次話は長いので許してください。
九校戦が近づいてきた日の放課後
駅前の見慣れたカフェの奥席に、第一高校の面々が集まっていった。
テーブルの上にはドリンクと軽食。――今日は、九校戦に出場する深雪、マシュ、ほのか、雫の小さなお祝い会だ。
「じゃ、四人の出場を祝って――かんぱーい!」
レオが景気よく音頭を取る。
グラスが軽く触れ合って、乾いた音が弾けた。
「……で」
レオは飲み物を置くと、何でもない顔で言った。
「ところでみんな、何に出るんだ?」
「知らないのに仕切ってたの?」
エリカが呆れた顔で、即ツッコミを入れる。
「細けぇことは気にすんなって!」
レオが笑ってごまかした。
深雪が先に、迷いなく口を開く。
「私は、ミラージ・バットとアイスピラーズ・ブレイクです」
美月が確認するように質問する。
「ミラージ・バットって得点が高い競技ですよね?」
深雪は頷く。言葉は丁寧なのに、自信が揺れない。
「ええそうよ、でもお兄様がCADの調整をしてくださるから、負けないわ」
「へいへい、お熱いことで」
エリカがわざとらしく手で顔をあおぐ仕草をする。
達也は否定も肯定もせず、いつも通り静かにコップを置いただけだった。
続いて、マシュが背筋を伸ばす。
「私は、クラウド・ボールとバトルボードに出場します」
「俺も応援に行くから頑張って。マシュなら勝てる!」
藤丸が言うと、
「はい、先輩。マシュ・キリエライト、全力で戦ってきます!」
マシュははっきり返して、表情を明るくした。
「……こっちもこっちで熱いわね」
エリカが小声でぼやく。
ほのかが、控えめに手を挙げるみたいに言った。
「私もバトルボードに出場するので……マシュさんと当たるかもしれません」
「はい。その時は全力でお相手します!」
マシュが即答する。
「わ、私も負けるつもりないから!」
ほのかもつられて、声が少し大きくなる。
二人の間に、火花というより“青春の火”が散った。
雫は淡々と告げる。
「私は、スピード・シューティングとアイスピラーズ・ブレイクに出場する」
「じゃあ雫も、深雪と当たるのか?」
レオがポテトをつまみながら聞く。
達也が、合理的に補足した。
「組み合わせ次第だ。運営は同じ学校同士が当たりにくいよう調整するが、進行上、そうなる可能性はゼロじゃない。……その場合、棄権で回避する選択肢もある」
「でも」
雫が、いつもより少しだけ熱を含んだ声で言う。
「私は深雪と戦ってみたい」
深雪が、すぐに返す。
「私も望むところよ」
レオが満足そうに頷いて、グラスをもう一度掲げた。
「よし! じゃあ改めて! 出るやつは勝ってこい! みんなで頑張ろう!」
「「「おー!」」」
声が揃って、グラスの音がもう一度響いた。
お祝い会が終わり、藤丸は自室に戻って寝る支度をしていた。
髪を乾かし、制服を畳み、ベッド脇のランプだけを点ける。
――そのとき、端末が震えた。
画面には「エリカ」の表示が出ている。
(こんな時間に?)
首をかしげながら通話を取った。
「もしもし、藤丸?」
「どうした、こんな時間に」
一拍置いて、エリカの声が妙に小さくなる。
「今、近くにマシュはいる?」
「……? いないけど」
意図が読めず、藤丸は困惑しながら答えた。
「なら良かった」
エリカの声が、子どもが悪だくみを思いついた時みたいに弾む。
「ねえ、ちょっとサプライズしない?」