! …んあー? まだ四時じゃねぇかよー。誰だよ噂してんの…』←お師匠様

 

「って、そういえば紫に会うの久しぶりな気がするわね」

 

最近脅かされた記憶がなかった私は、少し怯えた表情をしている紫に言った。

 

「…そうね。大体一ヶ月振りかしら?」

 

「何してたの?」

 

「ちょっと探し物をね」

 

紫は口元を扇子で隠しながら言った。

そういう仕草するから胡散臭いって言われるんでしょうが…。

まぁ、コイツなら幻想郷に害する物なんて呼び寄せるわけはないし、放っておいても問題はない。

そういうところだけは信頼しているのだ。

…敵になったら容赦しないけどね。

 

「話を戻すけど、なぜそんなに機嫌が良いのかしら? 前会った時なんて、境内の掃除放ったらかしてお茶啜ってたくせに」

 

本当に不思議に思っているかのような声音で聞いてくる紫。

そういえば、前会った時はまだ私"一人"だったわね。知らないのも無理はないか。

 

「仕事全部終わらせて大親友(・・・)のところに行くつもりだからよ」

 

「……………え? だいしんゆう?」

 

「そ、大親友」

 

「…………ええっ!? と、柊華にっ、大親友!?!?」

 

私ですら見たこと無い驚愕の表情を向けられた。

なんか失礼ね。本気で驚いた表情なもんだから更にイラつくわ。

 

「柊華、今すぐ案内しなさい。あなたに見合う親友かどうか品定めしてあげるわ」

 

「イヤよ。あなたに品定めしてもらう義理ないし。そもそもそんな立場じゃないでしょ」

 

その台詞は本来親が子に言う言葉のはずだ。

 

「良いから案内しなさい! あなたの場合は"普通の友達よりも意味が重い"でしょう!」

 

「!」

 

….紫、私が人里で向けられている恐怖のこと、知ってたんだ…。

って事は、普段私とからかったように接していたのは、私を気遣って?

……そう思うと、少しは許せるわね、少しは…。

 

「あら? 私は柊華の反応が面白いからからかってるだけよ?」

 

「…心を読むのもやめなさいって何回も言ってるわよね?」

 

「そんな事覚妖怪じゃないんだから出来ないわよ。私の友達もとても顔に出やすい人だったから、慣れてるってだけよ」

 

「じゃあそれを止めてちょうだい」

 

「もう癖だから無理ね」

 

「………………」

 

…やっぱり許せないかも。

からかい文句に加えてこの見下した表情がフツフツと私の怒りを誘ってくる。

 

と言うより、その友達…多分お師匠様の事だろうけど、その人はイライラしなかったのだろうか?

少なくとも、その人と同じくらい私が紫と一緒に居たら、ほぼ間違いなく一度はコイツをボコボコにしてる。

しょうもない理由だけど、その人には頭が下がる。

 

「まぁそれはともかく、ちゃんと案内してくれるかしら?」

 

「はぁ…しょうがないわね…良いわよ、朝ごはん食べたら行きましょ。どうせ断っても突き止めるんでしょ?」

 

「よく分かってるじゃない。じゃあ中で待ってるわね」

 

境内に入っていく紫をジト目で睨みながら、沈んだ気分を取り戻すべく心を切り替えた。

 

…ああ、やっぱり友達って良いな♪

 

やっぱり、彼に出会えて本当に良かったと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、どこに居るのよその大親友は?」

 

彼の家に行く途中、スキマから上半身だけ出した紫が問いかけてきた。

随分興味持ってるのね。

 

「魔法の森の奥地よ。静かな場所が良いらしくてね」

 

「魔法の森…じゃあ、もしかして魔法使いなの?」

 

あー、あそこに住んでるとそういうイメージが出てくるのか。

でも…使えないはずである。

霊力は馬鹿デカイけど、魔力は感じないし。

 

「いえ、魔法は使えないはずよ。霊力は冗談みたいにデカイけど」

 

「あ、もしかして前に言ってた"不思議な外来人"?」

 

「ああそうそう、その人よ」

 

「ふ〜ん…」

 

そういえば紫にも話していた。

その時は警戒していたようだけど、一ヶ月問題は起こっていないし危険性は皆無と言って差し支えないはず。

 

しばらく歩き、魔法の森に少し入った頃、紫は心配そうな声音で話しかけてきた。

 

「…ねぇ柊華、どうしてあなたは…その人と友達になったの?」

 

「…え?」

 

一瞬、何を言っているのか分からなかった。

しかし問いかける紫の目を見て、この話が真剣な物なのだと分かった。

彼と友達になった理由……そんなの…

 

 

「彼が、私と友達になりたいって…私を受け入れるって…言ってくれたからよ」

 

 

「………………」

 

「昔から私を見てるあなたなら知ってるでしょ? 私は、里の人達に怖がられてた。小さい頃から巫女としての仕事をしてたから、親しい人なんて居なかったのよ。…いつも一人、神社の庭で蹴鞠でもして遊んでたわ」

 

 

珍しく黙り込んで聞く紫。

真剣に聞いてくれるその態度も少しばかり嬉しかった。

 

 

「小さい頃でも、それは寂しかった。寂しくて悲しくて、何で私がこんな目にって何度も思ったわ。耐えられなくて夜泣いた時もあった。そして時が過ぎて、大人に近付いた頃、私は、私を受け入れることにしたの」

 

 

第十八代博麗の巫女、博麗柊華として、例え人に怖がられようとも、一人になってしまったとしても、それが私なんだと、そういう存在なんだと無理矢理受け入れることで、心を強く保つ事にした。

でなければ……寂しさで、壊れてしまいそうだったから。

 

 

「でも、そうやって空元気を振りまいてた私を救ってくれたのがその大親友。彼は私の寂しさとか、悲しみとか、全部分かってくれてた。"心まで強くなくていい"って……言ってくれたの」

 

 

あの時の彼の言葉は全てが優しくて、心が安らいで。

でも、私を分かってくれる彼からも悲しみが伝わってくる気がして、ああ同じなんだな、と安心したのを覚えている。

 

 

「だから私は、その人の事…大好きなのよ」

 

「………………」

 

最後まで紫は黙っていた。

でも、横目で見た彼女の顔がクスリと笑ったのは気のせいではないはず。

紫もきっと、私の事を心配する事も無くなるだろう。

 

「あ、一応言っておくけど、今の"大好き"って親友としてよ? 私は恋人か友達かどっちか一人が居ればそれでいいし」

 

「今の流れで言う台詞じゃ無いわね」

 

「言わなかったらからかうのに使う気でしょ」

 

「あら、バレてたの?」

 

「夢想封印喰らいたい?」

 

「それは困るわねぇ♪」

 

なんて、"やってみろ"って言うような表情で言われても説得力がない。

封印ならまだしも、力技じゃ足りない事ぐらい分かってるわよ。

本気で倒す気ならちゃんと作戦練るし。

 

…まぁ、軽口を言い合える仲も"友達"の内…なのかな。

 

「あ、見えてきたわ」

 

「ふ〜ん…結構立派な家ね」

 

昔話をしていたら木造の一軒家が見えてきた。

正しく和式というような家で、窓は障子で分けられている。

骨組みである木にはなぜか繋ぎ目が見えないその家は、私の大好きな大親友が住んでいる家である。

 

いつものように、ノックもせずに引き戸を開けて中に入った。

 

「おっはよー我が大親友ぅー! 今日は知り合い連れてきたわよ!」

 

そう言い放つと、障子の向こうから声が聞こえてきた。

 

「ん〜? おお柊華か。上がって良いぞー」

 

「♪ じゃ遠慮なく♪」

 

紫はスキマから出て、私の後に付いてくる。

障子をバッと開けると、双也はちょうど着替え終わったところだった。

 

「ちょうどいいタイミングだったようね」

 

「ああ、なんか四時ごろにくしゃみが出て、そっから眠れなくなって…んで知り合いってのは………」

 

「…?」

 

顔を上げた双也は言葉の途中でなぜか止まってしまった。

…あ、私が紹介するの待ってるのかしら?

 

「あーっと、この人が私の知り合いの八雲………??」

 

後ろに立っていた紫に意識を向けると、こちらも固まって動いていなかった。

………おまけに妖力まで漏れている。

 

「ど、どうしたのよ二人とも…」

 

「…ひ」

 

「…ば」

 

?? 二人は固まったままで"ひ"とか"ば"とか意味のわからない言葉を発している。

そんなお粗末な頭をしている二人では無かったはずだけど?

 

「何をーー!!?」

 

そう思ったのも束の間、私は二人の霊力と妖力が急激に上昇するのを感じ、とっさに強力な結界を張った。

 

「ひ、飛行虫ネスト!!!」

 

「縛道の八十一『断空』!!!」

 

 

 

 

その日、なぜか技を放った二人の所為で、魔法の森の一角が吹き飛んだのだった。

 

 

 

 

 




色々詰め込んだら、再会が一話では収まらなくなってしまいました…。
この章も長くなりそうですね。

ではでは。
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