夢現世界の災凶姫~Disastress in the Parasomnias~   作:サッドライプ

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 おや、サブタイトルのようすが…?

―――はいそこ最初の二文字に『ネト』とか入れないの。




礼賛騎士■■ラセ■■Ⅵ

 

 旅行前にメガネギルド長が言ってたみたいに、最近救出依頼で出撃する回数もちょっとは減ってきた俺達迷宮救助隊『サンダーラット』。

 ただ元々は暇つぶしでランク低めのダンジョンに潜ろうみたいなのが目的だったわけで、

 

 前日戻って来なかったパーティーがいなくても、依頼抜きで3人で色々なダンジョンに潜ってみることも増えた。さすがに『かみなり』みたいなダンジョンごとぶっ壊すレベルの火力はNGだってのは分かったから、縛りプレイ状態だけど……まー同じダンジョンに他のパーティーが居合わせてたのをまとめて殺っちゃいました、なんてなったらてへぺろじゃ済まないから仕方ない。

 つってもあの湖の遺跡よろしく本気出さないとこっちの命の心配が必要になるようなモンスターに、街周辺のダンジョンでエンカウントしたことはない。片手間の電撃とエルザの弓で大体一撃で片が付くから、ダンジョン探索って言ってもほぼ雑談しながら観光してるようなもんだった。

 

 ダンジョンって色々あるから見てて飽きないし。『おどろおどろしい』とか『あやしい』とかが基本だけど、山とか森とか自然の景色の中にあるダンジョンもけっこう多い。マイナスイオンっていうか負の思念はびんびんに発生して感じられる系。

 あとは古い洋館とかボロボロの城とか、建物系のダンジョンもそこそこある。人の手の入ってない原っぱとかを抜けた先にいきなりドンとそびえ立ってるのは微妙に「えぇ…」ってなるけど。

 

 中には赤い結晶の柱がいくつも立ってる泉のダンジョンとか、普通にキレイじゃんってのもあった。水面に赤い光がキラキラ反射して、ファンタジー感爆上げではしゃいでたらプリナちゃんが『ほほえましいなあ』みたいな顔しながら水しぶきを操って更に光が散乱するアトラクションを見せてくれた。

 地球にあったら絶対人気デートスポットになりそうなイベントを起こしておいて、「あなた様だけの為のアートですよっ」っていたずらっぽくはにかむの可愛くて彼女として最高過ぎる。

 

………まーあの赤い水晶ダンジョン、ちょっと難易度お高めのBランクだったんでエルザはレーダー役に専念させて護衛はプリナちゃんに任せて、目についたモンスター(空に浮いてマジックミサイルみたいなの飛ばしてくるエレメント系)をかたっぱしから“さーちあんどですとろい”しなきゃだったんでそこそこいい運動になったけど。

 

 ダンジョンから湧きモンスターがあふれ出ないようにする為の間引きに、ギルド長が出ないといけないレベルだってことでいつもの救助依頼成功と同じくらいの報酬が出たんで稼ぎも良かった。

 

 

 そんな風に最近本格的に冒険者パーティーっぽくなってきた『サンダーラット』は、今日も救助依頼関係ないところでダンジョンアタックをしていた。

 場所はDランク蝕巣(フォーカス)砂礫(されき)の丘』。岩がごろごろ転がる坂の多い荒野、みたいな感じのダンジョンだ。出て来るモンスターもでかいヘビ・でかいサソリ・動くサボテンなどなどいかにもって感じのラインナップ。

 

 暑くはないんだけど乾燥してて砂混じりの風が吹きつけてくる、あんまり居心地がいい環境じゃないんだけど、意外とここは結構人気の狩場らしい。

 なにせ視界の開けた空間で奇襲を食らいにくい。毒を使うモンスターが出るけど即死や麻痺みたいな理不尽な症状じゃなくて“少しずつ弱っていく”系の毒だから、戦闘後すぐ回復すれば問題ない。で、毒持ちは宿命として毒なしのモンスターより体力が低くて倒しやすい。あと解毒薬がドロップすることが多く、これが腹痛ゲリ吐き気頭痛発熱わりとなんにでも効くんでいいお値段で売れる。

 これだけ条件がそろってたら、そりゃこの辺りのランクの冒険者がメインの狩場として周回するのも当然っていうか。現にさっき他のパーティーが俺達とはち合わせて、見事に全員目玉見開いた後そそくさと別ルートに駆け足していった。なんでかなー(棒読み)

 

………うん、嫌われてるわけじゃないからいいんだ。他の冒険者たちにビビられてるのはそろそろいいかげん自覚してきたし、友達とかできなさそうだなーって思うと少し落ち込むけど。

 

「大丈夫だいじょうぶ、俺にはプリナちゃんとエルザが居る、ぼっちじゃないよー」

『ええ、大丈夫ですよ。ミュートは独りじゃありません。

 仮にぼっちだとしても私の方がずっと長くぼっちだったので、不安がることは全然ないですよー』

「わぅ!エルザも、エルザもパーティー追放されてぼっちでした!」

「あははっ、気持ちは嬉しいけど何アピールさ。でもありがとね」

 

 ぼっちの絆あったけーなー。

 ってのはおいといて。そんな元ぼっち三人衆が今日ここに来たのは、危険度が低めで敵にクセも少ないこの荒野のダンジョンで、エルザの新装備を試す為だった。

 

黒羽々錐(装備/射撃)

:精密狙撃S

:遡行の魔弾A

:歴史抹消・逆魔時刑A

:弾数制限解除X

 

 くろはね…?まず装備名からして読めないけど、字面からして強力そうなアビリティが四つ。あの港街の旅行でプリナちゃんがやっつけてきた、海面を下げるヤバいモンスターからドロップした装備らしい。

 機械を腕にはめて砲弾を発射するって時点で、青いネコ型ロボット一行が劇場版でよく使ってるアレを連想するけども。

 

 エルザに渡した方が具合がいい、とプリナちゃんに申し訳なさそうに言われた時は、『そりゃそうでしょ』としか思わなかった。プリナちゃんは普段戦わないし、いざとなったらあの大津波で全部なぎ払える。俺だったら電撃以外の飛び道具使うくらいなら多分走ってぶん殴るのが一番“速い”。戦力強化って意味なら元々射撃タイプのエルザに使わせるのが当然だと思う。

 

 じゃあなんでプリナちゃんが申し訳なさそうだったかって言うと、なんと『ミュートにプレゼントをしたことがなかったから、先にエルザに何かを渡すのが気が引ける』って。

 

「そんなこと言ったって、プリナちゃんがあそこに居てくれて、しかも彼女さんになってくれた時点で十分すぎるくらいもらってるんだけど」

『………っ、もう。そう言ってくださるのはとても素敵ですが、私とてあなた様と恋人になってそれ以上のものをいただいています。

 愛も、幸せも、救いも、―――生きる理由も、生まれた理由も』

「う、うん?」

『返させてください。代わりと言ってはなんですが、“とっておきのもの”を贈ると約束します』

 

 そんなやり取りをして。“準備”のためと言って、時々エルザと空き部屋にこもってなんかやってるんで楽しみにしとこう。料理とかかな、編み物とか裁縫(さいほう)とかかな。せっかくプリナちゃんが気合入れてくれてるみたいだし、探るような無粋はナシで待ってる。

 

 

 話を戻して、エルザの新しい武器の具合はって言うと。

 

 

「うん、なんかキモい」

「ひどい!?……って言いたいんですけど、これは完全に同意ですねー」

 

 

 三つめの“歴史抹消”っていう物騒な単語から繋がらないから二つめの、“魔弾”っていうなんかこー男の子ゴコロをくすぐるような名前のアビリティの効果だと思うんだけど。ふつー砲撃ってさ。

 相手を認識する→撃とうと意思を決める→狙いを定める→砲弾が発射される→砲弾が飛んでいく→対象に命中する………っていう流れなわけじゃん。

 

 これが全部逆なの。なんか遠くで敵が撃たれて死んだ→砲弾がエルザの方に“戻って”くる→発射音が響く→エルザから撃つ時の殺気を感じる………になるの。

 エルザが相手を攻撃しようと思った時には敵はとっくに死んでる。無我の境地とかそういうんじゃなくて、単純に時間的な意味で。なんかうまく説明できてる気がしないけど、一番それっぽくまとめると『逆再生の魔弾』ってことになるんだと思う。

 

 いや強力な能力だとは思うよ?先手必勝、相手より先にこっちの攻撃を叩きこむって意味じゃ、エルザの魂への直接攻撃がほぼ即死能力なのもあるし反則級って言ったっていい。未来から飛んでくる砲撃なんて、未来予知でもしてないと防げる訳がないんだから。

 

 でも。現実の一部分が切り取られて逆再生されてる、なんてのを間近で見た時の気持ち悪さはハンパなかった。なんか人間っぽいのにぐにゃぐにゃに歪んでる顔やシルエットが描かれた現代アートを見た時みたいな気分の悪さだけど、絵の中じゃなくてこっちは現実な分破壊力は段違い。

 

「実戦的な意味でも、この気持ち悪さに慣れないと危ないです。“まだ撃とうとすら思ってない敵が倒れて”、その次の時点で発射体勢に入るんですから。

 敵が複数居るような状況だと、戦闘の組み立てを失敗して無防備なところを他の敵に接近されて一撃食らう、なんてなりそう」

「わぁ。俺その武器絶対使いたくない」

「ひどいです!?」

「ひどいっつったって、二手三手先を考えながら戦うなんて俺にできると思うか?」

「思わないですけど!」

「ひどいのはどっちだこのわんこ!おしおき!」

「ふぁっ!?わふぅ~♡」

 

 ほっぺむにー。もうじゃれあいの延長だけど、これで嬉しそうな顔するエルザはなんか超えちゃいけない領域を超えちゃってるような。……首輪の時点でいまさらか。

 

「でもクセは強いけどしっかりつよつよ武器じゃんそれ。

 やっぱ“海面を下げる”なんてヤバいモンスターからドロップするだけは―――」

 

 

「――――あ。まあ、仕方ないですかね」

 

 

 ふと、また“現実が歪む”。今度はさっきの比じゃないくらいに気持ちが悪くて、でも目に見えた変化は何も起きてない。ただ遠くに向かって、硝煙を吐く砲身を突き出しているエルザが居るだけ。

 

「え、今度は何?」

「ミュートさん。今、3つめの能力発動してみたんです」

「………たしか『ぎゃくまじけい』だったっけ?」

「はいです。たぶんこれ2つめの『逆再生の魔弾』の発展形です。放たれた砲弾が起点の時間軸を飛び越えて―――標的の“過去”に着弾したんです」

「????」

 

 “魔弾”の理屈でさえちょっと考えるのキャパオーバーなんだけど、今度は多分自力で理解するの無理なんだろうなって聞く前から分かる。

 これだけ聞いて「理解した」って反応できる人はやっぱりうらやましい。まあプリナちゃん頭もいいからね。

 

『過去に砲弾を受けて「殺されたことになった」、故にその時点から対象が紡いで来た時間が現在との矛盾を引き起こす。故に歴史抹消―――なるほど、随分と悪趣味な』

「え、これプリナ様からいただいた……いえナンデモナイデス」

「どういうこと?」

「平たく言うと、たとえば十年前に撃ち殺された子供が今大人になって元気に戦場に出てきたらおかしいですよね?だからソレが存在したという“歴史”が十年前のところから消えてなくなったんです。

 エルザにさえ、『消した』ことは分かっても、その標的が『どこ』の『何』だったかはもう分からない」

「あー」

 

 なんとなくだけど、これまた青いネコ型ロボットのアニメでたまにやってたような、『過去の時間に飛んでやらかしたせいで歴史が変わって、現在に戻ったらあるはずのものがなくなってた』系の話っぽいのかな。それを砲弾一発で引き起こす、と。

 

「いいのそれ?」

「『逆再生の魔弾』と同じように、現状把握はちょっと戸惑います。敵は最初から『いなかったことになった』のに、身体は戦闘体勢なんですから」

「じゃなくて、撃っていい相手だったかが後から分からないって話。誤射とかまずくね?」

「あはは。『精密狙撃S』もありますから、撃っちゃいけない相手を間違えて撃つことはないと思います」

「そういうもんかなあ」

 

 

「はいです。―――『未来』のエルザが撃つと決めた相手です。『現在』のエルザにはもう詳細を知る術はないですが、どうせ“敵”だったに決まってますよ」

 

 

 そう言ってプリナちゃんに似たふんわりした笑顔を見せるエルザ。

 まあダンジョンで敵だって言うならどうせモンスターだったんだろうし、そんなつっつく話でもないか。

 

 

 





 ほのぼの。ほのぼのじゃない要素なんて『なかったこと』になったからほのぼの。

エルザ「■■ラ君……?誰でしたっけそれ、刹那で忘れちゃった(ガチ)」

>「あなた様だけの為のアートですよっ」
 あの、隣にエルザちゃんが……いえなんでもないです

>ちょっと難易度お高めのBランク
 等級としては小国を滅ぼせるレベルの抗魔士(イムニティ)でないと探索できません、という難易度。それで「そこそこいい運動になった」ってコメントである。あまつさえ認識がムードのあるデートスポット扱いである。
 ちょっと症状悪化してないですかねプリナさん(犯人)

>「私の方がずっと長くぼっちだったので」
 プリナさんの来歴考えると笑うに笑えない自虐ネタ。

>『生きる理由も、生まれた理由も』
 愛が重い(深海2万メートル水圧相当)

>『逆再生の魔弾』
 ちなみにこの能力に初見で当たって、一瞬で「着弾が前倒しでずれるってことは、攻撃動作時は無防備っぽい」と判断して、被弾を根性で耐えて強引に首を奪りに行く最適解を実行したぽいぬとかいう修羅が昔居たらしい。

>『ぎゃくまじけい』
 正しくは逆魔時刑(サカシマドケイ)。厨二ルビばんざい。
 ところでなんでいきなりエルザちゃんはこんな能力発動したんでしょうかね。ヒントは『直前のミュートくんの発言内容』と、『それを盗み聞きしていた誰かさん』と、『その誰かさんにお偉いさんが通達していた情報』。

>『随分と悪趣味な』
 出現した瞬間から強さが変わらないことがほとんどの蝕魔(インフェクター)にはあまり意味がないが、成長する存在に対して『成長前』の未熟な時点に攻撃を着弾させられるという点では凶悪極まりない能力。
 よーするに対人用に特化したアビリティなのである。しかも死体どころか誰の認識にも残らないように殺すという、尊厳破壊の極み……。

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