「エミ……ちゃん?」
「お願い……助けて……っ、リコを、リコが、ウチ、ウチのせいで……」
後ろから深衣の左腕に抱き着いて離れない
「お、あっと、え、エミちゃん! お、おち、落ち着きましょう、落ち着い、落ちつき……あわわわ……!」
「そっちに共感してちゃ落ち着くわけないでしょバカ」
「っ……カ、カルカル……?」
「チッ。そのあだ名、また聞くことになるとはね」
深衣の隣に、カルテは腕を組み足を開いて立った。165cmの高さから見下ろされるエミは竦み上がり、同年代よりずっと豊かな胸をいっそう強く深衣の細腕に押し付ける。
「ご、ごめんなさい……謝ります、謝罪します、なんでもします、なんでもするから、ううっ、許して……ごめんなさい……ごめんなさいっ……!」
「じゃあ今すぐ黙って。こんな公衆の面前で泣きながら……アタシが悪いみたく見えるじゃない。それで謝罪になるとでも?」
「ひぐっ……うううう……っ」
「えっと、ごめんなさいなのです……」
「なんでミーコも謝るのよ! いよいよアタシが悪者じゃないの!」
「あ、あたしも加害者の期間の方が長かったし、ずっとだらだらと償いを後回しにしてしまっている状態なので……」
「それは……! チッ。とにかく場所変えましょうよ。めっちゃ見られてるわよ」
大通りの真ん中で始まりかける愁嘆場を通りかかる誰もが気にかけていた。通り過ぎるフリをして視線だけを寄越す者もあれば、立ち止まったり振り返ったり堂々と見る者も。そして深衣が共感の呪いで感知した中には、何か面白いことが始まりそうだとスマートフォンでカメラを回し始める者、女子三人のみと見て仲裁を装い声を掛けてこようとする者もいた。
「お、お騒がせしました! どうもすみませんなのです!」
「バカ、アンタその語尾だと逆に目立つって……!」
「とりあえず、あたしの家に行きましょう。ここから歩いて二十分ほどなので!」
持ち上げるようにしてエミを直立させ、小走りで引っ張ってその場を脱する。
肩を担いであげるべき? 一瞬思考したが、カルテは手を伸ばすこともなく、ただ黙して二人に付いて行った。
◇
「…………あの、カルテちゃん?」
「え? あっ。違う。違うの。じゃない。ごめん。ごめんって」
「別に、思ったことは言ってくれていいのですよ。我慢することはないのです」
「い、いや……今はその時じゃないっていうか? ね? ほら……エミ、アンタなんか言うことあるんでしょ」
「…………みいの部屋、初めて入った」
「そうですね」
「…………ごめんなさい……っ、うう……」
「ぐ……こちらこそ、お気遣いを無下にしようとしてごめんなさいなのです……」
カルテとエミはその部屋を不気味だと思った。
駅近くのタワーマンションで広々とした一人部屋。シンプルな模様の肌触りのいいカーペット、寝具が丁寧に整えられた綺麗なベッド、光線女に呪われる前の深衣が揃えていた雑誌やマスコットのグッズが並ぶ棚……女子高生らしい部屋というものが定義できるなら、それを律儀に満たしている部屋。
そこに一つ、不似合いなステンレスとガラスでできた棚がある。中にはズラリと並ぶ賞状、メダル、トロフィー。
それに貼られた
「あたしは見慣れているからか、二人が怖がるまで全然不思議に思わなかったのですが……」
「えぇ……。一般家庭にはおよそあり得ないきも……居心地の悪さがあると思うけど。慣れって怖いわね」
「それな。なんか、頭冷えたっていうか、いや肝が冷えたってのかな、冷静んなってきた」
「ほんとうですか? それはよかったのです!」
部屋の中心にローテーブルを出してくる深衣。勉強机に置いていたソーサーとカップをテーブルの上に並べ、ポッドから三人分の紅茶を淹れる。
「お母さんが夕飯を用意してくれるので、申し訳ありませんがお茶請けはないのです。あ、二人とも食べていきますか? 長居したくないということであればクッキーくらいは」
「いやいいから。さっさと話しましょうよ。……アンタも、今は呑むより吐き出したい気分なんじゃないの?」
「……ぷっ、カルカル、またカッコつけてる」
「ぶっ飛ばすわよ。今度は前より高く遠くに」
「ああ、そういやぶっ飛ばされたんだっけ。…………ぶっ飛ぶ……って、カルカルは経験ある?」
「は?」
俯き、無言でテーブルの傍へ行って、崩れるように少女は座る。膝を折り、力なく背を丸めて、太ももに乗せた手を祈る様に組んで。
「
……人間じゃなくなるみたいに」
罪の告解。
三重寺絵美は静かにこの一か月半のことを語り始めた。