夢現世界の災凶姫~Disastress in the Parasomnias~ 作:サッドライプ
頭スカスカ?ああ、いい奴だったよ……。
人類最前線都市に置かれ、所属する
当然、その運営が生半可な労力では足りないことは言うまでもない。常人であれば安息日も昼夜もなく働き通して一月保つかどうか。この都市の
「……む?」
晩酌がてら保存食でも摘まんでさっさと寝よう―――そう思ってわずか十数秒の帰路を辿った先のドアを開くと、中からぱたぱたと足音と気配が近づいてくる。
「あ、おかえりなさいマスター」
スープの沸き立つ音と匂いを背景にエプロン姿で出迎えたのは、先に退勤した受付嬢の一人だった。
長い前髪が掛かっていても分かる大きめの
友人の妹、兄の友人という言葉にすれば微妙な関係ながら、共に食卓を囲んだ回数が数えきれないくらいには交流は長く深い。
「ちょうどよかった。そろそろご飯できますよ」
「またか。物好きめ」
ヴァリスの自室と先程は言ったが、家具キッチン浴室収納そして複数の寝室まで揃ったこの部屋は『ギルド長の公邸』という性質を持っている。当然彼女の兄の住処だった時期があり、先代の妹であるアクティにとっては多感な時期の大半を過ごした家だ。先代の殉職に伴い代替わりしたからと言って
(せっかくマスターと同棲しているんですもの、こういう新婚さんイベントは逃せないじゃないですか♪♪♪)
女の方は脳内まっピンクのようだが、それはさておく。今はヴァリス視点の認識の話である。
アクティに対して極力辛辣な言動を心掛けているヴァリスだが、一つ屋根の下で食事を共にしておいて相手を黙殺するようなことはしない。敵の多い自分は彼女に嫌われて遠ざけるべきと思っているだけであって、傷つけたい訳では断じてないのだから。
組織のトップと受付という断崖の格差こそあれ、同じ職場で話題に事欠かない毎日を過ごしている以上食事の席で自然と雑談になる。
「今日も色々な意味ですごかったですね、カスミ・ユートさん」
「……取扱いを一歩間違えればあのイカズチがこの街に降り注ぐ。厄介な来訪者を抱えたものだ」
今日の話題は何を措いてもコレだ。ただの一撃で比喩抜きに山を砕く、そんな規格外の暴威とどう向き合うべきか。しかも今日も傍にあの『正体不明』が控えていて、そちらは対応を誤った場合にこちらに敵対する意思があることが明確に分かっている。アレがミュートよりも実力に劣る、という楽観はするだけ無駄だろう。
彼を当てがわれた住所に案内した受付嬢クロケからの報告では、『うまい話に罠を警戒した』際に生きた心地がしなかった、と言っていたが、Aランクの超人が警戒して発した威圧感と本気の殺意の区別など常人に付くわけがないからあてにならない。
つまり、何がミュートにとっての
コミュニケーションは彼の友好的な態度を
「でも救出依頼受けてくれることになったじゃないですか。さすがマスターです」
「
「そういうのじゃないです、もう」
「だが問題は、シュードモナス・エルギノーザか」
とはいえミュート本人との対話は今日の時点で終わった話。むしろ一番の不安要素は、彼の隣にいて同じパーティーを組んだあのシスターの方だった。
三人―――否、『二人』で雷の件の釈明に訪れたと聞き、ヴァリスは即座に彼女の資料を用意させて目を通した。
親に捨てられ聖教会の孤児院で育ち、長じて
(……いや、ストレプト国州の教皇庁ならいざ知らず、断絶山脈を越えたこの国で『実践派』と『信仰派』の境目などあるか怪しいか)
『英雄様と同じように高潔な生き方をしよう』と『英雄様が蘇れば全部やってくれるからそれに備えよう』。このエンテロ国州でまで派閥争いをやっているかは疑問だが、エルザは少なくとも前者寄りだろう。
ただしどちらにしても、その教えと
千年前、かの英雄は素晴らしい奉仕精神をもって世界中の人々を救った。聖教会とはその英雄譚を教典として倫理、秩序、社会規範を定めた唯一の宗教組織である。固有の名前が定められていないくらいには、『宗教』という言葉と同意義であるまでに世界中に広まっている教えだ。
無私、慈愛、弱者救済。英雄の生きざまを称え、その信念をそのまま美徳と定めた教えは力なき人々の間で当然のように受け入れられた。
―――当然だ。自分を弱者であると言い張れば、助けてもらえるのが当たり前。恵んでもらえるのが当たり前。そんな自分達に都合のいい
この世界には
もちろん大抵の普通の
だがニンゲンは慣れる生き物だ。忘れる生き物だ。現状に満足よりも不満を抱く生き物だ。
命を懸けて異形を退治し自分達を守ってくれる存在への敬意を忘れ、時にその武力を恐れて排斥すらしようとする。あまつさえそんな扱いを受けた
挙句の果てにはせっかく英雄様が平穏を取り戻した大地で、人間達は権力を求めて相争う。尖兵はもちろん
弱肉強食。強さとはそも自分の都合を自分より弱い相手に押し付ける力のこと。
ならば弱者が強者を食いものにするなどあってはならず、相応の対価を用意しない
当時の社会秩序に反旗を翻す結社であり、聖教会を筆頭とした体制派は当然これを弾圧しようとして―――どうやって、という当然の問題にぶち当たる。
最弱と言っていいレベルの
様々な事情でギルドに合流しなかった
そうして有無を言わさずの鎮圧ができず、所属する
台頭した
………話が盛大に逸れたが、そうした経緯で
互いに権力組織として、社会秩序の為に取引や交流を行うこともあるが、相手に向ける感情としては“憎悪”という表現でも大げさにはならないだろう。
そう、目下の問題であり城塞都市パーシャルのギルド支部長ヴァリスの頭を悩ませているのは。
たった一人で都市を壊滅させかねない災害級
外から見るとこんな感じのやべー組み合わせ。
実態?飼い主とペット。
>自分を弱者であると言い張れば、助けてもらえるのが当たり前
この小説はフィクションです。現実の特定個人、法曹かぶれ、マスコミなどとは何の関係もないといいな(危険球)
>『慈愛の精神が無い、恥を知れ』
この小説はフィクションです。現実の政治団体、NPO法人、マスコミなどとは何の関係もないといいな(暴投)
>相応の対価を用意しない
この小説はフィクションです。現実の不法いm(退場)