私は、黒服たちに連行され、今は、巨大な潜水艦の中の、取調室に通されている。
手錠はすでに外され、自由に動けるようになっているが、取調室のそこかしこに、監視の目があることが伺える。
弦十郎「遅れてすまない。」
取調室で待っていると、体格のデカい赤髪の男が入ってきた。
真理「いえ、それほど待ってはいません。」
弦十郎「そうか・・・それでは、早速始めるとしよう。」
男は、私の目の前に座った。
弦十郎「自己紹介がまだだったな。俺は、国連所属の超常災害対策機動部タスクフォースSONGの司令、風鳴弦十郎だ。」
真理「私は田中真理です。リディアン音楽院に通っている学生です。」
お互いに、自分の自己紹介をし合う。
男の名前は、風鳴弦十郎といった。
あの世界進出を果たしたアーティスト、風鳴翼と同じ苗字だ。親族だろうか。
弦十郎「よろしくな、真理君。早速で悪いが、単刀直入に聞こう。君は何者だ?」
風鳴弦十郎から、私に対してのまっすぐな疑問が投げかけられた。
真理「ただの学生、を貫けるわけないですよね・・・そうですね・・・私は、貴方方が思っているように、ただの人間ではありません。」
弦十郎「その特異な能力は、生まれついてのものか?」
真理「そうとも言えますし、そうでもないというか・・・なんと説明したらいいか・・・」
弦十郎「焦らなくていい。ゆっくり聞かせてくれ。」
風鳴弦十郎は、急かすわけでもなく、私の立場に立って、接してくれている。
真理「わかりました・・・抽象的な言い方になりますが、私は、擬似的な〈神の器〉として、この世に生まれました。」
弦十郎「〈神の器〉、だと?」
真理「はい。まだあまり詳しくは話したくないのですが、私は、〈創られた〉という意味合いが正しい生き物です。」
弦十郎「ふむ・・・誰に〈創られた〉かは、わかるのか?」
真理「それはわかりません・・・ただ、私は〈人の業〉と〈聖遺物〉によって生み出された存在だということです。」
弦十郎「ふむ、なるほどな・・・。」
風鳴弦十郎は、顎に手をあて、私の正体について考えているようだった。
弦十郎「質問を変えよう。君の、個人的な想いを聞きたい。」
真理「想い、ですか・・・?」
弦十郎「そうだ。君がその力で、何をしたいのかを聞かせてほしい。」
風鳴弦十郎のまっすぐな瞳が、私を見つめた。
真理「私は・・・この〈力〉で、誰かの助けになりたい、誰かを守りたい、世界が危機なら救いたい。その想いで、自分の〈力〉を使いたいと思っています。」
私は、風鳴弦十郎の目を見ながらそう言った。
弦十郎「そうか・・・君は、優しい人間なんだな。」
真理「風鳴司令・・・」
弦十郎「俺は、君のことを、最後まで疑ってしまっていた。君の素直な気持ちを聞いて、己の行いを恥じるばかりだ。すまなかった、真理君・・・」
風鳴弦十郎は、私に頭を下げて、謝罪した。
真理「い、いえ・・・!頭を上げてください!あなたは何も、恥ずべきことはしていません!疑うことは、あなたの仕事の一つです!私は何も気にしていません!」
弦十郎「・・・・・・・・寛大な心遣い、痛み入る。」
風鳴弦十郎は、頭を上げて、再び私を見つめた。
弦十郎「今日の取調は、これにて終了だ。ご苦労だった。艦内で休んで、あったかいものでも飲むといい。」
真理「はい。ありがとうございます。」
そう言って、風鳴弦十郎は、取調室を出ていった。
真理「ふぅ・・・・」
私は席に座り直し、一息つく。
本当は、なにもかも曝け出したかった。
そうすれば、少しでも楽になれるかもしれないと思った。
私は、そんなことを考えながら、一人取調室で、心を休めた
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取り調べが終わり、私は部屋から出た。
すると、そこには二人の少女が待ち構えていた。
切歌「お疲れ様なのデース!」
調「お疲れ様、あったかいものどうぞ。」
二人のうちの一人から、温かいお茶の入ったカップをもらう。
真理「あ、ありがとう・・・あったかいものどうも。それで、君たちは?」
二人は、リディアン音楽院の制服を着ていた。
リディアンの学生であることは確かだが、顔は見たことはない人物だった。
切歌「あ!そうデスよね!私は、暁切歌デス!」
調「月読調だよ。よろしくね。」
真理「月読さんに、暁さん・・・ああ、響さんの言っていたのは、二人のことだったんだね。」
昼休憩のとき、三人から、二人のかわいい後輩がいると聞いた。
名前だけは、その時に聞いたが、顔は知らなかった。
真理「私は、田中真理。響さんや未来さん、雪音先輩から話は聞いてるよ。かわいい二人の後輩がいるって。」
切歌「か、かわいい!?そ、そんな、照れるデスよ・・・///えへへ・・・///」
調「切ちゃん、照れすぎだよ・・・」
切歌「で、でもデスよ調!かわいいなんて言われて喜ばない女子はいないと思うのデス!調だって、顔が少し赤いデス!」
調「み、見ないで・・・///切ちゃん・・・///」
2人は、私の言ったことで、顔を赤らめながら、お互いを見つめあった。
真理「二人とも仲が良いんだね。」
切歌「当然デス!私たちは、一心同体なのデス!」
真理「そうなんだね・・・」
少しだけ、二人の間柄に妬けてしまった。
調「どうしたの?真理さん。」
真理「ううん。なんでもないよ。あったかいものありがとう。それじゃあ・・・」
切歌「あ!待って欲しいのデス!」
切歌さんは、私を引き止めた。
真理「どうしたの?」
調「実は、真理さんに会いたいって人がいるの。その人たちは、艦内のカフェテリアで待ってるから来て欲しいなって。」
真理「私に会いたい人?」
調「そう。真理さんが良ければついてきてほしいな。」
寮の門限までは、まだ時間がある。
時間の余裕は、充分にあった。
真理「いいよ。」
調「良かった・・・!じゃあこっち。」
切歌「案内するデスよ!」
2人は、私の手を引っ張り、私のことを待っているという人物の元へと、案内を始めた。
二人の手も、とても温かく感じた。
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SONG本部内のカフェテリアスペース。
2人に案内され、たどり着いたそこには、二人の女性がいた。
翼「来たか。」
マリア「来たのね。」
そこにいたのは、二人の歌姫、風鳴翼と、マリア・カデンツァヴナ・イヴだった。
真理「え!?翼さんに、マリアさん!?え、ええ!?本物!?」
二人がどれだけ有名かは、よく知っていた。
かつて、ツヴァイウイングとして、天羽奏さんと共に、その片翼で歌っていた風鳴翼。
半年前、日本で開かられたライブで、武装組織フィーネを自称し、アーティストのみならず、その名を世界に轟かせた、マリア・カデンツァヴナ・イヴ。
マリアさんに関しては、実は彼女は、国連直属のエージェントで、武装組織フィーネに潜入捜査をしていたと聞いている。
翼「何をそんなに驚いている?私は、本物の風鳴翼だ。」
マリア「そんなにうろたえないで。私はただのアーティストよ。」
真理「いやいやいや!2人は唯一無二のアーティストです!いつも元気をもらってます!世界進出おめでとうございます!二人とも!」
私は、2人はのファンとまではいかないが、その歌声はよく知っている。
まるで、世界に光が差し込むような、そんな歌声を持つ2人に、私は元気をもらっていた。
翼「ありがとう、私たちを応援してくれて。私も、あなたの意志に報いるように歌うとしよう。」
マリア「あなたにも届くように歌うわ。だから、あなたもちゃんと私たちの歌を聴いていなさいな。」
真理「はい!」
まさか、あの翼さんとマリアさんが、国の関係者だとは思っていなかった。
しかし、一体彼女たちのここでの役割とは一体?
切歌「さあ!ゆっくりとくつろいでいってほしいデス!」
調「ここでは、2人にも遠慮はいらないから。」
彼女たちのことを考えていると、切歌さんと調さんが、カフェテリアの席に、私を誘う。
真理「お、お邪魔します・・・」
緊張で、まだ心臓の鼓動が速い。
翼「改めて、自己紹介をしなければな。私は風鳴翼だ。」
マリア「マリア・カデンツァヴナ・イヴよ。よろしくね。」
真理「田中真理です。よろしくお願いします。」
二人の自己紹介に、私も応える。
正直、2人に自分の自己紹介をしても、世界に毛ほどの変革も起こらないが、礼儀として、人として、一応自分を表しておく必要がある。
それから私は、二人のトップアーティストと切歌さんと調さんと、夢のような時間を過ごした。
そのかけがえのない時間は、今日の昼の再現のようだった。
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