主人公の個性奪っちゃったみたいだから返すね   作:しおんの書棚

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短編の週間・日間とも最高7位でした、ご愛読ありがとうございます。
ということで、感謝の投稿の例。


オールマイトに呼ばれたから色々してみるね

Side 私

 

ヴィラン連合によるUSJ襲撃事件での戦闘行為を、結構な数のクラスメイトが見ていたと発覚した今日この頃。

あの戦い方なら、敬遠されても仕方ないと思ってたんだけど、流石はヒーローの卵達。状況からやむを得ないと捉えたうえで感謝されたり、激ヤバな脳無を抑えたように見えてしまった戦闘力を賞賛されたりと、思ったよりも良い方向で受け止められた。

 

まあ、黒霧にリベンジできなかった爆豪くんは、そのせいもあってか相変わらず絡んでくるんだけど。大人な私は、生暖かい目で見守りつつ、華麗にスルーしている。

 

で、ここからが本題。

 

USJ襲撃事件の時、相澤先生のピンチが最低でも2度はあった。それを回避できたのは、原作にはいない私という存在(イレギュラー)が介入した結果だ。

メタ的な想像にはなるんだけど、あの事件で相澤先生は、肘打ちしてガードされた肘が、死柄木の個性で文字通り崩壊。下手すると、脳無に殺されていた“可能性”すらあるんだけど……。

 

そこで思い出してほしいのは、この物語(ヒロアカ世界)の主人公は、出久だということ。

あのまま早期退場するとは考えづらい1-A担任教師の相澤先生。ならば、そのピンチを救う“可能性”を持つのは、実際のタイミング的にも、私の戦闘を見ていた出久達。正義感の強い出久が介入して、その結果、梅雨ちゃん達がサポートに回ったと考えるのが妥当だ。

 

けど、あの時の出久達が、脳無と死柄木に対応可能なほどの戦力になり得たかと問われれば、答えはNO。いくら出久が正義感溢れる存在だとしても、勝算がまったくなければ、自分以外への被害を恐れて容易には踏み込めない。となれば、決心させるだけの勝算があったはず。

 

まあ、覚悟がなくても襲われた“可能性”はあるんだけど、それでも生き延びなければお話が終わるので、どちらにしても勝算たるピースが決定的に欠けている。

 

なにか()()()()()を見逃しているという確信。頭の隅になにかが引っかかっているような、奥歯に物が挟まったような歯痒い感覚を覚えるけど、いくら考えてみたところで答えは出なかった。

 

とにかく、やっぱり私の存在が、原作崩壊を起こす原因になっている。

それでも優位だったはずの13号先生が怪我したと聞いて、相澤先生の怪我だけでも防げたことに後悔はなかった。みんなは架空の存在じゃなく、今を生きる人間なんだ。私自身を含めて、命を粗末にするわけにはいかない。

 

それはそれとして、オールマイトから生徒指導室に呼ばれている私。まだいい足りないことがあるのか、それとも別件かはわからないけど、行かなければ。

 

「いい機会だから、頼んでみようかな」

 

そう呟いた私は、重い足取りで、生徒指導室に向かったのだった。

 

 

Side オールマイト

 

私は、生徒指導室で、緑谷少女を待っていた。この部屋は、外の音は聞こえても、中から漏れ聞こえることはないという仕様の防音になっていて、密談するのに最適なのだ。

 

3回のノックの後、廊下から声が響く。

 

「緑谷です、入室してよろしいですか?」

 

ドアを開けて、廊下をサッと見渡してから、彼女を招き入れる。

 

「ああ、待っていたよ。向かいに座ってくれるかな?」

 

「失礼します」

 

そう言った彼女は、私が座るのを待って、席についた。ならば、早速始めよう。

 

「USJでは、すまないことをしてしまった。私が予定通りに同行していれば、緑谷少女の手を汚すこともなかっただろう」

 

「オールマイトが気にするようなことじゃないかと。

 授業を、急遽欠席してまで対応しなければならない火急の要件があったんだと察していますし」

 

緑谷少女の気遣いに、心が痛い。そんな気持ちがあったせいか、彼女が私の実情を知るからなのか。緑谷少女には、真実を隠すべきではないという想いが湧く。

 

「……実は、登校前に、制限時間の3時間を使い切ってしまったのさ」

 

「は? では、今も制限時間を消費してるんですか?」

 

「ああ」

 

「ああ、じゃないです! 今すぐ解除して下さい!」

 

そ、そうか。彼女は知っているし、この場は内鍵で隔離されている。ふっと力を抜いて、トゥルーフォームに戻ると、呆れつつも険しい表情の緑谷少女。

 

「なんとお呼びすれば?」

 

「ああ、自己紹介がまだだったね。オールマイトは、仮の姿。私の本名は、八木俊典という」

 

「では、八木先生と呼ばせていただきますが!」

 

そこから目尻を吊り上げた緑谷少女による説教が始まった。

教員となったなら、ヒーロー活動は、教職に影響を出さないのが大前提。それができないのであれば、教壇に立つ資格がない、とか。

制限時間があるなら、あらゆる行動は結果と消費時間を天秤にかけて、取捨選択したうえで行わざるを得ず、そうしなければ今回のように絶対後悔することになる、とか。

 

彼女の説教は至極もっともな内容で、お師匠似であることもあってか、強烈に効いた。

それで気分を害するどころか、嬉しく思ってしまったのは、我ことながら呆れるしかない。

 

「ありがとう。緑谷少女のいう通りだ、気をつけるよ」

 

「ええ、若輩者がなにをと思われるかもしれませんが、一般論と合わせて大人・教員の責任としては、そうなるはずですので。

 失礼しました。思わぬことで時間を使わせてしまったのですが、本題をお願いできますか?」

 

そう言った彼女に頷くと、今日の本命であるOFA継承について、話し始めたのだった。

 

 

Side 私

 

「以前はなしたけど、私達が継承してきた個性。名をワン・フォー・オールというのだけど、これを緑谷少女、君に継承したい」

 

「別の後継を見つけたとばかり思っていました」

 

オールマイトこと八木俊典さんの持つ個性、聖火の如く継承してきたOFA。まさか私に引き継がせたくて、入学を待っていたなんて。

 

「私が知る限り、緑谷少女以上の適格者はいないさ。

 ヘドロ事件の時、無個性でありながら、誰よりも早く行動したのは君だ。

 加えて、いつからかは不明だが、長い年月をかけて鍛え上げた肉体と技能を持ち、ヒーローとしての心構えもすでに備わっているしね」

 

べた褒めされて嫌な気分になる人はいないからこそ、慎重かつ冷静に判断しなければいけない。

そう自分を戒めると同時に、欠けていたピースが埋まった。それこそが、個性OFA。本来なら、出久だけがヘドロ事件に介入して、オールマイトに見初められたんだと思い当たったのだ。

 

……とりあえず情報を得ないと。

 

「八木先生。その個性は、今の姿と先日の戦闘能力から見て、馬鹿げた倍率の増強系だと思うんですが、リスクとかあるんですよね?」

 

「最低限の肉体がなければ、そもそも継承させられないこと。

 継承後であっても、コントロールをミスれば、自爆しかねないほどに強力な蓄積された力であることが、リスクといえるかな」

 

コントロールをミスったら自爆する?

 

「自爆というと、実際にはどうなるのでしょうか?」

 

「四肢が爆散してもおかしくない」

 

そんなヤバい個性を出久が……。

ヘドロ事件当時の出久は、私の介入で身体能力が大分上がっていたけど、なければ貧弱なままだったはず。であればオールマイトが、私のように干渉して最低限鍛え上げてから継承したと予想できる。

 

これは、色々と問題がありすぎる。またしても原作崩壊させたのは私で、ある意味で良かった面もあれば、悪い面もありそうだ。

 

あれ? 個性を継承したら、オールマイトは引退になるのかな?

 

「OFAを継承したら、オールマイトはどうなりますか?」

 

「残り火が消えるまでは、個性を使える。タイミングを見て、引退ということになるだろう。私も無個性だったしね」

 

元無個性でOFAを継承? そして、残り火。……気になるな。

 

「残り火の運用時間は、個性運用時間で決まる、とか?」

 

「わからない。

 ただ私のお師匠が言うには、個性を手放した段階で、なんとなく把握できるとは聞いたな。

 加えて私はOFA所有期間が、35年以上と非常に長いから、上手く運用すれば、しばらくは問題ないはずだ」

 

なるほど? それらを加味して考えると……。

 

よし、当面の方針は決まった。

 

「八木先生、体育祭が終わった後で必ず返答します。

 それまで待てないようでしたら、私は出久を推薦しますが」

 

「緑谷少年も有望ではあるし、君の次の候補ではあるが、肉体的に継承はできてもコントロールに苦労しそうだな。

 無理強いできる話でもないか。わかった、良い返事を期待してるよ」

 

私は頷き、さらに話を続ける。

 

「八木先生のお話は以上ですか?」

 

「ああ。緑谷少女は、何か話があるのかな?」

 

「はい。私の修練に、少し付き合っていただく時間を取れないか、相談をと」

 

八木先生の答えはYES。

なら早速、現役トップヒーローにしっかり見てもらって、私自身の強化と至るべき未来の展望に、忌憚のない意見を貰うとしますか!

 

 

Side 八木

 

継承後に行うつもりだったコントロール訓練。その前段階として非常に有意義な申し出に即答して、緑谷少女の修練のオブザーバーとなったのだが……。

 

「まずは、八木先生に見せたことのない、私の本気の速度をお見せします。その前に」

 

そう言った緑谷少女が予約していた屋外演習場で、最初に行ったのは……。

 

「普段、全身に重りを着けているんです」

 

一つ外すたびに、重りを地面に落とすと、途轍もない重量音が響く。手首に二つ、足首に二つ、胴に一つの計5つが外される。

 

「では、行きます」

 

そう言ったか言わないかのタイミングで、緑谷少女の声が後ろから聞こえる。

 

「どうでしょうか。これが脳無との戦闘を決断した一つの要素であり、私の誇りです」

 

電光石火、疾風迅雷。それらの言葉はすべて、速度における埒外の領域を示すものであり、私が見た彼女の評価。

それでいて精密で柔軟な足捌きがなければ、私の正面にいた緑谷少女が、あの一瞬で真後ろに廻りこめるわけがない。

 

「相澤君から聞いていたけど、百聞は一見に如かずだね。想像以上だったよ」

 

振り向いた私を見る緑谷少女は、笑顔で。

 

「では、私自身についてお話しながら、幾つか披露します」

 

始まったのは、演舞。まったく見覚えはないが、洗練された動きであることはわかる。

 

「当初は異能であった個性が、世の普通となって久しい現在。

 個性で起こせる現象が強力すぎて、多くの人々は身体を鍛えることを怠り、さらには失伝してしまった本来の人類が持っていた数々の武術。

 私は無個性ですから、身体能力と身体操作技術。加えて、様々な武具・道具を用いた技能を、過去の偉人すら超えるべく鍛えてきました」

 

ああ、そうか。それが巨大ロボの拳を捌いた技術であり、会場を縦横無尽に駆け抜け、相澤君を救ったワイヤー操作技術に結びつくのか。

 

「ですが、それだけでは、個性犯罪者であるヴィランに対応できるとは言いがたいんです」

 

そうだろうと、私自身のすべての経験からも納得してしまった。

 

「それでも、私は人間の持つ“可能性”を信じたい」

 

だからこそ、個性を欲してはいても、易々とは望まないんだね。

 

「これから未完成ではありますが、私の究極の一をお見せします」

 

演舞を終え、身体が暖まったんだろう。柔軟も兼ねただろう演舞で、準備は整った。そして、緑谷少女は構える。

 

「正拳突き、かな?」

 

「はい、私が目指した究極の」

 

瞬間、空気を裂く音がした。拳から立ち昇る煙に、拳速が速すぎて押し出された空気が圧縮され、気体温度が上昇する断熱圧縮状態となり、その熱で空気中の水分が蒸発したことを察する。

 

「まだ音速には届きません。届かせることができても、威力は保証しますが、同時に腕が壊れてしまうでしょう」

 

「音速正拳突きってことかな。空手は失伝していないけれど、見聞きしたことのない技術だ」

 

「究極の脱力から繰り出す正拳突き。

 身体を鞭のようにしならせれば、鞭の先端速度である音速に届くはず。

 そういう机上の空論を“可能性”として積み重ね、実現一歩手前に至った技術。だからこそ私は、凶器である拳を安易に握らず、掌底を多用するんです」

 

私は、決して技術を疎かにしてきたわけではない。平和の象徴として、わかりやすさを重視した結果、力技を多用するようになったのだ。

しかし、そんな私でも無個性であったあの時期に、ここまでの身体操作技術や武術理論、武技を持っていなかったのも事実。

 

そして、凶器となった拳を無闇に誇り、安易に使うようなことを戒め、掌底によって無力化を狙う思慮深さに感心する。

 

「八木先生。いえ、オールマイト。

 体育祭、無個性の旧人類が、個性持ちにどこまでやれるか。人間の“可能性”をお見せします」

 

体育祭において、強力な個性を持った少年少女達を、無個性の彼女が凌駕するのではないか。私にそう思わせるほど、緑谷少女は誰よりも自信に溢れて見えたのだった。




書くなら短編から連載に切り替える必要があるけど、うーん。評価下がってきてるし、悩ましい。

●オリ主
起こした最大の原作崩壊に気づいてしまった、状況を見て順次対応すると決めた。
オールマイトとOFA、双方のいろんな意味でのヤバさも把握した。継承は未定。

●オールマイトこと八木俊典
OFAの継承を打診するも、体育祭後の返答を待つことに同意した。
修練のオブザーバーになり、オリ主のストイックさとスペックの高さに脱帽。
より一層、OFAを継承したくなった。

◼️原作乖離・フラグ要素
オリ主 OFA継承に介入・修練のオブザーバーをオールマイトに打診
OFA  オリ主へ譲渡希望+4・個性保有期間さらに延長・修練オブザーバー了承

◯ネタ
音速正拳突き 刃牙に登場する愚地克巳のマッハ突き。
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