夢現世界の災凶姫~Disastress in the Parasomnias~ 作:サッドライプ
前回のあとがきにいただいた感想を返してる時、ふと「キミは生足魅惑のゲッ〇ー」とかいうパワーワードが頭に浮かんできてちょっと「ふふっ」ってなった。
………あながち間違いでもない?(今回の水着プリナちゃんの無法を見ながら)
この世界の陸地は、近海の小さい
もとより大地球体説も地動説も狂人の戯言と一笑に付され、「それで地球は回らない」まま―――人々の総意が世界法則を歪める
故に、大陸東北の岸から沖合五千キロメートル―――ほぼ大陸の横幅に等しく、船で何日もかけて航海しなければならない距離の海上に座すその化生に、他者から観測される可能性は皆無のはずだった。誰一人として、そんな何もない沖まで探索する理由など持ち得ないのだから。
ましてや大陸の真反対側、ほぼ西端の一万キロメートル以上離れた観光地で海水浴に興じようとしていた一人の少女が、「デートを邪魔されたから」などという理由でその生態を咎め、「水の上に居るから」などという理由でその位置を捕捉し、それから僅か十数分でその眼前に出現するなど―――、
【空殻唐加羅搦……、ッ!!?】
「こんにちは、ごきげんよう、そして“さようなら”」
―――有り得ないという予断を、突如として視界を埋め尽くす泡の数々が否定する。
家一軒を呑み込むものから掌大まで大小様々な球体。それらが不規則な軌道、速さすら一定しないまま殺到する。泡同士は互いに接触してもすり抜けるだけで干渉しない。およそ回避など至難どころか何らかの
ある意味では
殺意のみを宿す戦慄のランドリー。挨拶代わりのファンシーショーは、そのまま“さようなら”の挨拶をも包摂したものだった。
だが。
【空っ、殻っ、加羅っっっ】
ソレは、幾十もの水球をまとめて直撃しながらまるで
「………ふーん?」
振動による崩壊が効かないなら、単純に圧倒的な威力の物理破壊へと即座に切り替える。
自らをここまで運んで来た、時速数万キロメートルの水流をか細い線状にして放つ。『ウォーターカッター』と言えばやはり字面からは威力を推し量りにくいが、合金石材宝石問わず切断する、刀剣など比較にならない最強の斬撃武器である。圧倒的な速度それ自体が刃と化し、放たれること千八百。サイコロすら残らない斬滅結界を形成し、対象は微塵と散る……筈だった。
【唐搦―――】
健在。粘ついた砂が絶えず体表を
対して、一度ならず二度までも己の必殺を外された水着姿の少女は、
「――――やはり、そうですか。いっそ清々しいほど露骨ですね」
彼女は眼前の敵の正体も、自らの
―――そうなる為の「恐怖」が足りていない。形作られるための「総意」がない。
今回の旅行における往きの船上でミュートに語った内容、人々の海に対する恐怖という名の共通認識の不足により、海にまつわる
だが、直後にエルザがこう補足している―――内陸に住む人々にも水にまつわる恐怖は確かにあり、水辺に魔物は生まれ得るのだと。
ならばここで一つ問おう。水に関して、人々がもっとも恐れる事象とは何か?
大雨での氾濫による洪水?否。
川で溺れることによる窒息?否。
あまり勿体ぶっても仕方ないので正答を提示すると、水がなくなること。飢えは苦しくともある程度は耐えることができる。だが渇きは、三日と生きることが不可能になる。
災害や事故は備えれば回避可能だが、1か月雨が降らない日が続くというそれだけで起こり得て、一度そうなってしまえば苦悶の内に死ぬことが確定してしまう絶望。
そしてその恐怖が総意として具現するに値するヒントは、例の『千年紀』なる三文小説に記述があった。
推し量るにその権能は、この世に存在する全ての水を呑み尽くすこと。
復活した英雄様が倒すべきらしい5つの災厄。それらは来年に控える“
第一の闇とやらもどこかで何かをやらかしているのかも知れないが、プリナにはどうでもいい。許せないのは、よりにもよって今日この日に海辺を荒らし、愛する人との旅行の中でも最大の目玉イベントを台無しにしたことだ。
一生懸命選んだ水着を全力で喜んでくれた、今日一日でもっと自分に夢中になってくれる。海辺で無邪気に彼と遊ぶ尊くかけがえのない時間。夕暮れの砂浜で見つめあってキス、理想のおよめさんとして叶えるべきで自らもそう望んでいた彼の願望。
世界中の人間全てが渇きに苦しんで死に絶えようが知ったことではないが、今日得られる筈だった至福を御破算にしてくれた報いだけは確実に与えると、そう決めている。
「その
先にプリナの攻撃が無力化されたのは、『全ての水を吸い尽くす』という特性によるもの。
水によって行われる攻撃もまた全て吸収される。流石はシナリオによって敵対を運命づけられた存在というか、露骨なまでの『英雄様』対策だった。
………それで振動崩壊や斬滅結界を凌ぐのは理屈として無理がある?
そう疑問が湧くのは御
対するプリナにしたって、『水を操る』ことと『魂を肉体から脱して行動できる』ことに何の関係があるのかという話だが、彼女自身が出来ると思ったら出来てしまっている。なんとなく一人一種類の能力とされている
適当極まれりだが―――そんなものだろう、所詮
人々の総意が現実を歪める
『この世全ての水を吸収する、故に水属性攻撃は効かない』という屁理屈に対しては、より理不尽で強大な屁理屈をもって上から叩き潰すだけのこと。
「この世全ての水?遠慮しなくても、もっといくらでも用立ててあげましょう。
さしあたって、まずはその三倍ほどいかがでしょうか?」
【………~~~~ッッ!!?】
水着姿の魔女が指を鳴らし、粘体生物を囲うように巨大な立方体の檻が大量の水によって形成される。透明なキューブの中で見た目以上に圧縮された水圧は優に山塊一つ分の加重を与える……が、本旨はそこではない。
加圧から免れるため、“第二の闇”は猛烈な勢いで水を吸収している。海が比喩抜きで干上がるほどに大量の水を
【火…裸…っ】
これまで泰然と
「そういえばミュートの世界では、こういった大量の水を呑ませる拷問の際に行う掛け声があるそうなのです。意外と殺伐とした世界なのでしょうか?」
どころか、嘲笑と共にその抵抗を煽り立てるように戯言を投げつける。
「いっき!いっき!いっき♪いっき♪」
加速度的に膨らんでいくスライム。最早視界に収まらない規模の巨大化を為しながら、水檻も同様に拡張を続けるせいで逃れることが出来ていない。
「いっき☆いっき☆いっき☆いっき☆いっき、いっき、いっき、いっき、いっきいっきいっきいっきいっきいっきいっきいっきいっきいっきいっきいっきいっきいっきいっきいっきいっきいっきいっきいっきいっきいっきいっきいっきいっきいっきいっきいっきいっきいっきいっきいっきいっきいっきいっきいっきいっきいっきいっきいっきいっきいっきいっきいっきいっきいっきいっきいっきいっきいっき」
【……ッ、……ッ!!?!??】
加速する
そして。
「 逝 け 」
【……、…………】
弾ける。と同時に、水檻は圧倒的な逆再生で縮小する。内部の残骸ごと圧縮しながら掌に収まるサイズになった立方体はプリナの手に吸い寄せられるように漂い―――、
「口ほど程度、と言ったところかしら。
まだ2倍に満たないくらいだったのだけど」
ぱん、と打った柏手に挟まれて
世界中から水という水を奪い尽くす絶望の闇―――その筈だった存在の末路は、許容量を遥かに超える水量に圧し潰される、“溺死”だった。
???「我を沈めたくば、この3倍は持ってこい!」
プリナ「え、たった3倍でいいのですか?」
デートのお邪魔虫に対するプリナちゃんのノンアルハラスメント。
攻撃を吸収する相手にはキャパオーバーまでぶち込むのが王道ですよね(なお規模
>秒間百万回の振動が付与された水球
殺意の塊。
>時速数万キロメートルの水流をか細い線状にして放つ
殺意の塊。
>第一の闇とやらもどこかで何かをやらかしているのかも知れない
哀れ湖の底で圧死している蟹さん、プリナさんに“そう”だと認識してもらえてない模様。
>“そう思い込んだからそうなった”
何度でも言いますがミュートくんにピ〇様のご加護なんてありません。本人の妄想の産物でございます。
>
わりとシュ〇ゲよりカオ〇の方が好きだった(隙自語
まあ原理的にはアレそのものではないんですが。そりゃ『自分は超能力者だ』と心から信じ抜いてる連中なんてイカれた人間しかいないよね、という話です。
>見た目以上に圧縮された水圧は優に山塊一つ分
殺意の塊。