夢現世界の災凶姫~Disastress in the Parasomnias~ 作:サッドライプ
新顔わんこエルザちゃん深堀り回。
Dランク
あんまり危険じゃないダンジョンの体験会ってことで、俺とプリナちゃんとエルザは普段エルザが狩場にしているっていう山道のダンジョンに来ていた。
道幅は広くて視界はそこそこ良いけど、その外側は木々が大量に生えててすごく薄暗くなってる。いかにも何か出そうな不気味な森で、冒険者を待ち受ける魔物の巣って感じ。っていうかなんかちょこちょこ横に動いてる木がある………ゲームでそういう敵はたまにいるけど、実際に見るとキモいなあれ。
「ここ不人気の
「よろしくねーガイドのエルザさん。でも不人気って、なんで?」
「それはですね――――これ、ですっ!」
プリナちゃんはいつものように
エルザの耳としっぽを初めて見た時は「ファンタジー世界だから獣人もいるんだ!」ってちょっと感動したけど、この様子だとお約束どおり「獣人は迫害されて~」みたいなのがあるのかも。実際どうなの?で当たりだったら気まずいなんてレベルじゃないから聞けないけど。
ということで3人いて2人が見た目隠さないといけない訳ありパーティな俺ら。だから人通りが少ないのはいいことなんだけど、なんで少ないのかって―――説明する前に、エルザが構えた弓が真後ろ60度くらいから襲いかかって来てたデカい鳥を射ち落とす。
一撃必殺。キエエだかクエエだかそれっぽい鳴き声を上げながら、羽を広げたら3メートルはありそうな鳥のモンスターは目を濁らせながら地面に墜落した。
「おー、おみごと」
「ありがとうございますっ!
それでですね、『猛鳥の峠』の名前のとおり、ここではEランク
「そーかな。そーなんだ」
霊感少女エルザは周囲の生命エネルギーを察知する第六感があるらしい。不意打ち防止の索敵スキルかな。
それ抜きでもあのデカい鳥、わりと溜め↑Aスマッシュでいい感じに打ち返したくなる速さでしか飛んでなかったし、それが間に合わないほど気付くのが遅れるには、ちょい気配がうるさかったけど。
『森の中を進めば、上から奇襲されないのでは?』
「もっと危険ですよぅ。木に擬態したEランク『ミメシスメープル』がうじゃうじゃいますし、木々の間をすごくすばしっこく飛び回るDランク『エッジスクワイア』に群がられたら手に負えなくなります」
「なるほどー」
ちなみにプリナちゃんが提案してみた抜け道の攻略ルートは当然罠なんだって。勘がにぶいとどこ進んでもバックアタック連発されるって考えたら、そりゃ不人気ダンジョンにもなるわけだ。適正レベルだったらかなりめんどくさそう。
エルザはレーダーみたいな能力があるから不意打ち食らわないし、武器は弓だから障害物がない空からまっすぐ来る敵はそれこそいい的。逆にかなり相性がいいからここをメイン狩場にしてるってことか。
やっぱ来てみるもんだと思った。ゲームのセオリーと実際のファンタジーダンジョン探索との違いや似てるところを色々知ったり考えたりするだけでも結構楽しい。
「そーいやランクって、なんか基準とかあるの?」
「ざっくりとは。まず
『
Fは小規模の村、つまり10人程度。
Eは大規模の村、つまり100人程度。
Dは小規模の街、つまり1000人程度。
Cは大規模の街、つまり10000人程度。
Bは小規模の国、Aは大規模の国……だからこのあたりは別格です。そもそも余程運が悪くないとそう見るものでもないですしね」
「ほむ」
じゃあただの人間がどれだけ集まっても倒せないSランク、とかもあるのかなあ。
「
『実質
「はいです。それで、
だからたとえばここのDランク『猛鳥の峠』で戦うのはEランクの
「なるほどなー」
しっかり考えられてるし分かりやすい。こう教えられると、自分よりランクが上のダンジョンに突撃しようなんて思わない。その為のランク付けってことか。
そーやってエルザに色々質問しながら山道を進んでいく。普段狩場にしてるだけあって、襲ってくる鳥のモンスターはエルザが一人ですぐ撃墜するから俺が戦うことはなかった。
「火力たっか。全部一発じゃん」
「えっへへ~。エルザは
「防御力無視かあ。つよつよでは?」
「えっへんです!」
『ゴーレムなど、魂がないタイプの相手は?』
「………、わぅ」
ドロップアイテムを回収しつつ得意げにドヤ顔してたエルザが、その言葉で一気にテンション下がってそっぽ向き始めた。わりと容赦ないねプリナちゃん。
でも言われてみると、弓でゴーレム倒すのとかは大変そうだし、強くて便利な代わりに弱い相手にはとことん弱いタイプの能力なわけか。ここみたいに相性悪いのが出てこないダンジョンだけ選ぶなら考えなくていい弱点だけど。
ただ、ちょっと気になることはあって。
「エルザもソロでずっとやってるのか?」
エルザの弓はなんかヒーローもので出てくるような分厚くて斬り合いもできそうな、持ち手のところ以外が刃になってるやつだけど、距離を詰められても強いって感じはそこまでしない。
どうしても苦手な相手と戦わないといけない状況もあるだろうし、ビルドの方向性がソロ向けかっていうと微妙な感じがする。
なんで違和感があってちょっと聞いてみたら、エルザのテンションはさらに下がった。
「最初の頃は同じ孤児院の仲間でパーティ組んでもらえたんですけど、追放されてここしばらくもうずっとソロなのです……」
「追放て」
なんてことだ。まさかその言葉を聞くことになるなんて。異世界ファンタジー、冒険者とくれば追放。ざまぁか、エルザがざまぁするのか。
「なぜ追放?なんかやらかした?」
「やらかすと思われたからなのです」
「何を?」
「誤射です」
「…………あー」
たった二文字でなんとなく分かっちゃった。
もし後衛のエルザがミスって前衛に防御力無視の矢を当てちゃったりしたら、火力高過ぎで即死もあり得る。そりゃ前衛からしたら自分の後ろに居て欲しくないって思うこともあるかもしれない。『どんな乱戦になっても絶対誤射しない』っていう信用を稼げなかったって意味じゃエルザにも原因はある。
ただ。俺としては、ソロで寂しく心細い思いをしながら戦うことになったってあたりにちょっと前の自分を重ねて同情しちゃうわけで。
「安心しろって。俺はエルザの矢、後ろから来ても余裕で避けられそうだから。一緒のパーティで冒険しようぜ!」
「なんかすごいこと言ってます!?………でも、うん。すごくすごーく、嬉しいです。ありがとうございます!」
言ってから「あれ、なんか間違えた?」感ちょっとあったけど。
にぱーっといつもの笑顔に戻ったエルザを見てると、無事にフォローできたっぽい。
「やっぱり優しいです、
「……いちおー聞くけど、エルザが追放されたパーティーってその後どうなったの?」
「あ、索敵役もやってたエルザが抜けたせいか、Dランクに上がる前にどこかの
「お、おう」
マジで『ざまぁ』で『もう遅い』だった。ありがたみが実感しづらい補助役を切って脳筋プレイし始めて転落していくあたりが超テンプレな感じ。
んでそれをにっこにこな笑顔のまま話すあたり、ふつーにエルザもパーティー追放にキレてたか完全に愛想が尽きてるっぽい。
もしかしたら、そいつらも脳筋プレイを選んででもエルザの誤射の方が怖かった可能性もあるけど。………無いか。当たれば即死の矢が援護で飛んでくるのは頼もしいなんてレベルじゃないし。
それがあればあの遺跡サバイバルも、かなり楽になってただろーからなあ。
ちなみにAランク相当の
<じゃあただの人間がどれだけ集まっても倒せないSランク、とかもあるのかなあ
うん、居るね。君の隣に。
<当たれば即死の矢が援護で飛んでくるのは頼もしいなんてレベルじゃない
当たれば即死級の攻撃をばら撒くボス敵相手に文字通り必死で回避しながらちまちま体力ゲージ削るオワタ式バトルも何度も経験しているので、完全に感性がイカれている自称平和ボケした令和育ちの日本人。