夢現世界の災凶姫~Disastress in the Parasomnias~ 作:サッドライプ
今作はプリナちゃんっていう明確な最強が居るんで、主人公は強いけどある程度抑えめって塩梅だった筈なんです。
なんか普通に幼女(闇精霊)より強そう。だ、大丈夫、清楚姫最終形態と比べればこれでも誤差だから・・・。
世界の存続にすら牙を届かせる雷帝の怒り。その具現たる
地表ではなく雲の高さで炸裂しているとはいえ、あまりに膨大な熱量。人々が異常気象を想像しにくい
今この瞬間、ありとあらゆる生命を滅ぼす最悪の群体を焼いているその余波の話でさえも。全くそんな意図はなかったとはいえ、水の魔女が事前に大陸中を霧で覆っていなかったら、その霧に熱の大部分が吸われることなく常人が大量に焼け死んでいただろう。それを
まあ毒蛾の鱗粉を浴びて、屋内にいたかどうかなど全く関係なく、骨ごと全身が腐って溶けるのとどちらがマシだったかという比較論でしかないが。
そんな儚い有象無象の悲哀など知ったことではなく、直上の稲妻を仰ぎ続けるプリナの周囲に、焦げ付く臭いと共に降り注ぐものがあった。
当然ながら雪ではない。今宵の空において、冬の氷雲など儚く消し散らされて
『姉様。姉様。聞こえていますか?』
星天を埋め尽くしていた毒蛾の燃え
「………聞こえていますよ、ニア」
『!!ああ、よかった……。お久しゅうございます、姉様。
「そう」
姿は見えない。燃え残りの灰から霧散していく魂が最後の意思を伝えてくれているだけだ。
そうまでして伝えたい言葉がある―――そう判断したプリナは
『ふふ、なんですかそのお顔は。私が姉様にひどいことを言ったことがありますか?』
「ですが私は、貴女を……」
『そのことについて詫びるべきは私の方です。彼ともども、姉様の手を煩わせて、姉様の心の傷になってしまった。姉様を支えると決めたのに、その誓いを己で裏切ってしまったのですから』
「そんなのはっ!」
『はい。―――悪いのはあの蛆虫たちです。姉様では、ないのです』
「………っ」
都合のいい幻聴でも起きているのではと疑った。血を分けた妹をその手に掛けた罪を許されたいと願う、己の弱さが生んだ願望ではないかと。
だが同時に、異形の狂気に身を堕とす前の彼女であれば、こう言ってくれるだろうとも思ってしまう。甲斐のない姉をああも慕ってくれた、可愛い妹だったから。
『ですから姉様を恨み申し上げることなど、何一つとしてないのです。
ニアは、姉様の妹に生まれてずっと幸せでした』
「――――ッ」
灰の降る雷天。寒くもないのに、プリナは震えながら己の腕を強く抱く。
あの日ただのバケモノの呻き声にしかならなかった妹の遺言を、千年越しに贈られながら。
『伝えたかったのはそれだけでした。
………ああいえ、もう一つだけ。
「はい…っ。本当に私のことを、愛してくれているんです……っ!!」
『ふふふっ、ごちそうさま。姉様から
義兄様になら安心して姉様のことをお願いできる。心残りなく、私も、彼の下に……』
舞い降る灰を全身に浴びて、その手で受け止めて、プリナは涙を流しながらそれでも笑う。
少しずつ薄く細くなっていく声に、これが本当に最後の別れと悟って。
お姉ちゃんなのだ。最後に心配させたまま妹を見送るわけにはいかない。
「貴女も、サリヴァリウスを千年も待たせたのです。愛想を尽かされないよう、しっかり謝るのですよ」
『大丈夫ですわ、彼のこと…だもの。「俺の分までよくやった」って褒め、て、くれる…わ』
「……そうね。あの堅物騎士は、婚約者が出来てもあの調子だったものね」
『ほん、とよ――まっ―く、妬け――…わ』
残された時間が尽きるのはあっという間だった。
不意に強い突風が吹き抜ける。灰を舞い上げてもう一度集めて、本当に最後の大切な言葉をきちんと伝えるために。
『私を幸せな妹でいさせてくれた姉様に、永遠の幸せがありますように。
さようなら。ずっとずっと、だいすきです、ねえさ――』
「―――、―――ニア?」
途切れたけれど、想いはきちんと届いて。
それっきり、もう二度と聞こえない。「姉様っ」と無邪気な声で呼んでくれることは、今度こそ、二度とない。
「に、あ……、あああ、あぁぁ……っ」
こんなのは、あんまりだ。自分の言いたいことだけ言って。
――――「妹を守れなかった情けないお姉ちゃんでごめんなさい」って、ずっと伝えたかったのに、言わせてももらえなかった。私がそう思ってることなんて、あの子は分かり切ってたくせに。
その代わり、幸せになって欲しいだなんて。償いなんてそれで充分なことなんだって。
本当に、あんまりだった。
「に゛ああぁあ゛あああああぁぁぁ~~~~~っっっ!!!」
空の果てまでも灼き切った雷が、役目を終えて弾けて散る。
妹を二度も失った少女の慟哭を包むように、硝煙
それに導かれるように。
「っ!?ミュート――っ!」
「…………ぴちゅ~」
全身全霊を尽くして気を失った少年がふわりと少女の腕の中に落ちてくる。
おそらくは妹の最後の計らいなのだろう。彼を抱きしめただけで、胸の痛みと苦しみが和らぐのを感じた。
そして姉想いの妹が残してくれたのは、当然それだけではなく。
「………っ。ええ、そうよね。ありがとう、きっと幸せになるわ、ニア」
災凶姫の最愛の君、その超人の度合いを示す髪の色。相変わらず二房跳ねた髪の先端だけが黒で、―――それ以外は、ミルクを溶かしたような優しい純白に染まっていた。世界を消す脅威すらも打倒し得た証として、『救世主』と同じ色に染まっていた。
妹の『遺産』なのだろう、卵を模したアーティファクトを大事そうに抱えて眠るミュートの髪を
「ミュートも本当にありがとう、おつかれさまでした。かっこよかったですよ。
これからもずっと、これからはもっと、二人一緒で幸せ。だってニアがそう願ってくれたのだもの」
『
故に止まらない。こんなバケモノを恋人に選んでしまってかわいそうとか、彼の愛情を利用して都合のいい方向に転がして後ろめたいとか、そんな無意識の抑制すら壊れて、もうプリナにはミュートとのシアワセ以外、本当に全く何も目に入っていない。
体表のどこかが禍々しい異形の印に変わる
外見上に明確な異形化が発生する
醜悪で凶悪な異形へと変化可能になる
そして、それすら超越したLEVEL4。
分類すら不可能な終焉の化身を二匹に増やす。最愛の恋人に
その為に今まで以上に露骨に、比べようもないほど濃厚に、悪意と呪いの毒を注ぎ込む。
「ねえミュート、私は今とても悲しいです。
たくさん慰めてくれますよね?愛してくれますよね?その分、私以外の存在は
妹姫、S・ニューモニアは姉がこうなることは分かっていた。生まれてから大半の時間を共に過ごした肉親のことだ、分からない筈がない。
千年前の凄惨な記憶とその後の無慈悲な封印が彼女をどう腐らせたかなんて、しっかり見抜いていた。
けれど姉の幸福以外、他の蛆虫達がどうなったって知ったことではないから、あっさりとブレーキを取り外して『姉様にとっての最高の未来』に向けて暴走一直線のスイッチを押した。
―――『姉様のことをきっと幸せにしてくれますよね。ね、義兄様?』
ニアもまた、世界を呪うバケモノなのだから。
せめてこういう話くらい最後までしんみりできないんですかねえこの作者……。
>気候の異常変動
原爆10万発分以上の電気花火。当然「世界は核の炎に包まれた!」をはるかに超える熱量……。
その気になったら世界をポストアプカリプスに変えてしまえる自称電気ネズミ。
>「…………ぴちゅ~」
せっかく色違いにもなったのに、電池切れでまた退化してんだけども。
>体表のどこかが禍々しい異形の印に変わる
千年前は虹色は禍々しい色でした。はい、髪が虹色になったら一発でバケモノ扱いっていうかバケモノなんです()