まおうはたおされた▼_   作:ケケフカ

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まおうはたおされた▼_ 一話

 

 

 とある異世界の王国。

 

 数多の異種族が暮らすこの地における最も巨大な国とされている。隣国には帝国と呼ばれる貴族主義の国も存在しているが、その関係は不可侵であった。

 

「魔王が倒されたって⁉︎」

「あの勇者一行が倒したんだってさ。ほら、異世界から来た十字架背負ったやつだよ」

 

 そんな王国中に話が舞い込んでくる。

 人々の中で不安の種となっていた人類と世界の敵────魔王。それが四人のパーティー「勇者」によって討伐されたという話。

 

 国は瞬く間にお祭り騒ぎとなり、王国に帰還した勇者達は国王と謁見し、勇者はかの言葉を残した。

 

 ────魔王及び四天王は、我らが光により粛清致しました。

 

 お祭り騒ぎは止まることを知らず、その言葉が告げられてから一週間は人々の喜び声は絶えなかった。

 

 そんな祭り騒ぎの街の一箇所、ギルドのテーブルでウェイターの男二人が酒を囲っていた。

 

「異世界のやつらすげぇな。ギルドのSランクの大半がそうだろ?」

「陽光騎士エルモジーク、弓操狂いのミツメ、悪食散らかしのカルシア……有名どころは確かになぁ」

「なんでアイツらあんなに強いんだろうな」

「異世界にきた特典とかって聞いたぜ。てんいギフトだったか」

「俺らも欲しいー」

 

 魔王を倒すために異世界から召喚された人々。学生、教師etc……学校関係者三百人以上。その半数以上がこの世界における力を得ていた。

 

「あれ? そういえば、魔王の血族の……魔神族ってどうなるんだ?」

「そりゃあ、ほら、S級冒険者────“ 魔神奏のエゼルベルト ”に全員殺されたって話だぜ?」

「魔神殺し専門家だろ。屈強な騎士で、魔神族の国の住民全員を一人残らず、塵に帰した奴。英雄ってよりか狂人だろ」

「魔王も魔神族も消えた。ってことは異世界人は帰るのか?」

「けどよ、異世界を渡るなんて神の御業だろ。あいつらが来たのも、古書の禁忌で呼び出しただけって」

「それこそ、神様が返してくれるんだろ」

「あのなぁ、本当に神がいるなんて証拠も……」

 

 そんな男達の後ろ、大きな胸を強調するようなメイド服を来た小柄な少女が物凄い形相で彼らを眺めていた。

 

 黒髪にピンク色のインナーヘア。ファンションセンスは明らかに異世界の人間ではない、ギャルぽさのある少女。

 幼さの残る顔の右目元にはピンク色の痣が見える。

 

 そして、背中には爬虫類の黒色の翼と黒く大きな尻尾が小刻みに揺れていた。

 

「アンタら……」

「うわっ⁉︎ ル、ルネカさん」

「えぇ……その格好は……」

「ギルド長の命令。これ着て接客したら給料二倍……けど、仕事量はアンタらのサボりで三倍になりそう。殺されたくなきゃ、ささっと働いて」

 

 そそくさとウェイターの男達はテーブルから離れ、注文を取り始める。

 

「****(王国語スラング)。怖すぎだろ、あのガキ」

「臨時バイト。なんであんなに生意気なんだよ」

「そりゃあ、ギルドマスター直々の推薦だからだろ」

「マジかよ……」

 

 コソコソ噂話している男達。彼らを睨み、ささっと厨房へ行けよと急かすルネカと呼ばれる少女。

 彼女は彼らが話していた会話を思い出していた。

 

(元の世界に戻る方法……か)

 

 彼女はそんなことを考えたことがなかった。むしろ考えていたのなら、勇者組や冒険者組のように意味のある行動に移していた。

 

 その行動にも移す必要もなく、期待をしないということ。

 それは彼らのように動いても、帰れる手段など絶対に獲得できないと諦めていることに違いなかった。

 

 言わずもがな、彼女こと“ 猫歩 ルネカ ”も転移者の一人である。

 

 その姿は転移ギフトによって竜の翼と尾を持つ竜人族となってしまっていた。

 それが元の世界での生活に戻ることを拒んでいる一つの要因でもあった。

 

「おっと、愛いなメイドがいるではないか」

「……は?」

 

 絶賛、ギルドのウェイターとしてアルバイト一年目が過ぎようとしていた彼女にナンパをしようとする男が一人。

 

 全てが金色。髪色から目まで金色に染まっている。それどころかその装いも黄金。

 無駄なエングレーブが施され、成金という言葉が似合いそうな鎧はルネカからすれば、綺麗というより少し下品であった。

 

「ふん……この私A級冒険者“ 理想卿ジャルガン ”の従者にならないか?」

「お客様。店員へのお触り他、アタシへのナンパ行為は死刑になるので即刻お帰りください。てか、自分で理想卿ってダサ過ぎ。せめて黄金卿とか……いや、それでもセンスのないホストみたいか。まあ、ビジュアル的にもホストぽいし、アンタにピッタリかもね。ジャルジャル」

「ほう……この私を貶すとは中々面白い女だ。しかし、名前を間違えるのはあまり良いとは思えんぞ」

「名前程度でごちゃごちゃ言ってるようじゃモテないよ。横暴卿ジャガリコ」

「数十秒前に名前を告げたばかりだが……」

「きもっ。それで覚えてもらえると思ったわけ? 超合金ジャジャ」

「卿ですらない……だが、その姿……少女のような小柄に大きな胸。そして神々しき竜人族の特徴を兼ね備えた美の結晶。とても────良い」

 

 クネクネし始めた男「ジャルガン」を芋虫を見るような目で貶し始めるルネカ。

 

「決めたぞ。貴公を頂こう」

「は? さっきも言ったけど、ナンパしたから殺すったよね」

「殺すこと決定してるだと⁉︎ ゴホンっ、ではナンパではなく正当な方法で……そう、貴公を決闘にて頂こうではないか‼︎」

「決闘……?」

 

 決闘という台詞をジャルガンを大声で言った瞬間、周囲が一瞬にして静かになった。すると少しずつヒソヒソとした声が聞こえ始めた。

 

「決闘だってさ」

「アレだろ。勝ったら許嫁がどうとか一昔前に流行ったやつ。決闘を投げられた側は断ったら、根性無しとか。考えれば言ったもん勝ちだし、強い奴が弱い奴にやる奴だろ。出来レース過ぎてつまんねぇよな」

「てか、あの子さギルドのウェイターアルバイトでしょ。決闘代理人とかいるの?」

「いないだろ。しかも相手はA級。好んで相手にゃしたかねえだろ」

 

 聞こえる周囲から声からルネカはなんとなく察した。

 要は西洋ファンタジーあるあるの騎士やら貴族やらが好きな類の余興。強者が弱者を虐げ、己が欲しいものを獲得するという筋書き。

 

「私が勝ったら、貴公を私のフィアンセにする」

「フィアンセ……」

「そう、花嫁……さ‼︎ 貴公には真っ白なドレスが似合う」

「……ふふっ、あはははwwwフィアンセwwwそう、花嫁……さってwwwうはっwwだwwだっさっっっっwwww」

 

 お腹を抱えながら、床に伏せてしまうルネカ。笑い終えた彼女はジャルガンに指差した。

 

「アタシが勝ったら、ここの給料の四倍を貰う。それなら決闘してあげてもいいよ」

「ほう……面白い。だが対等な条件として、この黄金の鎧も────」

「え、重いから要らない」

 

 

 

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