夢現世界の災凶姫~Disastress in the Parasomnias~   作:サッドライプ

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 ぶっちゃけ今回ラストがこの作品で一番やりたかったシーンだったり。




星を隠すもの《セプシス》Ⅶ

 

 目覚めは最悪だった。体はだるいし全然寝れた気がしないし、あの遺跡で気を張って眠ってた頃に戻ったような寝起きで意識が戻ってくる。何やってたんだっけ……?

 

「………。プリナ、ちゃん?」

「っ。ミュート!」

 

 プリナちゃんは眠ってる俺が起きる気配がなんとなく分かるとか。あの遺跡から脱出してからの生活の中で、朝目を覚ますとほとんど毎回ってくらいプリナちゃんが顔をのぞき込んでくれている。

 起きてまず見られるのが世界一可愛いカノジョさんの笑顔なのは幸せものだなって、毎日そう実感しながら一日が始まるのは感謝しかないし、何回も「ありがとう」って言ってる。

 その度にプリナちゃんは「私がそうしたいと思ってやっているのです。あなた様が一日の始まりと終わりに見てくれているのが、私であって欲しいから」なんていじらしい返しをしてくれるけど。プリナちゃん可愛いなんでこんなに可愛いんだろう?

 

 ただ、今回開いた眼にぼやけた視界で飛び込んで来たのは、いつものふんわりした笑顔じゃなく。涙でこわばった不器用な笑い方で、全部思い出した。

 

「そうだ、妹さん………。俺、ちゃんとがんばれたのかな?」

「はい。ニアは今度こそちゃんと、安らかに逝くことができたのだと思います」

「そっか。良かった、って言っていいのかな」

「間違いなく。あの子の姉としても、またあなた様には返し切れない程の恩をいただいてしまいました」

「それは……」

 

 結局俺にやれたのは、モンスターになった妹さんを元に戻すことなく殺しただけ。それで恩に着てもらうのもなんだか違う気はする。

 そんな気持ちでもにょもにょしてると、ちょっと眉をハの字に開いてプリナちゃんが困った顔をした。

 

「言ってくれないのですか?」

「え?」

「『プリナちゃんの為に頑張ったんだ』って、そう言ってはくれないのですか」

「う?」

 

 そう言われると、全力ビリビリがんばったのはプリナちゃんに妹をもう一度殺すなんて悲しい決断をさせたくないっていう理由ではあるんだけど。

 

 

「なんて、ずるい質問ですよね。ですが言っていただけた方が嬉しいというのは私の正直な気持ちです。ミュートのそういう奥ゆかしいところも、もちろん大好きですが」

 

「プリナちゃんの為にいっぱいいっぱいがんばりました!!」

 

 

「知ってます。愛していますよ、ミュート」

 

 あ、しゅき。

 

 

 

 なんて、プリナちゃんなりの強がりなのか、いつもよりなんだかしっとりめのいちゃつきを挟んで。

 

 俺がプリナちゃんのひざまくらで寝かせてもらってたのは、蛾の怪獣が燃え尽きた灰の積もった原っぱ。時々ピクニックに使ってる、どこでも安定した平面になるレジャーシート的なドロップアイテム(地味に超便利)をかばんから取り出してプリナちゃんが敷いてくれてるけど、そこから外れて歩き出したら膝までずぼっと埋もれそうなほど積もってる。色がグレーなことを抜きにしたら、なんか初雪がどさっと降ったばかりの雪国みたい。

 まああんなデカブツを何万何百万って燃やしたらそりゃすごいことになるよね。今日の天気は灰、ところにより雷をともない激しく降り続けるでしょう、って感じで。

 

「ふあ~………あれ、これは?」

 

 こんなことでもないと見れない、灰一面のレアな景色に変なため息を出しながら体を起こすと、何かタマゴっぽいものを手に抱えてたことに気付く。

 大きさはラグビーボールくらいで、手触りは硬いようなやわらかいような不思議な感触。濃い緑色がベースだけど見る角度でマーブルに色が変わる……『遺宝』とか呼ばれてるモンスタードロップあるあるな不思議な見た目のアイテムだった。

 

「ニアからあなた様へのお礼の品だと思います。受け取ってあげてください」

「………プリナちゃんがそう言うなら」

 

 妹さんの遺品ならプリナちゃんが持ってた方がいい気もするけど、こう言われると受け取るしかない。効果とかはなんだろう。

 

 

可能性の卵(道具/消耗品)

:万能因子S

 

 

 本当になんだろう。ゲームのアイテムでこういうのだと、ふつーに見た目通りにモンスターのヒナが生まれてくるのかな。それかあれだ、『好きなアイテムを複製してもう一個手に入れることができます』ってやつかも。……あれ攻略サイト見ないでプレイしてると、『もっといいアイテムがあるかも』ってなって最後まで使わなかったりもするんだよなぁ。

 

「よく分かんない」

「………困りましたね」

「かといってせっかく遺してくれたものをかばんの奥に突っ込んでそのままにするのもなんか違うし。

 使って悪いことにはならないと思うから、使うだけ使ってみる?」

 

 使い方はなんとなく頭に入ってくる。この卵を手に持って、何かの願いを強く念じればいい。

 

「なるほど。ですが何を願うのですか?何か欲しいものが?」

「俺自身はないよ。ないから、さ」

 

 プリナちゃんがカノジョとして傍に居てくれる。俺にとってそれ以上に満足するものなんてある訳ない。

 そんな風に考えながら、首をかしげるプリナちゃんに思いついた願いを言う。

 

 

「妹さん……ニアちゃん、だっけ。次生まれて来る時は、あったかい場所で、幸せな一生を過ごせたらいいなって」

 

「――――っ」

 

 

 あの少年を殺した時と同じ、何の役にも立たない無責任な祈り。

 自分の手で終わらせた命への罪滅ぼしだなんて思わないけど。悲しい最期を迎えて、そこに俺が関わった以上は、幸せな『次』があって欲しいって願いたい。

 

「こんなヘンテコな願いだと、卵がどう反応するか分かんないけどね」

「ニアならちょっと拗(す)ねそうです。『にいさまと姉様のお役に立つように渡したものですのよ』って。

………でも、それは私もお願いしたいくらいです。妹の文句は聞いてないということで」

「おねえちゃん特権?」

「それは面白い言葉ですね、ふふっ。ええ、おねえちゃん特権です♪」

 

 プリナおねーちゃん(可愛い)の賛成ももらったことなので、さっそく卵を使うことにする。

 願いに反応して虹色に輝いて灰色の雪原を照らすのを見て『なんかSSRの演出みたいだなー』とちょっと思ったのはゲーマーの性(さが)なので許して欲しい。

 

 そして、卵の中から出てきたのは。

 

 

【―――にぅ?】

 

 

「毛玉?」

「毛玉ですが、これは……生き物?」

 

【にぅ~~っ♪】

「わぷっ」

 

 白いふわふわした毛並みの四つんばいのけもの。もさもさした丸っこくて、ぬいぐるみかと勘違いしそうな毛玉にプリナちゃんと二人で困惑してたら、意外とすばやい動きで顔にはっつかれた。

 はがして胸元に下げると、そのまま腕の中で俺を見上げながらじゃれてくる。眼の形は毛で隠れて見えないけど、なんか緑色に光ってるんでこっちを見てるのは分かる。

 

【にぅ、にぅっ♪】

「人なつっこいな、こいつ。うりうり」

【に~う~】

「卵から出て最初に見たミュートになついているのでは?」

 

 そういや鳥のヒナとかそんな感じなんだっけ。あの卵アイテム、マジでそのまんま卵だったんだな。

 

 

(………『次生まれて来る時は、あったかい場所で、幸せな一生を』。まさか、ね)

 

 

 プリナちゃんもなごんでるのか、やわらかい笑顔で毛玉アニマルをなでりなでりする。

 あのアイテムから本当にモンスターのヒナが出るとはあんまり思ってなかったけど、癒し要員が出来たのは嬉しい誤算だ。今は妹さんのことで傷ついたプリナちゃんがちょっとでも立ち直れる何かがあって欲しい。そういう願いにも反応しちゃったのかな。

 

「名前とかどうしよっか」

【にう?】

「………『うに』でいい?」

「ミュート……?」

 

 ごめんプリナちゃんドン引きした目で見ないでかなり傷つく。ネーミングセンス壊滅なのは自覚あるから。

 

【うに!うに!うにぃっ♡】

「…………。その子は気にいったみたいなので、いいのではないですか?」

「そうなのか?うに」

【にぅっ!!】

 

 頭がいいのか自分の名前が決まったっていうのを一発で理解して飛び跳ねそうなくらいはしゃぐ『うに』。ていうか軽く上に投げてキャッチしてあげると超楽しそうに手足ばたばたしながらこっちを期待した目(?)で見てくる。はいはいもうちょっと遊んであげるからなー高い高いー。

 

 

「うふふ、そうしていると本当に親子みたい。髪の色もおそろいで」

「髪の色?」

 

「………あ、自覚はまだないのですね。はい♪」

 

 

 ふとプリナちゃんがなぜか嬉しそうにこぼした言葉にクエスチョンマークが出る。その疑問は、かばんから取り出した鏡に映った俺を見て一瞬で解決した。

 

「白くなってるーーー!!?」

 

 そういえば敵を倒してレベルアップすればするほど髪の色薄くなるんだっけ。

 あれだけ強さも数もヤバいのを全滅させたらそりゃ強くならない方が逆にヘコむけど、ピ○様で金髪のイメージだったからカラーチェンジのビックリ度は高かった。

 白の色違いピ○様かぁ。レア度はめっちゃ高そう。

 

【にぅ♪】

 

 まあ、髪が白くなったから何って話ではあるんだけど。こっちもなんだかうれしそうな『うに』とじゃれあいながらも、そろそろぐだぐだしてないで帰らないとと思ってプリナちゃんに声をかけて、また泡でぷかぷか運ばれる体勢に入った。

 

『………なにか、忘れてるような?』

 

 半日もしないでパーシャルの街にたどりつき、プリナちゃんが『隠蔽』のヴェールを装備して。街中にモンスターを連れて入るの大丈夫?って思ったけど、プリナちゃんがうにを抱えてれば一緒に『隠蔽』の効果がかかるらしい。

 なんか道行く人の視線がすごかったけど、長旅から帰ったばっかで気にするのはダルいのでまた明日考えることにして。家の門をくぐると『うに』は俺の頭の上にジャンプした。

 

「え、そこ定位置にするつもり?」

【にぅ!】

「まあいいけど。エルザー、ただいまー!」

 

「おかえりなさいですミュート、さ………、!!?」

 

 ぱたぱたと廊下を走って出迎えてくれるわんこ。それが俺の頭上の毛玉を見た瞬間固まる。

 髪の色チェンジも含めて、いきなりだと驚くよなあ、って思ってると―――エルザが持ってたおたまを手から離してぴたりと固まった。床に落ちてからんからんと立てた派手な音にも気づかないような様子で、絶望の表情に顔を歪めて涙を流し始める。

 

「ええっ、エルザ!?ちょっと、どうした!?」

『アイデンティティの崩壊、ですね』

【にぅ?】

 

「ご―――」

「ご?」

 

 

「ごしゅじんさまが、ペトラレたぁぁぁ~~~っっ」

 

 

「ペト……?なんて?」

 

 

 その後なぜか、エルザが用意してくれていたごはんを食べる前に、三時間くらい構い倒さないと再起動しなかった。

 

 

 





>おねえちゃん特権です♪
 白髪で幸薄いお姉ちゃんつながり。

>願いに反応して虹色に輝いて
 虹色。はい。

>「『うに』でいい?」
 毛が茶色かったら見た目的にもウニっぽいし……とか思ってた模様。だからってもうちょっとこう、ペットに付ける名前としては……。

>(まさか、ね)
 ホントに妹ちゃんの生まれ変わりなのかどうかは決めてません。あの世で婚約者の騎士さんとずっといちゃいちゃしてるかもしれないし。お好みの解釈でどうぞ。

>白の色違いピ○様
 第一話が連載開始と同時とすれば2026年1月。その半年以上前に異世界に行ったミュートくんはうすチュウの存在を知らない。

>髪が白くなったから何って話
 色々問題は出てくるけど考えつかないミュートくん。予言の年まであと数日のところに現れた救世主カラーの髪とか通行人の視線が集まる集まる。

>「ごしゅじんさまが、ペトラレた」
 ちゃんとミュートくんにペットって認められてから言おうね(追撃)
 今度は自分が脳破壊される番なエルザ。多分これ以降、ペットモンスターの座を『うに』から取り戻すことは不可能。そもそもエルザがバケモノだって知った今も、ミュートがエルザを自分のペットだと思ったことはないしこれからも可能性はない(無慈悲)


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