夢現世界の災凶姫~Disastress in the Parasomnias~   作:サッドライプ

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 熱いシーンを書いていたつもりが気付けばネタまみれ。
 作者にはよくあること。




星を隠すもの《セプシス》Ⅴ

 

 白い蛾の怪獣。黒いトカゲの怪獣シリーズに昔こんなんが居たんだっけ?羽をめいっぱい広げてバスケコート一面分くらいのサイズ感だからちょいスケール的には届かないけど、こいつと怪獣王がやり合ったらたぶんこいつが勝つだろうなー、なんて半分現実逃避。

 

 色鮮やかな羽から、吸い込んだらそれだけでマズイ予感しかしない鱗粉(りんぷん)をばっさばっさまき散らしながら浮かんでる。あ、巻き込まれたかわいそうな鳥さんが一瞬で骨まで腐って、茶色いスライムになりながらぼちょりと墜落してった。

 Aランク冒険者で耐久性(VIT)がケタ違いな俺だって、長い時間近くに居続けたらどうなるか。一応毒耐性のおまもりアクセサリはかばんから取り出して装備してるけど、そもそもこれ毒攻撃扱いなのかどうかも不安。

 

 ただ、鱗粉だけが問題なら多少のダメージ覚悟で突っ込んで一気にぶち抜けばいい。あの遺跡で何百回でもやってきたことだ。

 

「ちぇいやっ!」

【態……、……】

 

 俺のピ○様の加護は大乱闘な格ゲー仕様なんで、空中ジャンプから空中を高速で移動、なんて動きも普通にできる。間合いを詰めた勢いそのまま全力のかみなり付きパンチを叩き込めば、頭の殻が潰れて変な汁をこぼしながらさっきの鳥さんの後追いをして落ちていく。虫系モンスターはただ頭を潰しただけだと残りの手足と羽が勝手に動いてこっちに特攻かけてくる、なんてのもざらだけど、きっちり中身まで電撃で焼けばその心配はない。

 

「やっぱ一匹ずつ叩いてもキリないよな!!」

【【【姐、寝、涅……ッ】】】

 

 心配しないといけないのは、他の『まだ生きてるやつら』の方。

 

 マンガとかで虫のモンスターが出てくると、たいていしぶとい生命力と大量に湧いてくるのが脅威、なんて展開がよくある。こいつは数の方が圧倒的にめんどくさい。

 まき散らした鱗粉が集まって団子みたいになって、そこから新しい子供の蛾が生まれる。いやそこ芋虫からじゃないのかよってツッコミする暇もなく、元々バスケボールくらいのサイズからバスケコートのサイズに急成長する理不尽感。そうして生まれた子供(?)も鱗粉まき散らして同じように新しい蛾を生み出すから、あとは倍々ゲームよりひどい蛾の怪獣の大量発生だ。

 

「気持ち悪、って言っちゃいけないんだろうけど……っ」

 

 雲よりちょっとだけ低い、空気の薄い高度から、360度見渡す限り空の果てまで埋め尽くす蛾、蛾、蛾。虫恐怖症とか集合体恐怖症の人なら見ただけで気絶しそうなエグい光景に、妹さんに悪いって思いながらも背筋がぞわってなって仕方なかった。

 

 確かに無茶ぶりだわこれ。『私を殺して』っていうのは、これ全滅させろって意味だろうし。

 

「てゆーかほっといたら世界滅ぶレベルだろこれぇ!?」

 

 今はまだ増殖に鱗粉使ってるけど、世界中の空を覆うまで増え切った後、あの鱗粉を地上に降らしまくったらどうなるか。人間動物植物まとめて即死、残った超人もたぶんそう長くは持たないと思う。

 そういえば千年目になんかヤバいモンスターが五体出てきて、それを復活した『英雄様』が退治するんだっけ?この白い蛾のやつ、どう考えてもそのうちの一つっていうか、これがそうじゃなかったら他は何なんだってなる。

 

 それで問題なのは、妹さんとの会話で知らされた『英雄様』いこーるプリナちゃんだってこと。……いや、言われてみれば色々あからさまだったんだけど、プリナちゃんは隠したがってた感じだから、今まで気付いてなかったのはむしろセーフだったってことで。

 

 世界が滅んだら今までどおりの暮らしができないから、そうなるとプリナちゃんも動くしかない。最強無敵の『英雄様』なら、こんな状況でもいくらでもなんとかしちゃうんだろう。

 

 でも。

 

 

―――姉様を『2回も自分の妹を手にかけた女』にするわけにはいかないでしょう?

 

 

「ああそうだよ。認められないよな、そんなの」

 

 今日会ったばかりの俺に託された、自分を殺してでも止めてくれっていう最後の願い。

 やりたいかやりたくないかで言えば全くこれっぽっちもやりたくない。プリナちゃんと似た顔で笑いかけてくれて、俺を『にいさま』って呼んでくれる女の子だぞ?ていうかプリナちゃんの妹だぞ?それを俺の手で殺せってどんな地獄だよ、多分一生忘れたくても忘れられない痛みになる。

 

 

 けど俺がその役目から逃げてどうなる?その時誰があの子を止めることになる?……プリナちゃんだ。

 

 

 プリナちゃんが愛情深い女の子だっていうのは、それを向けてもらっている俺が一番よく知ってる。プリナちゃんが受けた仕打ちに怒り、こうまで人間を憎むほどにお姉ちゃんのことが大好きだった妹さんのことを、プリナちゃんだって可愛がってた。愛してた。

 なのにあの子のことを話すプリナちゃんの表情には何一つ色がなくて、からからに乾いてて。

 

 自分の手で大好きな妹を殺さないといけなかったことが、辛くなかったわけがない。悲しくて、苦しくて、なんでこんなことになったんだってボロボロに泣いて。―――涙が枯れるまで泣いて、それでも受け止められなくて。今でも傷が痛み続けてる、そんな顔だったんだと思う。

 

 

 そんなプリナちゃんに、もう一回同じ想いをしろ、って?自分じゃ勝てないから「英雄様お願いします」って押し付けろ、って?それで終わったら「助かった」って薄っぺらいお礼の言葉か?プリナちゃんが傷ついてるのに、平和が手に入ったってへらへら笑うのか?

 

 

 

「ふざけんなよ。そんなクズ、男じゃないし死んでいい」

 

 

 

 なら、妹さんにお願いされるまでもなく、俺のやることは一つしかない。

 

「殴ってダメなら、最大出力の電撃でまとめて焼き尽くすッ!!」

 

 なあ、ピ○様。あんた世界中の子供たちのヒーローだろ。女の子が暗い顔してうつむいて終わるような胸糞悪い話じゃなくて、みんなが未知の冒険にわくわくして泣いて笑って。そんなお話の主人公様だろ。だったら、―――ここでだけは、負けられねえって分かるよなぁ!!

 

「ほとばしれ、雷帝解放。十万ボルトじゃ足んないなら、その十万倍の、もいっこ十万倍!!」

 

 十万かける十万かける十万。えっと、いくつだ?まあいいや、とにかくいっぱい!

 

 

「おっくせんまんボルトぉぉぉ―――っっっ!!!!」

 

 

 ブチ切れた感情をそのまま爆発させるような、全力全開の放電。

 

 当然のように激し過ぎる雷光で視界は真白に染まる。周りの大気が焼け弾けて、音も匂いも気配もぐっちゃぐちゃ。だけど別にいい。あんだけわらわらと増えまくってんだ、出力上げまくれば勝手に連鎖してどこまでも一瞬で感電してくだろう。回避不可能、着弾にラグ無し、範囲攻撃可能、雷属性が大体の少年マンガで強キャラな理由だ。

 それに相手は蛾だ。ぴかぴか光ってりゃ集まってくるはず……全部まとめて黒焦げにしてやる!

 

 

―――どうか二人でずっとずっと幸せに。姉様のこと、お願いします。

 

 

 俺を兄と呼んでくれたあの子が、大好きなお姉ちゃんを幸せにできるって認めてくれたあの子が、安心して眠れるためにも。

 

 

「もっとだ、もっと……!もっと、かがやけぇぇぇぇーーーーっっっっ!!!!」

 

 

 大空の全てを稲妻で埋め尽くし、世界の果てからでも眩(まぶ)しくて仕方なくなるような、そんな光の景色を見せるために。

 なぜだろう。今この瞬間、限界なんて消え去ってる。俺の存在そのものが雷になったような感覚の中で、何もかも焼き尽くす電撃を無限のかなたに拡げていく―――。

 

 

 

…………。

 

「ああっ、ぅああああああぁぁぁっっ!!?」

 

 深い霧で拡散してすら常人では目が潰れるような眩(まばゆ)い天空の雷光を、涙をぼろぼろと流してそれでも少女は見上げ続ける。

 

 際限なく増殖を続け空を埋め尽くす毒蛾の群体、始原蝕魔(マルフォーマ)第三の闇『星を隠すもの(セプシス)』。

 未だ第一第二ともに表舞台に現れることなく、『千年紀』という演題が開幕するよりも前に消し去られ狂ったシナリオにおいて、“ふさわしいから”という理由で急遽(きゅうきょ)役割を割り振られた存在。それがかつて何の成れ果てであったかを彼女が見誤るなどあり得ない。ならば、この筋書きに一体どれほどの濁り腐った悪意が込められていることか。

 

 これは罰だ、と少女は思った。罰と思うことすら罪深い、とも。

 

 かつて救ってきた者達に裏切られ、ニンゲンの醜さを散々に浴びせられた。それでも自分ひとりがその犠牲になったのなら、まだ納得できただろう。考えなしの愚かな救世主気取りが全てを見誤り自滅した、たったそれだけなのだと諦められただろう。

 けれどあの子に何の罪があった?ただ自分を心配して傍に居てくれただけだったのに。『世界を救う英雄様』を取り巻く数多の壁蝨(ダニ)共の自分勝手な思惑に翻弄され、恋人を謀殺され全てを憎んで異形に堕ちて、血を分けた姉のことすら分からなくなって無情に“始末”されるしかなかった。

 

 そんな彼女が永遠の眠りすら妨げられ、世界を滅ぼす『英雄様』の敵として再び現れる。それも、かくあれかしと信じられているが故に、本当に世界を滅ぼせる程の脅威的な進化を遂げて。反吐(ヘド)が出るほどの残酷さだ。だが恋人との生活を守る為に、少女自身が始末をつけるしかない。

 一度目はニンゲンの浅はかさと浅ましさを甘く見たが故に。二度目はただ己の幸福を追求するが故に。愚かな姉は、二度も妹をその手で殺すしかない。

 

 そう、覚悟を決めたのに。

 

 

『おっくせんまんボルトぉぉぉ―――っっっ!!!!』

 

 

 愛しき雷光が、閉ざされた闇天を裂いて全てを引っくり返した。

 

「ミュート……、ミュートぉっ!」

 

 誰よりも彼のことを理解していると自負するプリナに、分からない筈はない。

 ミュートはあの怪物の正体を知らされている。知った上でああして戦っている。世界を滅ぼす暴威に真っ向から立ち向かい、勝とうとしている。

 

 『今は俺が戦う番だ』と。血を分けた姉妹の二度目の殺し合いをさせない―――それだけのために、命を懸けて、限界を超えて。

 

「~~~っっ!!」

 

 感謝?思慕?後ろめたさ?歓喜?プリナの心を震わせたのは、さて。

 おそらく全てであり、どれでもない混沌。だが集約されるのはたった一つの事実、“守ってもらっている”ということ。

 

 初めてのことだった。誰よりも前で戦うのが当たり前の『最強の英雄』だったから、『俺が代わりに戦う』と思ってもらえることが。心許した仲間ですら、『手伝う』までが限界だったから。

 

 

「まぶしい、ですね。ほんとうに……っ」

 

 

 不思議と彼が危うくなる可能性に考えすら及ばないまま。涙と霧にぼやける視界を染める雷光を、少女はただただ見上げ続けていた。

 

 





 プリナちゃんの脳も丸焦げですかねこれは……。

>誰があの子を止めることになる?……プリナちゃんだ。
 万○ではない。

>「そんなクズ、男じゃない」
 この世界の住民のほぼ半数を全否定。

>「なあ、ピ○様」
ピ○様「(知らんけど、応援はしてやんよ)」

>「ほとばしれ、雷帝解放」
 それ多分違うゲーム。しかも字も間違ってる。裏新宿で奪還屋やってそうな誤字。

>十万かける十万かける十万
 十万の3乗=10の5乗の3乗=10の15乗。
 おくせんまん=10の8乗×10の7乗=10の15乗。
 なぜか合ってる。全く意図してないだろうけど。ちなみに10の15乗は1000兆。

Q.1000兆ボルトってどれくらいの威力なんですか?教えて理○雄せんせー!
A.ボルトは電圧(電気の流れる強さ)の単位なので、電流量(アンペア)も指定してください……っていうお決まりのネタは置いといて。
 雑に100アンペア(オフィス用電源2つ分くらい)⇒10京ワット(ジュール/秒)と仮定しても、だいたい “ 1 秒 あ た り ” 広島原爆1600発分ってAIさんが言ってた。1分以上放電すれば原爆10万発分。ちょうど10万に戻ったね、やったぜ()

Q.馬鹿なの?
A.愛なの。

>「おっくせんまんボルト」
( ゚∀゚)o彡゚
 いにしえのニコ厨にしか通じないネタ。ミュートくんは確実にネタを知らないで言っている。そしてこれもゲームが違う。

>「もっと、かがやけ」
 シェルブ○ットォォォーーーッ!!!

>今この瞬間、限界なんて消え去ってる
 “己の限界は己が定めるもの”。『夢現世界(パラソムニア)』において、霞悠斗に限っては、それは精神論でも比喩表現でもなく―――。

>今は俺が戦う番だ
 いつかの有言実行。主人公はそうでなくちゃね。

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