夢現世界の災凶姫~Disastress in the Parasomnias~ 作:サッドライプ
水着のゲッ〇ー……じゃなくてプリナちゃん帰還。
ぺたぺた。
ぺったぺた。
「ミュートさん、ちょっとここバランス悪くて崩れるかもです」
「あい」
ぺたぺたぺたぺた。
「………ミュート、エルザ、一体何を?」
「あ、プリナちゃん!」
海水浴しようとしたのに水が引いちゃって、キレた彼女さんが元凶を“沈める”ためにものすごい勢いで海上を滑走して行ってから2時間とちょっとくらい。
衝撃波で真っ二つに割れたあと元に戻るために海水がダイナミックな挙動で荒れ狂うのをなんとなく眺めたあと、エルザと時間を潰してたら戻ってきたプリナちゃんになんとも言いにくそうな微妙な顔ではてなマーク飛ばされてしまった。
まあ二人して砂まみれ、特にヒジとヒザから先がザリザリしまくってるんだから『何やってんだお前ら』みたいになるよねそりゃ。
「待って、聞いて」
「そんな言い訳みたいな口ぶりをしなくても、別に怒っている訳ではありませんよ?」
「そこは心配してないけど」
「………」
プリナちゃんに頭おかしい人みたいに思われたらちょっとダメージがデカ過ぎるんで。や、変な人扱いについては、あの遺跡で反応のない眠り姫ちゃんに妄想電波聞かせまくってた時点であんまり言い訳できないけどそれでも。
最初は普通に大人しく待ってたんだ。今回の騒ぎの原因のモンスターを倒してプリナちゃんがこの砂浜に戻ってくるのに、俺達がそこから離れる訳にはいかない。
ただいくら裏ダンジョン加入最強ユニットなプリナちゃんに心配はいらないと言っても、彼女が戦いに行ってる最中にへらへらエルザと遊んでるのは、ちょっと人としてアウト。それは分かってたんだけど………さすがに具体的にどのくらいで帰ってくるか分からないまま待ってると色々限界というか。
最初は足元の砂をちょっとかき混ぜるくらいの手遊びだったんだけど、なんか気が付いたら足ひっかけるくらいの高さな砂壁ができてて。そんな俺を見て何を思ったのかエルザも素手でここ掘れワンワンしはじめて、大量の砂が目の前に積まれてから、気が付いたら工作始めてた。
公園の砂遊びなんて幼稚園の頃でさえやった記憶がないけど、幼稚園児でも出来る遊びなわけで。要は水かけつつ固めて城とか作るんでしょとか思いつつ適当に作業してたら。
「………立派なお城ですねっ」
「生あったかいフォローありがとう」
「わぅ!自信作です!」
人をお空の彼方まで殴り飛ばせる今の体で、湿った砂をちょっと力こめて握ったらコンクリみたいになる。固まった砂の積み方とかエルザがなんか器用にアドバイスとフォロー入れてくれて、城壁と城門と見張り塔までついてる本格的に城っぽいナニカが完成してた。さては経験者だな?
わりと動画に撮ってSNSに上げてもイケそうなクオリティ。エルザのフォロー付きだとしても自分がこれ作ったことがピンとこないくらい。
「うん、結局なんだかんだがっつり遊んでたわ。本当にごめん、プリナちゃん」
「謝罪は不要です、本当に怒っている訳ではないのですから。………むしろ、微笑ましい?可愛い?」
「わーわーなんか別方向から刺さるー!」
「おかお真っ赤ですよーあなた様。日焼けですかー?」
「日焼けですー!」
なんだかいつもよりふんわり度が上がってるプリナちゃんの笑顔はやっぱり可愛いんだけど直視しづらい。もしかしてこれが恋?いいえ、
元凶をぶっ飛ばしてすっきりしたのか、機嫌は完全に直ってるみたいなんでそこは安心。虹色マシマシになってた髪も白メインに戻ってる。
「ところでこの城、名前などはあるのですか?」
「名前?うん、プリナちゃん待ちながらだったからなんとなく考えてたのがあるんだけど。ほら、門のところに書いてる」
「本当ですね。ええ、と―――」
「『おかえりプリナちゃん城』、って」
「―――――」
一瞬ぴたっ、ってプリナちゃんが固まって時間停止したみたいになった。
うん、『サンダーラット』なんてパーティー名とか口上とかもそうだけど、こういうの考えるセンスが壊滅的なのは自分でも分かってる。でもあまりのひどさにプリナちゃんでさえ絶句してとっさにフォローできないレベルだってお見せされるとさすがにいじけそう。
「………っ、ぷっ、あははははっ。もう、あなた様は、くすくす、本当に」
フリーズから復帰したと思ったらちょっと涙目になるくらい爆笑されるし。
「いいよもうプリナちゃんが楽しそうだからそれで」
「ふふっ、いじけないでください。そういえばいつも私が言う側だったな、というだけですので」
それは言われてみれば確かに。いつもおでかけは俺と一緒でそれ以外は家でお留守番だったから、「おかえり」はプリナちゃんからずっと言われる言葉だった。
さっきキレてたことが嘘みたいに嬉しそうにして、プリナちゃんは両手で俺の手を取って胸元に抱えこむ。
「待って待って砂たくさんついてるから汚れちゃう」
「だめですっ、逃がしません♪」
抵抗してザリザリしてるのをプリナちゃんのきれいな肌にこすり付ける訳にはいかないし、でもせっかくの水着姿に砂を付けるのがなんかとんでもない犯罪な気がするしであわあわ。
スキンシップは嬉しいのに素直に集中できない……!
悩む俺の顔を本当に楽しそうにのぞき込んで、愛しの彼女さんは。
「ただいま、ミュート」
「……うん。おかえりなさい、プリナちゃん」
見つめ合って、いつもと逆のあいさつ。なんだか新鮮で、照れくさくて、間違いなく幸せ。
「いい話ですぅ……っ」
号泣するところじゃないと思うんだけどね。どうしたわんこ。
とんだお邪魔が入ったビーチの海水浴だったけど、今度はプリナちゃんも入れて三人で砂の城を完成させて。再開して夕暮れまで遊ぶ俺達の姿を、その城はそばでずっと見守っていた。
………で、その後のお話。
「BROTHER、俺っちは分かってるぜ。あんたらがこの街のHEROだってこと。
この街のSAVIOR『ワンダーブラッド』、ずっとずっと語り継いでやるさ、SAY!!」
「うん、まあ。………ほどほどにね?」
「よかったんですかミュートさん、訂正しなくて」
「解決したの、一から十まで全部プリナちゃんだしなあ。無理に手柄主張するのもちょっと」
「そういえばプリナ様、夜の間に海面を元々の高さまで戻してあげたんですね?」
「その方がミュートが気分よく
「それもそうですねっ!」
結局パーティー名勘違いしたままの陽気な観光ガイド、デンてぃとさようならありがとうのお別れをして。
「ククク。大いなるリベンジはその時を待ちわびている……!」
「素直に助かったって言えないフィオっちダサーい♡よわよわ♡
………あの、本当にだいじょぶ?あとで全財産の半分没収されたりしない?」
「しませんしません。こっちも勝手に旅行コース横乗りしちゃってごめんね?」
「そっちは全然いいよー♪最初の予算よりいっぱいぜーたくできたし、オモシロいシチュ楽しめたし、怪我でおるすばんのディジーに自慢しちゃおっと」
「姉妹喧嘩の仲裁など知らんぞ、アージェ」
「そう言って最後はなんだかんだ面倒みてくれるフィオっちでーす☆」
「貴様……ッ」
初日から勘違いされたまま接待を受けてたところに二回目の海面低下が起きて、その場で解決を依頼されて引くに引けなくなったけど一晩でなんとかなってたのでギリセーフだった、そんな本物の『ワンダーブラッド』と帰りの船で予定通り一緒になって。
印象通り濃ゆいキャラ(残りの一人もなんか濃ゆそう)の二人と交流しながらちょっと長い船旅を終えて。
そして。
「プロステから感謝状が届いている。市長から街の救世主『ワンダーブラッド』に全住民を代表してお礼申し上げる、と。
――――何がどうしたらそんなことになる?」
「「「「はい、すみませんでした」」」」
戻ったパーシャルの街でメガネギルド長に睨まれて、こっちのプリナちゃんと向こうの不在だったディジーさんを除く四人で揃ってぺこりと頭を下げる。
うん。最後のオチも含めて、本当に楽しい旅行だった!!
旅行編しゅーりょー。
サブタイのナンバリングもそろそろ嵩んでたので最後は巻きで。
>「おかえりプリナちゃん城」
その昔、■■と化した妹を■■して色々なものが切れて自分の髪も虹色に変わって、発狂限界寸前のボロボロ精神で城に戻ろうとしたら、守ってきた兵士や民達にバケモノ扱いされて入城を拒否されて、でもよくよく考えたらもうそこに心許せる人は誰一人いなくなってるから帰る意味すらないことに気付いて、完全に虚無ったお姫様がいた……とかそんなことがなかったらいいですねー(曇らせ)
>「プリナ様、夜の間に海面を元々の高さまで戻してあげた」
でうすえくすまきなプリナちゃん。一晩経ったら元通り、すごい勢いで増水したのに大波が起こったりもしてない。今回の旅行には一点を除いて大満足だったんで、機嫌がよろしかった模様。