魔法科高校の帰還者   作:テトマト

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2話投稿してます。
前話読んでない人はお気をつけ下さい。


第17話

 

車に乗り込むと、すでに助手席にひとり男子生徒が座っていた。

目つきが鋭く竹刀を持った人物だった

「よう、司波」

桐原武明――あのときの剣術部の男子だ

達也がドアを閉める手を、一瞬だけ止めた。表情は変わらない。ただ、驚きの気配がほんの僅かに混じる。

達也が問おうとする前に、藤丸が先に口を挟んだ。

「えっと……すみません誰ですか?」

達也は小さく息を吐く。いつもの調子に戻して、淡々と説明した。

「桐原先輩だ。剣術部の部長で勧誘会で壬生先輩と揉めていた。……なぜいるのかは、俺も分からない」

「雑談はそこまでだ」

運転席の十文字が、低く切った。

ハンドルを握る指に迷いがない。

「時間がない。作戦を確認する」

室内が、すっと静まる。

「司波と司波深雪は正面。侵入・制圧」

「了解しました」

達也の返事は丁寧で揺れがない。深雪も小さく頷く。

「裏は俺と桐原。裏口と退路を押さえる。桐原、突っ込むな。合図まで動くな」

「……はい」

返事は硬い。悔しさを飲み込んだ硬さだった。

十文字の視線が、ルームミラー越しに藤丸とマシュへ移る。

「藤丸、マシュ。お前たちは外周で逃走封鎖。出入口を潰せ。逃げる奴を“出すな”」

「「はい」」

藤丸とマシュが即答すると、十文字はそれだけで会話を切った。

車は速度を落とし、住宅街の外れへ滑り込む。

視界の先に現れたのは、放棄された工場――窓は暗く、外壁の汚れが“人の気配を隠す”のに都合がいい。

桐原が小さく呟いた。

「……門は、どうしますか」

「今回は奇襲だ。逃げる隙を与えない」

十文字は一拍も置かず言い切る。

「このまま突破する。藤丸、いけるか」

「大丈夫です」

藤丸は手首のリスト型CADに指を添え、表向きの操作を“なぞった”。

偽装用の術式――「魔法を使った」という痕跡だけを残すための型。

(彦斎。お願い)

返事は、胸の奥にだけ届く。

(了解)

門の前に現界した彦斎が現れる。

小柄で、目の温度が低い。刃の気配だけが濃く、迷いがない。

「――斬る」

抜刀の構えを取り---一閃

門の中央が、音もなく裂ける。

ギギ、と遅れて金属が悲鳴を上げ、真っ二つになった門扉が傾き――倒れた。

彦斎は門が倒れるよりも前に霊体化して姿を消す

(前回とは違ってハッキリと見えた。前回召喚した存在とは別なのか?)

達也がそれを見て考察を始める。

「……っ」

誰かが息を呑むより早く、十文字はアクセルを踏み込む。

車は倒れた門を乗り越え、工場前で鋭く停まった。

十文字がドアを開ける。

「逃がす隙は与えない。――作戦通り、制圧するぞ」

達也はその言葉で思考を切り替える。今はブランシュの制圧が先だ。

 

その一言で、全員の動きが“戦闘”に切り替わる。

達也と深雪が正面へ。

十文字と桐原が裏へ回る。

藤丸はマシュと目を合わせ、短く頷いた。

「外周、固めよう」

「はい、先輩」

二人はビルの出入口と、逃げ道になりそうな通路が見える位置に移動した。

誰かが飛び出してきても、通さない距離だ。

――数十秒。

中から、乾いた破裂音が響いた。

パン、パン、と。

銃声。

「……撃ってますね」

マシュが小さく息を呑む。

「達也たちだろうな」

藤丸は視線を切らずに言った。中へは行かない。自分の役割はここだ。

敵が出てこない。

逃げる気配もない。

(……おかしい、ってほどじゃないか)

学校襲撃のときも、魔法師らしい相手は少なかった。

この連中が“銃で武装しただけの一般人”なら、魔法師に勝てるはずがない。

達也たちが、片っ端から無力化している――そう考えるのが自然だった。

銃声は途切れながら続き、やがて止んだ。

余韻みたいな静けさが、数秒――いや、もっと長く感じるほど続く。

藤丸は呼吸を浅くして、構える。

マシュも同じだ。いつでも魔法を展開できるよう、CADを構えている。

(……来る)

ぎい、と扉が開いた。

出てきたのは達也と深雪だった。

「主犯格を確保した。中の連中も、全員無力化した」

「……終わった?」

藤丸が確認すると、

「ひとまずな」

達也が短く答える。

深雪が小さく息を吐いた。

マシュもようやく、胸の前の力をほどく。

藤丸は外周に視線を走らせ、最後にもう一度だけ周囲を確かめた。

逃走の気配も、増援の影もない。

――そこで、藤丸が小さく息を吐いて呟く。

「……ついてきたけど、結局やること無かったな」

マシュが「先輩……」と苦笑しかけた、その前に。

「そう言うな」

達也が淡々と返した。言葉は短いのに、否定の温度がある。

「お前たちが外周を押さえていたから、俺たちは中で余計な心配をせずに動けた」

「そっか」

藤丸は軽く肩をすくめる。褒められ慣れていないのをごまかすみたいに、目を逸らした。

「……必要な役だ」

達也が結論だけを置く。

そのやり取りの間にも、裏手から足音が近づく。

十文字と桐原が、遅れて姿を現した。

藤丸は二人が揃ったのを見届けて、ようやく本当に肩の力を落とす。

「……これで、一件落着だな」

誰に言うでもない呟き。

けれど、その場にいた全員が、同じ言葉を胸の中で繰り返した。

 

 




オリ展開とか考えられなくて雑になっちゃった。小説難しい
正直、彦斎ちゃんが門を斬る話を作りたかっただけ


あともう1話で入学編終了です。
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