ではどうぞー!
俺の技により、弾幕勝負の勝敗が決した。
スプラッシュハウンドを全弾モロに食らった魔理沙は、箒も手から離して落ちてきた。
自分でやっておいてなんだが、全身ボロボロだ。
バフッ「おっ、とあぶねぇ」
魔理沙も身体はただの人間。あの高さから落下したら不味いと思ったので抱きとめた。所謂お姫様抱っこだ。
…うむ、非常に軽いな。
「へ? うわぁ!? おい双也! 降ろせよ!」
「いや、今降ろすとお前動けないだろ。向こうまで運んでくから暴れないでくれよ」
「やめろぉぉおおお…」
「ちょっ、痛い痛い!」
ググググッと両手で俺の顎辺りを押して引き離そうとしている魔理沙。
確かに暴れちゃいないけどそれかなり痛いからやめていただけると嬉しいです。
「うわぁぁあ〜 私の初めてがこんな奴なんてぇ〜…」
「誤解招く言い方しないでくれよ!!」
異変の真っ只中で人が居ないからいいものの、仮に人里の真ん中とかでこんな事叫ばれた日には、きっと次の日から…いや、その瞬間から俺の社会的立ち位置はゴミ屑以下となってしまうだろう。流石にそれは御免こうむりたい。
必死で抵抗する魔理沙を宥めながら、やっとの事で木の根元に降ろした。
うまく座れないだろうから、幹に身体を預けさせた。
「イテテ、あーこれじゃあ解決には向かえないな…私は戦線離脱か」
「いや、そんな事はさせないさ」
「は?」
頭の上に大きな疑問符を浮かべている魔理沙に手をかざし、能力を使う。もちろん、傷の治癒とかその他諸々だ。
俺としても、ここで魔理沙に離脱して貰っては困る。
やはり主人公は最後まで戦場に居なければいけないものだろう?
「よし、これで動けるはず。立てるか魔理沙?」
「ん…おお!! 動ける! さっきまでと大違いだ! サンキュー双也!」
そう言って快活な笑顔を浮かべ、バンバンと肩を叩いてくる。
なんか……俺なんかよりずっと男らしくて輝いて見える。
まぁそれを言ったら怒るだろうから、口には出さないけど。
「よし、じゃあ元気も戻ったところで行くか! お前も来るか?」
魔理沙は箒を魔法か何かで手元に戻し、跨りながら言った。
もちろん行くつもりだが…その前に一つ聞きたい事が。
「…なんで、今対立したばっかの俺にそんな友好的なんだ?」
ふとした疑問だった。傍から見れば、特段今気にするような事でもない。"さっき喧嘩したばかりなのになんでもう一緒に遊んでるの?"と聞いてるのと同じだ。
戦ってばかり、対立してばかりの人生だった所為で、どこか狂ってしまった感覚があるのかもしれない。
それが"発狂"に繋がるのかは、俺には分からないが。
予想通りと言うか、魔理沙は当たり前の事だと主張するように言った。
「? だって、"弾幕ごっこ"じゃんか。ただ白黒はっきりつけたい時にする遊びであり、勝負事だろ? そんなんで一々相手を嫌いになってたら、幻想郷じゃ生きていけないぜ」
"遊び"
弾幕ごっこは、"遊び"
勝負をつけたい時の、"遊び"であると。
なるほど、それが"感覚のズレ"か。
戦いを"遊び"と割り切り、人間でも妖怪と肩を並べる。
妖怪と人間の共存…しっかりできてるじゃないか。
今日の幻想郷も平和でなにより。
……異変の最中だけれども。
「それに、それを言うならお前もそうだろ? 本当に対立してるなら私を倒したままほっとけばいい。わざわざ傷を治す必要なんて無いじゃんか。何に悩んでるのか知らんがとりあえず、"お前は優しい奴だ"って思うけどな」
『双也、あなたは…優しい』
ズキッ「っ…………」
「? どうした?」
「いや…何でもない。行こうか」
「?? おう…」
優しい人…ね。
大切な友を殺してしまった俺が、本当に優しい存在なのだろうか?
それを魔理沙が聞いたら、今度はなんて答えるんだろう。
答えは当然出ないまま、俺は魔理沙と連れ立って森を進んだ。
〜霊夢side〜
「ん、なんか向こうも騒がしいわね…魔理沙かしら?」
能力で空を飛び回り、迫り来る虹色の弾幕を軽々と避けながら意識だけそちらに向けた。
強い光と爆発音といえば、筆頭として上がるのが私の親友である霧雨魔理沙だ。
魔法の森に住む、人間の少女。しかし侮るなかれ、彼女は"光と熱の魔法"を得意としていて、その技の数々は強大な威力を誇る。
まさに彼女の口癖である"弾幕はパワーだぜ!"を体現したような物ばかりなのだ。
今回もどうせ、異変だー! 弾幕勝負だー! なんてお気楽な思考で異変解決に乗り出しているだろうし、後方の爆発もきっと彼女の仕業なのだろう。
なんて全く別の事を考えていると、たった今相手している天然そうな女が弾幕と共に言葉を飛ばしてきた。
「ちょっとあなた! 今私と戦ってるのに余所見ですか!?」
「よっ、と。 良いじゃない別に。そんな密度の濃い弾幕な訳じゃなし、余所見してても相手くらい出来るから」
「ムキーッ! 格闘戦だったら遅れは取らないのに!!」
「"郷に入っては郷に従え"。ここは幻想郷よ。勝負事は弾幕ごっこで決める場所なの。大人しく従いなさい」
「いきなり弾幕勝負だって言って弾幕打ってきたのあなたでしょ!? 私は素人なんですよ!!」
「じゃあサッサと負けて道を開けなさい。私は今お茶が恋しくて仕方ないの」
「理不尽過ぎますよ!!」
女の半ばやけくそな弾幕をヒラヒラとかわしながら、私は再び弾幕を放ち始めた。
〜双也side〜
「ん、霧が深くなってきてないか魔理沙?」
「そうだな、下は湖っぽいが…こんなに霧が出てるとさすがに迷っちまうな」
森の中を進んでいき、開けた場所に出たかと思うと、今度は濃い霧が出てきた。
魔理沙曰く霧の下は湖になっていて、結構広い所為でこのままでは突っ切りにくい、との事。
「う〜ん、あんまり下手に動かない方が良いかもなぁ」
片手を顎に添えて考える素振りをする魔理沙。
…ふむ、ここは俺の出番だな。
「? 何してんだ双也?」
「いや、打開策を思いついた。魔理沙、一瞬苦しくなるけど我慢してくれ」
そう言って片手を前に突き出す。広げた霊力は準備万端だ。
「何をーーッ!?」
俺が手を横に払った途端、充満していた霧が消え、代わりに
空中に出来た水は当然下に落ちていき、小規模な雨を降らせた。
視界に広がったのは広大な湖だった。
「ッハァ、ハァ…何したんだ一体…」
「っふぅ、霧は元々水の一つだからな。
そう、薄く広げた霊力を媒介に、空気中の酸素と霧の水分子を結合させ、水を作ったのだ。
その際空気を使った所為で、一瞬だけ息ができなくなって苦しくなるのだ。
まぁ最も、すぐに他のところから空気が入ってくるから本当に一瞬なんだけど。
その通りに説明したのだが、魔理沙は無表情で頭にハテナを浮かべていた。
魔法は出来るのに化学はからっきしらしい。
と、そんな会話をしていると、直ぐ近くで嘆く声が聞こえた。
「ああー!! あんた達何してくれてんのよ! せっかくあたいが頑張っていっぱいにした霧をぉ!!」
振り向くと、そこには氷の羽のようなものを六枚背にしている青い少女…いや幼女。
そして妖精のような羽をパタパタさせている、全体的に緑色の印象を受ける幼女の姿が。
因みに今叫んでいたのは青い方……たしか、チルノだったか、そちらだ。
「ち、チルノちゃん。この人達強そうだよ。謝って帰ろう?」
「何言ってんのよ大ちゃん!! あたい今むしゃくしゃしてるの! さっきの赤いヤツは適当に打った弾をどんどん当ててくるし、頑張ってたくさん作った霧はどっか行っちゃうし!こいつらに八つ当たりしてやるんだから!」
((ああ、霊夢の仕業か…))
なんとなく、"赤いヤツ"と"適当に打った弾を当てる"という言葉で察しがついた。
もう霊夢しか当てはまらないだろこの条件は。魔理沙もきっと同じ事を考えているはず。
「あんたたちも黙ってないでなんか言いなさいよー!! 言わないと攻撃するわよ!? アイシクルフォール!!」
「いや攻撃はじめてるじゃねぇか!!」
「コイツ…どう見てもバカなやつだな、うん」
「呑気に解説してんな魔理沙!」
仮にチルノがただの青い服を着た女の子だったならまだ微笑ましい光景だったろう。
チャンバラとかで技名を叫ぶ、恥ずかしさを知らない小さな子供のアレだ。
でも今の場合は、実際に弾幕を飛ばしてきているのだから困ったものだ。
会話を聞く限り異変には関与していないようだし、無駄なところで時間を使うと霊夢に追いつけなくなってしまう。
そうなったら紫に住まわせてもらえなくなってしまう!
そして早く行きたい気持ちは魔理沙も同じようで…。
「俺たち、今急いでるんだよ」
「かんけー無い奴らにかまってる程、私達は暇じゃないんだ」
それぞれ手を突き出し、宣言。
「神鎗『蒼千弓』」
「魔符『ミルキーウェイ』!」
いとも容易くチルノのスペルは砕かれ、
星と矢が二人に肉薄した。
「へ? うわわわわ!!」
「え? 私まで!?」
揃って情けない声を出しながら、二人は見事に撃墜。
……ちょっとやり過ぎたかな。
「自分でやってこう言うのもおかしいけど…大丈夫かあの二人?」
「大丈夫だろ。妖精はすぐに生き返るしな。そんな事よりさっさと行こうぜ!」
「お、おう…」
相手を気にかけなさすぎる魔理沙に手を引かれ、俺たちは歩を進めた。
キャラが勝手に動いた結果がコレだよ!!
チルノ達の扱い、雑ですいません。
戦闘ばっかりだと見ていても疲れてしまうと思ったので…。
ではでは。