まおうはたおされた▼_   作:ケケフカ

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まおうはたおされた▼_ 二話

 

 

 ロンドスタム。

 

 異世界の言葉で決闘場と意味を持つ円形の施設である。元は貴族や騎士のみが使用していたが、時代共に金を賭けるための闘技場としてならず者達が占領していた。

 

 今夜も分かりやすく、そしてより多くの人間が観客席でヤジを飛ばしていた。

 

「代理も建てず、よくこの場に現れた。流石、私が花嫁として見込んだ女性だ」

「アンタのために来たわけじゃない。アタシは金の為に来たの」

「フッ、そのしかめ面のキミも素敵だな」

 

 現れた二者。

 片や黄金だらけのA級冒険者“ 理想卿ジャルガン ”。その手には螺旋状の枝が絡み合った剣を携えていた。

 もう一人、ギルドのウェイターアルバイトの猫歩 ルネカ。メイド服ではなく、スリットが入った白黒の修道服に似た服装。しかし、頭にベールらしきものはない。

 なにより、その背中に担いでいる身の丈よりも大きな額縁。ソレだけが目立つのみで、武器らしいものは何も持っていなかった。

 

「それで決闘って、どうやって決着をつければいいの?」

「相手が参ったと言うまで……というのが鉄則だが、貴公に傷をつけるのは忍びない」

 

 すると、ジャルガンはルネカへと何かを投げた。

 投げられたものはエメラルド色のブローチ。それを受け取ると彼女の周りに球体型の魔法陣が浮き出る。

 暫くすると、身体へと魔法陣のようなものが張り付いた。

 

「それは奇具『エドヴァルドの加護』。敵から受けた攻撃を一日三回だけ無効化してしまうアイテム。貴公にはそれを付けてもらう」

「ふ〜ん。その三回の効力が切れた時点でアタシの負けってことね」

「そうだ。効力が消えた瞬間、身体の周りに纏った奇術が砕ける。そして、貴公の勝利条件は……このロザリオを奪うことだ」

 

 彼は自身の首元に巻いた銅色の十字架をチャリチャリと弄る。

 

「なに、心配することはない。引っ張れば簡単に取れる代物だ」

「アタシは攻撃を喰らう必要はない。けど、ロザリオを奪うのに、アンタを傷つける必要はこっちが決められる……騎士願望者ってわけ?」

「私は王より既に騎士の称号を頂いている。それに相手が惚れたのならば、この私に傷を付けることなぞしないだろう?」

「冗談でも、キモいよアンタ」

 

 ルネカは額縁を地面に置き、その表面をジャルガンの方へ向けた。額縁の中身はどこか気品を感じさせる肖像画であった。

 肖像画の人物は婦人であるが、それが誰であるのかこの観衆の中で理解している者は誰一人としていなかった。

 

「ほう、素晴らしい絵だ。気品に溢れている。だが、それをこの場に持ってきたということは、それは私を傷つけるモノか」

「察しがいいね。流石は冒険者」

 

 その肖像画の表面をノックするルネカ。

 すると、肖像画からコールタール状の黒い液体が漏れ出てくる。

 地面へ垂れた液体の中から巨大な柄が浮き出し、彼女の手に収まった。

 

「始めよ──── “ 虚空夜窓 ”」

 

 刃が甲高い産声を上げる。

 両手で携えた身の丈以上の白色の巨大な両刃大剣。排気のために動く巨大な十字架の外郭。溝の部分に蛍光のピンク色のパルスが走った。

 

「なるほど……その奇怪な得物。貴公、転移者か」

「そうだけど。まさか、今更『はい、やめました』なんて言わないよね?」

「それこそまさかだ。更に貴公を欲しくなったっ‼︎」

 

 両者、構えを取ったと同時に開始を告げる鐘が鳴り響いた。

 

 先に前へ走り出したのはルネカだった。

 圧倒的な質量による押し付け。その一撃を喰らわせてしまえば、早くも勝機を得られる。安直な考えは戦闘慣れしていない者の思考。

 

「どぉらぁぁぁぁぁぁあああっ‼︎」

 

 正面からの叩きつけ。ジャルガンは身体を捩ることで簡単に避けた。

 捻った勢いのまま、剣柄を引く。躊躇することなくルネカの身体へと穿つ。

 彼女が目視することもなく、その一撃は身体へと届いた。痛みはないものの突かれた勢いで、武器を離してそのまま後方へ吹っ飛ばされる。

 

「まずは一撃……やはり、戦闘経験は皆無か」

 

 後方に吹き飛ばされる彼女の後ろ、既にジャルガンは回っていた。

 目に追えない程のスピードで移動していたジャルガンに驚きつつ、ルネカは地面を尻尾で勢いよく叩きつける。

 先程同様の突きを行うジャルガン。その攻撃を、尻尾を叩きつけた反動で飛び上がることで紙一重で避けた。

 

「うくっ……マジ、とんでもない、ね。普通に、死が見えたわ」

 

 尻尾を勢いよく地面に叩きつけた痛みに息絶え絶えも、ジャルガンを目で追う。

 

 上空を弧を描きながら、ジャルガンの後ろへ着地するも追撃はせずに後ろへ退く。

 その際に彼の足元から金色の根が広がっているのを目視していた。

 

「(ここに来た時にはあんなものは無かった。根は剣の色と同じ……十中八九、あの剣自体の能力)」

 

 ルネカはA級という称号を甘く見ていた。

 S級。自身と同じ転移者がその大半を占めているという情報は自分を慢心させるのに十分過ぎるほどであった。

 

 だが、しかし……そこに疑問が生まれた。

 

 ジャルガンの追撃は可能で合った筈。それも突剣術であるなら、連続した攻撃で瞬時に三回当てることは出来るはず。

 何らかの制約。もしくは彼がルネカを警戒した可能性もある。

 

 どちらにしろルネカは考えを改めなければならない。己自身だけでは勝利を掴むことなど不可能であることを。

 

「先程の回避は見事だった。スキルを使わない私のスピードから逃れられる君の実力であれば、B級は固くないだろう」

「アンタの賞賛はただの煽りにしか聴こえないよ」

「ならば、取り下げよう。そして提案しよう。私の花嫁となれ。キミならばA級……S級になれる可能性がある」

「……前言撤回。アンタの台詞ぜーんぶ、煽りだわ」

 

 その会話途中、ルネカの瞳から黒い液体が流れていた。ジャルガンがそれに気付いた時には、彼女の手に“ 虚空夜窓 ”は握られていた。

 

「第二ラウンド、始めよっか」

 

 

 

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