夢現世界の災凶姫~Disastress in the Parasomnias~   作:サッドライプ

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 異世界人と千年前のお姫様故、知識とか常識とか生活スキルとか話の導線とか色々足りてなさ過ぎるミュートくんとプリナちゃん。二人きりで延々いちゃいちゃさせてても別にいいんだけど、流石にこのままだとストーリーの発展性ゼロなので追加のメインキャラ生やします(ぇ




聖教徒エルギノーザⅠ

 

 料理の経験なんて調理実習くらいしかない俺と、やっぱりお姫様育ちらしく同レベルなプリナちゃん。なんで毎日食べるものは市場でお弁当だったり屋台の串焼きだったりを買って帰るおそーざいばんざい生活。

 どうせヒマだから料理も覚えようかなーとは思うけど、異世界でレシピや動画の検索なんて当然できないし、家庭料理のハウツー本とかも売ってない。誰かに教わるのが当たり前でそんなのわざわざ本にする人なんかいないらしいけど、教えてくれるあてなんてこの街に来たばっかの俺達にあるわけもない。っていうかプリナちゃんは家の外だと『隠蔽』(ハイディング)続行中で俺以外誰一人知り合いいないし。

 

「ねーおばちゃん、その辺どーにかなんない?」

「それであたしが教えると思ってんのかい?うちのお弁当買いに来なくなって売上が減るの分かってて?」

「あははーそりゃそうだー」

 

 金髪で覚えやすいからってのもあるだろうけど、弁当屋のおばちゃんはすぐにこっちの顔覚えてちょこちょこ話す仲にはなってる。このとーり頼りになるわけない相手だけど。

 

 他にはというと、なんかセレブさんがたくさん住んでる地区らしく、この市場ではメイドさんが色々食材とか買い出ししてるのをよく見かける。下っぱの仕事ってことなのか、若い女の子の割合がかなり高い。

 

「仕方ない、その辺歩いてるお手伝いさんにお願いして―――」

「やめなって。あの子達からしたら技術(スキル)は飯のタネなんだから、そこに手を出すと後が怖いよ?おにーさんお金持ってそうだから、お妾さんにでもするってんなら教えてくれる子も居るだろうけどさ」

「おめかけさん?」

「愛人ってこと」

「やめときます」

「一途でいいねえ。今日もお弁当二人分でしょ?弟か妹さんかとも思ってたけど、恋人?その子は料理やってくれないのかい?」

「やってくれたらメチャクチャ嬉しいけど、どう見てもお姫様な子なんで……」

「そんな子と二人で同棲って―――駆け落ちかい?かっ(さら)ったのかい!?」

「ノーコメントです」

 

 何を妄想したのか、きゃーっと盛り上がる弁当屋のおばちゃん。異世界でも女の人のこういうとこ一緒なんだなと思いながら、今日の分の弁当を受け取って代金を払う。

 

 ちなみに、代金はなんか赤色の人工宝石っぽい石。おもちゃ屋で女の子向けに置いてそうなアレだけど、ファンタジー世界お約束の『魔石』らしい。照明とか燃料とか、あとうちにも置いてあったような家電の電池にもなる。

 低級の魔物を倒すとざくざく落とす―――あの遺跡でこんなの落とすやついなかったけど―――から、普通の冒険者(イムニティ)達の一番の収入源になってるとか。で、周りにダンジョンがたくさんある都市だから、いちいち銅貨に替えるよりも魔石をそのまま通貨として買い物に使うようになっているのでしょうってさ。全部プリナちゃんが言ってたことだけど。

 

 まあそこは置いといて、結局そーざいばんざい生活のままかなーなんて思いながら弁当屋から離れようとしたところで。

 

 

「あなた、憑かれてます」

「はい?」

 

 

 シスターさんに出会った。

 や、正式なシスター服をちゃんと観察したことないから、アニメやゲームのイメージしかないけど、シスター服っぽいのを着てるから多分シスターさん。もちろんソシャゲ衣装みたいにへそ出しだったり股間がハイレグレオタードだったりおっぱいが垂らした布で乳首だけ隠れてる系の痴女要素はなくて、かっちりしてる感じの服を着た女の子だった。

 

「自覚症状はありませんか?気分が重いとか、夢見が悪いとか」

「いや、疲れては別にないけど」

「いいえ憑かれてます!すぐに処置が必要です!」

「おわっ」

 

 ずいっと距離を詰めてくる。背はプリナちゃんより低いし顔もたれ目でおっとり系だけど、妙に圧が強い。少なくとも本人は真剣なんだな、っていうのは一発で伝わってきた………けど。

 

「こ、これがうわさの宗教勧誘ッ!?」

「違いますよぉっ!単純に、今まで見たこともないくらい禍々しい霊がべったりあなたに張り付いてるんですっ!!」

「そう言って高いおふだとか買わせるって聞いてる!れーかんしょほー!」

「しません!お代を取ったりもしてないです!

………終わった後に教会に寄付をお願いすることはありますけど、それだって強制じゃないです!!」

 

 そう言ってわーきゃー騒いでたら、弁当屋のおばちゃんが苦笑いしながらこの子のフォロー入れてきた。

 

「大丈夫だよ、おにーさん。その子は確かに聖教会のシスターさんだし、悪霊関係に強くてそれに悩んでる人たちを何度も助けてくれてる子だから」

「……へー。まあ、おばちゃんがそういうなら」

「うぅ。ちょっとまだ怪しんでる視線が心に刺さります。

 でもエルザは負けません!あなたの為にも!」

 

 

「あとうちの店先で騒がないでね。お客さん逃げちゃうから」

「あ、はいごめんなさい」

 

 

 そこでしゅんとしながらおばちゃんに素直に謝るあたり悪い子じゃないように見える。

 実際だまされたって所持金を取られるくらいだろうし、ちょっと付き合って話を聞く時間が惜しいわけでもない。

 それに今まで散々倒してきたあの遺跡のモンスター達が化けて出て呪って来てるんなら、『今まで見たこともないくらい禍々しい霊』になっててもおかしくはないから心当たりはあるっちゃあるし。ファンタジー世界だし実際幽霊がいてもおかしくないかなって。

 

「分かったよ。じゃあどこで話する?」

「ありがとうございます!なるべく周囲に人がいない静かなところがいいです!除霊するとなったら雑念が入って来るとまずいので」

 

 問題はない………と思う。たぶん。

 

 

 

 そういうわけで。

 近所にあった公園のベンチでお話モード。

 

 子供向けの遊具が置いてある場所とは反対側で、公園を突っ切ってショートカットするルートでもないから、散歩する人がたまに通りかかるくらい。

 

「それで除霊って何やるの?エルザさん、だっけ。あ、俺はミュートね」

「はいですミュートさん。皆さん身構えますけど、そんな大層なものではないです。

 エルザはこのとおり抗魔士(イムニティ)で、魂に干渉する夢能(デルシオ)を持ってますので。幽霊さんと交感して、『あなたはもう亡くなってしまっているんです。天にかえってください』ってお願いするんです」

 

 シスター帽からはみ出てる茶髪を指ですくいながら、もう何度もやった説明なのかはきはきと答えるシスターさん。そういえばこのファンタジー世界は例によって赤髪とか青髪とか緑髪とかな人も居るけど、そういうのは全部俺やプリナちゃんと同じ“超人”(イムニティ)で、黒髪が特に能力とかない普通の人なんだっけ。一発で見分けがつくのは便利だよね。

 

「意外に平和的なんだ。『悪霊退散!破ぁっ!!』とかやるのかと」

「そんなかわいそうなことしませんっ!幽霊さん達は生前の強い想いに縛られて、それしか考えられなくなっちゃってるだけなんですから」

「そうなの?あと交感とか言ってたけど大丈夫?逆に幽霊に乗っ取られたりとかしない?」

「……?あははっ、まさかですよぉ。幽霊は一度死んで、肉体をなくして残った魂も不完全なんですから。肉体も魂もちゃんと揃っている生者の方が圧倒的に強いんです。

 体か心のどちらかが弱ってる人に悪影響を与えることはありますし、だから見かけ次第除霊するようにしてますけど、こちらがお願いすれば今までみんなちゃんと聞いてくれました」

 

 なるほどなー。

 

 聞いてて納得だし、話しててお人好しっていうか優しい子だなっていうのが感想。

 こういう子なら協力してもいいかなってなるし、それがこっちを心配してのことならなおさらって感じで。

 

「それで、その……わたしよりよっぽど強いミュートさんには余計なお世話かなって思ったりもするんですけど」

「いいよいいよ。でんきはゴーストに効くけど、ちゃんとお祓いしてくれるんならそっちのがいいでしょ」

「……っ、ありがとうございます!それではちょっとお胸失礼します、じっとしててくださいねー?」

 

 実際ヤバそうなら俺が自分でなんとか出来る気がしないでもない。あの遺跡で死神とかリッチとかそういう系のモンスター(蟲系と同レベルでグロいビジュアルだったけど)をぶっ倒したことだって何度もあるし。

 でも通りすがりの見ず知らずの相手を本心から心配してお節介してるんなら、それをはねのけるほどヒネた人間にはなりたくないなと思って。

 

 だからシスターさんが俺の胸にぴとって手のひらを当ててもじっと待った。

 俺に取り憑いてるっていう霊とお話ししてるのか、目をつむって――――(うめ)いて。

 

 

「――――、ぁ、ぃゃ、……た、す……………」

 

 何かがひび割れ砕け散る音が、聞こえた気がした。

 

 

 そうして十秒、二十秒。

 

「あの、エルザさん?」

「…………」

「エルザさーん、もしもーし?」

 

 どれくらいじっとしてればいいのかよく分からなかったけど、うつむいたまま全然反応がなくなったシスターさんに呼びかける。

 顔を覗き込もうとしたらやっと反応したのか、こちらに微笑みかけて。

 

 

 

「はい。どうしましたか、あなた様?」

 

「………っ?」

 

 

 

 なんでだろう。ふわりとした笑い方、声の雰囲気が、一瞬プリナちゃんそっくりに勘違いした。

 

「えっと、どうだった?除霊成功した?」

「………。ごめんなさい、失敗でした。こんなの初めてで―――ちょっとどうするか考えさせてください」

 

 もちろん気のせいで、すぐにさっきまでのシスターさんの口調に戻ったけど、失敗に落ち込んでるのか暗い感じになっちゃってた。

 

「いいよ気にしないで。今のとこなんか悪いことが起こったとか全然ないし、ダメで元々でしたってことで」

「ありがとうございます。やはり、優しいのですね」

 

 では、またです―――そんな風に言い残してぱたぱた駆け去っていくシスターさん。名前を教えたくらいだけどいいのかな。スマホもなしにどうやって連絡取り合うのかよく分かんないけど。

 

 俺も今日のごはんは買ったけど、他にもちょこちょこ買うものは残ってる。市場に戻って、雑貨屋とか回ってからうちに帰って、ドアを開けて。

 

 

 

「おかえりなさい、ミュート」

「あ、おかえりなさいですミュートさんっ!!」

 

 

 

「………、え?なんでいるの?」

 

 にぱーっと満面の笑顔で。シスター帽を外して、その下にあったらしいイヌミミをぴこぴこさせながらプリナちゃんの隣で元気よく手を振ってくるのはさっき別れたばかりのシスターさん………エルザ。ていうかイヌミミ!?なんで?

 

「どういうこと???」

 

 色々意味が分からなくて玄関でぽけっとする俺を、二人はちょっといたずらっぽい笑顔でじっと見つめてくる。

 

 その後もプリナちゃんとエルザの間で何がどうなったのかは結局分からないままだったけど。

 これがケモ耳わんこ系シスターことP・エルギノーザが俺達の家に住み込みのお手伝いさんとして入ってきた、最初の日の出来事だった――――。

 

 





 ナニカサレタヨウダ―――。

 次回エルザちゃん視点。さりげに話数分けるのは初めて。
 何が起こったかお察しの方も多いとは思うので予めぶっちゃけておきますが、悪意とかなくただの事故です。どちらかというとヤバいのが薄々分かってて不用意に突っ込んだエルザちゃんが有責の。“何か”がひび割れ砕け散ったところまでは、ですが。

>へそ出しだったり股間がハイレグレオタードだったりおっぱいが垂らした布で乳首だけ隠れてる系
 ク○スちゃん、サク○コ様……うっ、頭が。そして最後のひっくるめてF○NZAとかで「シスター」や「聖女」でR18検索掛けるとよく出てくる系。それで聖職者は無理でしょ。

>「れーかんしょほー!」
 霊感商法(れいかんしょうほう)、な。

>「今まで見たこともないくらい禍々しい霊」
 肉体と魂を切り離して活動できる千年モノの悪霊系ヒロインが居た気がするけど気のせい気のせい。一体プリ何ちゃんなんだ…。

>「なるべく周囲に人がいない静かなところがいいです」
 「騙す相手がなるべく周りに相談できないように誘導するのも詐欺の基本だから気をつけた方がいいな」byどっかの幼女

>「こちらがお願いすれば今までみんなちゃんと聞いてくれました」
 だがここに例外がいる。いた。

>何かがひび割れ砕け散る音が、聞こえた気がした
 破滅値+1(愚者の嘘)
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