夢現世界の災凶姫~Disastress in the Parasomnias~ 作:サッドライプ
いつの間にか毎週水曜更新になってるけど、水属性ヒロインだしなーとちょっと寒いことを考えてみたり。
多分次の人物紹介の時にまた切り換わる。
意外でもなんでもなく、俺より年下の中学生くらいに見えるボツリヌス少年は実家暮らし。
家族に他に
あ、ちなみにこのパーシャルの街の造りだけど、まずギルドがこの街の正門から入ってまっすぐ大通りを進んでいけば見えてくる。市役所とか銀行とかのオフィス街がそのもうちょっと奥。俺たち三人の家はその中間くらいにあるお上品なところだけど、つまり街の中心に近いってことで、土地代とか家賃とか高くなるからご近所さんはお金持ちしかいない。
一番外側の城壁と水の堀近くは工場とか農地とか花畑とか、水があったら便利な用地。そこからもうちょっと内側がメインの居住区で、更にもう一つ内側が商店が並ぶ中心街との間。
外側から
ダンジョンに潜ってモンスターと戦って荒稼ぎ、なんてしない普通の人たちのそれぞれの生活に合わせて街が造られているって言われると勉強になるなーと思う。こういうの分かりやすく解説してくれるのがエルザ先生。普段はしっぽぶんぶん振ってるわんこなんだけど。
話を戻すと、こういうことなんで街の中心のギルドから今回の目的地である少年の家まで、商店街を突っ切ってそこそこ歩くことになる。
「質問ですディジーさん。『妹ママ』ってなに?」
「………っ!?」
「や、なんで驚くのさ」
「さすがミュートくん、ダイタンだねってコト☆」
「知れたこと。そのような奇怪な用語を当然のように連呼する珍奇な女に真正面からアイデンティティを深掘りする問いをぶつける。
まあ、そこらの細い神経しか持たぬ盆暗共には出来ぬ相談よな」
「………つまり、逆に今までツッコミ入れる人がほとんどいなかったってこと?」
「ざっつらい☆」
「えぇ……」
話題として振った当たり前の質問に固まる妹ママもといディジーについて、仲間のアージェとフィオから理由の解説が入る。聞いたら百人が百人「何それ?」ってツッコミ入れたくなる単語にしか思えないんだけど、あんまり「何かおかしいことでも?」って堂々としてるから今まで逆に誰も触れようとしなかったらしい。―――それか、そんな狂気の言葉をシラフでしゃべる子に関わるのが怖かったか。ちょっと分かるけども。
とにかく、今までほとんどされてこなかった質問だったから思考がバグって言葉が出なかったらしい。そんなディジーにエルザが呆れたようなドン引きしたような冷たげな眼を向けていたのが妙に印象に残った。
そうは言ってもフリーズしてる時間はそんなに長くなかった。ピンク系の色味が濃い紫髪の、アージェと反対の左側にリボンを付けた低身長の女の子は、相方と比べると動きが小さい表情をどこかしみじみとして語りだす。
「最初は、妹ですらなかったのです」
「うん。……うん?」
「親等で言えばディジーたちとあにさまは二桁は離れています。
ですが、あにさまはあにさまになってくれました、『ふははは、きさまらは今日から我の妹分だ』と」
「うん。……うん?」
まったく同じ相づちをくり返すことになったけど、とりあえずツッコミたいのを抑えて続きを聞く。
「ディジー達は
「…………」
話を聞いてるんだか聞いてないんだかただ黙って歩いているだけ。そんなどこまでも濃い灰色の、でも確実に黒髪じゃない少年にちらりと視線を向けて重いお話。
「それどころかあそこにあれ以上留まっていれば、もはや命を失うか正気を失うかの二択でした。
そこからあにさまは幼いディジー達を連れ出してくれたのです。足手まといになると分かっていて」
「あの時のフィオっちカッコよかったなあ。あの時は」
「くっくっくっ。やけに殊勝ではないかお前達―――いや待てアージェ、なんだその含むものがありそうな言い方は」
「ええ、あの時のあにさまはカッコよかったです。アージェ共々、一生妹としてついて行こうと思ったくらいには。あの時“だけ”は。
残念なことですが存在が残念なあにさまなので、すぐにメッキが剥がれたのですが」
「えっと、何かあったのかしら?」
重いお話?むしろいい話?なんかオチが付きそうな気配もしてきたけど。
クロケおねーさんも微妙に興味が出てきたみたいで、そわそわしながら話に入ってくる。
「地図があって目印があるのに目的地を見失う方向音痴。初対面の店員にちょっとおだてられればすぐにサイフのヒモが開いている散財癖。ディジー達が居なければ何度
「ぐっ……、ぐぬぬぬ」
「いいんですかそれ……?」
「まあおばかじゃないフィオっちなんて、アージェたちのおにーじゃないしっ☆」
「ディジー達は何があってもそんな残念なあにさまの妹ですが、ただ妹として一方的に甘えている場合ではないとすぐに気づいたのです。だから―――」
「だから?」
「ディジーはあにさまのお世話をするママにもならなければと考えたのです」
「うん。……うん?」
ごめん分からない。話が繋がっているような、ねじれて一回転した後逆走してるような。
「それによくよく考えれば、妹でママというのは2倍に家族ということ。
妹ママ―――最強のつながりだと思いませんか!?」
「う、うーん。その辺アージェさんのコメントは?」
「アージェはそこまでかな。たしかにフィオっちは世話が焼けるしそこがかぁいいけどさー。……でも、えっと。フィオっちがして欲しいって言うなら、やるよ?」
「やめろ。せめて貴様は正気を踏み外してくれるな」
「~~~っ♪くふふ、しょうがないなーそこまでお願いするなら都合のいいアージェさんでいてあげる♡」
強火で『妹ママ』概念に同意を求められたんで受け流したらなんか砂糖を生成し始めるのこれどういう料理法なの。
『妹ママは最強、ですか。―――今晩いかがですか?あ・に・さ・ま?』
「~~~~っ!?」
(―――わぅっ!)
そんでもって不意打ちで耳に襲いかかってくる可愛さの暴力って感じのささやき声がヤバかった。さりげなく近づいて来てたエルザが支えてくれなかったら、ひとりでにもだえて崩れ落ちる不審者になるところだった。
それはそれとして、後でプリナちゃんに妹ママのお願いはしといた。感想?おにいちゃんプレイ+よしよし甘やかしプレイはやっぱり中毒性高くて、何度もやってると正気踏み外す気がしたので封印になったのだけコメントしとく。
そんな感じで、行きの道のりはわちゃわちゃしてて楽しかったけど、今の俺らは借金取りご一行なわけで。
「な、なんだあんた達は!?」
「パパ、怖いわ…っ」
「急に家に上がり込んで、一体誰よ!?」
「はいはい。私達は
ボツリヌス少年の家に着いたら、一家団らんに殴り込んでガサ入れするのが目的の集団。
周りと特に変わらない土壁の家にノックせずに突入して、まずはクロケおねーさんが今回の処分を通告する。
一緒に連れて来たこの少年が未帰還になって、ギルドの救助依頼の対象になった結果全財産の半分を支払わないといけないこと。でも彼の口座にその金額はないので、そこから金を吸っていた父親の財産を差し押さえに来たこと。
そういえば今回俺も初めて知ったんだけど、救助依頼の『全財産』の半分っていうのは、ギルドがその冒険者に過去に支払った報酬額のうち、生活費と冒険に必要な装備とかの費用と税金を差し引いて計算した『これまで稼いでいるはずの金額』の半分っていう意味なんだって。だから派手に遊んで使い込んでても他の銀行にお金を預けていても、そんなこと関係なく大金を請求される。
持ってませんとかそんなに稼いでませんなんて言い訳は通用しない。
「ふ…ふざけるなっ!ボツの野郎がしくじっただけで、何で俺達がそんな金を出さないといけないんだ!!」
「そうよそうよ!帰ってよ、そいつにいくらだって請求すればいいじゃない!」
「だから彼からお金を吸い取っていたあなた達に請求が飛ぶんです。それがギルド憲章の規程ですので。
今まで散々親の立場をいいことにこの子が命がけで稼いだお金をハネてきたんでしょう?だったら彼が失敗したら一緒に転げ落ちるのが筋でしょうが。
―――じたばたしないでよ、みっともない」
当然のように拒絶する親と娘をクロケおねーさんは珍しい真面目顔で切り捨てて、手元の手帳にメモを取りながらぺたぺたと家具に赤い札を次々貼っていく。ドラマとかで見たやつだこれ。
邪魔したくてもこっちには
………この家族にとっては突然の災難かもだけど、正直同情する気持ちは全然ない。
玄関の靴箱を見るだけでも分かる、この家で一番お金を稼いでいる筈の少年の靴が全然ない。女物は母親のも姉のも大量にあるし、大人の男物もいくつかあるのに。たぶん服もこの調子だ。もしかしたら、ご飯も、ベッドも。
片方の子供にだけロコツに差をつけて可愛がる、そういうひどい家庭もあるって聞いたことはあった。さっきのディジー達の話みたいに、
でも、実際にそんな関係を見せられると胸がムカムカするのが止められない。
―――こんな連中と比べるのも失礼なくらい、俺の父さんも母さんも、きちんと俺のことを愛してくれていたんだって。
―――なのにそういうの全部無駄にして、裏切った。勝手にいなくなって、心配させて、泣かせたと思う。この世界に来たのは俺の意思じゃないとか、そんな言い訳関係ない。
プリナちゃんとエルザとの暮らしで少しずつ薄れて、でもずっと残り続けてる傷が痛む。
今ちゃんとそこにある家族のつながりをこんな雑に汚してしまえるような奴ら、いくらでも不幸になってしまえばいいと思う。
………言い訳するなら、そんな風に考えていたせいだから。マンガみたいに人の形に壁を壊しながら街中を直進とかできるパワーはそりゃ持ってるけど、普段はちゃんと加減できてるから。よほど興奮して何かに夢中になったりしない限り、スプーンやフォークも握りつぶしてまともに使えないサル以下のゴリラになってたりとかないから。ド○キーじゃなくてちゃんとピ○様だから。
「……そうだっ、お前!お前が『報酬なんて要らない』って言えば金を払わずに済むんだろ!?どうせ普段から大金を稼いでるんだから、ちょっとくらい―――」
「いや汚ねえキモい触んな――――、あっ」
トチ狂ってこっちに掴みかかろうとしたおっさんに、色々命がけのを含む思い出と愛着のある服を触られたくなくて。まして首元に手を伸ばされたら、あの旅行で買ったプリナちゃんとのお揃いのネックレスにまで指が当たるのは万が一にも嫌で。
とっさに、と言うにはノロく伸ばしてきた手を、つい雑にはたいた結果。
ぺきき、と音自体は枯れ枝が折れるような軽い効果音。
「いぎぇああぁぁぁぁぁっっっ!!!??」
おっさんの指は全部無茶苦茶な曲がり方をして、手首がぷらんぷらん揺れて、そのちょっと上に不自然な骨の出っ張りが浮いてる不思議な腕の変形アートが完成してたのでしたとさ。
………しっかし、大げさに悲鳴上げるなあ。
たかが複雑骨折なんて、ポーションぶっかけりゃすぐ治るのに。
>街の中心のギルド
最前線都市だから当たり前と言えば当たり前だけど、立地の時点でどの組織が街の頂点に居るか簡単に分かってしまうという。
>さりげなく近づいてたエルザが支えて
フォロースキルの鬼と化しているわんこ。
>ずっと残り続けてる傷
自分は家族を大事にできなかったっていう自己嫌悪が転化中。
>ド○キーじゃなくてちゃんとピ○様
本人がそう思い込んでるだけ以下同文。
>たかが複雑骨折
これまで裏ダンジョンで何十回でもペキって治してを経験してきたので、感性が完全に麻痺しております。雷属性なのに。