呪術廻戦で万にチート転生   作:VISP

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第一話 平安の世にて万の道具を作る者ありけり

 時は現代より千年もの昔、平安京

 呪術全盛期にしてあらゆる場所に魑魅魍魎が跋扈していた時代である。

 

 「不便だ。余りに不便だ。」

 

 そんな時代に令和の時代より転生してしまったとある元男で現女はただ只管に日常の不便さを嘆いていた。

 戦国や江戸時代ですらないこの時代、まだまだ人道や倫理等が殆ど取り沙汰されないのは当然として余りにも技術が発展途上だった。

 平民は勿論貴族もそうであり、呪術師もそれは変わらない。

 故に都やそれ以外の集落でもばんばん人が死に、そして生まれていく事を繰り返していた。

 誰もが毎日を生きる事に精一杯であり、殿上人ですら呪霊や呪詛師によって殺められる事も珍しくないし、そんなものが無くても十分な医療技術のないこの時代では碌な治療を受ける事すら出来ず、余りにあっさりと死んでいくのが当然だった。

 勿論、現代基準で快適な住居や美味しくて安全な食べ物なんて何処を探しても存在しない。

 

 「なら作るしかない。」

 

 決意してからは早かった。

 鍛錬と食料確保のために山野を駆け抜け、獣を狩り、食えそうな木の実を採り、時に襲ってくる呪霊や呪詛師、野盗の類いを鏖殺していく。

 特に呪詛師は良い。

 鍛錬にもなるし、何かしらのものを持っている場合もある。

 何より術式を行使する際の素材にも変換できる。

 

 「確かヒロアカだかにいたな、何でも生み出せる個性持ったキャラ…ヒロアカは詳しくないんだが…よし、肖ってこれからは万と名乗ろう。」

 

 持って生まれた術式は構築術式というとても燃費の悪い外れの術式だった。

 だが、前世でオタクとしてそれなりに型月作品を始めとしたサブカルチャーにどっぷり浸かってきた人間の記憶と魂を持つ者として、これほど悪用できる術式は無かった。

 

 「無ければ作る。便利な言葉だ。」

 

 先ず鍛冶屋…と思ったが近所に鍛冶屋は無かった。

 と言うかこの時代は製鉄技術が未熟も未熟で大陸から避難してきた人々やその末裔、或いは大陸に何年も留学して戻ってこれた技術者しか製鉄に触れる事は出来ない。

 そもそも鉄自体がまだまだとても貴重なので、鉄製品なんて相応に貴重なものだった。

 勿論製鉄の本場である西日本では相応に広まっているが、私のいる会津ではまだまだ広まりきっていなかった。

 時々見かける鉄を使用した農具や包丁、貴族やその家来の持つ剣位なもので、実質使い捨ての鏃や大量に必要となる建築資材等は殆ど見かけない。

 仕方ないので襲い掛かってくる野盗や横柄な貴族、呪詛師に呪霊をしばいて財産を吐き出させ、時に始末しながら都を目指した。

 

 「うわぁ…。」

 

 元々攻められやすく守り難い、更に人が多いから兵糧攻めに弱いと言われる都では当然の様に疫病と食料不足による飢え、それによる治安悪化と人心の荒廃による呪霊の大量発生が起きていた。

 なので、呪術師であれば就職先に困る事は無い。

 多少派手に呪霊を祓ってみせれば朝廷より直ぐに使者が飛んできてスカウトされた。

 食っていくためには働かねばならぬと朝廷所属の術者として雇用された。

 間を置いて、ある程度活躍した後に通常の報酬の他にも何か欲しいものが無いかと担当の役人に聞かれたため、

 

 「文字の読み書きの指導と朝廷に保管されている書庫への出入りの許可を願います。後、呪術の実験に少し広い土地と使用人を。」

 

 こうして、私の知識と出来る事の幅は大きく広がった。

 未だ脳裏に現代での文字の読み書きが残っている私にこの時代の文字の読み書きは難解に過ぎたが、それは諦める理由にはならない。

 転生後珍しく本気で努力して文字の読み書きを一月程で覚えた後、朝廷とその一部署の陰陽寮の書庫にて知識を蓄え、同時に大陸から持ち込まれたという作物の種や苗等も購入した。

 これで漸く準備が整った。

 

 「じゃぁ取り合えず私の作った肥料を混ぜながらこの辺を耕して。人手足りないなら私の蓄え使って人を雇ってよいから。」

 「え?」

 「他にも色々頼むから知り合いに職人とかいたら呼んできてね。」

 「え?え?」

 「じゃ、私は他にもやる事あるから任せたよ。」

 「え、えぇぇぇぇぇ!?」

 

 監視を兼ねる使用人の叫びを他所に、私は与えられた屋敷の一室で紙代わりの灰の入った箱に図面を描き続けた。

 ここでは糞術式扱いされる私の構築術式だが、術式反転すると一気に凶悪さを増す。

 触れたものを分解し、私の使用できる呪力へと変換する事が出来る。

 これにより構築術式の糞燃費を改善できるし、通常の身体能力強化等にも使用できる。

 勿論分解対象の内包する呪力が多ければ多い程に多量の呪力へと変換できる。

 また、変換した呪力は直ぐに使わずにひょうたん型の保存器(自作)へと貯蓄する事も出来る。

 ある程度自動で術式反転が出来るようになるまでは脳への負荷が洒落にならなかったが、そこを乗り越えれば後は簡単だった。

 呪力を用いた攻撃を受ければ受ける程に回復し、術式を使用できるようになった私はあっさりと都で暴れていた呪霊や呪詛師を討伐、素材へと変換していった。

 そうして得た報酬で、私は与えられた土地を前世の知識を用いて豊かな農場兼工房へと作り変えていった。

 なお、この時代の作物として最も有名な五穀(米、麦、粟、豆、黍または稗)の他、蓮根や蕪に大根、牛蒡(ごぼう)に里芋、生姜に大蒜(にんにく)に辣韭(らっきょう)、山芋に薯蕷子(むかご)、菱子(ひしのみ)、また香味野菜等として紫蘇や山椒、芹に茗荷(みょうが)、蓼に山葵等があった。

 果物は揚梅(やまもも)、甜瓜、桃、梅、(すもも)、杏子、梨子(やまなしの事)、青梨、葡萄、林檎、蜜柑、柚子、柑子(こうじ。みかんの一種)、橙(だいだい。みかんの一種)、栗、筆柿(渋柿の一種)、渋抜き柿、柘榴、茱萸(ぐみ)、枇杷、瓜、棗、蔔子(あけび)、郁子(むべ。あけびの一種)、胡桃、(しい)(かや)、薦子(こも。マコモダケ)、覆盆子(いちご。キイチゴ類の総称)、榛子(はしばみ。ナツメグの一種)、そして甘味である甘葛の樹液等、割と多種多様な作物が食べられていた。

 肉や魚?その辺にいる生き物をテキトーに捕まえて食べるだけだぞ。

 一応養鶏は奈良時代には確認できているが、基本的に貴族向けであり、庶民には縁遠いし、牛や馬は労働力として極めて重要な財産の上に仏教伝来と共に殺生禁止や食肉禁止の習慣の広がりと共に表立って食される事は無かった(なお実態)。

 また、労働力にならない養豚は入ってきているが徐々に廃れてきている。

 こうして割と様々なものが食べられていたのだが、都市部の需要を賄える程に大量に生産する事は出来ず、木材や薪にするために京都近郊では禿山が幾つも出来上がり、それ故に水害が後を絶たなかった。

 大陸の制度を真似して大都市を作ったものの、それを維持するための周辺環境の整備が追い付いていないのだからそりゃー荒廃するのも納得である。

 

 勿論不便だから改良していく訳だが。

 

 私の記憶にある品種改良済みの種子、人を雇って集めさせた人糞に藁や雑草類を混ぜ込んで発酵させた肥料、改良した農具多数、何より構築した多量のガラスを用いたハウス栽培!

 この時代の天候不順に貧弱な肥料や改良されてない作物等の問題を私というチート転生者である程度解決!

 使用人や雇われた民衆はびっくりしてるが構うか!

 歴史改変?うるせー!私は少しでも快適な生活がしたいんじゃ!

 ついでに捕まえてきた女王バチを巣箱に入れて養蜂もしとく!

 これで甘味の大量供給も準備ヨシ!(現場猫感)

 更に鶏を1ダース買ってきて小屋と作物の切れ端なんかを与えて養鶏も開始!糞は肥料に混ぜる!

 足りない分は試行錯誤しつつ、朝廷からの横槍は仕事こなして黙らせ、雇った人への支払いが足りない場合は呪具の販売で稼いだ分を充てる。

 寒い時期には自分で壁とか戸を追加した隙間のない家でふかふかのお布団に包まり、湯たんぽと囲炉裏で暖を取る。

 燃料や肥料が足りない?

 そこに呪詛師と呪霊がおるじゃろ?

 それをな、こうして(分解して呪力リソースに変換)こう(炭や肥料に変換)じゃ!

 永久機関が完成しちまったなぁぁ~~!!

 ぶっちゃけアイツラ存在自体が害悪なんだからこうして人様の役に立てるだけ感謝してもらいたい位だわ。

 なお、出来た作物や蜂蜜なんかは朝廷にも寄進してるからブーブー言ってくる奴はいない。

 それでも言ってくる奴は供給止めるだけだし、それで襲い掛かってくるならお前らも私の役に立ってもらう(分解)。

 なんか傍仕えの使用人増えたり、頭に縫い目のある呪術師が連日「突撃☆隣の晩御飯!」してきた挙句「素人質問で恐縮なのですが」してくるが構うか!

 私は快適な生活を今後も維持・向上していくためには手段を選ばんッ!!

 都に来て5年、漸く全部の事業が軌道に乗ったし、後は死ぬまでこの生活を続けていくぞ~!

 

 

 「ほう。ここが面妖な呪術師が営む村か。」

 「随分と他では見ない道具や作物が多いですね。それに人も皆血色が良い。余程豊かな生活を送っているようです。」

 

 

 そんな頃だった。

 私にとって不倶戴天の天敵となる男とその従者と出会ったのは。

 

 

 ……………

 

 

 呪術最盛期の平安時代において、呪いの王とまで称された宿儺。

 最終的には当時の朝廷の呪術師らほぼ全てが相打ちとなる形で討伐されたものの、現代に至るまで残された呪物である20本の「宿儺の指」と共に畏れられ続けている。

 その平安時代最大の呪術大戦において、当時最も活躍したのが非貴族・非術師家系の役立たずと言われた構築術式の使い手である事は殆ど知られておらず、西暦2000年代以降の現代では古い術師家系でも極一部しか伝承されていない。

 だが、その大業を成したとある女呪術師にとって、呪いの王とも言われた男は初見で撃退して以降、ただの食料泥棒でしかなかった。

 朝廷から命じられた後、最後の晩餐として宿儺とその従者とおまけの縫い目の呪術師らと当時彼女が出来る最大限の贅沢な宴会をし、その更に2日後に決戦に及んだ。

 研究資料と作物の種を始めとした家財は事前に縫い目の呪術師に依頼して複数筋で保管、それらを活かせる様な有力者にばら撒くように仕込んであった。

 なお、依頼は縛り込みかつ当時では有り得ない程に美味い食事の代価であった。

 

 そして当時最強の呪術師たる宿儺と万、その戦いは丸一昼夜も続いた。

 

 宿儺の術式を用いたあらゆる攻撃は分解されて万の力となり、果てはその術式すら完全に吸収・模倣されてしまった。

 更に万は原作以上の性能となった「蟲の鎧」によって正面からの肉弾戦ですら宿儺を圧倒した。

 これは単純な性能以上に術式の相性、何よりも宿儺の持つ肉体上の利点を蟲の鎧によって完全に模倣されてしまった事が大きかった。

 宿儺の特徴である四の腕、四の目、二つの口を持ちながらも一切破綻の無い剛体。

 四本の腕によって掌印を結びながら肉弾戦を行い、腹の口で心肺に負担をかけずに呪詞の詠唱を絶え間なく続けられる宿儺だったが、六本の腕と全身に配置された気門による呼吸と詠唱に虫の複眼による動体視力と触角や繊毛による察知能力、何よりも追加された多数の神経節による反射神経と情報処理能力によって、宿儺以上の肉体性能を実現した万相手には分が悪かった。

 それでも劣勢のまま一晩中持久戦を続け、合間に挟む「閉じない領域」による攻勢で消耗させ、世界ごと対象を切断する「世界斬」により一度は万の殺害に成功する。

 しかし、世界斬を受けた瞬間、蓄えていた全ての呪力リソースと自分自身を使い潰した上で時間制限を設ける事で万は「最強の自分自身」を作り出す事に成功。

 この時、戦闘開始して実に22時間近くが経過していた。

 

 「驚いた。それがお前が目指した頂きか。」

 「まさか。これはまだ途中だよ。」

 

 全身をあらゆる構造体へと変化可能な、意思を持った流体金属。

 ターミネーター2のTー1000の上位互換とでも言うべき存在になった万は消耗した宿儺と戦闘を再開した。

 しかし、再開された戦闘はたった1時間で終了した。

 万が最強の自分を構築する際に設定した時間制限は一時間、それを使い切ってしまったのが原因だった。

 だが、その一時間はその時代で最も苛烈で凄惨な呪い合いだった。

 

 「まぁこんなものか。死力を尽くしたんだがな・・・勝ちきれなかったか。」

 「そう言うな。間違いなくお前は強かった。誇って逝け。」

 「はは、そりゃ嬉しいね。」

 

 最後に酒を一瓶だけ作って、万は灰も残さず消え去った。

 

 「何、黄泉にてまた相見える。その時にまたやろう。」

 

 ぐい、と酒を一息で飲み干して、宿儺は迫り来る朝廷の呪術師達をボロボロのまま迎え撃った。

 後は歴史書に残る通り、宿儺は凄まじい被害を出すも討伐された。

 しかし、その死体は縫い目の呪術師によって暴かれ、呪物として千年先まで呪いを振り撒くのだった。

 

 




「うっそだろおい!万の遺体取り損ねたー!」

作物の種や各種資料はしっかり自分の分は確保した羂索だったが、一番狙ってたものが取れなかったのは地団駄踏んで悔しがった。
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