東方双神録   作:ぎんがぁ!

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サブタイトルがいかにもって感じになっちゃってますねw

ではどうぞーっ


第八十三話 掌の上

夜の闇に沈んだ人里の、ある一角にある広場。

そこに対峙しているのは人里の守護者、双也。

そして幻想郷に仇為す大妖怪、迦禍丸である。

 

迦禍丸が双也に向けた大鎌を振り降ろすと、彼の周囲に数体の妖怪が現れた。

彼らは皆、双也に向けて気味の悪い笑みを浮かべている。

 

「…なるほど。能力で妖怪達を隠してたか」

 

「ご名答だ。まぁ何体ストックがいるのかは教えないが…な!」

 

言葉と同時に迦禍丸の周囲にいた妖怪たちが再び消え、彼は大鎌を構えて双也に斬りかかった。

対して双也は…

 

「流石に…俺を嘗めすぎだ!」

 

両手に結界刃を作り出し、それぞれ旋空と風刃を放った。

それらは真っ直ぐ(旋空は曲がって飛んでいく技だが)迦禍丸に向かい、切り裂かんと迫った。

 

「おめぇこそな」

 

しかし迦禍丸は驚く様子もなく、むしろ予想通りと言った表情で鎌を構えた。

彼は鎌で旋空を弾き、その回転と反動で風刃を避け、そのままの勢いで双也に迫り、大振りに振り抜いた。

 

「オラァ!!」

 

「ッ!!!」

 

予想の遥か上の動きをした彼に双也は驚き、反応を遅らせてしまった。

双也は鎌の一振りを後ろに飛びながら避け、不安定ながらも後方に着地した。

……その様子を見た迦禍丸がボソリと一言。

 

「ああ、その辺にも居る(・・)なぁ」

 

「…!」

 

その一言を聞き逃さなかった双也は、とっさに飛び退こうとするがあえなく、隠れている妖怪達の斬撃を食らってしまった。

攻撃を受けながらも移動した場所で、彼は苦々しい顔をしていた。

 

「なるほど…どこにでもトラップがあるって感じか…中々に策士だな」

 

「へっ、お褒めに預かり光栄…と、おあつらえ向きな言葉を送っておくぜ。こんな幻想郷に味方する奴に褒められても、全く反吐しか出ねぇがなぁ」

 

そう言いながら道に唾を吐く迦禍丸。

彼はまるで本当に嫌なモノを見ているような表情をしていた。

 

その様子を見て、双也にはある疑問が湧き上がってきた。

 

「…なぁ、なんでお前は結界に隔離する事を拒んでるんだ?」

 

双也の純粋な問いに、迦禍丸はさらに顔を歪ませて答えた。

 

「ああ!? そんなの"必要もねぇのに俺たちを閉じ込めたから"に決まってんじゃねぇか!!

俺たちは妖怪!! 人を食い、生き永らえる存在だ!! それをあの紫とかいう妖怪は…人と妖怪の共存? はっ、なんだそれ、フザケてんのか? テメェの都合に合わせて俺らをこの地に閉じ込め、暴れ過ぎれば征伐するだと?

アイツはァ!! この大結界はァ!! 俺たち妖怪を根本から否定する最悪なモノなんだよ!!!」

 

再び、今度は凄まじい剣幕を放って彼は双也に斬りかかった。

先程とは比べ物にならない程の速度で双也に肉薄する。

 

双也は辛うじて結界刃で受け止めた。

 

(迦禍丸自身の攻撃はまだなんとかできる。問題は隠れてる妖怪達だ。攻撃するときの殺気をちゃんと感じ分けないと…負ける)

 

周りにも確かな注意を向けながら、迦禍丸の攻撃を捌いていった。

 

「オラオラオラァ!! そんなもんか守護者様よぉ!!」

 

先ほどの会話で火がついたのか、迦禍丸の攻撃はどんどん激しさを増していった。

鎌の大振りな一撃、斬撃の合間に挟む長い柄での殴打、妖力で作った短剣での攻撃。

 

鎌の回転を使った攻撃と、妖力による突発的な攻撃に加え、時折斬りかかってくる妖怪達により双也は翻弄されていた。

 

そして双也は少しずつ、彼の攻撃に反応できなくなっていき、鎌の刃が腰辺りを掠めた。…シャンッと音がした。

 

「っ! 鈴が!」

 

「余所見すんなぁ!!」

 

掠った刃は、双也が身につけていた鈴を斬り裂いた。

その事に気を取られた双也に、迦禍丸は容赦なく追撃する。

 

「はははは! そこだぁ!!」

 

遂に迦禍丸の鎌による一撃が双也に入った。

結界刃で何とか防御しながらも吹き飛ぶ双也。

彼はボロボロになった身体で何とか着地した。

 

「息抜きしてんじゃねぇよ!!」

 

そんな大きな隙を迦禍丸が見逃すはずはなく、彼が初めのように手を振り下ろすと、例の如く双也の頭上に大量の剣が現れ、降り注いだ。

 

しかし、こんな状況にも関わらず双也の口元はつり上がっていた。

 

「…コレを待ってた!

特式三十七番『跳弾反吊星(ちょうだんはんちょうせい)』!」

 

彼が宣言すると、頭上に敷布団のような物が出現し、周りの民家に五つ支点を張った。

降り注ぐ剣達は当然その敷布団に阻まれるが……それだけではなかった。

 

「!? なんだと!?」

 

「これが狙い…お返しだっ!」

 

剣達は阻まれるだけには留まらず、ゴムのように反射した敷布団によって打ち上げられ、そのまま迦禍丸に向かって飛んで行ったのだ。

 

彼はとっさに鎌を振るっていくつかの剣は掻き消したが、多くの剣は消える事なく、彼に襲い掛かった。

 

跳弾反吊星は、縛道の三十七『吊星』の特式である。

普通は受け止めるだけの吊星に弾力を持たせ、止めた物を弾きかえす。

と同時に、持ち主に帰るよう能力で繋ぎとめる事で、防御と攻撃を一体化させた特式鬼道なのだ。

 

対処仕切れなかった迦禍丸の身体には、いくつもの剣が突き刺さっていた。

 

「ガフッ…やるじゃねぇか守護者様よぉ…こんな返し方をされたのは初めてだぜ…」

 

そう言って苦々しい笑みを浮かべる迦禍丸。

 

傷こそないが血が枯渇してきた双也。

傷をたくさん作って満足に動けない迦禍丸。

…戦況は互角だった。

 

(ちっ、鈴が壊れちまったから救援とかに行けない…他で襲われたりしてたら最悪だな…)

 

双也は迦禍丸に意識を向けながら、そんな事を考えていた。

迦禍丸が大妖怪である限り、それに付き従う弱い妖怪たちも少なからずいるはず。

守る対象を持つ双也はそれも気にしながら戦わなければならなかった。

 

 

 

 

 

ーー故に、周囲の殺気の感知が遅れてしまった。

 

 

 

 

「……ッ!!!?」

 

彼が気付いた時には、もう既に殺気が目の前まで来ていた。

結界刃を滑り込ませる隙も、避ける隙も無い。

意識を拡散していた所為で、むしろ周囲を意識できていなかったのだ。

 

「ひゃはははは!! 終わりだぁ!!」

 

勝利を確信した迦禍丸の笑い声がこだました。

双也自身も痛みを覚悟し、目を背ける。

迦禍丸の勝利は目前だった。

 

 

 

 

 

 

 

ーーそう、目前ではあった(・・・・・・・)

 

 

 

 

 

 

ズドドドドドドーー……・・

 

刹那、双也の周囲に何かが降り注ぐ音がした。

否、降り注ぐだけではない。降り注いで、刺さる(・・・)音。

 

「…!」

 

双也が目を開けるとそこには、姿を現した妖怪達を貫いて、地面に無数に突き刺さった針、そしてそれが解けて札になる様子だった。

 

そして、目の前にフワリと降り立つ赤と白の巫女服。

 

「"お師匠様"がだらしないじゃない、双也」

 

「柊華……」

 

降り立ったのは現博麗の巫女、博麗柊華だった。

指の間に数本の針を持ち、もう片方の手には札が握られている。柊華の戦闘スタイルだった。

双也は立ち上がりながら彼女に話しかけた。

 

「サンキュー柊華。助かった」

 

「ふふん♪ 人を助けるのが私の役目だしね♪」

 

軽い口調をしながらも周囲への意識は欠かない柊華の姿勢に、双也は頼もしさを覚えていた。

 

「お前、こいつらをどうやって見破ったんだ?」

 

「勘よ勘。私の能力忘れた?」

 

ふと思った双也の疑問に答える柊華。

双也はああ…と思い出すと、改めて彼女の強さを再確認するのであった。

 

「さて、私の勘だと結構な数の妖怪が潜んでいそうね」

 

「ああ。姿はあの大妖怪の能力で隠れてるが、かなりの量がいると思った方がいい。……いけるか柊華?」

 

「誰に言ってるの。私は歴代最強の博麗の巫女、博麗柊華よ? 姿が見えないくらいじゃ問題にならないわ」

 

「…そうか」

 

その言葉に、双也は自然と笑みを零していた。

これほどまでに頼もしい助っ人、戦力的には圧倒的に有利だった。

が、柊華はそんな中でもある不安を抱いていた。

 

(私と双也、ただの妖怪が束になってかかってきても負ける気はしない布陣だけれど…何かしら、この嫌な予感(・・・・)…寒気がするわね…)

 

嫌な予感。

それは他人にとっては信憑性など皆無に等しいモノだが、柊華にとってはそれ以上の意味を持っている。

それは彼女の能力によって的中する確率があるという事である。未来視ではない為何が起こるのかは彼女には分からなかったが、確かにそんな予感を感じていた。

しかし、今は戦いの最中である。

柊華はその不安を一頻り振り払い、大量のお札を空へと放った。

 

宙に舞い、散らばった札が青い輝きを放ち、柊華の目の前へ集まっていく。形作られていたのはーー霊力を纏った太刀。

 

柊華は目の前に顕現した刀を手に取り、針と刀を構えて臨戦態勢に入った。

 

「じゃ、行くわよ双也。見えない妖怪達は私に任せて、あなたはあの大妖怪をお願い!」

 

「了解!」

 

二人は返事とともに駆け出した。

双也は迦禍丸へ、柊華は妖怪達の方へ。

 

「助けが来たからって調子に乗んなよっ!!」

 

「どうかな。少なくとも…今負ける気はしない!!」

 

力の篭った双也の斬撃。

迦禍丸は顔を顰めながらも捌き続ける。

時折短剣での牽制や鎌の攻撃も繰り出してくるが、双也はなんとか見切りながら攻め続けた。

 

「そこストップ双也!!」

 

「っ!」

 

攻防の中、時折飛んでくる柊華の声。

双也が急停止すると直後に数本の針が彼の目の前をよぎり、隠れていた妖怪たちを命中するのであった。

 

「ちっ! やっぱウゼェ巫女だなぁ!」

 

その度に怒りの声を上げ、迦禍丸は攻撃を激しくしていった。

……双也との攻防は拮抗していた。

 

 

柊華の方では…

 

 

「ほらほら! 隠れてないで出てきなさいよ!!」

 

お札や針を投げ、時折札を重ねて作られた刀で斬りつけたりしながら、彼女は舞うように戦っていた。

 

姿が見えるかどうかなど、彼女の前ではまるで関係なかった。

 

「そこ!」

 

「ぐわぁああ!!」

 

能力で的中させ、次々と妖怪たちを屠っていく。

霊力を纏った刀や札の数々は、いとも容易く妖怪の身体を断ち切り、貫いていく。

 

その威力は、時折混じっている中〜大妖怪をも圧倒するレベルであった。

 

そうして次々倒していく中でも、しかし彼女の嫌な予感は消えてはくれなかった。

 

(何が…起ころうとしてるの…?)

 

そうしてお互い戦うことしばらくーー

 

 

 

 

 

ーー広場の中心あたりで双也と柊華は背を合わせて息を上げていた。

 

 

 

 

 

「ハァ…ハァ…切りが、無いわね…」

 

「ハァッ、ハァッ、コッチもどうにか…なりそうなんだけどな…」

 

柊華は見えない妖怪を相手に舞い続け、双也は迦禍丸との戦いで決着をつけられずにいた。

迦禍丸自身の見えない攻撃によって攻めきる事が出来なかったのだ。

彼も息をあげながら双也の対面に立っているが、その表情はどこか笑っているようだった。

 

「ひっ…くくくくく…」

 

「……なんだいきなり」

 

不気味に笑い始めた彼を睨む双也。

迦禍丸はそれを気にも止めず、話し出した。

 

「くくく…いやぁ、まさかこれ程上手く乗っかってくれるとは思ってなくてなぁ…俺の、掌の上に」

 

「…なに?」

 

 

 

 

 

 

ズドォォオオン!!

 

 

 

 

 

そう言った直後、反対側の人里の方で爆発が起きた。

 

それを目の当たりにし、目を見開いて驚く二人。

そしては迦禍丸は大声で高笑いをした。

 

「ひゃはははは!! おやぁ 守護者様? 鈴が壊れちまったから(・・・・・・・・・・)、助けを求める人間達に気が付かなかったのかぁ? ひゃはははは!!」

 

「ッ!! お前、アレを狙って!!」

 

「マヌケだよなぁホント! 人間の助けに応えられなくて何が"守護者"だぁ? 笑わせてくれるぜ! ひゃはははは!!」

 

「ッ!!」

 

馬鹿にしたようなセリフに反応して飛びかかりかけたところ、双也は肩を掴んだ柊華の手によって止められた。

彼女は冷静な声音で語りかける。

 

「ダメよ双也、挑発なんかに乗っちゃ。アイツの前方、罠くさいわ」

 

「!……悪い」

 

双也はそう言って深呼吸をし、気を静めた。

その様子を見ていた迦禍丸は少し舌打ちをし、吐き捨てるように一言。

 

「ちっ…そのまま突っ込んでくれりゃそれで終わったのによ…面倒くさい守護者様だぜ…」

 

「………双也、さっき"もう少しでなんとかできそう"って言ってたわね」

 

「ああ」

 

「なら、私は向こう側に行って妖怪達を倒してくる。ここを…お願いできるかしら?」

 

柊華の提案には双也も賛成だった。

ここで二人して戦っていても向こう側で人が死に続ける、それでは意味がない。

彼女の提案は最善策だった。

 

だから双也は、返事と共に"約束"をした。

 

「任せろ。こっちが終わったら迎えに行ってやるよ」

 

「…ふふっ、じゃあ頼むわね!」

 

そう言い残し、彼女は屋根などを伝って爆発のあった方へと駆けていった。

彼女の気配が遠くなるのを背中で感じなから、双也は迦禍丸に向き直った。

 

「…追っては行かないのか」

 

「くくく…そのうちあの巫女も殺すんだ。今逃したってかわらねぇんだよ」

 

「…アイツをあまり…舐めない方がいいぜ!!」

 

結界刃を構え、駆け出す双也。

 

こうして再び、刃が交わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ケッ、どうしようともう遅いぜぇ…。全部全部、壊して終わりなんだからな! ひゃはははは!!)

 

 

 

 

 




長い戦闘は描写が大変ですね…

ではでは。
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