夢現世界の災凶姫~Disastress in the Parasomnias~ 作:サッドライプ
三人娘って響きなんかいいですよね。
ガン○ムSEED…在庫処分…うっ頭が
「「「かんぱーいっ!」」」
いわゆる『ギルド受付嬢』として前線の戦士達に親しまれる華の黒髪乙女たちは、定期的に庁舎内併設の酒場で仕事あがりの美酒を楽しんでいた。
店内は
「―――ぷはぁっ。この一杯のために生きてるぅ~~」
「ふふっ。クロケさんったら大げさですよ」
「そう?私もコレがなきゃやってられないって思う時はあるわよアクティ」
早速首元のタイをほどいてふにゃふにゃした顔で至福の一杯を飲み干すクロケに苦笑するアクティ、そしてやや上品さを保ちながらもカップの減るペースは同等のロジー。
女がここまで明け透けに酒を酌み交わすその場の空気になんら反することなく、三人の仲は『戦友』だった。
そうなるに至る経緯は後述するとして、同じ職場の同僚達が酒席で第一に語ることなど、まず決まっている。
「あたしの負担デカ過ぎない!?ミュートくんの担当になってからこっち、何度ひやひやしたか知れたもんじゃないんだけど!?」
「ああ……」
仕事の愚痴だ。
特になりゆきのまま迷宮救助隊『サンダーラット』の担当にされてしまったE・クロケは、現有資産の半額が達成報酬として没収される救出依頼の関係上、最近様々な相手に
高額の費用に納得のいかない者、あのAランク超えの怪物でもそもそも助けようがなかった殉職者の仲間や遺族など、やり場のない感情任せに怒鳴ったり威圧してきたりはままあること。
「その分通常業務で絡まれる機会は減ったんだから、トントンじゃないかしら」
「そりゃ……そうなんだけどさ」
だが。裏を返せば、我を失った荒くれどもが“その程度”で済んでいて、実際に暴力に訴えた者は皆無だった。何故か―――問うまでもない。
「山脈が削られたあの雷鳴、この都市の全員が聞いてるの。
それをやらかした子を誰が担当してるかを考えて、それでも貴女に手を出すなんて真似、自殺願望を通り越して破滅主義者よね」
そう。今この都市にはギルドという大陸有数の武力集団を、たった一人で壊滅可能な規格外の超人が居る。
幸い態度は友好的だし、最初期に警戒させてしまったあの時以外は当たりも柔らかい。だがそれを理由に彼の前で
そんな彼に対して、ノリの軽い言動で『おなじみのクロケおねーさん』という仲を構築できた受付嬢に対してもまた然り。
彼女があの天災の“お気に入り”だというなら、それにちょっかいをかけて山砕く
――――まあ、そんなある意味台風の目に居るクロケの立場を羨む者もまた皆無なのだが。
「そういう意味ではすごいわよね、あのエルギノーザって子」
誰の目にも明示された分かりやすい力。欲深い者はまず取り入って利用したいというのは当然の心理……ではあるのだが。実際にそれを行動に移した者は彼の出現から二月が経過した今でもたった一人しかいなかった。
聖教徒エルギノーザ。
カスミ・ユートの足でも喜んで舐めそうな勢いで全力で
表層的には典型的な同じ女に嫌われるタイプのプライドの無さ。だがあそこまで徹底していると軽蔑や呆れを遥か通り越して、もはや敬意しか湧いてこない。何よりそれをしている対象の危険度を考えると、勇者を見るような視線すらしばしば集めていたりする。
しかもそれで何故か成功を掴み取ってるのだから、もはや未確認生命体に近いナニカとすら形容されて然るべきだった。
「やっぱり信仰にのめり込んでる人ってなんかおかしいのよね」
「………そうですね」
愛情表現が特殊なだけであれはただの恋する乙女なんじゃないかなぁ……とある意味真実に近いところに居るアクティも、その世評にいちいち
当のエルギノーザが第三者の評価など微塵も気にしている様子がないので別にいいか、というのも噂を放置している理由の一つである。
そんな風に
「私はねえ、あそこまですっぱり割り切れたりしないのよぉ………」
心外にも程があるが、一応同類項で
「普段どれだけ気を使ってミュートくんと会話してるか分かる?頭焼き切れそうになりながら全力で『気さくなおねーさん』やり続けてるのよあたしは。今なら劇団の主演女優だって張れる気がするわ……。
他の連中に絡まれるのが減ったからって割に合わないし、むしろ同情されてるみたいで余計に心に来るのよぉ……お願いだから誰か代わってぇ……」
おそらく酒のせいではないだろう頭痛にへにゃりと前傾姿勢になりながら、ぐにゃりと情けない顔でちびちびアルコールをすする残念美女クロケ。隣席のロジーが慰めるようにぽんぽんとその背中を叩いていたが、よく見ると表情は一切動いていなかったので心から友人を心配している訳ではないのだろう。だって。
「――――でもクロケさん、最初それを私に押し付けようとしてましたよね?」
「うぐ」
三人は戦友は戦友でも、時として猜疑に歪んだ暗い瞳がせせら嗤ってるタイプのアレである。都合よく運命共同体になったりならなかったりするので、ピンチになったら同胞を盾や道連れにしようと立ち回るし、そうされる前に
実際クロケの現状を横から見て大変だと思ってはいるが、アクティに彼女の手助けをする気は全くない。だってミュートがまず最初に話し掛けたのはアクティだったし、その時自分を見捨てる気満々だったのがクロケ(とロジー)だったのだから。
ギルドで最前線の戦士達に華を届ける美女三人娘は確かに戦友の絆で結ばれてはいる。
「何よ何よ。ギルドマスターにエルギノーザしていいご身分だからって」
「クロケ、それは―――」
だから、酔っぱらった勢いとはいえ遠回しに『ギルド長に股を開いて安泰の地位を得た淫売』というライン超えの暴言を受けても。
「そんな、私がマスターの下僕だなんて………えへへ、もっと言ってくださいよクロケさん♡♡♡」
「「…………」」
たぶん酒のせいなのだろう真っ赤な顔をでれりとにやけ顔にして許すくらいには―――いや絶対違うなこれ。
ただまあ、したたかに打算と虚偽を交えてなお、飲み屋で愚痴や馬鹿話を言い合えるくらいには友人として互いに関係を築けている。
ただのか弱い乙女にギルド受付嬢は務まらない。決して容易く手折られることのない、
街の住人達から見たミュート・エルザペア(プリナちゃんは透明人間なので)を描写しようと思ったら、ぐだぐだやり取りがちょっと楽しくて脱線。よくある。
なおこの場でただ一人スカしているロジーさんだが、鬼畜眼鏡イケメン×お嬢言葉ムキムキマッチョの絡みで
>足でも喜んで舐めそうな勢いで
実際ご主人様にそう命令されたら大喜びでぺろぺろし始める忠犬エル公。
>エルギノーザして
自分の名前が悪口みたいになってるエルザちゃんだが、多分いざ自分に言われるとアクティと全く同じ反応をすると思われる。