主人公の個性奪っちゃったみたいだから返すね   作:しおんの書棚

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雄英体育祭の第三種目:ガチバトル vs爆豪くんだね

Side 私

 

準決勝第二試合は、爆豪くんvs常闇くん。この試合の勝者が、私の相手だ。

 

試合は、爆豪くんが果敢に攻め、常闇くんがダークシャドウで守るという構図。

 

それは常闇くんの必勝パターンで、堅牢な防御からどこかで攻勢に出て、一気に決めるはずだったと思う。しかし、予想に反して常闇くんは、攻めに転じられない。

 

原因は、ダークシャドウの特性で、闇には滅法強いが、光に極端に弱いというもの。それに気づいた爆豪くんは、ひたすら爆破で光を撒き散らし、動きの鈍ったダークシャドウを躱して、常闇くんを組み伏せ勝負アリ。常闇くんが降参して、勝敗は決した。

 

決勝戦は、爆豪くんと私による幼馴染対決か……。

 

爆豪くんにとって、ある意味では出久以上に意識してる相手、なんなら目障りな相手が私だ。

 

実は、いつからか爆豪くんは、ちょくちょく私を挑発して、勝負したがるようになった。

 

個性無しの勝負なら、一般に比べて圧倒的なフィジカルを持ち、失われて久しい技術を駆使する私にとって、弱い者虐め以外の何者でもない。それに爆豪くんは、抑えの利かない性分だから、どこかで絶対に個性を使ってしまう。そうなれば、彼はヴィランに堕ちるし、わかっていて受けた私も同罪。

 

そう考えた私は、私闘は絶対に行わない。誰かを傷つける個性の使い方なんて、自分にも相手にも認めない。そう言って、ずっと挑発をスルーしてきた。

 

そんな経緯があってのこの試合だ。

爆豪くんのずっと望んでいた、お互いの全力を駆使しての戦い。一度目の戦闘訓練にあっさり負け、やっと巡ってきた二度目の機会なんだから、爆豪くんのモチベーションは最高潮だろう。

 

正直にいえば、絡まれる理由は、なんとなく察している。

プライドが天元突破してる爆豪くんは、それを認められない。そして、認められないからこそ、別の方法で自分を納得させようとする。そうやって逃げ続けた結果、相当拗らせていると、私は思ってるんだ。

 

そんな相手が、出久であり、私。

 

きっと試合は荒れるだろう。それでもこの機会に、しっかりとケジメをつけることで、彼の成長に繋げて欲しい。

 

「それが、爆豪くんのためになるって信じてるよ」

 

小さな呟きは、会場の喧騒に紛れて、宙に溶けた。

 

 

Side 爆豪

 

やっとだ。やっとアイツと、本気でやり合える。

 

あ? アイツって言ったら、デクの姉貴のひびきに決まってんだろうが!

 

アイツは、昔っから気に入らなかった。いっつも冷静で、何言っても怒りもしねえ。

アイツが怒るところなんて、想像も……。いや、デクに手を出せば別なんだが、それは誰がやっても、やったことに怒るってだけだし、やっぱり想像できねえな。

 

とにかく、そのなんでもわかってますって態度が気に入らねえ。

 

しかも、アイツとは二度しかやり合ってねえが、どっちもあっさり負けた。一度目は、ガキの頃、デクが歯向かってきて殴りかかった時。二度目は、ついこの間の戦闘訓練でだ。

 

「認めてんだよ、お前が強いってことはよ」

 

んだよ、当たり前だろうが。じゃなきゃなあ、飯田にしろ、轟にしろ、勝てるかよ。だからこそ。

 

「負けられねえんだ」

 

俺の方が、個性は強い。身体だって、アイツほどじゃねえかもしれねえが、鍛えてきた。

 

なら、やることがあんだろ。そう思った俺は、試合前のアイツに近寄って。

 

「おい、全力でやれ。そんで、俺が勝つ!」

 

「わかった。今の私が出せる全力で相手するよ」

 

「へっ、それでいい」

 

俺は、ステージを歩いて、スタート位置に戻り、アイツを睨みつける。

 

『さぁさぁさぁ! いよいよ、ラスト! 決勝戦! 雄英一年の頂点が! ここで決まるぜ!!』

 

待ってたんだ、この機会を。

 

『派手な爆破で連戦連勝! 口は悪いが実力は折り紙つき! 爆豪勝己!!』

 

知ってんだ、お前のことを。

 

『全試合秒殺で決勝進出! 文字通り無傷で勝ち上がり、実力は確かだぜ! 緑谷ひびき!!』

 

だからこそ、ここで勝つ!

 

『スタート!』

 

「死ねえ!!」

 

爆破で推進力を上げて、一気に間合いを詰める。そうだよな、こうすればお前は、必ず待つ。

 

俺の右を待ってんだろ、いい加減わかってんだよ。なら、それを利用する。俺はいつものように右を振り被って、そのまま跳躍!

 

捌く体勢のアイツ。振り下ろす俺の右。そして爆破!

 

「オラァ!」

 

チッ、相変わらず、妙な動きしやがって!

 

アイツは、捌く体勢から、器用に身体を動かして、俺の後ろに廻りやがった。けどなあ、次の手は、読めてんだよ! 首なんか狙わせるか!!

 

後ろに左の掌を向けて、爆破。その勢いを利用して急旋回し、向き合う。

 

「こんなもんじゃないでしょ」

 

「たりめぇだ、コラァ!」

 

当然だ。これくらいでやられるお前じゃねえよな!

 

アイツは、俺の攻撃のうち、個性を最も警戒している。アイツに火を吹かれようが距離があり、引きつけられようが引き離せる俺の個性。俺には、アイツの個性なんかほとんど関係ねえって、わかってるからだ。

 

だから、躱す。爆破の分、俺の方が、近接戦においてもリーチが長い。近づかせなければ、アイツは何もできねえ……。んな訳あるかよ!

 

アイツの速さなら、いつでも懐に潜り込める。地上戦において、アイツは、俺が知る限り無敗なんだ。

 

だから、今はやられねえように立ち回って、時を待つ。準備が整うその瞬間を。

 

 

Side 私

 

流石は私をよく知る幼馴染で、実力は認めている爆豪くん。

 

自分の癖すら利用する情報戦を織り交ぜて、ひたすら優位に立ち回ろうっていう意図を感じる。そして、それ以上に感じる違和感と、徐々に強くなる危機感。

 

これは、なにかを狙ってる動き。なにを狙おうが、間違いなく、それが爆豪くんの勝機になるはずだ。

 

考えろ、私。狙いだけでも看破しろ。

 

……爆豪勝己という人間は、自分に自信を持っている。出久の話によれば、個性が発現してから、より一層力を誇示するようになったという。つまり彼のプライドは、個性に由来するところが大きい。

 

ということは、個性による初見殺しの必殺技かな? 例えば、お茶子ちゃんに使ったような。しかも、私が絶対に手を出せないように使うよね。

 

なら、その策を、私は食い破ってみせる。それが彼の望む全力のぶつかり合いだと思うから。

 

 

Side 爆豪

 

轟は、なにも間違っちゃいねえ。けど、場所が悪かった。アイツとやり合うなら、空しかねえ。

 

そして、決め手も炎を使えばよかった。俺なら、当然、爆破だ。それも、絶対に躱しようのない規模の、だ。

 

……ようやく準備は整った。これで決める!

 

俺は、跳躍に加えて、爆破で高度を上げ、アイツの上をとる。

 

「こうすりゃ、手は出せねえだろう?」

 

「まあね、跳躍しても撃ち落とされそうだし」

 

「ハッ! わかってんじゃねえか。……行くぜ?」

 

まずは、手が届かない低空での絨毯爆撃で、疲弊を狙う。

 

相変わらず、よく動く。こんだけ撃って、一つも当たらねえってのも、どうかしてるぜ。だが、これで意識を、回避一辺倒に向けさせられる。

 

「オラオラァ! こんなもんじゃねえぞ!」

 

少しは被弾してくれることを期待してたんだがな、そうすりゃ当てやすくなる。このまま続ければ、俺の手と汗腺がもたねえか。

 

なら、決める! 急降下して、旋回を加えてのぉ!

 

「止める!」

 

止められるかよ!

 

榴弾砲着弾(ハウザーインパクト)!!」

 

その瞬間、俺は見た。アイツが、初めて見る構えをしたところを。そして、爆風が吹き荒れた。

 

「予想以上の反動だったが……、さすがに決まっただろ」

 

腕ごと後ろに押し戻されるとは、思わなかったぜ。

 

「まさか」

 

「なに!?」

 

その瞬間、爆破による煙を突き破って現れたアイツに驚愕する。そのまま蹴りでも食らったのか、地上に叩き落とされた。

 

アイツ、なにしやがった!? いや、跳躍したってことは、アイツに防ぐ手はねえ! 狙いもいつも通り、首狙いのはずだ! 着地場所は、俺の後ろ! 立ち位置、場所もいい!

 

クッ、榴弾砲着弾は厳しいか。なら、タイミングを測って、爆破で吹っ飛ばしてやる!

 

「オラァ!」

 

左手の爆破で急旋回しての渾身の右!

 

「食らい、やがれぇ!!」

 

「鉄山靠!」

 

そんな掛け声と同時、胸部全体に襲ってきたとんでもない衝撃と、浮遊感。俺の記憶は、そこまでだった。

 

 

Side 私

 

滞空し続ける爆豪くんの絨毯爆撃。

 

とはいえ、手と目の動きから、おおよその着弾点はわかるし、同時は最大でも二発。地上戦を得意とする私が、躱せない道理もない。

 

だから、ひたすら集中して時を待つ。彼の狙う勝機を粉砕するために。

 

そして、時は来た。

 

今までにない自殺行為の特攻気味な旋回しつつの降下。なら、これから繰り出す攻撃は、尋常じゃない威力と範囲を持つはず! 爆破が相手だ、集中しろ!

 

瞬間、世界が遅くなった。大きく振りかぶる右手に、とんでもない脅威を感じる。アレは、お茶子ちゃんに使った技で、旋回の分だけ威力の予想がつかない。なら!

 

「止める!」

 

構え、脱力、集中。

 

榴弾砲着弾(ハウザーインパクト)!!」

 

ここだ! 発火点目掛けて放つ亜音速突き。

 

速度で圧縮された空気を、急降下で近くなった発火点にぶつければ、同時に起こった爆風を私に届かせることはなかった。その反動は、おそらく爆豪くんに返ったはずだ。

 

この攻防で決めよう。そう決断した私は、瓦礫を手に取ると跳躍し、舞い上がる煙を突き破って、爆豪くんの上を狙う。

 

「予想以上の反動だったが……、さすがに決まっただろ」

 

「まさか」

 

地上にたたき落とす踵落とし、その反動を利用して、爆豪くんの裏を取りに行く。

 

「なに!?」

 

このままだと、狙いがバレてるだろうから、撃墜されて終わる。けれど、私の手には瓦礫が、()()があった。

 

以前、私は、空気を蹴ることはできないといった。それは、少しでも足掛かりがあれば、できるという意味でもある。

 

降下中、瓦礫に足の裏をつけ、亜音速突きの理論を応用し、蹴り抜かず、自分自身に威力を返して砲弾のように打ち出す!

 

「オラァ!」

 

降下速度が上がって、タイミングのズレた爆豪くんの攻撃が、私の上を通り越そうとしていた。

 

私は、着地の反動を利用して起き上がり、それを力に加えて、爆豪くん自身の攻撃による威力を上乗せた……。

 

「食らい、やがれぇ!!」

 

「鉄山靠!」

 

背中や肩口を、相手の身体に打撃として打ち込む中国武術の技、鉄山靠。爆豪くんの胸全体に、私の背をやや下からぶち当てると、彼は派手に飛んでいった。

 

「爆豪くん、意識ある?」

 

私の問いかけに彼は応えない。

 

「爆豪くん、意識喪失。試合続行不可能! よって、緑谷ひびきの勝利!」

 

ミッドナイト先生の宣告、そして。

 

『決まったぁ! 以上で、すべての競技終了だぜ!!

 今年度の雄英体育祭! 一年の部優勝は! A組の緑谷ひびきぃ!!』

 

爆豪くんが担架で運ばれるのを確認しながら、ミッドナイト先生に状況を聞いた。

 

「大丈夫でしょうか?」

 

「ま、軽い脳震盪でしょうね。最後、途中で加減したでしょ?」

 

よく見てる。かなりいい感じで入ったから、態と飛ぶようにしたんだよね。そのままだと、マズそうだったから。

 

「はい、一応は」

 

「じゃあ、大丈夫よ。ほら、勝者は歓声に応えなきゃね」

 

ミッドナイト先生の言葉に頷くと、四方に頭を下げては、手を振って応えた。最後は、出久やお茶子ちゃんの方にいるクラスメイトにも応えて、会場を後にする。

 

「さて、次は……」

 

これから準備が出来次第、表彰式だ。それまでに少し休んで、身嗜みを整えようと、控え室へと向かったのだった。




●オリ主
爆豪の望み通り、全力で戦い、勝利した。

●爆豪
頭脳戦すら駆使して、全力で戦ったが、惜しくも敗れた。

◼️原作乖離・フラグ要素
オリ主 優勝
爆豪  準優勝

◯ネタ
食らい、やがれぇ! SNKの格闘ゲーム「キングオブファイターズ」に登場する草薙京の台詞。くらい
鉄山靠 中国武術の技であり、色々と有名な技。漫画やゲームにもよく登場する。
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