私は今日、学校を休んでいる。
私は、再び、SONGによって拘束された。
事件の度に拘束されるのは、規則であるからしょうがないとは思っている。
ただ、毎回手錠をかけられるのは、どうにも不快感がある。
そして、あの日と同じ取調室。
前と同じように、私は、風鳴司令を待っていた。
真理「はぁ・・・本当はなにもかもしゃべりたいんだけどな・・・」
皆に言えないでいる本当の自分。
それを知ってもらえれば、少しでも考えを共有できるかもしれない。
そんな想いが、頭をよぎる。
弦十郎「待たせて悪かった。真理君。」
取調室に、風鳴司令がやってきた。
真理「いえ、気にしてません。それよりもそちらは?」
風鳴司令の横に、小さな女の子がいた。
弦十郎「真理君は初めてだったな。紹介しよう。」
エルフナイン「エルフナインと言います。今はSONGの皆さんの元で、シンフォギアの改修作業をしている者です」
小さな女の子、エルフナインは、簡潔に自己紹介をする。
シンフォギアの改修作業と彼女は言った。
以前の私への情報開示の際、翼さんとクリスさんが、アルカノイズの錬金術由来の分解攻撃を受けて、シンフォギアが破損したことを知った。
破損したシンフォギアを改修する計画も立案され、その技術主任には、錬金術師たちから逃げてきた人物が務めていると聞いたが、まさか、こんなに小さな女の子が、改修作業をしているとは思ってもみなかった。
真理「田中真理です。初めまして、エルフナインさん。」
私も、エルフナインに対し、丁寧に礼儀正しく接する。
エルフナイン「初めまして、田中真理さん。僕を呼ぶ時に敬称は不要です。どうぞ、エルフナインと呼び捨てにしていただければ。」
真理「あ、そう、なんだ・・・じゃあ、エルフナイン。よろしくね。」
私は、エルフナインの言う通りに、もっと軽く接するようにした。
弦十郎「互いに自己紹介はできたな?それじゃあ、早速で悪いが、取り調べ・・・というより、真理君への質問の時間とさせてもらうが良いか?」
真理「私に言える範囲であれば言います。ですが、この前のようなことにならない保証はありません。」
弦十郎「承知している。だから、無理はしなくていい。君自身が、心から話せるその時まで、俺たちは待つつもりだ。心配しないでくれ。」
真理「風鳴司令・・・・」
風鳴弦十郎は、国の機関の人間、それも、国からの強い権限を与えられている人間であるにもかかわらず、その権利を振りかざそうとしなかった。
風鳴弦十郎が、そういう大人であることに、私はホッとした。
エルフナイン「では、僕から質問させてもらってもいいでしょうか?」
エルフナインが、私に質問をする。
エルフナイン「あなたの戦闘における能力を、言える範囲までで良いので教えてもらうことは、可能ですか?」
真理「それは大丈夫だと思う。核心に迫ることでなければ、私も言えると思うよ。」
私は、エルフナインの質問に答えていく。
まず、私が〈力〉と呼んでいるもの。
これは、言ってしまえば、私以外の全ての時が止まるくらい速く動ける〈超高速移動〉のこと。
相手の間合いを潰す時や、回避の時、緊急時の離脱の時に使うことが多い。
エルフナインは、この〈力〉のことを、仮称〈オーバードライブ〉と定義づけた。
次に話したことは、私の〈聖遺物〉由来の、怪力のことだ。
この力は、〈聖遺物〉由来であるため、脳の力の制約を受けずに使うことが可能だ。
これには、私の人生の中でも、何度も救われている。
そして、最後に。
私が、〈聖詠〉と共に纏った、シンフォギアと似たような兵装のこと。
これもまた、私自身の持つ〈聖遺物〉由来の力ではあるが、なぜ、シンフォギアと同じように、歌いながら戦うことができるのかは、私自身もよくわかっていない。
私は、ただ、胸の内に流れ出る旋律に、身を委ねているだけなのだ。
私は、以上のことを、風鳴弦十郎とエルフナインに伝えた。
弦十郎「なるほどな・・・君の力は、聖遺物由来のものだったのか・・・」
真理「はい。先の戦闘でも、私の聖遺物の反応が検出されたかと思いますが・・・・」
弦十郎「その件についてだが・・・君のアウフヴァッヘン波形と照合する聖遺物のデータがこちらに無かったようでな、unknownの表示となっていたんだ。」
エルフナイン「真理さんの聖遺物が、SONGの把握できていない聖遺物だとすると、それは、もともと他国に管理されていたものか、あるいは、どの機関も把握できていない聖遺物だと考えられます。」
私は、エルフナインの洞察力に、少しだけ動揺した。
エルフナイン「さらに付け加えるのであれば、真理さんの力は、SONGの持つどの戦闘データにも比べられないくらいの、出力をほこっています。なんの淀みのないその力は、ただの聖遺物の力ではなく、〈完全聖遺物〉の力であると、僕は推測します。」
完全聖遺物。
それは、発掘時に、破損や経年劣化を伴っていない、完全な状態で発見された聖遺物のことだ。
完全な状態であることから、凄まじいエネルギー量や能力を有しており、各国の機関で、厳重に保管されているものだ。
そんなものが、私の中にはあるのだ。
弦十郎「完全聖遺物・・・まさか、人の身で、なんの融合症例もなく扱える者がいるとはな・・・」
かつて、響さんは、ある事件で、ガングニールの融合症例となった経緯があった。
体内に宿したガングニールは、徐々に、響さんの体を蝕んでいき、死ぬ寸前まで、侵食が進んだのだという。
響さんの融合症例は、とある聖遺物の力で、完全に除去されたが、融合症例という事案は、SONGの中では、今も懸念されているもののひとつだ。
弦十郎「だが、一つだけ気になるのは、なぜ、真理君が、自分の本当のことを言おうとすると、あれだけの拒絶反応が出るのかだが・・・」
私は、自分の秘密を〈言う事ができない〉。
それは、私を〈創った〉ものたちが、私に施した呪いだ。
さらけ出すことはできても、自らの口で、伝えることのできないもどかしさが、歯がゆい。
エルフナイン「それについては、真理さんの精神状態に、なんらかの暗示のようなものが施されているのだと思います。サイコセラピー、自己暗示など多種多様ですが、それらのどれかに当てはまるのではないかと。」
弦十郎「なるほどな・・・」
エルフナインの的確な推測に、私も風鳴司令も、納得させられるものがあった。
やはりこの子は、ただの少女ではないと、実感せざるをえなかった。
真理「エルフナイン。君はすごいね。たぶん、私の言いたかったことを、ほとんど言ってくれた。」
エルフナイン「い、いえ・・・僕は、ただ推論を立てただけで、本当の意味で、真理さんの役には立っていません・・・」
真理「役に立つ立たないの話じゃないよ。エルフナインはすごい。自信を持っていい。私が保証するよ。」
エルフナイン「真理さん・・・」
弦十郎「エルフナイン君。俺も、君の素質を保証する。だから、これからも、俺たちの力になってくれ。」
エルフナイン「弦十郎さん・・・」
風鳴司令は、エルフナインを励ますように頭を撫でた。
真理「なんだか、今日はエルフナインのおかげですっきりしたな。肩が軽いよ。」
弦十郎「ああ。真理君も、今日は心なしか、とても良い顔に見える。」
エルフナイン「僕が少しでも、真理さんのためになったのなら幸いです。僕のほうでも、個人的に、真理さんの分析を進めたいと思います。」
真理「私が言うのもなんだけど、無理はしちゃダメだよ?」
弦十郎「そうだな、エルフナイン君は、少し根を詰めすぎるところがある。俺たちにできることがあれば、なんでも相談に乗ってほしい。」
私と風鳴司令は、エルフナインに、他人を頼ることの意義を勧めた。
エルフナインは、納得したかのように、小さく頷いた。
弦十郎「よし!じゃあ、ここで互いに握手でもしよう!取調室同盟の結成だ!」
真理「なんですか、それ・・・」
弦十郎「良いじゃないか!さあ!真理君にエルフナイン君も!」
真理「しょうがないですね・・・」
私たちは立ち上がり、3人で固い握手を交わした。
この日、取調室で、人数は小さいが、志は大きな絆が生まれていた。
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