夢現世界の災凶姫~Disastress in the Parasomnias~ 作:サッドライプ
多分クッソ汚いやつしか生えないとは思いますが、それでもいいという筋金入りの方はキマシタワーを建ててみてください。
時間はミュート達が港街への旅行からの帰路、自分達と取り違えられた『ワンダーブラッド』の二人と船上にて親交を結んでいた日時に
縦長に伸びる大陸の南方に位置するスタフィロ国州。四大州連邦に名を連ねているものの、実質は最大版図ストレプト国州の属国領に近い小国である。その或る海岸線にて。
分厚い雲に負けぬほどきつい陽射しに照らされた、入り組んだ岩の岸辺。それを一望する小高い崖の上に建てられたコテージに、二つの人影があった。
一人は
未成熟な肢体はそのシルエットを隠すようにゆったりした丈の長い道士服が覆っているが、身に秘めた暴威は一定の知識人からすれば瞭然のこと。その寝姿も周囲に与える印象は野生動物のそれに似て、かつ数十倍は鋭いものだった。
もう一人はデッキの柵にもたれて海を眺める女だが、こちらは一言で表現するなら『奇妙』だった。
背丈は先の少女より高いが、
年齢不詳・正体不明の怪人物。だが寝転ぶ少女にとっては既知のものでしかなく、さりとて親しいと呼べるほど気安くもなく。二人の間の空気は受容1割・無関心9割といった微妙な温度感で停滞していた。
「海の水、もとに戻っちゃったねえ」
「ん、解決したならそれは何より。我が国の海辺の民も、今回の被害で大変だったから」
「おや、そういうことを気にするとは意外だね。貴女は
戦闘狂と
「この身の責務の一つに対して愉悦を感じていることは否定しない。
でも、私が自身の立場と民草に無頓着であると決めつけられるのは不愉快。私に教育を施した者達、ひいては母様―――陛下への侮辱にも値する。今すぐ撤回すべき」
「……くくっ、これは失礼した、エピデルミディス“姫殿下”。撤回しよう」
相手の立場を理解していてなお
多分に嫌悪を含んだ会話相手に構う気配もなく、女は眼下の崖にぶつかっては散る波
「しかしねえ。ボクとしてはこの状況は手放しに喜んでばかりもいられないのさ」
「どういうこと?」
「不自然なんだよ。この海面低下を起こしたのは、
――――そう“信じられている”存在が予言の年を待たずして倒された、ということさ。本来あり得ないだろう?だって救世主が蘇る年にはまだなっていない」
芝居じみて手足を大きく動作しながら女は確信を持って断言する。
「そうは言っても現に海面は元に戻っている。そんな
「居るものか」
ぐらぐらとチェアを揺らしながら、いかにも『適当に考えました』と言わんばかりに投げつけられる、ただし至極真っ当な指摘。それを即答で否定し、語りは止まらない。
「世界を滅ぼす五つの闇は砕かれ、民衆は英雄ソブリナスによって救われる!
それが信仰。故に筋書。つまりは“摂理”だ!………逆説的に居る筈がないんだよ、英雄の代わりに戦い、その栄光に取って代わろうとする存在など」
「………あっそ。じゃあ何?その第二の闇さんは急に人類への慈悲に目覚めておとなしくなってくれたとでも?」
「まさか。人類という総体を
まともに会話が成り立つ相手ではないし、成り立たせる努力を
“知識の無い者”“自分と異なる価値観”を見下す自称知者特有の
そんなこちら側の快不快に一切
「『英雄様』にしか倒せない
………………だが」
そこまで述べたところでぴたりと
声が震え、息が震え、筋肉が震え、心が震え、女は噛みしめるように言の葉を垂れ流す。
「ここまでしながら名乗り出ないなんて、いつまでも奥ゆかしいことだねソブリナス。
無駄さ、そんなことで世界がキミを放っておかないのはキミが一番よく分かっていることじゃないか!
ああ、今キミはどんな顔をしているのかな。愛を失い、絆を失い、慈悲を失い、信念を失ったキミの顔はどんな顔だったかな。また存分に見せておくれよソブリナス。ふふ、ふふふっ、くふふふふふ……っ!!」
やがて頼んでもいない語りから空想上の相手への妄言へとシームレスに移行する姿に、コメントなど一つしか出てこない。
「きっしょ」
一人芝居の世界に入り込んでいても一応こちらに意識を向けていたのか、女はまたころっと元の演技過剰な仕草に戻して話題を戻した。
「ははっ、ひどいねえ。まあいいさ、こういう事情だからね、少し
どのみち来る予言の年に備えて、司教会の方針で各地に浸透を続けていることだしね」
教化・布教・改宗という、侵略の口実の黄金パターン。どこかの十字教がどこかの世界で悪意と不幸と惨劇を至るところにばら撒いたのと同じ手口を使うついでに相乗りするという、実に
この
「ご
記録によれば聖教会発足以来一度も名前の変わっていない最高権力者。
その“気まぐれ”に口を出せる理由も権力も、たとえ一国の姫といえどS・エピデルミディスは持ち合わせてはいないのだった。
この連載ももう半年くらいなんですねー。
半年くらい経ってるから最初の頃に出て来た単語なんてみんな忘れてくれてるでしょ(適当)
………スタフィロ国州のアウレウスなんて言ってる時点で医療関係者の方は即座にツッコミ入れる案件な気もしますが。
>「それが信仰。故に筋書。つまりは“摂理”」
『ルール』を知ってる側ではある。
>「民衆は英雄ソブリナスによって救われる」
一体何リナちゃんによって救われるというんだ…(反語)