主人公の個性奪っちゃったみたいだから返すね 作:しおんの書棚
応援して下さって、お気に入りにもしていただいた2300越えの方々、オラに元気を分けてくれ!
Side 私
第四試合は、飯田くんvs明ちゃん。
明ちゃんが、言葉巧みに改修アンド勝手に機能追加したヒーローコスチュームを、飯田くんに着させて始まった試合。
ドッ可愛いベイビーを駆使しつつ長時間逃げ切ることで、狙いだった企業へのアピールを完遂した明ちゃんは、自分から場外に出て決着。
飯田くん、真面目すぎて、いいように使われてしまったね。お疲れ様でした。
第五試合は、三奈ちゃんvs青山くん。
青山くんがヘソから放つ強力なレーザーを、三奈ちゃんがパルクール仕込みの身体能力を駆使して躱し、隙を見つけて青山くんのサポートアイテムのベルトを破壊。その後、強烈なアッパーカットをお見舞いして、三奈ちゃんが勝った。
第六試合は、常闇くんvs百ちゃん。
開始早々、先手必勝とばかりに攻めた常闇くんは、百ちゃんが創造で準備した物を使わせず、ダークシャドウの攻撃力を活かして圧倒。そのまま常闇くんが勝った。
第七試合は、尾白くんvs切島くん。
硬く鋭い切島くんと、尻尾を活用した武術で戦う尾白くんの戦いは、相性差もあって切島くん有利で試合は進んだけど、尾白くんは諦めずに回避優先で戦った。かなりの長期戦になり、最終的には尾白くんの体力が切れ、不利を打開できないまま決着。切島くんが勝った。
握手を交わすシーンは、お互いを認め合った感じがして、とても良かったね。
第八試合は、爆豪くんvsお茶子ちゃん
開始から終始、爆豪くんがお茶子ちゃんを圧倒する展開。
爆豪くんは、色々なモノが高レベルで、個性も性格に合った強力なもの。対するお茶子ちゃんは、特に身体を鍛えたわけでもなく、触れた物の重力をゼロにする個性で頑張ってきた。
そんな二人の戦いは、爆豪くんによる弱い者イジメに見えた観客にブーイングを受けたが、それは違う。二人とも、相手をリスペクトし、お互いに応え、全力で戦っているだけだ。
密かに策を用意していたお茶子ちゃん。個性を活かし、どうやってか空に浮かべた瓦礫が、爆豪くんに殺到。それを爆豪くんが、強力な爆破で薙ぎ払い、瓦礫の流星群は消滅。
万策尽きたお茶子ちゃんだったけど、それでも諦めず勇敢に立ち向かおうとするも、とっくに許容重量を超過していた反動で身動きできず敗北した。
だが、誰もがお茶子ちゃんにヒーローの姿を見たはずだ。一回戦のベストバウトは、間違いなくこの試合だと私は思っているよ。
こうして一回戦は終了し、二回戦の準備時間であり、選手の休憩時間となったわけなんだけど……。
「おお、いたいた。やっと見つけたよ」
下手な慰めはかえってお茶子ちゃんを傷つけると、出久を伴って控え室から廊下に出た私達の前に現れたのは、あのエンデヴァーだった。
Side 出久
近くで浴びる途轍もない威圧感に、僕は思ったことをそのまま口走る。
「エンデヴァー……、何故、こんなところなんかに……」
「はじめまして、エンデヴァー。お会いできて光栄です。
御用は、轟くんにですか? こちらの控え室にはおりませんでしたが」
姉さんの落ち着いた声で、なんとか自分を取り戻す。
「君は礼儀正しいのだな、目上を敬う気持ちは大切だ。で、用向きは、君にだよ」
エンデヴァーの視線は、姉さんに注がれていて、それを姉さんは平然と受け止めている。
「私ですか?」
「ああ。君は、素晴らしい個性を持っているね。
震脚だけであの破壊力、跳躍力も相当で、スピードもある。まるで、オールマイトの劣化版といったところだ」
たしかに姉さんは、鍛え上げた肉体と練り上げた技術で、僕にはできないようにことができる。けど!
「それは!」
言いかけた瞬間、目の前に姉さんの手が。それを見て、口を閉じた。姉さんだって、自分の努力を軽んじられれば、腹が立ってるはずなのに……。
「折角の機会ですし、ゆっくりお話を伺いたいのは山々なのですが、試合が迫っておりまして。大変申し訳なく思いますが、本題に入っていただけますか?」
「ああ、すまんな。
焦凍には、オールマイトを超えるという我が子としての義務がある。
君との試合は、そのテストベッドとして、とても有意義なものになるだろう。全力を尽くして、いい試合をしてくれたまえ。
言いたかったのは、それだけだ。試合直前に、失礼した」
轟くんの言葉、轟くんの表情。それを思い出した僕は!
「姉さんは、オールマイトじゃありません……」
「何を言うかと思えば、当たり前だろう」
立ち去ろうとしたエンデヴァーが、振り向いて、そう返し。
「ええ、その通りです。そして」
「「轟くんも、貴方じゃない」」
エンデヴァーと視線が交錯する。
「ですが、親子であることは、間違いないようですね」
「何が言いたい」
「お二人とも、話した時点で、私達に勝った気でいる。そんな滲み出る自信が、よく似てらっしゃいますよ」
そういった姉さんは、笑みを浮かべ、ひと睨みしたエンデヴァーは、踵を返して立ち去った。
「ふう、まったく。試合前に、つまらない話ししちゃったね、出久。でも、気合いは入った。違う?」
「うん、僕は改めて誓うよ。轟くんに勝って、彼を呪縛から解放して見せる」
そういった僕に、姉さんは笑顔で頷いてくれたんだ。なら、僕は迷うことなく戦うだけだ。
Side 私
二回戦第一試合は、因縁の対決である出久vs轟くん。
開始早々、轟くんが大きな氷塊で攻撃するも、出久は自分の身を守れる範囲に絞った火を吐く。
徐々に巨大化する氷塊と、それを相殺する火。このままなら、氷の個性が持つ弱点。冷気に、自分自身が蝕まれるという自爆で、出久が勝つ。
その状況を覆すべく轟くんが利用したのは、出久の火で溶けた氷により発生した水蒸気。
それによる視界不良の隙を狙って、近接戦を仕掛けた。つまり氷結したままの自陣を動き、少しでも冷気から逃れようとしたわけね。
なんとか攻撃を躱し、さらに大きくなったら氷塊を迎え撃つ出久。
その直後、私の目は、出久の表情が変わったのを捉えた。
「気づいたね、出久」
さあ、自慢の可愛い弟よ、強い意思を示せ。未来のNo.1ヒーローが、今持ちうる全力以上を引き出して。
「友を救え」
ね、出久。私は、そう呟いて、出久の後ろ姿を見つめていた。
Side 出久
火を吹けば、反動で熱が篭る。
だから、轟くんの氷がすぐ側まで襲ってきてからの迎撃を続けて、篭る熱量を冷気で抑えながら、轟くんを観察し続ける。
繰り返す攻防に、すべてが高レベルの個性保有者だと理解したけど、僕の吹く火に弱点があるように、轟くんの冷気にも同様の弱点を見つけた。
轟くんは、震えている。このまま続ければ、冷気できっと動けなくなるんだろう。その瞬間、思考が沸騰した。二人で、あれほど伝えたのに!
「……個性だって、生まれ持った身体機能の一つに過ぎない。君自身、冷気に耐えられる限界があるはずなんだ! でも、それは、左側の個性を使えば、解決できるんだろう!?」
手段と目的は分けて考えてって、姉さんと一緒に伝えたじゃないか。
麗日さんのように、みんな全力を、死力を尽くしてるのに、君はなんなんだ!?
そんな想いが、言葉となって迸る。
「みんな! 本気でやってるんだ!
一人一人目標は違っても、この場で勝って、先へ進むために!」
そうだ、みんな、そうなんだ。なのに君は!
「僕達を舐めるな、轟焦凍! 半分の力で勝てるつもりか!?
僕は! 君に! 傷一つ! つけられちゃいないぞ!!」
本気で来てよ、僕のライバル!
「全力で! 全身全霊で! かかってこい!」
声の限りに、僕は叫んだ。
Side 轟
二人の言葉が思い出される。だがそれは、クソ親父が態々かけに来た言葉で、瞬時に塗りつぶされた。
「……イラつくなあ、全力だと? なんて言われようが、コイツは譲れねえ!」
氷は、もうあまり連発できない。間合いを詰めて、火を吹かせるか、確実な攻撃で仕留める!
「これで! グハッ」
右足が上がった瞬間、一気に間合いを詰められた。予想以上の速度で拳が腹部に刺さって、大きく吹っ飛ばされる。しかも、凍ったままのエリアに!
『モロに入ったぁ! 緑谷出久、渾身の一撃ぃい!!』
なんで、そんなに!? いや、考えるのは、後だ。反撃しろ!
くっ、氷の規模がデカくならねえ! 発動も!?
「なっ!?」
『またまた行ったー! 緑谷出久、ここは攻め時と見たか、攻める攻める!!」
今度は、蹴りだと! なんでだ、俺の方が圧倒的に上だっただろ! なのに、なんで押されてる!
「なにがお前を駆り立てる!」
「期待に応えたいんだ!
笑ってさ、応えられるような、強くてカッコいい人に!
大切な人に、誇れる自分に、なりたいんだ!!」
瞬間、大切な人に。お母さんに、名前を呼ばれた気がした。
「だから、みんな、全力なんだ! 轟焦凍!」
そんなの俺の知ったことかよ! 反撃だ! 負けられねえんだ!!
だが、体温が下がって遅くなった俺の攻撃に合わせて、素早く踏み込んで来たアイツは。
「ゴハっ!」
引き寄せる個性! 威力が、速度が上がってやがる!
「君の境遇も、君の決心さえも、僕達には。いや、誰にも計り知れるもんじゃない!
だからって、全力を尽くさないで得た一番に、一体なんの価値がある!
それが君のいう全否定にならないことなんて、とっくにわかってるだろう!?」
また一撃を貰う。クソっ、どうして。
瞬間、過去が頭を過ぎる。クソ親父との鍛錬とかぬかす虐待。思い出の俺は、クソ親父みたいに、お母さんを苦しめる奴になりたくないと言っていた。
チッ、ボケっとするな! 試合中なんだぞ!? そう、自分に喝を入れて。
「いちいち、うるせえんだよ」
クソっ! 反撃しようにも、もう氷が生成できない! そんな隙を、見逃すわけないよな、緑谷!
「……だから、僕が勝つ! 君を、ここで越える!」
そして、また、いいのを貰って蹲ってしまう。
母さん、オレ。いや、やっぱりアイツは、クソ親父は許せねえ! だから!
「親父を……!」
「もう一度言うよ! 君の、君だけの! 個性じゃないか!!」
……オールマイトのニュースを、お母さんと一緒に見た時、それでもヒーローになりたいんでしょって言われたのを思い出す。あの後、母さんは、なんて言った?
ああ、そうだ、思い出した。忘れかけて、しまいこんだ大切な言葉は。
「そうだね、お母さん。なりたい自分に、なっていいんだ!!」
瞬間、吹き出す炎が、俺の身体を暖めた。
Side 出久
『こ、これはぁ! 轟焦凍! ここにきて、炎全開! 文字通り熱い展開キタァ!!』
思わず、変な笑いが出る。
「ふふふ、凄いな」
轟くんと、全力で戦いたいと願った。けど、すっかり忘れてたんだ。僕には、炎への対策なんて、なかったってことに。
「ちくしょうが……。勝ちたいって言いながら、敵に塩送ってんじゃねえよ。本当にふざけた話で、ふざけた姉弟だぜ。
でだ、お前らが言ったように、俺は炎に慣れてねえ。今できるのは、全力の一撃だけだ」
「うん。でも、それでいいんだ」
そうさ、これは僕が願った結果。だから。
「行くぜ?」
轟くんが構える。
僕は、引き寄せる効果のターゲットを轟くんにして、思いっきり息を吸い込みながら、個性で速度を上げつつ一気に駆け寄る。僕の火で、炎を相殺して、ブッ飛ばすんだ!
そして、火を吹いた瞬間。
「……緑谷、ありがとな」
轟くんの声が聞こえた。僕の火は、炎に飲み込まれて……。
Side 私
『なんだぁ!? なにが起きたか大爆発だぜぇ!?』
『熱膨張による爆発だろう。氷でかなり冷やされてたところに、あれだけの高熱だ。今は、水蒸気による霧が酷くて、なにも見えんな』
うん、出久は、よくやったよ。私は、爆風で場外に吹き飛ばされた出久を、壁際で受け止めていた。
轟くんは、自分の身体を氷で支えて、前方に特大の炎を撃つという、背水の陣。
出久は、個性も使って高速で移動しつつ、火を吹いて相殺からの一撃に賭けたんだろうけど、火では炎を押し留めるには至らなかった。
とはいえ、その火が防波堤となったことで、炎に巻かれる前に吹き飛ばされた。そのお陰で、軽い火傷で済んだんだから、怪我の功名といえる。
『やっとこさ、見えるようになって……。緑谷出久、場外! よって勝者は、轟焦凍! 三回戦進出だ!』
『あー、緑谷姉。弟を頼んでいいか?
さっきの爆発の余波でな、ステージの修復が必要になった。
しばらくかかるから、選手・会場の一同、一時休憩にしてくれ』
相澤先生の言葉に頷くと、出久を抱えて、リカバリーガール先生のもとへ向かう。
修復時間が過ぎれば、私の番だ。
頑張った出久が誇れるお姉ちゃんでいるために。そして、轟くんが変われたのか確信を得るためにも。
「必ず勝つ」
そう呟いて、私は、会場を後にしたのだった。
●オリ主
エンデヴァーと遭遇した。
轟の言っていたことの一部は真実だと把握。親子共々に宣戦布告された。
場外に吹き飛んだ瞬間、壁際で待機して受け止めた。怪我は防げた模様。
●原作主人公
エンデヴァーと遭遇した。
轟の言っていたことの一部は真実だと把握。
原作ほどの怪我もなく、善戦した。かなしいかな、敗北。
●轟
OFAが無いので原作より軽傷だが、殴られた部分が、別の意味で痛んだ。
ありがとう、緑谷弟。
◼️原作乖離・フラグ要素
出久 敗北するも、軽度の火傷と打ち身程度で済んだ。