魔法科高校の帰還者   作:テトマト

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今回短いのでもう一本投稿します。


第16話

テロが収束に向かい、生徒たちの混乱もようやく落ち着き始めた頃。

達也から連絡が入り、藤丸とマシュは保健室へ向かった。

 

中には剣道部の壬生沙耶香がいた。顔色は青く、目元も赤い。

達也が声をかけると、沙耶香はぽつぽつと語り出した。

 

差別撤廃を掲げる“有志”を名乗る連中が、いつから彼女に近づき、どんな言葉で怒りを煽っていったのか。

入学直後から浴びた侮蔑や、摩利との些細なすれ違いが、いつの間にか「敵意」にすり替えられていったこと。

 

「……私、何してたんだろう」

 

沙耶香は笑おうとして、失敗した。

達也は急かさず、落ち着くまで待った。

 

やがて達也が静かに、要点を切り替える。

 

「連中の所在は?」

 

その瞬間、空気が変わった。

 

「ここから先は警察の仕事だ」

 

十文字会頭が言う。

達也は淡々と返した。

 

「主導が逃げれば、責任は実行役に残ります。壬生先輩は“犯人”として処理される可能性が高い」

 

沙耶香が身を乗り出した。

 

「やめて……私のせいで危ないこと、しないで……!」

 

達也は首を振る。

 

「先輩のため“だけ”じゃありません。俺と深雪の生活圏の問題です」

 

深雪が小さく問う。

 

「ですが、お兄様……どうやって?」

 

「分からないことは、分かる人に聞く」

 

達也が扉へ向かう。

開けた先の廊下に立っていたのは、小野先生だった。

 

「……気づいてたのね」

 

「場所を」

 

小野先生は溜息まじりに端末の地図を覗き込み、指先で一点を示した。

 

「ここ。放棄された工場」

 

「近いな……」

 

藤丸が思わず呟く。

 

十文字会頭が前へ出る。

 

「俺が車を出そう」

 

達也が確認する。

 

「探知される可能性が」

 

「相手も想定している。なら正面から踏み込む方がいい」

 

「十文字くんも!?」

 

七草会長が反射で言うと、十文字会頭は視線を動かさず、短く返した。

 

「下級生だけに任せるわけにはいかん」

 

「じゃあ私も——」

 

真由美が続けようとした瞬間、十文字会頭が遮る。

 

「七草は残れ。まだ校内が落ち着き切っていない。会長が必要だ」

 

真由美が唇を噛む。

 

十文字会頭は話題を切り替えるように、沙耶香へ向き直った。

 

「壬生沙耶香。校内で動いていた武装した連中が、刀を持った男に無力化されていた。心当たりはあるか?」

 

藤丸は胸の奥がビクッと跳ねるのを感じた。

だが、顔には出さない。

 

「……いえ、ありません」

 

「そうか」

 

十文字会頭は、最初から期待していなかったように、あっさり引き下がった。

 

そのタイミングで、藤丸が一歩前に出る。

 

「あの。俺も行きます」

 

「私も同行します」

 

マシュも迷いなく続けた。

 

「危険だぞ」

 

十文字会頭の声は低い。

 

「分かってます。でも、友達が行くのに、自分だけ安全圏にいるわけにはいかない」

 

藤丸は少しだけ声を落として、続ける。

 

「それに――この件、俺も結構怒ってます。俺は俺の日常のために動きます」

 

マシュが頷く。

 

「私も同じです。それに私は、先輩の盾です。先輩が行くなら、私も行きます」

 

短い沈黙。

十文字会頭は、結論だけを落とした。

 

「……分かった」

 

それから全員を見渡し、淡々と告げる。

 

「車を準備する。ついて来い」

 

十文字会頭が先に歩き出し、達也がそれに続く。

藤丸とマシュも保健室を後にした。

 

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