主人公の個性奪っちゃったみたいだから返すね 作:しおんの書棚
色々とあったけど、クラスには溶け込み、爆豪くんとは相変わらず。いや、主席合格バレと戦闘訓練の結果、余計に絡まれるようになったかもしれない。
さて、今日はUSJでの災害救助訓練。
当初、引率は3人の予定だったらしいんだけど、オールマイトが所用で欠席。ちょっと残念だけど、授業に入り、災害救助のエキスパートである13号先生のありがたい訓示が始まって、その通りだと感心していたのも束の間、まさかのヴィラン襲撃。
「何処だよ……。こっちはさあ、せっかく大衆引き連れてきたってのに……。オールマイトが、平和の象徴がいないなんてゲームが成り立たないだろ? ……子供を殺せば来るのかなぁ?」
そのセリフは、不可解だ。
狙いはオールマイトで、時間と場所まで把握してるって、さすがにおかしいでしょ。以前あったマスゴミによる侵入事件が怪しい、他には内通者がいる“可能性”も否定出来ない。
「みなさん、避難して下さい!」
相澤先生は、大勢のヴィランに向かって駆け出し、すでに戦闘が始まっている。
……相手はヴィラン、先生達は現役のヒーロー、私達は殻のついたヒヨコだ。邪魔にしかならないと判断し、避難指示に従うのが最善だと行動を始めようとした時、突然目の前に現れたのは、先程見た黒いモヤのような霧!
「させませんよ。
はじめまして、私達はヴィラン連合。オールマイトに亡くなっていただく予定だったのですが、この場にはいらっしゃらない。予定に変更でも?
それとは関係ありませんが、私の役目は」
瞬間、飛び出す影が二つ。爆発が起こり、霧を裂いたのは、爆豪くんと切島くん!
「その前に」
「オレ達にやられるって考えられなかったか? ああ!」
モヤが散って、また元に戻る。不定形? 物理無効なら、わざわざ散らない。散ることで、攻撃を無効化したと捉えるのが自然だ。意識外の攻撃なら通りそうだけど、今はその状況にない。
「貴方達を散らして……、嬲り殺す!」
声に合わせて、黒いモヤが大きく広がり、クラスメイトを覆う。
「みんなー!!」
モヤの囲いから外れた飯田くんの叫び声が、USJにこだました。
「委員長、君に託します。学校まで走って救援を要請して下さい」
先程、先生達の指示で、学校へ救助要請しようと色々な方法を試したけど、どれも繋がらなかった。だから、13号先生の指示は、適切だ。
「しかし!」
最速で指示することで、行動を縛る。13号先生の意図は、ハッキリしていた。なら、私がそれを後押しして、“可能性”を拡げる!
「インゲニウムの弟、飯田くん!
この役目は、ここで最速の足を個性として持つ君にしか頼めないヒーロー活動だよ!
余計なことは考えないでいい、先生を、仲間を信じて! 君にしかできないことを成して!」
「くっ! その名を出されて、そう言われれば拒めん。任せてもらおう!」
後ろ髪引かれる想いを振り切って、飯田くんは駆け出した。その瞬間、さらに声が響く。
「ブラックホール!」
なるほど、吸い込むことで妨害するのか!
私は、戦況を見守る。正直に言えば、私だって出久の下へ向かいたい。けれど、何処に飛ばされたかもわからず、この場には他の同級生がいて、彼等は子供なんだ!
私は出久を信じ、ここで大人としての責任を果たす!
そのために必要なのは、冷静さを保ち、情報収集すること。
敵を知り、己を知れば、百戦危うからず。
今の私達には、実力以前に情報が圧倒的に不足している。だから、避難指示を受けるも、ヴィランの情報を先生達の戦闘から収集しつつ、脱出タイミングを図るよりない。
今わかっているのは……。
黒モヤ男は、不定形で物理攻撃を無効化するタイミングがある。モヤによって、何処かへ誰かを移動することができる。
手だらけ男は、何もわかっていないけど、リーダーのように見える。というか、あの手の飾り、不気味であり、なんらかの自己主張にも見える。もしかして、手で触れることで発動する個性とか? 憶測に過ぎないけど、注意して損することはないはずだ。
今のところ先生達が押してるように見えるけど、ピンチに陥る“可能性”がないとは言えない。そうなった場合は、ワイヤーアンカーで無理矢理にでも引き離そう。鍛えることで随分と強化された視力・聴力を活かし情報収集するなか、私は、そう心に決めた。
Side 相澤
今のところ、捕縛布と体術で抑えられてはいるが、こんな戦闘は普段のスタイルから外れている。だが、泣き言を言ってられんな。
そう思いつつ雑魚を蹴散らしていたが、突進してくる手だらけの男が見える。
「本命が来たか!」
掌底を掻い潜り、腹に肘打ちを叩き込む!
「……髪が下がる瞬間、それが個性が切れるタイミングだろう?」
読まれた!? そう思った瞬間、身体が一気に引き寄せられ、宙を舞う。
「チッ、邪魔が入ったか」
遠ざかる手だらけのヴィランが呟き、引き寄せられた先にいたのは。
「緑谷姉、何故出てきた!」
「あちらは13号先生が押していて、ヴィランは一人。こちらは多勢に無勢。加えて、どちらも離脱できる状況にありません!
しかも様子を伺っていれば、相手の個性がわかっていないにもかかわらず、あまりにも迂闊に相澤先生が突っ込むものですから、出ざるを得なかったんです!
あれだけ手を主張していて、さっきも掌底じゃなく触れに来たんですよ!? 明らかに触れることで発動する個性とわかるじゃないですか!」
くっ、確かに緑谷姉の言葉を否定できん。観察を得意とする俺が見落とすほど、焦っていたということか。
出てきたことは褒められんが、助かったのは事実だ。
「へぇ? お前、なかなか鋭いね。いいよ、せっかくだから教えてやるよ。
オレの個性はさ、触れたモノすべてを崩壊させる。
で、頑張ってるヒーローはカッコいいけどさあ、本命は、グハッ!?」
瞬間、奴の話を遮ったのは。
「ご高説は結構ですが、あなたこそ隙だらけですよ? 相澤先生、後ろ!」
「なに!?」
なんて速さだ。一瞬で奴の懐に蹴りを叩き込み、反動を利用して退避。
「すまん、助かった。が、加減しろ」
そして、再び射出したワイヤーアンカーで、背後に迫っていた脅威から、俺をも救って見せたのだった。
Side 私
危なかった! ピンチの“可能性”を想定してなかったら、どうなっていたか!
さっきも言ったけど、13号先生は押していて、黒モヤ男をブラックホールで吸い込んでいた。
それを横目に、手だらけ男の声を拾えば、時間を数えていて、視線は相澤先生を捉えている。
相澤先生の個性は、視界に捉えている間、個性を行使できないというもの。
制限時間を数えて、個性発動時の変化を観察しているに違いないと判断した私は、いつでもワイヤーを射出できるように備えていたんだけど、相澤先生が無警戒に突っ込んだのを見てやむなく対応。
そして、今に至るわけだけど……。
「相澤先生、手だらけ男の手に注意して、奴を抑えられますか?」
「お前……、そのバケモンをどうするつもりだ?」
「オールマイトを殺す切り札だろうことは察せられますし、相当な能力だろう“可能性”も勿論考慮しています。
ですが、どう見ても人間じゃない。なら、やりようはある」
そこからは小声で、「最悪、私は無個性ですし、なんとでもなりますよ」と、苦笑いで告げる。
「先生、ヒーローならしっかり捕縛してくださいね。こっちは、仕留めます!」
出久、ごめん。お姉ちゃん、自分のために、出久を、みんなを守るために、奴を斬る!
決意を固めると、相澤先生の返答を待たず、私は飛び出した。
「待て!」
オールマイトの戦闘映像は、何度かわからなくなるくらい出久と一緒に見た。雄英に来てからも、学校のライブラリを漁って、“可能性”を拡げるためにと
接近、急停止、空振る巨大な拳、低空姿勢、
「ガアアアア!」
大きく開かれた足の間を潜り抜け、二刀を操り、両足を切断。
「さすがに歩けなければ、できることには限りがあるはず」
それでも気を抜かない。バケモノを見据えたまま、背後の戦闘にも気を配る。
「やるなぁ、お前! けど、無意味だぜ?
なにやってる、脳無! サッサと立ち上がって、ソイツを殺せ!」
無意味? 足がないのに立ち上がれるわけが? えっ!?
「足が再生している!?」
「そいつの個性は、超再生と衝撃吸収で、パワーはオールマイト並みさ。
斬撃なら、衝撃吸収は無効化できるだろうが、無限再生するオールマイトに勝てると思うかあ!」
「逃げろ、緑谷!」
そうか、こいつには。
「
私は、枷を外すことを決めた。
Side 弔
コイツ、今、なんて言った?
そう思い、イレイザーヘッドをあしらいながら様子を伺えば、コートを脱ぐ女。それが地面に落ちた瞬間、凄まじい音がした。
「はあ!?」
あの女、なんて馬鹿げた重量を着てやがる。つまり、さっきまでは……。
「舐めプだとぉ、女ぁ! 消えた!?」
直後、両腕両足が細切れにされ、ダルマになった脳無が見えると同時に、女は落下する脳無の顎を蹴り飛ばす。
「衝撃は吸収できても、振動は別。逃れようのない体勢を作り、顎先を蹴って、脳を揺らした。
再生はできるだろうけど、即座には思い通り動けない。そして」
「お前ぇええ!」
女が、脳無を蹴り飛ばした先は、水中。いくら再生能力が高くても、四肢欠損の回復には、通常より時間がかかる。しかも、呼吸ができなければ、細胞を活性させる酸素が足りずに、再生能力は格段に落ちる!
クソが、イライラする! そんなタイミングで声が。
「死柄木弔」
「黒霧! 13号はヤッたんだろうな!?」
「……行動不能にはできましたが、邪魔され、散らし損ねた生徒が……」
「ああああ、イラつく!
イレイザーヘッドを殺すのも邪魔され! 脳無は、女に沈められ! あげく、ガキに逃げられただと!
……もういい、平和の象徴の矜持に傷だけつけて撤退だ! 一人でも多く、殺せ!」
「させるか!」
イレイザーヘッドめ、しつこいんだよ!
「黒霧!」
「お任せを」
「なに!?」
イレイザーヘッドの攻撃に合わせて、ワープゲートを開けた黒霧は、イレイザーヘッドを何処かへ送った。ここには、もう、ヒーローはいない!
その瞬間、水面が破裂するような音と同時に、何処かで響く爆発のような破砕音。
「大丈夫、私が来た!」
「……コンティニューだ!」
本命、オールマイトの登場と、舞い戻った脳無。待ち望んだボス戦が始まる!
Side 私
結論からいえば、オールマイトが勝った。
怒涛の連続攻撃で衝撃吸収の上限を限界突破し、プロレス技で地面に叩き込むという脳筋戦法。最終的には殴り飛ばして、脳無はお星様になった。
その間、私が何してたかって? 黒モヤ男が相澤先生を何処かに飛ばしたように、オールマイトも邪魔する“可能性”が高いと予想したから、睨みを利かせてたよ。
その結果、状況を見るしかなくなった手だらけ男と黒モヤ男、たしか死柄木弔と黒霧(まんまなネーミングセンス)は、キレながら撤退。オールマイトがいても捕まらない逃げ足と、人材の数だけは凄いと思う。
捕縛しなかったのかって? いや、私はヒーロー免許を持たない学生だからね、時間稼ぎが許される限度。戦わないで逃げられるものなら、逃げてたよ。ただし、全員でね。
ともかく、二人の個性・能力や、ヒーローと戦闘して逃げ切った実力はバカにできないが、対応できないほどではなさそうだ。ただし、今のところは、とつく。
「次があれば、対策されるかな」
13号先生は重症だけど、命に別状はなかった。
飯田くんは、オールマイトが来たことから言って、役目を果たしたんだろう。
他には、いつのまにか来ていた出久や梅雨ちゃん・峰田くん。3人は、同じ水上ステージに飛ばされ、水中特化ヴィランと戦い、勝利。その後、途中からだけど、水辺で私の戦闘を見ていたそうだ。
蹴り飛ばした脳無なるバケモノの被害に遭わなくて良かったと安堵したのも束の間、私は先生達からこっ酷く説教を喰らうことになったが、後悔はなかった。
たとえ、この手を血に染めようとも、あの時はああするよりほかなかった。
言葉を濁した先生達も、私も、勿論オールマイトでさえ、そう理解しているのだから。
Side オールマイト
事情聴取に同席してわかったことだが、二人のヒーローが役目を果たそうと奮戦し、その隙を緑谷少女が埋める結果となった。
飛ばされた先で、少年少女達が奮戦し、誰一人被害がなかった。それはよくないことではあるが、喜ばしいことだ。
だが、緑谷少女だけは、視点・行動共にまったく別の次元。
相澤君を二度救い、脳無を2度にわたって無力化。その結果、私の到着まで被害が出なかったと言える。
相澤君曰く、無個性だからと言って戦闘に入ったそうだが……。
個性で犯罪を犯さない限り、ヴィランとは呼ばれないからと言って、緑谷少女に脳無の手足を切断せざるを得ないと決断させ、そのような行動を強いてしまったのは、私の責任だ。
今後は、二度とこういうことが起きないように、私も行動を改めようと思う。
そのうえでだ。
今回、緑谷少女は、パワーでは脳無に劣っていたようだが、速度と技術で上回り、最後まで圧倒した。
無個性ゆえに磨いただろう数々の技術、人体学の知識、個性への知見。それらを総動員してだ。
戦ったからわかる脳無の脅威、緑谷少女はそれを理解しつつも、皆を救うために立ち向かったのだ。
これがヒーローでなくて、なんという。
彼女の実力は、1年当時の通形少年をとうに超えて、パワーを除けば無個性時代の私に比肩しうる。
……やはり、OFAは彼女が継ぐべきだ。
少々卑怯ではあるが、今回の件で、より一層個性を欲する気持ちが芽生えるはず。
それに今回、緑谷少女は、緑谷少年を無計画に捜索せず、信じた。
それは彼女の願いから離れてでも、手の届く範囲を救うことを選んだとも言える。
すでに彼女は、そこまでの判断と行動ができるまでに。先程からの繰り返しになるが、ヒーローとしての行動を迷いつつも行えるほどに覚悟できている。
ならばこそ、受け取ってくれるはずだ。
もう一度、真摯に話す時が来た。私は、そう心に決めたのだった。
もう続かないですって。
●オリ主
ドラゴンボールしてたけど、脳無は再生するから遠慮なく外して、技能を行使した。
パワーは最上位に及ばないが、スピードがマジヤバい。
オールマイトは脳筋だけど、オリ主は技術重視。
●原作主人公
原作通りビビり散らしていたが、姉が圧倒する姿に改めて憧れた。
小太刀で切断せざるを得なかったことは、勿論理解しているし、仕方なかったとも思っている。
目の前で暴れたオールマイトに大興奮。
●委員長
兄の名を出され、葛藤短く行動した結果、黒霧を原作より安全に引き離し、救援要請を終えた。
その結果、オールマイトが原作よりかなり早く来て、なんとかなった。
あのままやってたら、延々との脳無解体ショーが行われることに。流石委員長。
●かっちゃん&切の字
原作通り突っ込んで、13号の邪魔をしてしまった戦犯。
オリ主と委員長・13号の行動が噛み合ったので、一応は許された感じ。
見事に出遅れて、戻った時には終わっていた模様。
かっちゃんはキレて、切の字は感心した。
●梅雨ちゃん
水中戦でめちゃくちゃ頑張った。
オリ主が想像以上に強くて驚くと共に、あの戦い方は相手を選んでいると十分理解している。
●エロブドウ
3人で超頑張った。
梅雨ちゃんとオリ主のボディを見比べて、梅雨ちゃんに水中へ投げられた。
オリ主ヤベー!
●弔
ちょっと毛色は違うが、女版オールマイトにドン引き。
いいようにやられ、次こそはと誓う。
●梅干
なるほど、その少女が後継かと察した。
ただし、脳無がオールマイトにあっさり倒されたので、継承が済んでいないのでは? と思っている。
◼️原作乖離・フラグ要素
オリ主 教員以外で唯一のリーダーシップ発揮・脳無足止め(物理)
オールマイトVS脳無戦での黒霧介入阻止
出久 姉推し+1・ピンチ消滅
飯田 救助要請タイム短縮
爆豪 黒霧戦カット・ピンチ消滅・フラストレーション増加
切島 黒霧戦カット・オリ主好感度上昇+1
梅雨 オリ主好感度上昇+1・リスペクト・ピンチ消滅
峰田 オリ主好感度上昇+1・リスペクト・ピンチ消滅
相澤 怪我消滅・オリ主へ感謝
13号 オリ主へ感謝
弔 気に入らない女と遭遇
黒霧 オールマイト戦介入できず(オリ主牽制)
AFO OFA後継発見・OFA未譲渡疑惑
OFA オリ主へ譲渡希望+3・個性保有期間延長・救援到着タイム短縮
古傷への攻撃回避(黒霧介入無しによる)
◯ネタ
超重量コート ドラゴンボールや様々な格闘技が含まれる漫画に登場。
主のネタ元は、るろうに剣心より、剣心の師匠である比古清十郎が身に纏っていたマント。