主人公の個性奪っちゃったみたいだから返すね 作:しおんの書棚
連載に切り替えるとともに、1話あたり短くなる例。更新は、できる時に。
Side 私
体育祭までの日々は、あっという間に過ぎていく。
B組による宣戦布告を爆豪くんが軽くあしらって、B組の物間くんがキレ芸したり、八木先生に見てもらいながらの訓練に
他には、芦戸三奈ちゃんとパルクール仲間になったり、尾白くん・障子くんやB組の拳藤一佳ちゃんと武術仲間になったり、飯田くんとスプリント競争もした。
当然だけど、色々なところに足を運んで、直接・間接問わず情報収集にも勤しんで対策はバッチリ。
みんな、油断しすぎだよね。よくいうじゃない、壁に耳あり障子に目ありって。漏らしてないつもりになってるだけで、ちょっとしたヒソヒソ話に含まれる仲間内では共有済の周知の事実ですら、競争においては必須級の情報だったりするわけで、私の耳はそういう内容までしっかり捉えていた。情報の重要性を十分理解してる私が、普段から聞き耳を立てるのは、当然だしね。
そんなこんなで充実した日々を送った私は、体育祭当日を迎え、これから入試主席として選手宣誓を行うことになっている。
そこで、今の日本の状況を少しでも変えるためにはいい機会でもあるし、宣誓前に演説を挟もうと画策していた。なにせ全国放送されてるんだから、これ以上の機会はない。さあ、行くぞ!
「宣誓の前に、皆さんに聞いていただきたいことがあります」
会場が騒つくけど、それは織り込み済み。その程度では、私の想いを止められない。さあ、まずは事実を並べよう!
「雄英高校において、ヒーロー科はヒーローとなって平和の維持に貢献するために、サポート科は生み出した作品でヒーロー活動をサポートすることでその後押しをするために、その他の学科においてもそれは同様だと私は考えています。
これは突出した一人の英雄の力に頼ることを良しとせず、一人一人が己の最大限の力を発揮し、それを積み重ねることで平和を維持すべき。そういった教育を施していると、私は捉えています。
ですから、この場におられるヒーロー・サイドキックとその関係者の方々、この放送を見ているヒーロー活動関係者およびすべての人々それぞれに、私は深く考えていただきたいのです。
今の日本は、オールマイトやエンデヴァーを筆頭に、優秀な極少数のヒーローの方々の活動と尽力が大きな抑止力となって、世界一犯罪発生率が低くなっています。勿論、ビルボードチャートにその名がなくとも、多くのヒーローの方々が尽力して下さっていることは存じておりますが、抑止力として働くかといえば、率直に申し上げて非常に残念ながら難しいでしょう。
ともかく、現状はその少数の精鋭が失われた時、簡単に瓦解するような砂上の楼閣。彼らとて、皆さんと同じ人間であり、いつかは活動限界が来てしまいますし、危険なヒーロー活動において、亡くなる可能性もゼロではないのです」
さあ、ここからが本番! 身振り手振りを加えて、言葉に熱を込めろ! 私の言葉に、見聞きする人々の意識をしっかりと惹きつけるんだ!
「ゆえに、今すぐにでも!
大多数のヒーローの方々と! これからヒーローになろうとするすべての人々は!
お互いの手を取り合い、トップとの力関係を急速に縮め、チーム力で超えなければなりません!
オールマイトが来てくれる。エンデヴァーが倒してくれる。
そう言った甘えを、ヒーローはもちろん、一般の方々も安易に持つべきではないのです!」
ここで一度区切り、落ち着いた声音で、事実の羅列と思想の浸透を狙う。
「……救ってもらえることは、当然ではありません。間に合うのが、当たり前ではありません。よって、ヒーローを責めるのはお門違いですし、恨むなど論外です。
個性持ちが人口の8割を超えた現在、ヒーローは確かに増えましたが、資格が必要な以上、増加ペースには限度があります。しかし、ヴィランには枷がありませんので、ヒーローの数倍、数十倍と簡単に増加し、存在するのは当たり前なのです。そんな現状を鑑みれば、事実上対応し切れるわけがないと思いませんか?
トップヒーローが絶対に来てくれるわけではありません。間に合わない時も当然のようにあるでしょう。よって、ヒーローがヒーローを待つのも大きな間違いです。
私自身、ヘドロ事件の現場に遭遇し、その場にいたヒーローは群衆を遠ざけることしか行えず、幼馴染が命の危機に陥ったという状況を経験しています。最終的に、そのヴィランを追っていたオールマイトが間に合っただけで、いつ死んでいてもおかしくなかったのです。
これこそが、先ほど伝えた手を取り合わなかった結果の悪例。
ですが、決して命を粗末にしてまで、無謀な行動をしろなどというつもりはありません。対応できる体制を整えるべきという提案をしたいのです。
事前に、お互いの対処できない個性について、その穴を埋めるような数名のチームで活動していれば対応できたと私は考えます。そのため、弊害となる現状が悪手だと申し上げているに過ぎないのです。
金銭のため手柄を奪い合うように乱立する個人事務所とその関係性。人々を救い、平和に貢献するヒーローとして、その思考は不適切だと、自身の行動を客観的に見て、我が身を振り返っていただきたいのです。
あわせてトップヒーローの方々、自身の矜持と平和のために邁進していただいていることは感謝してもしきれません。しかし、手広い活動がその他大勢のヒーローの芽を、気付かぬうちに摘む行動は謹んでいただけないでしょうか?
精鋭たる貴方達が、トップ層を除くヒーローの質を間接的に落とし、やる気を削いでいる事実に気付いていただきたいのです」
ここで一呼吸おき、考える時間を与えてから、締めへ。
「若輩者で現役でもないヒーローの卵の言葉に、自分で生活費を得てもいない子供の言葉に、どれだけの重みがあるのかはわかりません。
しかし、平和の一助となればとの一心で、私の思う今の時代に即した新たなヒーロー活動像と、長年抱えた想いをこの機会にお話ししました。
ご清聴いただき、誠に感謝いたします。
長々とお話ししましたが、改めまして、選手宣誓を行わせていただきます」
顔を上げろ、姿勢を正せ、大衆の目に強く印象付けろ!
ここで必要な話は終えたと、しっかり区切りをつけて、場の空気を更に支配する。そして、宣誓の中に想いを込めるんだ!
「宣誓! 我々、雄英高校一年生一同は!
勇敢にして平和を齎す希望の光となるため! 正々! 堂々! 己の全力を持って! 過去の己、ライバルすら凌駕し! あらゆる壁を乗り越えることを、ここに誓います! ヒーロー科1-A組、緑谷ひびき!」
私の言葉が、なにかを考えて行動するキッカケになれば。力不足を感じた時、私の言葉を思い出してもらえれば。
万雷の拍手の中、私はそう強く願っていたのでした。
Side 八木
「君は、そんなことを考えていたのか」
緑谷少女による選手宣誓。その前に行われた演説は、今のヒーロー社会への苦言であり、打開策であり、未来への展望。
かつて私は、平和の象徴となることで、抑止力を目指した。あの時代において、それは必須であったと結果が示しているし、そのことに後悔はない。
しかし、私がNo.1となりつづけて30年以上経った今、どこかで軌道修正しなければいけなかったのだと、彼女の言葉で思い知った。
乱立する個人事務所とヒーローは、個人によるヒーロー活動とその維持のために必要以上の費用を必要とし、いらぬ競争を生みだす。
トップヒーローは、彼女の言葉を借りれば、個人の矜持のためになりふり構わない活動も辞さない。その結果、必要以上に手広く行動して、本人は自分の意思なのだからいいだろうが、本来担うべきヒーロー達の経験の場と糧を奪う。
私自身を振り返ってみれば、後進の育成も、ヒーローの地力底上げも考えることなく、受け継いだOFAの責務と平和への願いを胸に、遍く救うべきと行動していたのは事実だ。
しかし、その結果、必要な時に力を発揮できない個人事務所のヒーローが大量に生まれ、余計にトップヒーローが、私が持て囃されるという悪循環。
私が平和の象徴を目指した時代と違い、今は多くのヒーローが存在する。だからこそ緑谷少女は、時代に即した手を取り合って平和を守るためのヒーローチーム体制こそが、より良い未来を築くと確信したのだろう。
ならば、彼女が動かないはずがない。
「それも、また誰よりも早く」
思っていた人はいたかもしれない、愚痴を溢していた人も。だが、誰も動かなかった。なぜなら、それで今まで回ってきたからだ。
「しかし、それではダメなんだ」
より良い方法はないか、常に前を向くこと。それは。
「
雄英高校の校訓、その実践ともいえたのだから。
高評価・感想、ありがとうございます。そういった応援が、モチベーションになりました。
先は、わかりませんが。
●オリ主
選手宣誓の機会を利用して、全国にぶちまけた。
良い方向への変化を熱望。
●オールマイトこと八木俊典
現状の問題点を、オリ主の言葉で自覚した。
変化を恐れず、プルスウルトラしようと音頭を取ったオリ主に、やっぱり継承したい。
◼️原作乖離・フラグ要素
オリ主 選手宣誓した・新たなヒーロー活動の提案
爆豪 選手宣誓できず
OFA オリ主へ譲渡希望+5・個性保有期間さらに延長・新たなヒーロー活動像に感心した。