主人公の個性奪っちゃったみたいだから返すね 作:しおんの書棚
そろそろ毎日更新は厳しくなってきた例。
Side 私
二回戦第三試合は、三奈ちゃんvs常闇くん。
三奈ちゃんが、身体能力を活かしたパルクールの動きと、個性の酸を飛ばして果敢に攻める。
けれど、騎馬戦の時同様、常闇くんのダークシャドウによる鉄壁の防御を崩せず、最終的にダークシャドウの攻撃で決着。
ダークシャドウの汎用性の高さと、攻守に優れた特性が際立った試合だったね。
二回戦第四試合は、爆豪くんvs切島くん。
爆豪くんが攻めるも、硬く鋭くなった切島くんを止められず、それでいて切島くんの攻撃も、かすり傷程度しか与えられないという膠着状態。
しかし、そんな攻防の中で、切島くんは全身に気を張り続けなければ硬化し続けられないだろうという予想を、爆豪くんは立てた。そこで爆豪くんは持久戦に持ち込み、切島くんの個性が切れるように仕向け、いつものように盛大に爆破して勝利した。
これにて二回戦は終了し、ベスト4が出揃う。轟くん、私、常闇くん、爆豪くんが準決勝進出を決めた。
そして、決勝進出をかけた準決勝第一試合は、轟くんvs私のエンデヴァーが望んだカードだ。
たしかにエンデヴァーへの怒りはある。けれど、試合う相手は轟くんであって、エンデヴァーじゃない。なら、今は、轟くんとの試合に集中する。勿論、同時に達成できるようなら、やることはやるけどね。
轟くん。君は、私達の言葉を聞いて、出久との試合で心を交わし、少しは変われたかな?
ステージの先に見える轟くんを視界に捉えたまま、そうであれば心から喜ばしいことだと思いつつ、プレゼントマイク先生のアナウンスを待ったのだった。
Side 轟
『準決勝! サクサクっと行くぜぇ!』
緑谷弟との試合で、同じ個性には慣れた。アイツらの吹く火では、俺の氷を完全には防げないことも把握した。
だがスピードは、飯田に勝ったことからもわかるように、1-Aの誰と比べても段違いに速い。しかも、近接戦闘に持ち込まれれば、あまりにも強すぎる。
『ヒーロー家のエリート! エンデヴァーの息子! 轟焦凍!』
色々と考えてみたが、結局近づかせないのが一番だ。
『
だから。
『スタート!』
氷結の最大出力で決める!
「これで!」
スタート直後で離れた距離。過去最速の個性発動。凍結の規模は最大。次に差し支えるし、これ以上は無意味だと個性を止める。
生み出した特大の氷塊で、緑谷姉の姿は見えないが、こうして俺が無事である以上。
「勝ったと思った?」
その瞬間、巨大な氷塊が、あっさりと砕け散る。
なにしやがった!? いや、考え込んでる暇はねえ!
砕け散った氷に、光が反射する中、緑谷姉は一直線に進んで、距離を詰めて来る。もう目の前だぞ! 迷わず撃て!!
そして、足元から氷塊が生まれ始めた瞬間、俺は見た。
「上鳴ん時の!」
緑谷姉は、ステージを踏み砕いて、俺の目の前に壁を作る。けど、氷塊の成長は止められねえだろ!
さっきとは違って距離が近い分、氷塊を生成し続ければ、ステージ片を乗り越えて閉じ込められるはずだ。いくら緑谷姉が強くても、完全に凍らせれば動けない!
「このまま凍れ!」
緑谷姉の姿は、氷塊とステージ片に隠れて、まったく見えないが、俺は気を緩めることなく凍結を続け。
「通背拳!」
そんな声を、聞いた気がした
Side 私
私の近接戦闘能力を警戒すれば、誰もが考えるもっとも簡単な対策は、近づけないことだ。しかも出久との試合で、中途半端な規模の氷塊は、火を吹いて相殺されると経験済。実際には、取れない手なんだけど、勘違いしていればそういう思考になるはず。
なら、轟くんに取れる手段は二つ。最善手である特大の炎、次点で最大規模の氷塊。どちらも遠距離からの攻撃だ。
炎であれば、足元を伝って凍りつく氷塊より発生が早いけど、慣れがない分遅延する。それに出久との試合で予兆は掴んだ。
氷であれば、轟くんの足元に気をつけて見ていれば、最速で発生に気づける。
どちらにしても狙ったタイミングで、上鳴くんとの試合で使ったステージ片を準備して壁にする。状況次第で蹴り飛ばし、防御しつつも風圧を伴ったステージ片により、ある程度は相殺できると思っていた。
結果、轟くんが選んだのは、轟くん自身が慣れ親しんでいる氷塊。私としては、炎よりも形がある分、対応はしやすい。
炎の方が最善手だと、轟くんなら理解しているはずだ。それでも選んだのは氷。出久との試合で一度使ったにも関わらず選ばなかったのは、まだ迷いがあるってことかな。
とにかく氷であれば、ターゲットである私が、氷塊の端付近に位置するはずだから、ステージ片を壁にして比較的安全に防げる。
「これで!」
氷結が停止し、轟くんの声が聞こえた。じゃあ、まずは氷塊を蹴り抜いて、距離を詰めようか!
ステージ片に脚を添え、亜音速突きの要領で、ステージ片を撃ち出す。氷塊を砕く過程で、ステージ片は徐々に形を失い、轟くんへの道が開いた。
「勝ったと思った?」
そう言いながらも、上手く調整できて良かったと安堵する。轟くんに当たったら、重傷は間違い無いからね。
一気に距離を詰めつつ、個性の予兆を見逃さないように……。来る! 氷結!!
轟くんに到達する直前で震脚。氷の発生源である轟くんの目の前に突き立ったステージ片、ステージの端からそれほど離れていないスタート位置、そこから後退しつつ二度目の攻撃をした轟くん、場外までの距離。いける!
強烈に踏み込み、空気を掴むような感覚の掌底を、ステージ片の向こうへ叩き込む意識で。
「通背拳!」
障害物には一切傷つけず、その背後に威力を通す掌底による突き技であり、私が準備してきた不殺の一撃。ステージ片を介して通り抜けた威力は、轟くんに到達する。
『轟焦凍、場外まで吹っ飛んだぁ! 勝者は、緑谷ひびき! 決勝進出だあ!』
『氷に包まれていて状況はわからんが、結果から言えば、間接的に攻撃したってことだろうな』
ふうっと息を吐き、安堵する。
……この試合は、私にとっても、轟くんにとっても、ある意味で試練だった。
私は、大人としての振る舞いを心掛けている。だから、直情的に怒ったり、誰かを蔑んだりとかは、基本的にしないんだよね。
けれど父親であり、ヒーローでもあるエンデヴァーの歪な想いを、直接本人から聞かされてしまった以上、大人として、人として、やるべき事がある。
エンデヴァーの自尊心を満たす道具として、我が子を扱うその思想を、私は絶対に否定しなければならないと思ったの。
そのためには、エンデヴァーがオールマイトの劣化版と称した程度の力で、エンデヴァーが身代わりを期待する轟くんを退ける必要があった。これは達成され、エンデヴァーの目論見を粉砕し、大なり小なり歪な想いが間違いだと突きつけられたはずだ。
そして、轟くん。彼もまた、エンデヴァーの呪縛から解放された証として、自分の意思で炎を使う必要があった。
まあ、まだそれほど時間も経ってないし、轟くんにも考えがあるのかもしれないので、これについては起きてからゆっくりと考えてほしいと思う。
なんなら轟くんのお母さんのところに行って、本心を聞き、伝える手伝いくらいなら、本人次第だけどしてもいいかもね。
とにかく、それこそがお互いに課された試練。
「私は乗り越えたよ、轟くんはどう?」
そう言いながら、ステージ片を蹴り倒して、場外の轟くんに歩み寄る。横たわった轟くんを抱き抱えて、運ばれてきた担架に載せると、救護班に任せた。
その後、会場の出口前で一礼してから手を振り、もう一つの準決勝を見るために観覧席へと移動する。
果たして決勝の相手はどちらになるか、そんなことを考えながら。
Side 出久
轟くんとの試合を通じて、かっちゃんとも違う圧倒的な個性の強さを経験した。現状の僕では、どうやっても炎を扱う轟くんに勝てるビジョンが浮かばない。
ただ姉さんには、僕が足元にも及ばないような身体能力と技術があるし、氷については僕にも対処できたんだから、姉さんなら絶対にできる。あとは、炎にさえ対処できれば……。
そんなふうに考えて迎えた姉さんの準決勝。
対戦相手の轟くんは氷しか使わなかったし、姉さんも火を一切使わず、すべて武術で対処して見せた。
「出久、お茶子ちゃん」
声に振り向くと、笑顔の姉さん。
「姉さん、おめでとう」
「凄かったね!」
麗日さんは、かっちゃんと戦ったから、強個性の脅威をよく知ってる。だから試合前から、ずっと心配してたんだ。
ひびきちゃんは速いけど、近づけるのかなって言ってた。それは僕も同意見だったんだけど……。
「ありがとう。出久、お茶子ちゃん。
出久が、轟くんとの試合で頑張ったから、なんとか勝てたよ。
もしも決勝に爆豪くんが上がってきたら、お茶子ちゃんの頑張りが、私を勝たせてくれるかもね」
姉さんの相手をちゃんと見て、想ってくれる優しさが、僕は好きだ。麗日さんなんか、感極まっちゃってるし。
「姉さん、火、吹かなかったね」
「出久の試合があったからね」
僕の試合?
「出久の火は、轟くんの氷塊に対処できていた。けど、轟くんが徐々に大きくしていってたから」
「僕の試合結果から、防がれないように最大規模の氷塊を使うって予想したんだね!」
そういえば、姉さんが頷いてくれる。
なるほど。僕の試合では、轟くんは寒さにやられてたから、あれ以上の氷塊を見ていない。だから、お互いに警戒したし、そうなれば対策も変わる。
「仮に途中まで対処できたとしても、初動が遅れれば、後手に回る」
「そうなれば、一気に押し切られる可能性が高まりそうだね」
「そんなこと考えてたんだ」
復活した麗日さんも会話に加わり、話を続けていると、かっちゃんと常闇くんがステージに現れた。
「しっかり観戦して、勝つよ」
そう言った姉さんに、僕達は頷いたのだった。
Side 八木
緑谷少女達を、遠目に見ながら、先程の試合を振り返る。
あの規模の氷塊は、プロであるヒーローでも、そうそうお目にかかれない。それを一撃で粉砕するとは、流石に思わなかった。
「あの時、緑谷少女は、蹴ったんじゃない」
足を添えた状態から、ステージ片を撃ち出したのは、例の音速突き理論の応用。氷塊が砕けたのは、副次効果で、狙ったのは。
「道を切り開くこと、か」
何度氷塊を作られようとも、緑谷少女は防ぎ、道を切り開いて、いずれ轟少年にたどり着くつもりだったのだ。
「まあ、氷塊は砕け散ったのだが」
脚力は、腕力の3倍ともいうし、相当慎重に威力を調整したのだろうな。ステージ片は途中で砕けたが、調整によっては、轟少年に到達しただろう。
「しかも、最後は」
氷塊が成長し、覆われつつあった緑谷少女の姿は見えなかった。しかし、轟少年は見えていた。
結果は、轟少年の場外。そして緑谷少女は、ステージ片を取り除いて、氷塊の中から現れた。
「私も相澤君と同意見だ」
彼女は、今までもそうだったが、次々と不可能を可能にする。今回は、ステージ片を壊さずに、轟少年を吹き飛ばすという離れ業であり、私にはできないことだ。
それこそが、緑谷少女のいう人の“可能性”の証明。誰もが、秘めた“可能性”を持っていて、引き出せていないんだと証明し続けている。
個性の有無の問題ではないんだと、今の個性社会に、ヒーロー社会に、変革を齎そうとしているのだ。
今、戦っている爆豪少年と常闇少年。どちらが勝っても強敵だ。このままであれば、押している爆豪少年がおそらく勝つだろうが。そんな彼は、轟少年とは、また別の難敵だ。それでも。
「決勝戦でも見せてくれるのかい?」
私は期待する。かつての私が成し遂げられなかった、無個性での優勝という快挙と、“可能性”の証明を。
●オリ主
轟に武術と身体能力のみで勝った。
火を使えないが、使えたとして考えた、使わない理由を伝えた。
●轟
炎を使わなかった結果、負けた。
●原作主人公
火を使わなかったことに疑問を持ったが、説明に納得してしまい、真実を知る機会を逃した。
●お茶子ちゃん
出久の試合内容が活きた結果、オリ主の勝因となった事実があり、慰めじゃない本心からの言葉で感極まった。
●八木
またしてもオリ主にやられた。
次々と見せられる絶技に、人間の強さとは、可能性とはと考えさせられ続けている。
それはそれとして、やっぱりOFAを継承したい。次点で、出久。
◼️原作乖離・フラグ要素
オリ主 決勝進出
出久 全試合リアルタイムで見れた・オリ主の個性について聞く機会を逃した
轟 準決勝敗退
お茶子 オリ主好感度上昇
OFA オリ主へ譲渡希望+7・個性保有期間延長
◯ネタ
通背拳 マガジン系列掲載、鉄拳チンミに登場する主人公チンミの得意技。