夢現世界の災凶姫~Disastress in the Parasomnias~   作:サッドライプ

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 なお当然ですがミュートくんのこの悪ノリ、現実でやったら普通に犯罪なのでご注意ください。相手が勝手に勘違いしたケースでも詐欺罪は成立します。ついでに二人で予約したホテルにこっそり三人で入るのも。

………え、犯罪云々とかいまさらだろって?




港湾都市プロステⅤ

 

 思えば「おさかなたべたい」から始まった今回の旅行。

 

 それが海辺の街に出かけることになって、豪華版おさかな料理を食べてた。

 ガイドのデンてぃの言ってたとおり、盛り付けに魚の頭が乗っかってたんだけどほんとに口パクパクだった。初めてだわ自分が食べる魚がこの状態なの。「超新鮮です」ってことなんだろうけどびみょーにシュールな気がする。

 まあ手間かかってそうなだけに、ものすごくおいしかったです。

 

 この旅行プランを予約したあの二人には悪いかなとは思うんだけど、向こうは街のお偉いさんと夕食会らしいしもっと豪華な料理が出ると思うからセーフ……だめかな?

 

「全然セーフだと思います!」

「時々倫理観投げ捨てるなこのシスターさん」

 

 こんなことでも全肯定シスターエルザちゃん。シスターとしてそれでいいのか。

 ていうかもう2か月以上一緒に暮らして、色々お世話してもらってるのに、そういえばこの子から苦情とか文句とかお説教とか言われたこと一度もない。プリナちゃんもそんな感じだし、油断してるとやばいダメ人間になりそう。

 

 とはいえお偉いさん接待の夕食会だと二人前を三人で分けて食べるなんてできなかったし、プリナちゃんを仲間外れにしないでよくなったのは気持ち的に助かった。

 ちなみにデンてぃは今日のところは宿の案内だけで解散して、明日またここに迎えに来てくれるらしい。短い間だったけど歩いてる途中も色々話を振ってくれてヒマしなかったし、プロのガイドさんなんだなーって伝わってきた。

 

 ホテルのチェックインもデンてぃが代わりにやってくれて、用意されてた晩ごはんを食堂で食べ終わったら案内された部屋に向かう。最上階の角部屋、何の偶然かちょうど一週間泊まって帰りの船も同じになるらしい。

 都合がいいといえばいいし、本格的にネタばらしの機会がなくなったともいう。これから一週間、うちのパーティー名は『ワンダーブラッド』です……。

 

 まあ、後々面倒なことはあとで考えるとして。

 高級ホテルとくれば、まずやるべきことは。

 

「ふかふかのベッドにだーい、ぶ?」

「ミュート、それいつも使っているのと同じベッドですよ……?」

「あそこも元々ギルドのゲストハウスで、実質高級ホテルですからねー」

「なんだと……」

 

 顔に返ってくるすっかりなじんだいつも通りの感触に困惑していると、プリナちゃんとエルザから衝撃の解説が入る。

 なんだろうケチをつける場面じゃ絶対ないのにこの肩すかし感。

 

「いや、むしろホテルに全然負けてないベッドメイクができてるエルザがすごいって言う場面……?」

「!ミュートさん、ミュートさん」

「よしよーしエルザはすごい子だぞー」

「わぅー♪」

 

 なでなでされるチャンスを逃さないわんこといつものやり取り。

 部屋に入ったからプリナちゃんもエルザもかぶり物を取ってリラックスできる体勢になってる。可愛い可愛いプリナちゃんの顔と、エルザのぴこぴこ耳ともふもふしっぽが解放。今日は移動中ずっとしまってたから、余計に目の保養な感。

 

―――そういえばプリナちゃんにケモ耳とかまだ試してもらってない!なんてうっかりしてたんだドロップアイテムにそういうのもいっぱいあったのにリボンとかフリフリの服とかそういうオプションも付けてもらって、やっぱり王道はネコミミで「にゃん♪」かなでも最近エルザの影響でイヌ派になってる気がするし今日なでなでがうらやましくてエルザのマネをするプリナちゃん本気で可愛かったからエルザとおそろいセットも捨てがたいというかむしろそこでプライドをぽいして全力であざとくなるプリナちゃんという概念がその時点でプライスレスなのでは?

 

 

「ミュート、ミュート」

「はいプリナちゃ…ん……、っ!?」

 

 

「「わぅわぅ♪」」

 

 

 丸めた両手を頭に当てて、鳴き声。わぁエルザと息ぴったり。

 そしてあえて付けミミという安直な方向に走らず仕草でイヌっこになるという逆転の発想。この可愛さは匠の技……!!

 

「プリナちゃん、頭なでていいですか……?」

 

 拒否されるはずがないと分かってて、ていねいに“おうかがい”をするのは、きっとプリナちゃんが今見せてくれた可愛さの芸術に敬意を払わないといけないと思ったから。それくらい感動した。

 

 もちろん返事は、なでやすい位置に頭を持ってきてからの。

 

「わぅ♡」

 

「プリナちゃああぁぁぁんっっ!!!」

 

 このあと全力でなでなでした。

 

 

 旅行に来ても家とやってること変わらない気がするけど、まあいいや。

 いつもどおり二つあるベッドのうち一つでプリナちゃんと一緒に眠って、もう一つはエルザが丸くなって毛布をぎゅーしながら眠ってた。

 

 

 

 

 んで、次の日。

 

「HEY!ゆうべはYOUおたのしみだったかBABY?」

「ふつーにおやすみだったぜべいべー?」

 

 予定通りホテルまで迎えに来た陽気なザ・海の男デンてぃが危険球投げてきたのをてきとーに打ち返す。

 

「………?ミュートさん、どうしましたか?」

 

 きわどい発言だったけど、にこにこ笑いは変わらないエルザ。これは分かってるのか分かってないのかどっちなんだろう。

 

『………』

 

 そしてこっちを見てくるプリナちゃんはどういう感情なのか、気になるけどヴェール付きの今のプリナちゃんに他の人の前で話しかけるわけにはいかない。

 

「それでにーちゃん、決めたか今日のDESTINATION」

「港に連れてってね、欲しいよん」

 

 あ、悩んだ頭のまま答えたら変な口調うつって(いん)踏んじゃった。

 

「BUT、あそこは今BADな―――いや、それでもだな。

 OK!案内するぜ」

 

 観光ガイドとしては色々壊れてるところに客を連れて行くのはためらったみたいだけど、俺達がこの街に来た目的が目的なんで、一応仕事は終わらせとこうって思ってる。

 海の高さを一気に下げたモンスターが居るようならやっつける。気がねなく遊ぶためにも、先に用事は片付けておきたい。

 

 こう見えても長期休みの宿題は最初に一気に終わらせるタイプなのだ。答えが合ってるかは保証しないけど!ていうか長く休んでたらいよいよ解けなくなるから、期末テスト勉強がまだ頭に残ってるうちにやってただけだけど!

 

 もう今となっては懐かしい、二度と会うことはない強敵の話はおいといて。

 

 朝ごはんが終わった後の時間のせいかそんなに賑わってない市場を素通りして、デンてぃの案内で海辺まで進んでいく。見えてきたのは、昨日遠目に見た色々ボロボロな港……だったけど。

 

「おら、今日もさっさと始めんぞ野郎ども!」

「これ本当に終わんのかよー」

「愚痴っとらんで手動かしや!俺ら達がなんもせんかったら、一週間後に食うメシがなくなる奴らがぎょうさんおるんや」

「お、お前暗い顔で下向いてんな。ケツに一発注入してヤろうか?」

「ちょっ、勘弁!真面目にやるってばよ!」

「「「がはははは!!」」」

 

 そこに居たのは。自分達の街が壊れて途方にくれてるかわいそうな被災者じゃなくて、何日もかけてガレキをどけて新しい船着き場を作ろうとして、必死に元の生活に戻ろうとしてるガッツある男達だった。

 

「はえー、やる気満々です」

「………強いね」

「だろ?俺っちの愛するこの街の、自慢の野郎共さ」

 

 得意げに爽やかスマイルするガイドのにーちゃんだけど、このドヤ顔には文句つける気になれない。

 代わりになんとかできるならなんとかしたいっていうモチベは湧いた。

 

「それで、エルザどう?なんか感じる?」

「わぅ……“いない”です、少なくともここから見える海の下には」

 

 まあ、見つからなければそれも空振りではあるんだけども。

 

「ちょっとひとっ走り、今日中に戻ってこれる範囲で海岸探して来ましょうか。今日は東側、明日は西側って感じで」

「頼める?」

「エルザにおまかせです!」

 

 にぱっと笑って次の瞬間、猛ダッシュで海岸線を突っ走っていくエルザ。あの子の足なら、往復しても百キロくらいは楽にこの街周辺の海岸をサーチできるはず。

 その間、エルザが頑張ってるのに遊ぶのも気が引けるんで。

 

「WHAT?あのねーちゃん、急に消えた……?」

「HEYデンてぃ。ちょっと相談なんだけどさ」

 

 ふいんき的に金髪に染めてそうだけどしっかり髪だけは黒いので普通の人間なガイドさん。エルザの動きがまったく見えなかったみたいで混乱してるところ悪いけど、始めるなら早いほうがいいと思うから。

 

『しょうがないですね、ミュートは』

 

 せっかく旅行に来てるのにほったらかしちゃうプリナちゃんには申し訳ないんだけど、気に病んじゃうと純粋に楽しめないから一週間の最初の二日くらいはマジメなことやろう。三日で何の手がかりもなければ、残り半分は切り替えて思う存分観光すればいい。

 そういう思考を言わなくてももうお見通しなのか、苦笑いしてるのが顔が見えなくても分かるプリナちゃんに視線だけでごめんなさいしつつ。

 

 

「俺もあそこの作業、手伝わせてよ」

 

 

 テレビの向こうの遠い場所の話ならともかく、目の前でたくさんの人がガンバってたらボランティアの一つや二つはやろうかなって気になるよね。

 

 

 

 

 

…………。

 

 余談その1。

 

 重機どころか人間サイズのスーパーロボットに等しいミュートは肉体労働の作業現場で当然大活躍するわけで。

 海底に潜水したまま座礁した船を航行可能な沖までゆっくり押したり(こっそりプリナが作業補助していた)、完全に崩れてただの障害物と化した波除けの残骸を雷撃で塵と消し飛ばしたり。

 

 持ち前の明るい彼の人当たりと、前線都市パーシャルと違い抗魔士(イムニティ)にそこまで卑近ではなく畏怖の念が少ないこともあり、この街の住人は彼の貢献に大いに感謝し同胞扱いするまでに至る。

 特に感銘を受けたのが観光ガイドのT・デンティコラだった。彼にしてみればもてなす筈だった観光客が義侠心で自分の愛する街の復興に何千馬力も貸してくれたのだから当然のこと。

 

 

「俺っちは感動した……!きっとあんたのことは死ぬまでフォーエバー忘れないぜBROTHER!!」

 

「ふう。ただいまですミュートさん」

「おつーおかえりエルザ」

 

「BROTHERのパートナーならあんたはSISTERだな!!」

「あ、はいシスターですけど?」

 

 違うそうじゃない。

 

 

 

 余談その2。

 

「黒の13。来たれ、不吉のブラックナンバー……!!よしよし来た来た来た来たァッッ!!」

「おめでとうございまーす!!」

「ふはははっ、強運極まれり!!今宵の宿星は一段と禍々しく輝いている……!」

 

「いかがですかな、我が街が誇るカジノの感想は!」

「フィオっち楽しそうだから花丸♡(……え、確実に今の逆イカサマよね。このVIP待遇、絶対なんかおかしいんですけどー!?)」

 

 この街に純粋に遊びに来てそのまま遊び惚けているとある二人組だが、流石に片方は不自然過ぎる好待遇に内心冷や汗だらだらになっていたらしい。

 

 





>全肯定シスターエルザちゃん
 全肯定とかいうと例の清楚姫ペンギンなるナマモノが頭をよぎって困る…。

>油断してるとやばいダメ人間になりそう
 なおプリナちゃんもエルザちゃんもダメ人間化するならばっちこいな模様。

>プライドをぽいして全力であざとくなるプリナちゃん
 プリナさんの実年齢とミュートくんとの年齢差を考えてはいけない。いい歳して超年下彼氏に「わぅわぅ♪」媚びてて存在がイタいのはむしろプリナさんだなんて絶対に考えてはいけない。現に実態を知ってるエルザちゃんもそんなことは全く考えないで横でアシストしてるんだ(なお

>わぁエルザと息ぴったり
 そりゃエルザちゃん、元々プリナちゃんの妄念に魂が押し潰されて精神成形され直(エルギノーザ)してるので魂の双子レベル…。

>「エルザにおまかせです!」
 行ってこいする忠犬エル公。なおバケモノの本性を丸出しした場合、百キロどころか千キロを日帰り往復でも余裕な模様。

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