夢現世界の災凶姫~Disastress in the Parasomnias~   作:サッドライプ

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 この作品の世界観は【みんなが想像する】ナーロッパ世界です。
 文化レベルの割に生活は快適だし、地球上に存在しない細菌の感染症だの医学が発展してない世界で一度かかれば地獄な虫歯や盲腸の心配だのといった話の主題じゃないストレス要素はいちいち説明するまでもなく排除できます。【だって誰もそんなもの想像してないんですから】。
 【だから】凶悪なモンスターがうじゃうじゃ沸く理由も、そんな世界で人間がちゃんと発展できてる理由も、説明不要です。

 頭スカスカで話が進められます。素晴らしいですね。




城塞都市パーシャルⅢ

 

『そういえば、普通に俺とプリナちゃんで言葉通じてるよな』

『………?どういうことですか?』

 

 でっかい泡に包まれてひたすら西に向かう空の旅の途中、彼女とこんな話をした。

 

 わざわざ外国に行かなくても日本の中ですら日本語が通じない人達がたくさんいる。異世界ならなおさら、そこで日本語を話す人なんて居るわけがない。

 でもプリナちゃんは俺の妄想語りを全部ちゃんと理解できちゃってた(ごろごろごろごろ)し、プリナちゃんの喋る言葉は俺には全部日本語に聞こえてる。

 

 お決まりのパターンな翻訳魔法とかそんな感じのアレは覚えがないから、これははじめから説明をぶん投げてる系なのかなあとも思ってた。ソシャゲのコラボとかだと割とあるあるだし。

 実際この話を振られたプリナちゃんも、最初はなんのことか分からないみたいなきょとん顔だった。可愛い。はてなマークが周りにふわふわ浮いてるのが見える。超可愛い。

 

 可愛いけど、俺から振った話なんでちゃんと理解してもらえるように頑張って説明した。下手な説明だからやっぱりしばらくは伝わらなくて、「理解できなくてごめんなさい」みたいな悲しくて申し訳ない顔させちゃったせいで心が死にそうになったけど。

 あれやこれや言い方を探して「俺の居た世界だと国によって色んな言葉がある」みたいに言うと、なんとなく伝わったみたいで感心した風にまとめてくれた。

 

『遠く隔てた国で異なる文化や風習があれば、互いにまったく意味の通じない言葉も当然生まれる。それが時代を経て積み重なれば、最早互いに話している言葉の全てが理解できなくなる。この事象は起こって当然―――成程、そういうこともありえるのですね』

 

 やっぱりかしこいプリナちゃんも可愛いなあ、とか考えちゃう俺はバカ代表。勉強できる優等生って感じだけど、お姫様な上品さのおかげか不思議とイヤミな感じがしないのもこの子だからというか結論=プリナちゃん最高。

 

 ただ、これまでの流れと彼女の口ぶりから俺でも分かることもあって。

 

『この世界だと、言葉が通じないなんてことはないんだ?』

『ええ。私もかつて大陸中の様々な場所を巡りましたが、そのように難儀をしたことは一度もありませんでした』

 

 それはすごく便利なことだって思うけど、何故だかそれを語る表情は沈んでた。

 

 

『一生自分の生まれた村から出ないで生きる人間も珍しくはありません。そんな人々にとって、遥か遠くに住む人が自分の全く知らない言葉ばかり喋っている、同じ人間なのに会話が通じない―――そんな可能性など考えも及ばないでしょう。私自身、今ミュートから指摘されるまで考えもしなかった。

 

 この夢現世界(パラソムニア)で、“圧倒的多数が想像できないことは起こる筈がない”』

 

 

 だから言葉が違って会話ができないなんてこともありえない、って………分かるような、分からないような。

 でもいちいち翻訳なんて手間がかからないのはいいことのはずなのに。

 

『それはなんかダメなの?』

『正の側面だけ見るのであれば、さほど。ニンゲンは概ね自分が楽なこと、幸せなことを望みますから。

 “これがこうなら便利なのに”、“こういうものがあればもっと幸せになれる”、“自分を助けてくれる都合のいい救世主が欲しい”――――ええ、多くの人々がそれを望めば望むほど、世界がそのように変わる(ゆがむ)のですから』

 

 

『………???……うん??』

 

 

 なんかクイズでも出されてる気分。落とし穴があります、さてどこでしょう?分かりません、バカだから!!

 

 ただ、寂しそうに話すプリナちゃんが心配で。頭がぷすぷす言いそうになりつつ必死に考えながら、一方でどうにか元気づけてあげられないかなって見つめていると―――ふと、硬い表情がゆるんだ。

 

『ふふっ。詮無いことですね、あなた様はそれでいい。そんなミュートだから愛おしい』

『えっと、ありがとう?俺も大好きです』

『~~~っ、もうっ』

 

 結局色々分からないままだったけど、安心したように俺の頭を胸元に抱きよせてぎゅうってしてくるプリナちゃんが可愛いし感触が幸せだから、まあいっか。

 

 答え合わせは、もうちょっと先にとっとこう。

 

 

 

…………。

 

 って感じで、びみょーに話がズレた気もするけど、よーするに初めての街でも俺は言葉が通じなくて困り果てるなんて目にはあわずに済んだってこと。

 ただ言葉が通じたからってうまくコミュニケーションが取れるかは別の話なわけで。

 

 プリナちゃんは例のヴェールを被って隠蔽(ハイディング)中―――顔を隠した怪しい女の子なんて彼女しかいないのに、ホントにすぐ横をすれ違っても誰も視線すら向けないんだからすごいなこれ。

 ともかく目立つ訳にはいかない子に頼れないしカッコ悪すぎるから、とりあえず今日泊まるところと宿泊代のあてをなんとか頑張って見つけようと歩き回った。

 

 ファンタジーの街並みや人々の服装を観光気分で観察する余裕なんてない。プリナちゃんを今日はベッドで寝させてあげるという超重要ミッションの最中なんだから。

 それで思いついたのがダンジョンのドロップアイテムを売ってお金だけでも手に入れることだったけど―――フツーに店主に怒られた。

 

 まー言われてみたらそりゃそーなんだけどな。ゲームだとその方が便利だから買い物する店でアイテム売ることもできるけど、現実で商品の買い取りをやってくれるスーパーやコンビニがないのを考えたら専門のところに行けって言われても当たり前の話。

 

 

 そーいうわけでその店のおじさんに場所を聞いてやってきました冒険者ギルド。正確にはイムニティギルド?なんだっけ。それどころじゃないから余裕がないって言ったばかりだけど、ごめんやっぱテンション上がるわこういうの。

 掲示板にたくさん紙で貼り出された依頼、革の鎧を着て武器をぶら下げたおっさん達がそれを確認してて、プリナちゃんほどじゃないけど可愛い受付嬢たちがカウンターの向こうでそいつらのクエスト受領を待っている。うん、実に冒険者ギルドな感じ。

 そこに俺は今から魔物を倒した戦利品を収めて報酬をもらいに行くわけだ。ゲームやアニメに触れながら育ってこのザ・異世界ファンタジー感にわくわくしない奴は絶対にいないはずだ。

 

 ていうかそもそもの話、半年以上俺は誰とも会話することなく閉じ込められてたわけで。

 正直今の俺は人と話をすることに、話ができるというだけでひじょーに満足している。それこそギルドに初めて来た新人冒険者にインネンつけるチンピラかませくんが現れても俺は笑顔で握手できる気分だ………さすがにそこまでべったべたなお約束はないみたいだけど。ちょっと残念。

 みんな自分の用事に集中してるのかあちこち見回しても誰とも目が合わないし、まあいちいち新顔に興味なんて持たないのがふつーなのか。

 

 絡まれイベントもないみたいだし、ギルド観光が目当てでもないんでとりあえずそのまま受付嬢のところに突撃してみた。三人いた中で一人はすごい勢いで書類をめくってたしもう一人はモーレツに何かを計算してたみたいだったから、残りの大人しそうな子のところ。

 大人しそうというか話しかけられただけですっげーキョドってて、本当に受付嬢できてるのこの子?みたいな感じだったから俺もちょっと「どうしよう…?」ってなったけど。

 

 だがそこに現れたのはインテリメガネ。もー見るからに「俺は頭がいいです」感あふれるメガネ。大人しい子に暴言吐いて退場させるおにちくメガネ。でもその子はすっごく嬉しそうに「ますたー♡」って答えてたからただのドSメガネ。んでもってたぶんツンデレメガネ。

 

 実際マスターはマスターでもギルドマスターらしくて「あ、こっちの(謎の超大型新人にギルドマスターが対応する)お約束イベントはあるんだ」ってちょっと感動したのはないしょ。クールで仕事できる男オーラもすごくて、しかも実際話してみると超親切。

 

 俺が売ってもいいドロップアイテム―――ダテに半年ダンジョンにこもって魔物と戦ってばかりだったわけじゃない、効果が微妙だとか装備部位が同じでもっと強い装備を使ってるのとかがアイテム袋にゴロゴロゴロゴロ転がってる―――を何個か見せると、超特急で鑑定士を呼んでくれたり(呼びに行かされたのはさっきバリバリ計算してた受付嬢のねーちゃんだった。途中で中断させられたの大丈夫なんだろーか?)。

 宿を探してるって言うと、しばらくこの街で暮らすのならギルド所有の物件を紹介してくれるって言ってくれたり(さっきばさばさ書類をめくってたねーちゃんがすぐに横からシュバって資料を渡してくれた。結局何を確認してたんだろう……?)。

 

 話がうまく行き過ぎてちょっと不安にもなったけど、プリナちゃんを見るとコクンとうなずいてくれたから、あからさまにだまされてるってことはないんだと思う。

 なのでありがたく好意を受けることにして、あとはしばらく暮らせるくらいにはアイテムが高く売れるといいなーとか期待して鑑定士さんを待つことにしたんだ。

 

 とりあえず今日寝るところを確保するっていう目標がクリアできそうで、俺はそこで一安心しちまった。もうイベントはないなって無意識に油断した。

 『外』に出て、一気にゆるんだのかも。命がけで魔物と戦うような世界でそんなふぬけた心がまえなんて許さないって言わんばかりに、そいつは現れた。

 

「マスターっ!デュクレイさん連れて来ました!!」

「来たか。早速だが鑑定を頼みたい」

 

 

「まったく、慌ただしいことこの上なくてよ。エレガントじゃありませんわ」

 

 

 その鑑定士さん?はそれこそマンガやアニメでしか聞いたことがないようなお嬢様言葉をナチュラルに使いこなしていた。なんなら首を傾げながら縦ロールをかき上げる角度も完璧だった。

 

「でもよくってよ、よくってよ。建物に入る前から感じる芳醇な匂い、高貴なる気配。すばらしいアイテムちゃんがここに持ち込まれたこと、このヘモフィルス=デュクレイ様にはお見通しでしてよ」

 

 ただ、それだけに。

 

 

「いざ、鑑定ですわ!!

――――アイテムちゅわ゛あああ゛ぁぁっぁぁあっぁ~~ん♡♡♡ぶる゛わああ゛ぁぁっぁぁッッッ!!!」

 

 

 お嬢様言葉でしゃべる肌テッカテカで筋肉むっきむきの半裸のおっさんがイってる眼で机の上に置かれたアイテムたちにかぶりつく姿は、なんていうか夢に出そうな衝撃の光景だった。

 

 

『…………え、え、え?』

 

 

 顔を隠しても見える、今のプリナちゃんの顔は多分目が○で口が▽のデフォルメ顔になってるのが。俺も多分今そんな感じだから。

………この人?に今後の俺達の生活費がかかってるだけに、なおさら。

 

 

 





※『みんなが想像していないことは起こりえない』―――既に作中で描かれたいくつかの内容と、あとは今話ラストの展開と明らかに矛盾していますが、前者はちゃんと意図してのことです。「まーたこの作者ガバってんな」とか言わないで(懇願)

………後者?へーきへーきお嬢様言葉のマッチョなオカマなんてどんな作品にも必ず一人は登場するから。想像できないなんてことないから(錯乱)

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