主人公の個性奪っちゃったみたいだから返すね   作:しおんの書棚

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二次日間11位、ご愛読ありがとうございます。
時間指定したつもりが、そのまま投稿された例。
感想でご指摘があった幾つかについて、過去話も追加や修正しております。


雄英体育祭の第二種目:騎馬戦で狙うね

Side 私

 

『第二種目は、騎馬戦!』

 

競技説明によれば、最低2人、最大は普通の騎馬戦同様4人のチームを作り、障害物競走で割り振られたポイントの鉢巻を奪い合う。そして、終了時点の集計ポイントで、上位4チームが決勝進出枠を得るというもの。

 

障害物競走は、個人のスペックと個性を含めた対応力。

騎馬戦では、急増のチームでも即座に動ける対処能力とチームワーク。

 

これらを会場含めテレビ中継で見ている全国のヒーローにアピールして、後に繋げるという意図が見え隠れしている。

 

なら、それに沿ったチームを作ろう。そう思い、武術仲間の尾白くんを探せば、すぐに見つけたんだけど、尾白くんと一緒にいる青山くんを含めて、なにか様子がおかしい。うーん、気になるな、行ってみよう。

 

「おーい、尾白くん、青山くん!」

 

ああ、なるほど。コレがそうなんだね。側にいた心操くんを見て状況は察した。私の情報収集能力を舐めてもらっては困る。

 

とりあえず、解ける“可能性”に賭けて軽く叩いてみるかな。パシーンと背中を叩く音がして、二人はハッとした後、キョロキョロしてる。

 

「心操くん、やっちゃったね?」

 

「……」

 

「緑谷さん? あれ、僕は……」

 

「心操くん、個性を向けていいのは、仲間へのバフとヴィランにだけだよ。どうしても仲間に向けなきゃいけないなら、事前に理由も効果もしっかり説明して了承を得ないと」

 

そうしなければヴィランと変わらない。そういう意味を込めて伝えれば、苦虫を噛み潰したような表情の心操くん。

 

そして、困惑すれども、さっきの状態が心操くんによるものだと、心操くんの様子から察した2人。

 

「……俺の個性は、洗脳だ。こんな個性だし、普通科だからな。この場にいるレベルで、組みたがる奴なんて」

 

「ここにいるけど?」

 

話を遮って伝えれば、ギョっとして私を見るも、怪訝そうな表情に変わる心操くん。

うーん。じゃあ、複数の言葉で肯定して、君の“可能性”を拡げてみよう。

 

「洗脳ってさ、ヴィラン相手には最高の個性だよね?」

 

そう言って、青山くん達に意味ありげな視線を送る。

 

「! 確かに緑谷さんの言う通りさ!」

 

「ああ、お互い無傷で捕縛できる。ヒーローにとって、最も難しいことができる個性だよ」

 

「それは……」

 

さて、ここまでくれば、残り時間的にも、チーム的にもお互い手を組むしかない。

操られていたことで気分を害しただろうけど、心情を察してくれた心優しい二人は、そこまでの悪感情を抱いてないように見える。未遂に終わったからこそだろうけどね。

 

「尾白くん、青山くん。さっきの件、今日の競技が終わってから、心操くんとゆっくり話し合ってくれるかな。

 今はチーム決めの時間切れ間近で、もうこの4人で組むしかない。心操くんも、勝ちたいならそうしてね」

 

半ば押し切るような形になったけど、一応みんな納得して、頷いてくれた。

 

「じゃあ早速だけど編成ね。

 私の案は、前騎馬が尾白くん、後騎馬は私。みんなの鉢巻を預けた心操くんを尾白くんが、青山くんを私が肩車するの。その上で、私と尾白くんの手を繋いだ変則騎馬がいいと思う」

 

「……その意図は?」

 

控えめながら問いかける心操くんに答えようか。

 

「私と尾白くんの身体能力を活かした機動力確保のためだよ、尾白くんならよくわかるよね?」

 

「確かに。身体能力が高めの二人で、重量分散できるこの構成は、機動力が落ち難い」

 

うんうん、一緒に武術組として鍛錬したせいもあって、尾白くんには意図が伝わりやすくていいな。青山くんともクラスメイトとしてではあるけど、元々交流があったし。なら、騎手についても一応説明して、心操くんの憂いをできるだけ取り除いてあげたい。

 

「騎手が心操くんなのは、個性的に騎馬戦で最も生きるポジションだし、元々そのつもりで考えていたプランがあるでしょ?

 私達が仲間になってさ、全力を尽くせば、決勝進出なんて余裕余裕! 騎馬として私達が君を勝たせるから、騎手としてみんなを勝たせて証明しなよ。

 君は、個性を正しく駆使すれば、真っ当なヒーローになれるって、私は信じてる。今日、ここから一緒に始めようよ!」

 

「なるほど! 僕は賛成だよ!」

 

「いいんじゃないか」

 

「……ああ、わかった」

 

こうして普通科の心操くんが、ヒーロー科A組の私達を率いるという異例のチームが発足したのだった。

 

 

Side 心操

 

俺は、ヒーローになりたかった。だから、雄英のヒーロー科を受験したんだ。けど、試験内容が個性を活かせるものじゃなく、滑り止めの普通科合格。

 

なんだ、あの試験は。あんなものでしか、ヒーローとなる資格が測れないのか。そう燻っていた時、体育祭の成績によっては、ヒーロー科へ移籍できることを知った。

 

なら、やるしかない。俺は、なんとしてでも体育祭で好成績を残して、ヒーロー科に移籍する。そのためには、ここで勝つしかない。ヒーロー科の奴を利用してでも勝つために、中傷を受け続けた個性の洗脳で、捨て駒の騎馬を集めていたはずなのに……。

 

「で、騎手の心操くんは、どうしたい?」

 

障害物競走で僅差の2位だった緑谷は、俺を信用するからA組を上手く使ってみろと言う。なら、使ってやるさ。俺が、勝つために!

 

「最初は、争奪戦に加わらない。極力、孤立したチームを仕留める」

 

「なるほど! リスク管理だね!」

 

「緑谷、弟の方の1000万ポイントに殺到するだろうしな」

 

当然だ。だが、それに意味はない。

 

「ああ、1位も4位も変わらない。そこにさえ入れれば」

 

「決勝進出できると。

 うん、次を見据えれば、消耗は避けたいしね。とはいえ、計算誤らないでよ?」

 

「勿論だ」

 

そう言って頷いた瞬間。

 

『第二種目、騎馬戦、スタート!』

 

開始の合図が鳴り響いた。

 

 

Side 私

 

普通科に、ストイックで近づき難い雰囲気のヒーロー志望生がいる。

 

最初に聞いたのは、それだけ。けれど、“可能性”を感じた。必ずどこかで道が交わるという予感すらあったんだ。

 

で、調べると一人の生徒が浮かび上がり、彼、心操人使くんにたどり着いた。

 

さて、話は変わるけど、今までの人生で出会った個性持ちは、一部を除き名前に個性由来の言葉が入っている。これは、メタ的にいうと作品のわかりやすいネーミング都合で、今世においては、有用な情報源となる。

 

例えば、爆豪勝己。個性名は、爆破。まあ、見たまんま読んだまんまで、性格まで名前に表れている。

例えば、轟焦凍。個性名は、半冷半燃。見たのは氷の個性、親譲の髪色と個性名から予想して炎の個性。

 

なら、彼は?

 

心操人使。個性名は調査当時不明だったけど、心を操作して人を使う、なんてあからさまに催眠系だってわかってしまった。

 

それで調査を継続したんだけど、一切使用した形跡がなかった。だから、正しく使う場でしか使わないという倫理観や正しさを持っていると判断していたんだけど、本人にとっては不本意な扱いを受け続けて、すっかり擦れてしまったんだろうね。でも、私が関わった以上、そのままには決してしないつもり。

 

『第一種目、障害物競走でゲットした1000万ポイントの緑谷出久!

 開始早々、全員が敵になってるぞ! おいおい、守り切れるとは思えねえ数だぜ! こいつはキビシイィ!』

 

『まあ、それだけで一位通過だからな。狙われて当然。だが、合理的じゃない』

 

相澤先生の解説に、心から頷き、一言。

 

「それはその通り。だから、こうしてるんだけどね、こっちは」

 

「そうだとも! もっと優雅に行こう!」

 

そうこう話しながらも、心操くんのプランに従って、存在感を消しながら、タイミングをはかる。

 

「まずは、団子頭からだ」

 

「峰田くんね? 頭の玉に触ったら手が離れなくなるから、注意してね」

 

「ああ、わかった」

 

障子くんが、複製腕を駆使して、騎手の峰田くんと後騎馬の梅雨ちゃんまで背負って行動している。峰田くんはモギモギを投げて、梅雨ちゃんは舌を使って、出久のポイントを狙ってるけど。

 

「注意が疎かになってるが、大丈夫か? 峰田」

 

「誰だよ!」

 

心操くんが話しかけると、返事をするかしないかで峰田くんの動きが止まる。隙を晒した相手に私と尾白くんが素早く近いて、鉢巻を差し出す峰田くんから受け取るという結果に。

 

「なるほど、ね」

 

で、速攻で場所を移し、追跡から逃れ、次を狙いつつ休憩。

 

「とはいかないか」

 

「あれ、ひびきが騎馬なんだ?」

 

「うん、私は機動力の方が高いし、うちの騎手はすごいんだよ。拳藤一佳ちゃん」

 

瞬間、巨大化した手で襲いかかって来る予兆!

 

「しっかり捕まって! 行くよ!」

 

尾白くんの腰に腕を回して持ち上げると、右斜め前へ走り抜ける最中、言葉少なに指示を出す!

 

「尻尾、左!」

 

「ああ!」

 

「掴まれないようにね! 心操くん!」

 

一佳ちゃんがガードして、少し後退したのを確認すると、尾白くん達を地面に下ろした。

 

「わかってる!」

 

流石に高校生3人は重い。それでも、さっきの攻撃は騎馬では避けきれなかったから、仕方ないね。こういう時にために、私は後騎馬になったんだし。

 

直後、心操くんの舌戦が始まり。

 

「拳藤、そのデカい手は飾りか? 捕まりそうにないな」

 

「尾白やひびきに、文字通りおんぶに抱っこで、勝ったつもり?」

 

一佳ちゃんは答え、洗脳に掛かる。

 

「尾白くん!」

 

再び駆け出した私達は、峰田くん同様に差し出された鉢巻を受け取って離脱したんだけど、その後の展開は、相変わらず出久に絡む爆豪くんや、トップを目指す轟くんを中心とした大乱戦。

 

私達は、そこには一切混ざらず、隙を晒したB組の鉄哲徹鐡くん率いるチームを、同じ要領で撃破。その後は時間一杯、適宜休みつつ逃走。そして。

 

『タイムアップ! さっそく結果発表いくぜ!

 

 一位は、緑谷出久の1000万ポイントを奪った轟チーム!

 

 二位は、おいおい、上手くやったな! 争奪戦に混ざらずに積み重ねた1565ポイント! 1000万ポイントを除けばトップスコアの心操チーム!

 

 三位は、最後まで1000万ポイントに拘った爆豪チーム!

 

 四位に、ギリギリ飛び込んだぞ! 緑谷チーム!

 

 コイツらが決勝トーナメント進出だあぁ!!』

 

おう、思った以上に稼いだんだね。しかも実質トップと。

 

「心操くん、君が得た勝利だよ。おめでとう」

 

「……ああ」

 

そう一言残して、彼は足早に去っていく。まあ、そう簡単に割り切れるほど、軽いモノじゃないよね。

 

「テメェ! 見かけねぇと思えば、姑息なことしやがって!」

 

「うわー、面倒くさいのが来た」

 

いや、予想はしてたんだよ? 爆豪くんの好まない勝ち方だからね。

でもさ、結構疲れたから、放っておいて欲しかったというか。思わず、本音が出たというか、ね?

 

「誰が面倒くさいだ、コラァ!」

 

「ダメだよ、かっちゃん! 決勝トーナメントまで待ちなって!」

 

抑えようとする出久を生贄に、私は戦略的撤退すると決めた。その前に一言。

 

「トーナメントで当たったら、しっかり相手するから。じゃあね?

 出久も決勝進出おめでとう。でも当たったら、全力で、だよ」

 

「逃げるな! 待て、クソガアアアア!」

 

「うん、姉さんも。その時は、今の僕をぶつけるよ」

 

爆豪くんに引きずられる出久に合掌しつつ、私はその場を後にした。おそらく、脳無戦以来、最も過酷になるだろう決勝トーナメントに想いを馳せながら。




高評価・温かい感想ありがとうございます。
そのおかげと、今日もたまたま時間が取れたのもあってなんとか書けました。

●オリ主
心操の暴挙を止め、チームを組んで勝った。

●原作主人公
物を引き寄せる効果で多少有利ではあったが、結果は同じ。

●心操
操らなくても、想像以上に動く騎馬のおかげで余裕だった。

●爆豪
順位を除けば、基本的には原作通り。

●プレゼントマイク
オリ主に目をつけていたが、1000万ポイント周りが大騒ぎで注目してしまい、結果に驚いた。

●相澤
気にかけていた心操と、オリ主が組んだ結果に納得。「合理的だな」

◼️原作乖離・フラグ要素
オリ主 二位になった
爆豪  三位に降格
尾白  決勝進出
心操  洗脳なしで決勝進出
塩崎  繰り上げ無し
鉄哲  繰り上げ無し
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