夢現世界の災凶姫~Disastress in the Parasomnias~   作:サッドライプ

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 ミュート視点の描写も最近やっと感覚つかんできた作者。小説はやっぱ量書くのが一番練習になるね。




迷宮救助隊サンダーラットⅠ

 

 俺とエルザ、あとプリナちゃん(ギルド非公式)で組むことになった迷宮救助隊『サンダーラット』の朝は早い。………これ元ネタなんなんだろう(令和育ち)。

 

 いや、別に朝から晩まで努力してなんかやってるとかじゃないんだけど。

 

 俺達が引き受けたダンジョンから帰ってこない抗魔士(イムニティ)の救出ミッション。

 帰ってこない、ってのはそのままの意味。『どのパーティーが今日どこのダンジョンに出撃したか』っていうのをギルドはちゃんと報告させて記録つけてるんだけど、それがその日のうちに帰ってドロップアイテムの清算をしてない、ってなったら次の日すぐに分かる。

 

 フルマラソン余裕な抗魔士(イムニティ)の足ならこの街周辺のダンジョンはほぼ日帰りできるものばかり。わざわざ命がけで泊まり込みする必要なんて全然ないから、1日で戻ってきてない=アクシデント発生、ってこと。

 

 

 だから、まあ。

 

 

「はよーっすクロケおねーさん。今日はどう?」

「はよはよぉ。今日は出てるよ、Eランク『嘆きの岩洞』」

「出ちゃったかぁ」

『出ちゃったのですね』

「出ちゃってますねぇ」

 

 救出依頼は朝イチでギルドから出されるわけで、助けを待っている人が居るのに昼までぐだぐだしてたので間に合いませんでした、なんてなったらさすがにバツが悪い。

 だから最近はとりあえず朝メシ食ったらギルドに行って、ギャル風受付嬢のクロケおねーさんに依頼発生がないか聞くのがルーティーンになってた。

 

 ちなみに、俺が居なくても元々こういう依頼はギルドの掲示板に貼り出されてはいたらしい。3日何の進展もなければ依頼取り下げ、戻って来ないパーティーは全滅扱いにするんだってさ。

 他にもおなじみ商人の護衛依頼とか、工事現場や畑の力仕事の依頼だとかも掲示板には貼ってあるみたい。まさに冒険者ギルド感。

 

 依頼はちゃんとギルドの方で内容を精査した上で適正ランクと相場の報酬をしっかり設定してて、ドタキャンとか支払いバックレとかやるとこわーい冷血メガネ率いるギルドの愉快な仲間たちがメンツにかけて詰めてくるシステム。

 仲介の保証人がギルドっていうのが強すぎて、依頼主も冒険者もマジメに契約を履行するから大体うまく回ってるって―――エルザが言ってた。

 

 ただ、救出依頼は特殊過ぎて今までなかなかクエストが出ても消化されることはあんまなかったみたい。

 

 まずこのクエスト、依頼主はギルドで成功報酬しかもらえない。未帰還者はとっくに死んでるから帰って来ないって可能性がかなり高いんだから、この為にいつもの狩場と違う慣れないダンジョンに潜って空振りするくらいなら、普通はいつも通りの稼げるやり方を選ぶ。

 割に合うとか考えないで善意で受けてやろうって言うパーティーが居ても、行方不明になったダンジョンのランク以下の実力だと探索に加えて捜索、もし怪我人とかが居たら足手まといを連れてダンジョン脱出するのはすごく難しい。ギルド側としても余裕があれば考えといてねってくらいの認識だったって―――エルザが言ってた。

 

 なんてエルザ先生の講義はさておいて、今日は出番があるみたいなんで。

 

「じゃあ迷宮救助隊サンダーラット、出撃だ!」

「おー、です!」

『おーっ!……うふふっ』

「頑張ってねー」

 

 

 

 そんな感じで、受付のクロケおねーさんに見送られて。

 

 

 

 Eランク蝕巣(フォーカス)、『嘆きの岩洞』。

 

 街から出て西に十キロちょい先にある洞窟型ダンジョン。

 

 『深奥から風の吹き抜ける音が不気味に響いてくる、おどろおどろしくもどこかもの悲しいその調べは(たお)れた旅人を葬送するレクイエム。汲んでも尽きせぬ未練が地の底から湧き上がる―――亡者の嘆きに惑わされるなかれ』

 ダンジョン名どうやって決まってんの?ってクロケおねーさんに聞いたらどのダンジョンもこんな感じのポエムが資料にくっついてるらしい。あれか、出撃選択画面に表示されるテキストか。

 

 実際ダンジョンの入り口に近づいたら聞こえてきた風の音は雰囲気あったし、びみょーに空気が冷えててホラーだめな人はガチで無理そうな場所。

 って言っても、こういうのは正体不明の何かに危害を加えられるかも、って不安が根っこなわけで。恐怖体験っていうか臨死体験はあの遺跡で一生分したし、あそこの化け物共の百分の一か千分の一なステータスの低レベルゴーストモンスターが居たって全然ビビれない。

 

『きゃー、こわいですー♪』

 

 その感覚はプリナちゃんも同じかそれ以上だと思うけど、それはそれとして棒読みでわざとらしく腕にくっついてくる。

 

―――あざとい?分かってないなーそこらの幽霊なんか一発で『えいや』って消しちゃえる最強ヒロインプリナちゃんが、いちゃつく理由付けのためだけにわざわざ怖がるフリをするこのいじらしさがいいんじゃないの。お約束を理解してふいんきをいい感じに盛り上げてくれる系女子のお茶目さはありがた過ぎて拝みたくなるレベル。

 

 一方で霊特攻の能力を持ってるエルザはというと。

 

「ミュートさんと、おさんぽ~♪」

 

 ふわふわステップしながら、鼻歌うたってた。

 あんまりっていうか全然人のこと言えないけど、行方不明者が出てるダンジョンにこれから入る冒険者の姿かこれが……。

 

 毎日毎日お世話焼かれて、そのごほーびでよしよしなでなでしてるんだけど。

 なんつーか行動が本当に日に日にペット化してるっていうか。しっかり者のおねーちゃんやってたけど本当は甘えたがりなのが爆発してる系なのかな。ボランティアやってる真面目シスターだった初対面の時のオモカゲ?が全然残ってない。

 

 まあ幸せそうだからいいんだけどさ。俺達と一緒に暮らしててそう感じてくれてるのなら悪い気しないし。

 

 

 そんな緊張感ゼロの三人が挑むダンジョン救出ミッション。

 

 

 洞窟の中は光るコケがそこらに生えてて視界は悪くない。ただし時々急に光が消えて、その瞬間スイカくらいのサイズがあるコウモリがかみつきで襲い掛かってくる仕様。これ一番メジャーなRPGのドラゴンがキーってなってるあいつなんじゃ……。

 まあ全部電気ショックで撃ち落とすんだけど。そういやあのゲームだと電撃呪文は勇者の魔法だったよね。霞悠斗(かすみゆうと)は勇者である……?

 

 それ以前にでんきだま(エレキ○ール)でずっと照らしてるから奇襲バレバレなんだけど―――なんかふつーに初見殺しのトラップ多いなこの世界のダンジョン。死にゲー系のデザインなのか、それともあのギルド長が言ってたとおりモンスターの行動パターンが凶悪になってるせいなのか。

 

 ついでにこの洞窟、曲がりくねってる上に分かれ道がかなり多い。

 目印になったり特徴的な地形が何もないから、引き返してもどっちが来た方向なのか忘れそう。

 

 そりゃ帰れなくなる奴も出るよなー、と思うわけで。

 

 なら俺達はどうしてるかっていうと。

 

「こっちですよミュートさんっ」

「そのレーダー本当便利だね、エルザ」

「わぅ♪お役に立ちますよぉ!」

 

 鼻が利くわんこ。じゃなくって、魂を感知してレーダー役がやれるエルザの出番。

 生きている抗魔士(イムニティ)の反応があればだいたいどっちに居るか同じダンジョン内なら分かるみたい。モンスター……蝕魔(インフェクター)とは明らかに気配が違うから間違えないって自信たっぷりに言ってたし、実際これまで外したことは一度もない。

 

 俺はこういうの全然だ。こっちに殺意を向けてくる相手ならともかく、遠くの気配を探るなんて達人みたいな真似はできない。やみくもに探すしかないから、感知担当のエルザが居たのはなかなかいいチームワークができてる気がする。

 

………プリナちゃんは、って?可愛い担当で絶対必要(断言)。

 

 





>エルザが言ってた
 頭よさそうな言い回しや難しい単語が出てきたら大体伝聞系なおばか主人公視点。

>臨死体験はあの遺跡で一生分した
 よく見るとパワーワード。

>本当に日に日にペット化してる
 元々です。ちょっとずつオープンにしてミュートくんの感覚麻痺させつつ馴らして、いつかは本当に人間じゃなくてペットとして可愛がって欲しいなーってなってるけなげなエルザちゃん。

>初対面の時のオモカゲ?が全然残ってない
 そりゃあ、まだ本人が精神崩壊する前の話なので…。

霞悠斗(かすみゆうと)は勇者である……?
 色々違うと思います。

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