夢現世界の災凶姫~Disastress in the Parasomnias~   作:サッドライプ

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 ここらでプリナちゃんの過去編とかやろうかと思ってましたが、性格のいい登場人物に限って誰一人救われない陰惨胸糞ド鬱ストーリーを十話近くやることになりかねないので断念。とある国の公王家関係の人物設定紹介だけで各自補完してくださいということで。
 概要はあとがきにまとめたので、設定集とか読んでられるか!という読者さんは最下部にジャンプしてね。はいどーん。




★人物?紹介集(とある公王家)

 

S・ソブリナス

 異形はびこる絶死のダンジョンの奥底に封印されていた、ただの『プリナ』と名乗る謎多き少女。その正体は千年前の伝説の英雄。世界の危機に復活し民を救済する―――とされているが、彼女はそんなことに一切興味がない。封印された過程からして、侵魔化(アラージ)が進行して堕ちた仲間や実妹を粛清し自身もそれによって『感染』したことで、絆も誇りも信念も何もかもを失ったせいなのだから。仕方のないことと表面上達観していても、王族として誰よりも国に尽くし人類に貢献した自身の末路がそんなモノだったことに何も思わない筈もない。千年の刻を封じられた世界に嘆き、怒り、憎み、疲れ、そしてやがては自分がそんな世界に英雄として蘇ってしまうことにただ怯えていた。

 そんな中で何もないただ一人の少女としての自身に好意を向け、愛する人と結ばれて幸せに過ごす素敵な未来をたくさん語ってくれたミュートこそが、彼女の唯一の心の光である。そう、たった一つだけの、価値のあるもの。

 封印されていたそもそもの理由として、侵魔化(アラージ)が完全に手遅れになっている身である。外見も言行も影響を受けていないかのように擬装しているが、第三段階の上級侵魔(キャンサー)に達した同輩を屠(ほふ)り、己はそんな段階をとうに超過している前人未踏の『LEVEL4』。清らかな水面の下に溜まった致死毒の泥は、もし溢出(いっしゅつ)すれば『世界を消す』脅威度となり得るだろう。

………ありえない想定ではある。プリナがただの女の子として、愛する人と睦み合う幸福な暮らしを続けている限りにおいては。

 

 

 

S・ニューモニア

 『英雄』の妹。愛称はニア。侵魔化(アラージ)が第三段階(フェイズ・キャンサー)に達し、婚約者共々千年前に英雄姫の手で討たれている。

 残された僅かな正気でただ姉の幸せを願いながら湖底に沈んでいったが、第三の闇セプシスに姿を変えて復活。姉の恋人を見定めた後、最後にもう一度だけ会いたい、「幸せになって欲しい」「恨んでいない、大好きです」という千年越しの遺言を伝えると決め、滅びを知りながら活動を開始した。

―――血を分けた妹をその手にかけた災凶姫の心の傷。彼女の正気に残っていた唯一の未練を払い、完全にブレーキを取り去ってしまうことなんて。そんなの、■と同じく『世界を壊す闇』となった妹にとってはどうでもよかった。

 

S・アンギノーサス

 『英雄』の父であり、当時のストレプト国州公王。控えめに言って化け物を超えた化け物でしかない彼女をきちんと一人の娘として見守っていた割と聖人。王族として民に尽くす義務を教え込んではいるものの、娘が『ただの蝕魔(インフェクター)抹殺兵器』『都合のいい防衛装置』『大衆に存在を捧げられた偶像』に堕ちることを憂慮し、“英雄”の戦場への投入には慎重な姿勢を崩さなかった。

 しかし彼女の圧倒的な力に惹かれた狂信者達が勢力を強めると、彼らにその行動を疎まれ『娘を妬みその足を引く愚王』の烙印を押されて暗殺される。意見が対立していたとはいえ決して嫌っていなかった父の突然の死を告げられ動揺する娘に、『喜んでください!これであなたは自由です』と善意の笑顔で語る者達―――後にストレプト公王家を傀儡(かいらい)化して支配する聖教会の源流であり、それまで純粋な正義感と責任感で民に尽くしていた英雄姫とその妹に闇を刻んだ元凶だった。

 

S・ミティス

 『英雄』の母。穏やかで物静かな王妃であり、娘に慈愛と誠心を説いてその人格形成に大きく影響を与えた。だが公王暗殺事件後、理不尽に嘆き憤(いきどお)る娘達に微笑みを崩さず「何者も恨むに及ばない」と語り自制を促し―――それは彼女なりの信念に基づく在り方だったが、娘達からは「生涯を誓った夫を殺されてへらへらしている冷血女」として失望と糾弾を叩き返されるのみであった。

 『英雄』である娘から疎まれた“愚王の悪妻”に王宮での居場所などある訳もなく、何一つ守ってもらえる後ろ盾がなくなった太后はほどなくして夫の後を追うこととなる。毒で霞む意識が見せた幻として、かつて夫や娘と幸せだった一家の思い出に耽りながら孤独に沈んでいくのだった。

 現実を見ていない女ではあった―――だが、彼女の忠告を破り憤激に身を浸した娘達は怪物に堕ちている。果たして彼女は愚かなだけだったのだろうか?

 

S・サリヴァリウス

 継承権とは程遠いが王家の係累で、『英雄』の遠縁。高貴な身でありながら民の為に力を奮う姫姉妹の姿に心を打たれ忠誠を誓っていた。聖なる護りを夢能(デルシオ)とし、認識外の脅威からでも幾度となく彼女達を庇いその身を盾として支えてきた騎士。『ソブリナス』の英雄譚は主に妹と彼を含めた三人パーティーで成し遂げたものが殆どである。

 だが、信仰する英雄姫の近くに侍るイケメンが許せなかった狂信者(ユニコーン)共は(……実際はもうちょいドロドロした背景だけど)、公王暗殺と共に聖教派閥が政治の実権を握るようになると彼を排除しにかかる。単独任務の最中、野営にかこつけて装備を盗みAランク蝕巣(フォーカス)『螺旋奈落』の底に突き落とすという暴挙、彼は七日七晩徒手にて抗い抜くが――主君が救援に駆け付けた時、彼は既に憎悪と疑心に堕ちて完全に蝕魔(インフェクター)と化していた。

 最期の瞬間にのみ正気を取り戻し、「御手を煩(わずら)わせた不忠、詫びの仕様も……。ですが、貴女の手に掛かって果てるならば―――」と遺言を残す。信頼する戦友にして忠臣を手に掛けた英雄姫は、その翌日、『父に続いて密かに恋仲だった騎士さえ卑劣に殺された』絶望により魔物に堕ちた妹姫までをも粛清することになるのであった。

 その後彼の死の経緯は糊塗(こと)され、『英雄ソブリナス』を守り若くして散った忠義の騎士として祀られている。そんな彼の剣と盾は聖遺物として聖教礼賛騎士団長の手に代々受け継がれているのだが―――本人やその関係者が知れば地獄からでも祟り殺して来るような厚顔無恥の所業であることを、現代では誰も知らない、筈がないのだった。

 

S・コンステラトゥス

 公王側室、つまり『英雄』の義母。熱狂的な支持と信仰を集める義娘を疎み、自らの息子を王位に付ける為に正室の子である英雄姫の狂信者を手引きして暴走させた。だがその結果は賢しらな醜母の思惑を軽く超え、公王暗殺という大凶事へと発展する。

 「宮中に不和を招いた失点を作るつもりだっただけ」という言い訳など通用する訳もなく、王殺しの片棒を担いだ形になる弱みを握られ狂信者の言いなりになった彼女の望みは一応叶う。自ら産んだ子の系譜が代々公王家正統となる代償に、子孫全てが聖教派閥の傀儡(かいらい)である歪(いびつ)な国を生み、人の業に絶望した災凶姫(ディザストレス)を千年後の未来に送り出すことで。

 晩年は誰にともなくうわごとで謝罪を繰り返しながら、迷妄の果てに息絶えた。その死に顔は国母という地位と裏腹に、安息とは程遠かったという。

 

S・ボーヴィス

 コンステラトゥスの息子、つまり『英雄』の義弟。狂信者達にとって都合のいい人形として玉座に縛られた空虚な王。だが自らの国を何一つ思い通りに出来ない屈辱に満ちた本人の内心と裏腹に、『英雄』の去りし動乱の時代から安定をもたらした賢王として語り継がれている。愚王に貶められた先代との比較、操り手である聖教会の思惑―――為政者に対する評価など、所詮そんなものである。

 

S・フィオジェネス

 珍妙で騒がしいなキャラ揃いだが実力派のCランクパーティー『ワンダーブラッド』のリーダー。その身はストレプト国州公王家正統、すなわちプリナの親族の遠い末裔。そうでありながら彼が長じる前に予言された『救世主の復活』の年が訪れるため、聖教派閥からは“用済みの王家”、特に狂信者達からは“分不相応な野心を抱く前に粛清しなければならない対象”とすら見られており、未来の王として扱われることは一切なかった。それどころか救世主の再臨を阻害しかねない邪魔な忌子(いみご)扱いであり、国元に留まっていたら確実に命を落とすことになるため王宮から逃げるしかなかった悲運の王子。事情を知り匿(かくま)いつつも便利扱いするヴァリスにしても、もし予言が外れれば政情次第で端金がいつか万馬券に化けるかも程度の期待を向けているだけである。

 連れ立った異母妹二人を抱えて明日の命の保証もない駆け出しの抗魔士(イムニティ)として立志した少年王子の翠眼に、しかし何一つ絶望はなかった。たかが生まれによって得る筈だった王の座が、時代のせいで霞と消えたからと言って何を嘆くか。王とは戴かれるものではなく、頂に立つもの。たとえ全ての民に背を向けられようと、己は国を統べる公王であると自らに任じ、高貴なる者の務めとして戦う覚悟を決めている。

 さしあたっては偉大なる英雄ソブリナスの事績でもなぞろうかと最強の抗魔士(イムニティ)を目指し蝕巣(フォーカス)に潜る日々である。なお妹二人の様子がなんかおかしいことに関しては諦めている模様。

 

S・インターメディウス

 現ストレプト国州公王にしてフィオ達の父。千年にわたって国を支配してきた聖教の王族教育は実に洗練されており、無気力で自分では何も決められない玉座の置物として完成している。

 その徹底具合たるや、千年紀を迎え『英雄』が帰還すれば自分は用済みになって消されると理解しながら、それを仕方ないと諦めて動こうともしないほど。子供や親類全て皆殺しになろうとも、である。

 フィオ達がその洗脳を受けなかったのは、『約束の年』を自分達の生きている時代に迎える見込みでテンションの跳ね上がっている聖教徒達が、英雄を据えるべき玉座に触れる王族を邪魔者というか害虫扱いで睨んでくるためである。こんな大人達に囲まれた子供がそれまでと同じやり方で都合よく洗脳されてくれる訳がなかったというのは、ある意味皮肉ではある。

 

 

 





※以上。

 一部千年前じゃない連中も居ましたが、ここで明かされた以上は本編でさして重要な設定ではありません。ずっとミュートくんとプリナちゃんが潜伏して『あれ、千年目なのに英雄様復活しないじゃん』からの公国大混乱→内乱とかの展開だったら意味あったんですけど、そのルートがもうなくなっちゃったので。

 ともあれ千年前の出来事としてはこんな感じです。美少女が可哀想な目に遭うのは苦手な作者なのでここまでやっても十分なのかは分かりませんが、とりあえず『どこにでもいる悲劇のヒロイン』が背負った悲しい過去としてはこれで全部ということで勘弁してください。
 居るか不明ですが曇らせ好きの方は、意見を違えても愛する家族だった父を暗殺されて愕然とする英雄姫ちゃんとか、母は父を愛していなかったのだと思ってあんまりだと涙をこぼす英雄姫ちゃんとか、蝕魔(インフェクター)と侵魔化(アラージ)の発生原因つまり『無辜の民』なんてどこにもいなかったことを知ってしまい無気力になる英雄姫ちゃんとか、父が死んだのは自分の救った人間達がよかれと思った結果だと知って信念に亀裂が入る英雄姫ちゃんとか、そいつらのせいで最も信頼していた仲間で妹の婚約者だった家臣を殺してしまって絶叫する英雄姫ちゃんとか、それがトドメで化け物に堕ちた妹の死骸を抱いて嗚咽(おえつ)するしかない英雄姫ちゃんとか、その果てに自分の髪が一部虹色に変色したのを見て掌返しするクズ共に絶対零度の視線を向ける英雄姫ちゃんとか、終いには「今までおつかれさま!千年かけて治してあげるから、そしたらもっかい働いてもらうんで眠っててね!!」って言われて虚無った英雄姫ちゃんとか、封印された長い年月で憎むことにすら疲れて絶望と恐怖に震える英雄姫ちゃんとかの表情を想像すると幸せになれるらしいのでどうぞ。
 愛する人を見つけて曇らせもちゃんと晴れてるから問題ないな、ヨシ!!

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