折れた剣と時に置き去りにされた化生   作:ヒフミくろねこ

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――お主を哀れもう。

 

 それは、幻聴だったのか。

 

 

 

   ***

 

 

 

 

 

 4月7日 夜。

 

 どこをどう走ってきたかなんて分からない。  俺はただ、深い森を駆けていた。

 

 血を流しすぎたのか、もう熱いのか寒いのかすら判然としない。  散り散りになって霧散する意識を何とか繋ぎとめ、それでも霞む世界を走る。

 

 俺が戦い終わるのを待っていた封印指定執行者。  封印指定を受けた俺を狙う者たち。

 

 どこかに隠れ、隠遁とした生活を送るなら、きっと見つかることなんて無いのだろう。  だが、それは俺には出来ない相談だった。

 

 皆を救うという理想。  初めて人をこの手で殺してしまった時、正義の味方を名乗る資格を失って。  それでも我武者羅に駆けた。理想だけを胸に。

 

 イリヤが死んでしまった時。  俺の中で、彼女が誰よりも高い場所にいたのだと思い知らされた。  皆を救うと言っておきながら人に順番をつけて、その一番高かった人すら助けることが出来ずに、死なせた。

 

 イリヤが目の前で息を引き取った数日後。  俺は皆の前から消えるように冬木を出て、戦場にいた。  不安定なまま戦い、救い、駆け抜けた。

 

 もう既に、俺は破綻していたんだ。  壊れかけの俺が、本当に助けたかった人がいなくなって。  もう俺には、反射的に人を助ける事しか、出来る事が残っていなかった。

 

「あっ――」

 

 血が流れすぎたせいだろう。  盛り上がった木の根に足を引っ掛け、無様に顔から地面へと転ぶ。  口の中に血と土の味が混ざり、砂の不快感が広がる。

 

 俺は何のために生きている?  なぜ俺なんかが、今尚生きている?

 

「……このまま、こうしていれば。俺は、死ねるのか」

 

 うつ伏せに、無様に倒れ伏す自分自身。  何もかも諦める。それはきっと、今の俺には甘美な響きだった。

 

 ……でも、俺は無駄には死ねない。  生きているからには、生きなければ。  それはあの焼けた世界から俺だけが生き残った、自分に対する義務だから。  自身のための自殺。それだけは、決して許されない。

 

 なら、俺は立ち上がらなければならない。  散り散りになりそうな心を集めて、決意を固めて顔を上げた。

 

 その先には、人の気配があった。  俺の視線の先にいたのは、ただ無防備に立ち尽くす少女。

 

「大丈夫ですか!?」

 

俺の存在に気づいたのか、少女は一瞬驚いた後、こちらへと駆け寄ってきた。

そこで、違和感に気づく。  彼女が口にしたのは――日本語か?

 

目を凝らし、霞んだ視界で少女を見る。  映るのは長い緑の髪と、心から心配そうな表情。

 

「早く……俺を置いて、ここから逃げろ」

 

 ここは、この時はまずい。圧倒的に。  俺と一緒にいるというだけで、この少女にまで危害が及ぶ。

 

「早く、時間が……」

 

 動こうとしない。  少女の腕を外そうとしたが、びくともしない。  もう俺の力は、こんな少女の腕すら外せないほど弱っているのか。

 

 だが、俺は俺のために誰かが傷つくことだけは、絶対に容認できない。  痛む体を引きずり、無理やり立ち上がる。  激痛が全身を走る。だが、こんなことは何度もあった。  しっかりしろ、衛宮士郎。

 

「君が離れないなら、俺が……どこかへ行く」

 

「駄目です、安静にしていてください! ――マスター、マスター!」

 

 聖骸布のコートの袖を掴んで離さないまま、彼女は虚空に誰かを呼ぶ。  緑の髪をした、不思議な少女。  無表情なのに、どこか泣きそうな顔が印象に残り――。

 

 背後に、黒い何かが舞い降りた気がした。  それは俺を迎えに来た死神なのだろうと、直感した。

 

 そこで、俺の意識は闇に沈んだ。

 

 ゆっくりと意識が覚醒していく。

 

「……?」

 

 最初に視界に映ったのは、木製の天井。  上半身を起こして首を巡らせると、大小様々な人形が見えた。  自分へと視線を落とすと、そこには適切な治療の跡。

 

「起きたか、衛宮士郎」

 

「誰、だ……?」

 

 横になっている俺へと、不敵に笑いながら近づいてくる小柄な少女。  見た目は華奢で可憐だが、その内に潜める何かが、俺の生存本能に警鐘を鳴らす。

 

「やめておけ、傷が開くぞ」

 

 それでも警戒を緩めない俺に、目の前の少女はため息を吐いた。

 

「……すまん、な」

 

「何が、だ?」

 

 どこかバツが悪そうな少女の謝罪。その意味が分からない。

 

「……貴様がどこの誰か分からなかったのでな、記憶を覗かせてもらった」

 

「俺の、記憶を?」

 

「ああ。害するものかどうか判断がつかなかったのでな。一応、ここの警備をしている身として……。いや、こんな言葉は言い訳に過ぎんな。すまない」

 

「いや、別にいいさ」

 

 俺自身、隠さなければならないことなど無いはずだ。  だからあっさりと謝罪を受け取ったのだが、俺の反応に、少女は一瞬顔を歪めた。

 

「貴様のアレは――。いや、何でもない。忘れろ」

 

 どこか辛そうな彼女の様子に、俺はそれ以上追及せず、別のことに思考を巡らす。  そして、真っ先に確認すべきことに思い至った。

 

「執行者は! 俺を追っていたのは、どうなった!」

 

 テーブルを叩くようにして立ち上がり、叫ぶように問う。  だが少女は、ふっと不敵に笑った。

 

「安心しろ。貴様を追うヤツは、ここにはいない」

 

 見逃された? いや、あり得ない。  封印指定執行者は、そんなに甘い連中ではない。

 

 一信九疑。それでも促されるまま、不承不承ソファーへと腰を下ろす。  この少女から、一体何を聞かされるのか。

 

「単刀直入に言う。ここは貴様がいた世界ではない」

 

「違う、世界……?」

 

「ああ。どういう理由で貴様がこの世界に来たのかは知らん。貴様の方こそ、何か知っているんじゃないのか?」

 

 あの緑の髪の少女に出会う前。  誰かの声が聞こえたような気がした。

 

 記憶を探ろうとしたが、それは指先からこぼれ落ちる雫のように、掴むことができなかった。

 

「……分からない。君が言うように、本当にここは違う世界なのか?」

 

 俺の問いに答えが返るより先に、別の影が視界に入ってきた。

 

「マスター、お茶を持ってきました」

 

「君は……」

 

 お茶を運んできた少女が、こちらを向いてペコリと頭を下げる。  特徴的な、緑の長い髪が流れた。

 

「傷の方は大丈夫ですか?」

 

「あ、ああ」

 

「よかったです」

 

 そういえば、まだ名乗ってもいなかった。

 

「改めて名乗ろう。俺は衛宮士郎。……今の俺は、何なんだろうな。まあ、ただの魔術使いと思ってくれればいい」

 

「……ただの、か」

 

 この小さな少女は、俺の言葉の端を捉えて難しい顔をする。  だがそれも一瞬。俺を射抜くような強い視線が向けられた。

 

「私はエヴァンジェリン・A・K・マクダウェル。吸血鬼の真祖、ハイデイライトウォーカー。『闇の福音』だとか『人形遣い』とも呼ばれているがな」

 

 吸血鬼の真祖。  その言葉に絶句するが、エヴァは不敵に笑って続ける。

 

「まあ、真祖と言っても元は人間だ。人から成ったということで、貴様の知識では『死徒』に分類されるかもしれん。吸血鬼ではあるが、貴様の世界の奴らのように吸血衝動があるわけでもないし、血を吸ったからといって問答無用にグールになるわけでもない。莫大な魔力を擁するだけの、ただの不老不死の化生とでも思えば間違いではないぞ」

 

 吸血鬼。その単語に息を呑む。  だが、目の前の少女に感じる気配は、俺が戦い抜いてきた幾多の人外とは明らかに違っていた。  禍々しい悪意もなければ、人を血袋と見下す傲慢さもない。  見た目通り、少し強い力を持った少女にしか見えない。  なら、俺がすべきことなんて一つもなかった。

 

「……なんだ、貴様は怖がらんのだな」

 

「怖がれって言われても……」

 

 エヴァの不機嫌そうな言葉に、俺はどう反応していいか分からず言葉を濁した。  結果として、彼女の柳眉をさらに吊り上げることになってしまったが。

 

「エヴァは、エヴァさ。出会ってから時間は経ってないけど、君は悪いやつじゃない。なんとなく、そう思う」

 

 苦笑いを浮かべて言った俺の言葉が気に障ったのか、エヴァはひったくるようにお茶を掴んで飲み干した。  俺にはそんな彼女の仕草が、どうしても悪意あるものには見えなかった。

 

 俺がさらに苦笑いを深めた時、視界に緑の髪が映る。

 

「私は絡繰茶々丸です。マスターのお世話をする従者で、ガイノイド――自動人形です」

 

「科学と魔法の融合らしいが、詳しいことは私にもよく分からん」

 

 エヴァの補足に、俺は「ほう」と感嘆の声を漏らす。  機械仕掛けのオートマタと出会ったことはあったが、この茶々丸という少女は存在そのものが違う。  科学と魔法。

 

 それでも、俺が抱いた第一印象は変わらない。  茶々丸は、人と変わらない。  動作、表情。それは心を持っている者のそれだ。  彼女は、ただの道具ではない。

 

 俺は改めて、茶々丸に向き直った。

 

「俺は君のおかげで、今こうしていられる。ありがとう」

 

「……いえ」

 

 茶々丸は事もなげに首を振るが、俺はそれでもう一度、礼を言った。

 

「それで話を戻すが。違う世界かどうかだったな」

 

「そうだ」

 

「ここは麻帆良(まほら)、麻帆良学園都市だ。魔法使いとただの人間が共存し、関東魔法協会の理事が統治している土地だ」

 

 魔法は隠匿されているがな、というエヴァの言葉に、俺は間抜けな表情を晒してしまう。

 

 呆然とする俺を置いて、エヴァはさらに詳しく説明してくれた。  小中高、大学や研究所。学生寮に商店街、教会や神社。  都市機能のすべてが集積した超巨大な学園都市。それが表向きの顔。

 

 その裏には、『世界樹』と呼ばれる巨木や地下図書館が存在し、魔法に関わる者たちが大勢いる。

 

 話の端々に出てくる『魔法』という言葉。  それは隠秘されるべき神秘ではなく、文字通りの異能。  その事実が、ここが異世界であることを強く実感させた。

 

「……本当に、違う世界なんだな」

 

「そうだ」

 

 長い説明で喉が渇いたのか、エヴァは茶々丸が淹れ直したお茶を啜り、湯呑みを置いた。  その音がやけに響いたのは、俺の気のせいだったのか。

 

「貴様に聞きたいことがある。異界の魔術使い」

 

 どこか飄々としていたエヴァの雰囲気が一変した。  虚偽を許さない、鋭い視線。  彼女は俺に、肩書きとしての答えを求めていた。

 

「俺に話せることなら、何でも聞いてくれ」

 

「……貴様、呪いを解くことのできる『何か』を知らないか?」

 

「何か、って何だ?」

 

「何かだ。魔術でも、魔法でも、武器でも、魔具でもいい。解呪を可能にする、あらゆる手段だ」

 

 エヴァは、藁にもすがるような渇望を顕にしていた。  まるで血を吐くような問いかけ。  そこには、澱んだ何かが張り付いていた。

 

「その呪いは、エヴァにかけられているのか?」

 

「そうだ」

 

 俺はエヴァの視線を正面から受け、その奥を覗き込む。

 

「……呪いをかけられた理由を、聞いてもいいか?」

 

「くだらん理由だ」

 

 忌々しそうに、エヴァは吐き捨てた。

 

「ヤツを追ってきた私は敗れ、ここの警備員が欲しいとか言っていたジジイのせいで、学校に通わなければならないという呪いをかけられた。……ヤツは私に、人としての生活をさせたかったのかもしれん」

 

 エヴァは自嘲するように続ける。

 

「ヤツは中学を卒業する時には呪いを解くと約束した。だから私はヤツとの約束を信じて、ただの中学生として学園に通った。だが三年後、ヤツは来なかった。卒業すれば呪いを解くと言ったのに、ヤツは来なかったのだ! ……それから十五年、私はここに縛られ続けた。なあ、くだらん理由だろ?」

 

「……その人は、どうなったんだ?」

 

 俺は彼女の笑みを見なかったことにして、呪いをかけた人物のことを尋ねた。

 

「ヤツは死んだよ。サウザンド・マスター。大戦を終結させた英雄と呼ばれたヤツだったのに、あっけなく死んだ」

 

 ヤツ、ヤツと言葉を重ねるエヴァ。  だが、そこには強い感情が渦巻いていた。  悔しさ、悲しさ。耐えるように拳を握る。

 

「――もう一度聞くぞ。貴様はそれを知っているのか、いないのか?」

 

 それは、懇願だった。  縋るようなその姿は、この孤高の少女にはひどく似合わない。  ただ、彼女にはそれが必要なのだということだけは、理解できた。

 

 俺は心の中で是非を決めた。  行使するにあたり、最後に一つだけ問う。

 

「その呪いは、魔術的なものなのか?」

 

「そう、だな。魔法……いや、貴様の知る魔術と思って差し支えない」

 

「…………」

 

「それで、貴様は――」

 

「成功するかは断言できない。だが、可能性のあるものは知っている」

 

 ――『破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)』。  あらゆる魔術を無効化するあの短刀なら、この少女の望みを叶えられるだろう。

 

「――――っ」

 

 俺の肯定に、エヴァが息を呑んだ。  歓喜、だったのか。幾多の感情が混ざり、泣きそうなほどに――。

 

「それは何だ! 私に教えろ! 今すぐに!」

 

 湯呑みが落ちて割れる音。  エヴァはテーブルを乗り越え、俺の胸ぐらを掴んで揺さぶった。

 

「対価は何でもやる! 貴様が望むことなら何だってな! だから――」

 

「マスター!」

 

 感情を露わにするエヴァを茶々丸が止めようとするが、あっけなく振り払われる。  空虚な俺には、そのエヴァの姿がどこか羨ましく見えた。

 

 俺の答えは、ただ一つだった。

 

「――エヴァ。俺が、その呪いを解いてやる」

 

 俺とエヴァ、茶々丸の三人は学園の境界。麻帆良に架かる大橋へと来ていた。

 

 俺は歪な短刀、『破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)』を投影し、説明をした。  あらゆる魔術を否定する、背理の刃だと。

 

 エヴァは震える手でそれを受け取り、小さな両手でしっかりと握り込む。  これまでの鬱憤をすべてぶつけるかのように、強く自身の胸へと突き刺した。

 

 血が滲み、服を染めていく。それでも彼女は気にしなかった。  用は済んだとばかりに短刀を投げ捨て、俺たちに背を向けて一歩、二歩と、踏みしめるように歩き出す。

 

「っ!」

 

 学園結界の境界を跨いだ瞬間、魔力が爆ぜた。  重石から解き放たれたエヴァは、体に満ちる魔力を享受し、そのままふわりと浮かび上がる。  傷ついた胸は瞬時に再生し、何事もなかったかのように、ただ空を見上げた。

 

 その姿は、正しく夜の住人。  月光に照らされるエヴァンジェリンは、見惚れるほどに、綺麗だった。

 

「……今日は、月が綺麗だな」

 

 輝き落ちる雫。  微かに見える彼女の横顔を、涙が伝っていた。

 

「エ、ヴァ?」

 

「マスター……」

 

「……ここに縛られて十五年。ヤツが死んで、日々を無為に過ごした。ヤツとの繋がりはすべて消えたと思いながらな。……だが、忌々しいこの呪いだけが、ヤツとの唯一の繋がりだった」

 

 呪いは解け、最後の繋がりも消えた。  エヴァは小さくそう漏らした。

 

「……エヴァ」

 

 かける言葉が見つからない。  大切な人を失う悲しみも、絆が途切れる痛みも知っている。  けれど、空虚な俺には語れる言葉がなかった。

 

「――だが、礼を言うぞ。士郎」

 

 月を背に振り向いたエヴァの頬に、もう涙はなかった。  ただ、涙の跡と、赤く腫らした瞳。

 

「誰にもできなかったことを、貴様はやってのけた」

 

「…………」

 

「……私は、貴様に救われたのだ。誇れ、士郎」

 

「俺は……エヴァを、救えたのか?」

 

 “救う”。  それは俺が求め続け、伽藍となった今でも無意識に渇望するもの。

 

「そうだ。私は貴様に救われたのだ」

 

 そう言って、エヴァは笑った。  純粋で、綺麗な笑み。  少女の姿でありながら、どこか大人びた、見守るような笑み。

 

 それは俺に、一つの記憶を呼び起こさせる。  俺の大切だった人。  銀糸の髪を自慢し、妹のように振る舞いながら、俺を守ってくれた、姉の姿。

 

 一筋。俺の頬を、涙が伝った。

 

「士郎、貴様の望みを言え」

 

 一通り満足したのか、エヴァが再び結界の内側へと足を踏み入れた。  月を背負い、俺に問う。

 

 望み。望み、か。  俺は考える。エヴァに相応しい望みは何か。  彼女が話してくれたことを反芻し、一つの結論を出した。

 

「……なあ、エヴァ。せめてこの一年は、学校に通わないか?」

 

「何?」

 

「ずっと学校にいたんだ。授業も行事も飽きているかもしれない。でも、卒業式はまだだろう? もう呪いがないのなら、今度こそ本当の意味で卒業できる。だから、もう一年だけ、学生を続けないか」

 

「…………」

 

 エヴァが想い、想われたあの人が最後に望んだこと。  それは、最後までやり遂げるべきだと俺は思う。

 

「それからはどこへ行こうと俺は止めない。エヴァの好きにすればいい」

 

 俺のエゴかもしれない。彼女には苦痛なだけかもしれない。  それでも、俺はそれを望んだ。

 

「そんなことでいいのか? 私の出来ることなら、いや出来ぬことでも骨を折ってやろうというのに。貴様の望みは、それだけか」

 

「ああ。俺は、俺自身に望むことなんて何一つない。だから、これでいいんだ」

 

 言い切った俺に、エヴァはなぜか顔を顰めた。  二、三。思案するような仕草を見せ、彼女は俺へと近寄ってくる。

 

「……分かった。約束してやる。だが、その時まで貴様もどこかへ行くなよ?」

 

「俺が?」

 

「そうだ。貴様はそこまで言ったのだ、責任くらい取れ。最後まで、私を見届けろ」

 

「責任って……」

 

 困惑する俺を、エヴァは不敵に笑って黙殺した。

 

「家へ帰るぞ。士郎、茶々丸!」

 

「……家って、俺がいてもいいのか?」

 

「貴様は何を言っている。今日からここが貴様の家だ。遠慮はいらん」

 

 呆然と立ち尽くす俺の手を、エヴァは逃がさないとばかりに強く掴んだ。

 

「さあ、帰るぞ」

 

その言葉を甘受していいのか、俺には分からなかった。

けれど、その手の温かさに、俺は――。

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