魔法科高校の帰還者   作:テトマト

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モノリスコードのルールに独自解釈が入ってます。


第29話

九校戦七日目。

モノリスコード――第一試合は森林ステージに決まった。

木々が密集し、視界は悪い。

索敵と奇襲が物を言う地形だ。

試合開始のブザーと同時に、藤丸は古式魔法を発動する。

「――ロビンフッド」

名を呼ぶと、緑のローブと右手にボウガンが“現れた”。

森の賢者――ロビンフッドの武装。

(ロビン本人ほどじゃないけど……森なら、これで十分)

顔のない王(ノー・フェイス・メイ・キング)――装備が与えるのは、存在感を薄くする隠密性。

藤丸は低い姿勢のまま森に潜伏し、敵の動向を探った。

(……攻め二人、防衛一人か)

攻撃に行くか、防衛に戻るか。

一瞬迷って――藤丸は攻めを選んだ。

敵陣へ回り込む。

モノリス前に近づいた瞬間、達也と敵が交戦しているのが見えた。

敵は達也の牽制で動きが鈍っている。

(今だ)

藤丸は躊躇なくボウガンを構え、矢を放つ。

命中。敵が膝を折り、そのまま気絶した。

「大丈夫か、達也」

「藤丸か。問題ない」

達也は敵を一瞥し、すぐ視線をモノリスへ移す。

「……モノリスを開けて、ここはいったん離脱する。敵も異変に気づいてすぐ戻って来るだろう――」

「待って。達也、コードは今すぐ入力して」

藤丸が止めた。

達也が眉を動かす。

「……理由は?」

「いいこと思いついた」

藤丸はニヤリと、少し意地の悪い笑みを浮かべた。

 

第一高校のテントで試合を観戦していた真由美が、思わず声を漏らした。

「ねえ……あれ、大丈夫なの?」

モニターに映っているのは、敵選手が木の蔦に絡め取られ、逆さに吊り上げられている姿だった。

「モノリスコードは直接の攻撃行為は禁止だ」

十文字が淡々と告げ、続けて言葉を継ぐ。

「だが……ステージ上の物を利用する分には、ルール上問題はない――はずだ」

十文字にしては珍しくわずかに声が小さくなった。

 

「面白い発想だな」

摩利が感心したように言う。

「魔法を警戒して進む分、こういう罠には目が行かない。即興で作った*1にしては、見事だ」

「そもそも魔法戦で罠を作るなんて、普通は考えないものね」

真由美が頷いた。

「達也くんが藤丸くんを指名した理由が、よく分かったわ」

真由美がそう言った直後――

モニターの中で、達也が敵モノリスへコードを打ち込み終えた所だった。

 

 

 

第2試合は市街地戦に決定した。

モノリスがあるのは、廃ビルの中。

藤丸はステージ図を見て幹比古に提案した。

「……幹比古。今回、ディフェンスと遊撃――交代してくれない?」

「いいよ」

幹比古はすぐ頷いた。

「僕も廃ビルの中だと魔法が制限されるしね。……で、立香は何をする気?」

「簡単だよ。相手をビルに入れなくする」

 

 

観戦席。

レオは、右手に「先輩しか勝たん❤️」と書かれたうちわを振るマシュを――見ないふりをしながら、口を開いた。

「マシュ、あれは何してるんだ?」

モニターに映る藤丸は、髑髏めいた仮面を被り、廃ビルの内部を淡々と歩いている。

傍目には、それだけだ。

「……静謐さんの髑髏の仮面です」

マシュが、少し言いにくそうに答える。

「あの仮面は……毒を散布します」

「ど、毒?」

美月が思わず声を上げた。

そして視線がマシュの頭のはちまき『先輩!ファイト!』をチラチラ見ながら続けた。

「危険じゃないんですか……?」

「九校戦用に弱めています。呼吸が苦しくなる程度で、意識を奪うものではありません」

マシュはきっぱり言い切った。

「ただ――ビルの中に入ると、あのように……」

説明しながら、視線をモニターへ戻す。

敵選手が廃ビルに踏み込んだ。

――数秒。

急に喉を押さえ、足が止まる。ふらついて壁に手をつき、そして――慌てて外へ飛び出した。

「うわ……」

エリカが、引いた声を漏らす。

「達也くんもえげつないと思ったけど……藤丸くんも大概ね……」

言いながら、エリカは左手でペンライトを振り回してるマシュを見た。

ここで突っ込むより、黙っていた方が面白そうとエリカは口を閉じた。

その間にも、敵はビルに近寄れず足踏みを続ける。

そして、敵が攻めあぐねているうちに――達也と幹比古が敵モノリスへ到達。

2人の攻撃によってモノリスは攻略され試合終了のブザーが鳴った。

 

 

 

第三試合は、森林峡谷ステージ。

フィールドは凹凸の激しい地形で、薄い霧がまとわりつくように立ち上っている。

「幹比古、霧ってもっと濃くできる?」

藤丸が視線だけで周囲を測りながら言う。

「できるけど……濃くしすぎると、こっちの視界も悪くなるよ。下手するとこっちが不利になる」

「大丈夫。俺は自由に動けるから」

藤丸は短く言い切ると、魔法を起動する。

「ジャック・ザ・リッパー」

両手に、二振りのナイフが現れる。

刃は冷たく光を吸い、握った瞬間、藤丸の気配が一段階“薄く”なる。

同時に、幹比古の古式魔法で霧が押し広げられ、濃度が増した。

視界が、白に沈む。

藤丸はその霧の中へ――音もなく溶けた。

 

「くそ……どこだ!」

敵選手が悪態を吐く。

霧は刻一刻と濃くなり、数メートル先すら曖昧だ。

足元は不安定で、谷の段差も多い。

転べば隙になる。だから慎重に進むしかない。

敵はCADを構え、耳を澄ませながら前へ出た。

――ガサッ。

近くの草むらが揺れた。

反射的に照準を向け、慎重に距離を詰める。

草をかき分けてCADを向けるが……何もない。

「聞き間違い……?」

安堵が、喉まで上がった、その瞬間。

背後から――鈍い衝撃。

息が詰まり、視界が揺れる。

(な、に……)

考える前に、意識が沈んだ。

何も見えない濃い霧の中で一人また一人と倒れ、試合終了のブザーが鳴る。

第三試合も、第一高校の勝利で終わった。

 

観戦席。

中継映像を前に、二人の男が並んで立っていた。

第三高校。

クリムゾン・プリンス――一条将暉。

カーディナル・ジョージ――吉祥寺真紅郎。

「……術式解体に、古式魔法師が二人。厄介だな」

将暉が低くこぼす。

真紅郎は頷き、画面を見据えたまま言った。

「うん。特に藤丸立香

姿を隠すローブに毒を散布する仮面、霧の中でも自由に動いていた」

「見たところ出した武器によって特殊な能力が使える古式魔法みたいだね。他にも色んな武器がありそうだ」

将暉は苦い顔で吐いた。

「障害物が多いステージだと、分が悪いな」

「おや、将暉が弱音? 珍しいね」

真紅郎が軽くからかうと、将暉は肩をすくめた。

「実戦なら、爆裂で障害物ごと吹き飛ばせばいい。だが九校戦でそれをやれば――レギュレーション違反になりかねない」

「実戦なら負けない、と?」

「もちろんだ」

将暉は即答した。

真紅郎は小さく笑い、そこで一拍置いてから続ける。

「さすが将暉、頼もしいね。でも安心していい。僕の見立てだと、決勝は平原になる。遮蔽物がないぶん、絡め手は通しにくい」

そして、声を落とした。

「……ただし、藤丸立香は最優先で無力化しよう」

将暉も頷く。

「ああ。あいつは……何をしてくるか分からない」

二人の狙いが定まった。

 

*1
ロビンフットのスキル破壊工作:戦闘を行う前、準備段階で相手の戦力をそぎ落とす才能。トラップの達人。




そんなに強くするつもり無かったのになんかクソゲーになった。

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