魔法科高校の帰還者   作:テトマト

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戦闘描写難しい


第30話

決勝戦のステージは、平原に決まった。

遮蔽物はほとんどない。――正面からの火力勝負、一高に不利なステージで三高に有利なステージだ。

藤丸たちは第一高校のテントで、最後の作戦を詰めていた。

「ねえ……これ、本当に着けないといけない? 恥ずかしいんだけど」

黒いマントを羽織った幹比古が、心底嫌そうな顔で言う。

「諦めろ。カーディナル・ジョージの“インビジブル・ブリッド”対策だ」

達也は淡々と言い切り、続けた。

「幹比古には、俺と藤丸が一条を落とすまでの間、吉祥寺の相手をしてもらう」

「やっぱり……例の作戦で行くの?」

藤丸が渋い顔をする。

「お前が提案した作戦だろ」

達也が呆れたように言い、幹比古が不安そうに続ける。

「でも……やっぱり無理なんじゃないか?

 一条の爆裂を、正面から受け止めるなんて――」

「それは大丈夫」

藤丸は即答した。

「……ただ、めちゃくちゃ痛そうだし。

 それに、一条がちゃんと俺を狙ってこないと、この作戦は成立しないし」

「大丈夫だ」

達也が断言する。

「これだけ暴れてきたんだ。お前を警戒しない相手はいない。

 俺が敵でも、真っ先にお前を狙う」

横で、幹比古がうんうんと頷いている。

「安心しろ。骨は拾っておいてやる」

「いや、死なないから!」

即座にツッコミが入り、三人は試合会場へ向かった。

 

(術式解体……思ったより厄介だな)

一条将暉は内心で舌打ちしながら、魔法を連射しながら前進していた。

魔法が展開され、そのたびに達也が術式解体で無効化する。

その繰り返しが、試合開始からずっと続いている。

(それに――)

将暉は視線だけで藤丸を捉えた。

藤丸は自陣モノリスの陰にいる。

だが、そこから“魔法を発動している気配”がまだしている。

(武装の展開は、もう終えているはずだ……何を仕込んでいる?)

そう考えていると、藤丸がモノリスの陰から姿を現した。

(まあいい。何をしようと――正面から叩き潰す)

将暉は予定通り、優先目標を藤丸に切り替えた。

 

モノリスの裏。

準備を終えた藤丸は静かに息を吐き、両手に“借り物”の感触を確かめる。

(――力を借ります。レオニダス一世)

槍と盾を握り締めた瞬間、藤丸は飛び出し、スキルを発動する。

《殿の矜持》《三百の奮闘》

将暉がこちらを向いたのを確認し、槍と盾を掲げる。

(――来い)

「宝具展開――!」

「行くぞ友よ、命をここに!

 

炎門の守護者《テルモピュライ・エノモタイア》!!」

 

藤丸の左右に、半透明の赤い盾が幾重にも展開される。

――三百の“壁”。

十万の軍勢に、たった三百の軍勢で立ち向かったレオニダス一世の逸話の再現。

直後、爆裂が叩き込まれた。

爆風。熱。衝撃波。

最初は様子見だった将暉の攻撃が、藤丸が倒れないと知るにつれて苛烈さを増していく。

藤丸が攻撃を受けるたび盾が砕け、空気が鳴り、視界が揺れた。

(……重い)

膝が沈みそうになるのを、歯を食いしばって耐える。

やはり彼のようにはいかない。

だが――倒れるわけにはいかない。

彼の武装を借りている以上、無様は晒せない。

まだ、時間を稼がなければならない。

「――スパルタァ!!」

叫び、足を踏ん張る。

たった数秒。

だが体感は、永遠に引き伸ばされる。

百、二百と盾が削られ、最後の一枚にひびが入る。

次の爆裂で――砕け散った。

同時に、藤丸の手の槍と盾も、熱に溶けるように霧散する。

藤丸は、その場に膝をついた。

――だが、役目は果たした。

 

将暉は“倒した”と確信し、そして気づいた。

(しまった――誘導されていた!?)

視線が藤丸に固定されていた。

その隙に、達也が距離を詰めている。

将暉は慌てて照準を戻し、魔法を起動しようとするが――

間に合わない。

達也のサイオン波が、将暉の意識を直撃した。

視界が揺れ、膝が抜ける。

(しま――)

そこで、意識が途切れた。

 

「――将暉!」

真紅郎が叫び、視線が一瞬そちらに逸れる。

その“隙”を、幹比古は逃さなかった。

電撃が走る。

真紅郎は回避しきれず、体勢が崩れる。

移動魔法を起動し、体勢を立て直そうとした瞬間――

魔法式が霧散した。

(……術式解体!?)

背筋が凍る。

次の電撃が直撃し、真紅郎はそのまま意識を失った。

残る一人も、達也と幹比古の連携の前に数合も持たず沈む。

――試合終了のブザーが鳴った。

 

「大丈夫か?」

試合後。

達也が地面に倒れた藤丸を覗き込む。

藤丸は仰向けのまま、片手をひらひら振った。

「大丈夫じゃない……めっちゃ痛い……死にそう……」

「……軽口が叩けるなら大丈夫だな」

「一応、動けるけど……」

藤丸は少し考え、

「もう試合終わったし、いいかな? ハベにゃん、お願いしても良い?」

「もちろん」

ハベトロットが現れ、《幸運の糸紡ぎ》が発動する。

淡い光に包まれ、藤丸は立ち上がった。

「ありがとう。じゃあ、みんなの所に戻ろう」

歩き出しながら、達也はもう一度精霊の眼を使おうか一瞬だけ迷い――やめた。

「藤丸。お前の魔法について、知りたい」

真っ直ぐな“お願い”。

藤丸は少し考え、達也の目を見て頷く。

「うん、いいよ」

「僕も聞いていい?僕もかなり気になっていたんだ」

幹比古が続ける。

「うん、いいよ」

 

三人で歩いていると、二人の少女が待っていた。

「優勝おめでとうございます、先輩」

「優勝おめでとうございます、お兄様」

「ありがとう――マ……シュ?」

藤丸は顔を上げ、固まる。

右手に《先輩しか勝たん❤️》うちわ。

左手にペンライト。

頭には《先輩!ファイト!》のハチマキ。

完全装備のマシュが、胸を張っていた。

「……も、もしかして、ずっとその格好で?」

「はい! マシュ・キリエライト、全力で応援しました!」

満面の笑顔。

藤丸は叫びながらしゃがみ込み、

遠くでエリカの笑い声が響いていた。

 

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