話数がずれていたので修正してます。
お詫びに夜にもう1話投稿しようと思います。
昼休み。
生徒会室に入ると、七草先輩のほかに、風紀委員長の渡辺先輩、それから見覚えのない先輩が二人いた。
机に向かっていた小柄な先輩と、背の高い先輩。どちらも生徒会の腕章を付けている。
「いらっしゃい。紹介するわね」
真由美先輩が、指先で順番に示す。
「会計の市原鈴音ちゃん。こっちは書記の中条あずさちゃん。通称――あーちゃん」
「会長! あーちゃんって呼ばないでください!」
小柄な先輩――中条あずさ先輩が、顔を赤くして抗議する。
「……会計の市原鈴音です。よろしくお願いします」
「え、えっと……書記の中条あずさです。よろしくお願いします」
「藤丸立香です。よろしくお願いします」
「マシュ・キリエライトです。よろしくお願いします」
達也と深雪もそれに続く。
「司波達也です」
「司波深雪です」
真由美先輩が壁際の自動配膳機を指さした。
「みんな、お昼どうする? 配膳機もあるけど」
「頂きます」
「私も」
達也と深雪が返事をする。
「藤丸くんとマシュちゃんは?」
「私たちは、お弁当を用意しています」
マシュが鞄から包みを取り出すと、真由美先輩の目がきらっと光った。
「手作り? すごいわね!」
それぞれが昼食を広げ、自然と席が落ち着く。
箸の音が混じり始めたところで、真由美先輩が何気なくマシュの弁当を覗き込むように言った。
「ねえマシュちゃん。藤丸くんの分も作ってるの?」
「はい。正確には、一緒に作っています」
「え、藤丸くんも?」
「俺はちょっと手伝ってるだけで、ほとんどマシュだよ」
マシュが小さく頷く。
真由美先輩が目を丸くした。
「えっ……“一緒に作ってる”ってことは、藤丸くんとマシュちゃんって――一緒に住んでるの?」
「はい。そうですが」
マシュがあっさり答えた瞬間、場が一瞬だけ静かになった。
渡辺先輩が箸を止め、達也も目線だけを上げる。
真由美先輩が、悪気なく首を傾げる。
「……付き合ってるの?」
「?」
藤丸が不思議そうに首を傾げる。
「いいえ」
マシュも即答した。
「つ、付き合ってなくて同棲……?」
あずさ先輩が真っ赤になって慌てる。
「え、えっと……不純なのは……だ、だめですっ」
「ち、違います!」
藤丸が思わず声を上げた。
「そういう関係でもないですから!」
「はい。先輩とは、そういう関係ではありません」
マシュが真面目な顔で補強するので、余計に誤解が増えそうになって、藤丸は一瞬だけ頭を抱えたくなる。
「お互い同意の上なら、不純ではないだろう」
達也が平然と言った。声はいつも通りなのに、どこか意地が悪い。
「達也、意外と性格悪いな」
藤丸がジト目を向ける。
達也は表情を変えない。
「事実を述べただけだ」
真由美先輩がくすっと笑って、ぱん、と軽く手を叩いた。
「はいはい、話が逸れたわね。ごめんごめん。――続きはまた今度、ね?」
その“また今度”が一番危ないやつだ、と藤丸は思ったが黙っておいた。
「じゃあ、食べましょう」
改めて箸が動き出す。
真由美先輩が改めて藤丸たちの弁当を見て、素直に声を上げた。
「わぁ……藤丸くんたちのお弁当、美味しそう」
「はい。マシュは料理がすごく上手いんですよ」
藤丸が自分のことみたいに自慢すると、マシュが少し恥ずかしそうに目を伏せる。
「……恐縮です」
「ねえ、一口もらってもいいかしら?」
「いいですよ」
藤丸が弁当を差し出すと、真由美先輩はだし巻き卵を一切れ口に運んだ。
「……なにこれ!? すごい美味しい!」
「ありがとうございます。そのだし巻き卵は、紅閻魔さん直伝のレシピで作ったんです」
褒められて、マシュが少しだけ誇らしげに言う。
「紅閻魔さんって誰?」
真由美先輩の当然の疑問に、マシュは慌てて補足した。
「す、すみません。私の料理の師匠です。昔、色々とお世話になりまして……」
「師匠……料理の……」
真由美先輩が面白そうに頷く。
そのやり取りを、渡辺先輩が静かに見ていた。
「……マシュ。よければでいいんだが、そのレシピを教えてもらうことはできるか」
「もちろん構いません。後でお教えしますね」
マシュはそう言って、渡辺先輩の手元へ目を向ける。
「渡辺先輩も、ご自身で料理をされるんですね」
「……意外か?」
「いえ。その手を見れば分かります。普段、包丁を握っている手ですから」
渡辺先輩は少しだけ目を逸らし、手を控えめに引っ込めた。
それから、しばらくは食事の時間になった。
配膳機のトレーが返される音、弁当箱の蓋が閉まる音。誰かが小さく「ごちそうさま」と言って、空気が一度落ち着く。
――そして、真由美先輩が“会長の顔”に戻る。
「じゃあ、本題に入ろうか」