呪術廻戦で万にチート転生   作:VISP

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第十四話 格付け 下 後書き追加

2007年 呪術高専東京校 姉妹校交流会にて

 

 「おやおや、予想以上に善戦できたね。」

 

 自分自身の黒閃を受け、気絶していた直哉へと万穂が声をかけた。

 

 「・・・すまへん。負けてもうた。」

 「いいさ。君はまだ成り立てでこれからなんだ。」

 

 悔しそうに腕で目元を隠す直哉を、万穂は労った。

 すっと反転術式のアウトプットでその傷を癒やす事も忘れない。

 が、直哉は呪力は温存しろとそれを断り、自前の呪力で反転術式をかけ始めた。 

 

 「このままだと悔しいから、五条君を泣かせてくるよ。」

 「ん」

 

 掲げられた直哉の掌に、万穂はパンと軽く手を当てて颯爽と歩いていった。

 一方同じ頃、東京校側でも似たような光景があった。

 

 「おめでと傑。リベンジ達成だな。」

 「あぁ、だが予想以上に追い込まれたよ。こっちは一年かけて修行してメタを張ってたのにこの様さ。」

 「だけど勝ちは勝ちだ。お前の努力の賜物だよ。」

 「そうだね・・・。」

 

 この一年、さしす組の三人は日本全国の公式で確認の取れた特級呪霊の住処へと襲撃をかけ続けていた。

 全ては最強コンビの名を取り戻すため、憎いあん畜生共にリベンジをするために。

 家入も合わせて三人での学生で子供らしい修学旅行染みた日々は夏油の体調悪化で中断されてしまったが、それ以降は弱り切った夏油の弱音(呪霊玉の味とか非術師の醜さとか色々)を聞けた事で三人の繋がりはより強まった。

 話を聞いて試しに呪霊玉を呑んだ五条は三日程お腹を壊してトイレの住人になり、家入は文句も言わずに二人の介護を頑張る事となったがそれはさておき。

 相互理解が深まったのは良かったがそれはそれとして、夏油の術式の欠点は早急に解決すべきだった。

 具体的にはゲロと牛乳を拭いて放置した夏場の雑巾味と言われる呪霊玉の味と呑みすぎると体調を崩す点について。

 なので、恥ずかしながら術式の解析に当代で最も詳しい人物、あの粒来に知恵を借りもした。

 

 「んー、対症療法として口から食道までを呪力で守るか、呪霊玉そのものを呪力で包むか。後は簡単にオブラートやライスペーパー等で包むかだねぇ。後は使役してる呪霊の方に呪霊玉を食べさせて取り込むか。体調不良に関しては元々猛毒の呪霊を取り込んでるんだから当然の結果だね。安静にしておくのがベスト。反転術式で軽減できるかもしれないが、その辺りは自分達で色々試してほしい。」

 

 意外にも粒来は快く教えてくれた。

 こういう答えがあっさりと返ってくる辺り、決して五条達に隔意を持っている訳ではないのだろう。

 ただナチュラルに倫理観が無く、極端な研究者気質なだけで、決して悪党ではないのだろう、多分。

 単なる悪党より質が悪い?それはそう。

 そしてアドバイス通り全部試した所、口から食道までを呪力で守るのと呪霊玉を呪力で包むのはゲロ味の軽減に成功したが、あくまでマシになっただけだった。

 呪霊に呑ませた場合、未消化なら夏油の体内に収まるが、消化済みだとその呪霊の呪力になってしまう。

 中々上手くいかないが、確かな手応えが夏油にはあったし、五条と家入もまた喜んでくれた。

 家入にだけ負担かけるのは良くないと思った五条が家宝の一つの全身鎧型の特級呪具を持ってきた時は思わず返してきなさいと突き返したが。

 

 「呪霊なんて悪性情報の塊なんだから、一部の設計データ取り出したりコピペしたり組み合わせたりでオリジナル呪霊作ったり、同じ呪霊を何体も作れたりも出来そうだけど、夏油君はもう少し頭を柔らかくするべきだよ。無下限もそうだが、やれる事は山程あると思うよ。無下限術式もまだ奥がありそうだし、二人とも要修練だね。」

 

 実質無限の手札を持ってる特級呪具師からの助言に、最強コンビは燃え上がった。

 これ以上の助言は次の交流会で負けるかもだから無しと言われてしまったが、それでも夏油と五条は持てる限りの知恵と力を尽くして修練を続けた。

 素晴らしい日々だった。

 体調を崩しながらも、それでもあの悪夢の煮凝りみたいな味から解放された夏油は術式の応用発展を成し遂げ、成長できた。

 まだまだ道半ばで、今回は呪具にも頼ってしまったが、モノに出来たうずまきとその応用で以前よりも遙かに強くなった直哉にリベンジする事が出来た。

 

 「次は君の番だ、悟。」

 「あたぼうよ。」

 

 簡易ベッドに横になった傑が掌を上げ、そこに悟がパンと軽く掌を当てて前に出る。

 去年の雪辱を晴らすため、先を行く同類に追いつくために、真なる六眼がサングラスを外し、獰猛な笑みと共に歩みを進めた。

 

 「やぁ、待たせたかな?」

 「いいや、今来た所だよ。」

 

 片や穏やかに、片や少年らしく快活な笑みを浮かべ、時代の寵児たる特級呪具師と特級呪術師は嗤い合った。

 

 「じゃぁ、やろうか。」

 「あぁ、やろう。」

 

 虚式「茈」

 無の構築

 

 瞬間、五条の茈が創出した無へとぶち当たる。

 余りの出力の術式の衝突、その余波で荒れ果てていたグラウンドが今度こそ吹き飛び出す。

 2007年の交流会最後の一戦が始まった。

 

 ((以前よりも発動が早い!))

 

 茈も無も以前は掌印と詠唱が必要だったものが、今では掌印だけで発動が可能になっていた。

 更に言えば、発動までの時間も呪力の溜め時間も少なくなっている。

 それだけで互いの技量が向上している事を双方は即座に悟った。

 

 「どうだい、六眼は?」

 「素晴らしいね。君と違ってオンオフできて楽でいいよ。」

 

 ズドン、と赫が撃ち込まれ、それが着弾とほぼ同時に分解で無効化される。

 赫の威力も上がり、発動のタイムラグも少なくなっている。

 分解の速度は勿論、解析が無限に追いついている。

 互いが互いにやべぇなコイツ、と戦慄する。

 

 「さぁ、上げていこうか。」

 

 蟲の鎧 対無下限術式仕様

 五条悟から分解で得た六眼と呪力、術式情報を元に無下限呪術への耐性を持たせた蟲の鎧は六眼による呪力の運用効率と処理能力、呪力感知や術式の解析力向上により、その性能の多くを底上げしている。

 その外見は何処か五条を想起させる左の六眼の複眼、骨を思わせる白い甲殻が特徴となっている。

 装いも新たに、万穂がいつも通り前へと踏み込む。

 

 「代わり映えの無い戦法じゃん。」

 

 それを五条が迎撃する。

 牽制として放たれた蒼が全て分解され、ほぼ直線コースで突っ込んでくる重装甲かつ剛力の蟲の鎧を相手にし、五条は敢えて前に出た。

 下手な遠距離攻撃は相手に呪力を与えるだけ。

 以前は有効打となった赫すらも鎧無しで分解される現在、五条が万穂に与えられる有効打は少ない。

 即ち、茈と領域展開、或いは黒閃の一撃である。

 最大火力の赫ならば多少は通るかもしれないが、決め手には欠ける。

 故に五条は最初からそれ以外の攻撃は全て決定打を与えるための手段であると割り切っていた。

 

 (と言ってもキツいもんはキツい!)

 

 万穂を客観的に見ると、極めて安定性の高いクソボスである。

 大体の遠距離攻撃は分解で逆に吸収されるし、近接では蟲の鎧の6本の腕とパワーでボコられ、術式による防御も領域展延により破られる。

 領域対策だけはまだ見た事ないが絶対にしている(確信)。

 反転術式で回復もするし、鎧の破壊や肉体的欠損も構築術式で作り直す事で継戦能力も高い。

 呪具の類いは本人が専門家で、物量ではやっぱり分解されて逆に吸収されるし、何だったらこちらの天敵になり得る呪具をその場で作り出してくる。

 その上で以前の交流会によって六眼をコピーし、呪力を用いるほぼ全ての基礎スペックが向上している。

 うーんこれはどう考えてもクソボスですね。

 身に纏う無限を解除し、蒼と赫による引力と斥力を用いて高速の立体機動及び巧みに互いの距離を操作しながらの近接戦闘というリスクだらけの状態。

 これが一番勝率が高いと、五条の明晰な頭脳は判断したのだ。

 

 (まぁゼロじゃないってだけなんだけど。)

 

 こちらが相手のパンチ一撃を防ぐために両手を用いれば、相手は空いた5本の腕でラッシュをかけてくる。

 手足の数とリーチという分かりやすい差がこんなにも厄介になるとは、五条も実際に戦ってみるまで思ってもみなかった。

 夏油の用意した腕が複数ある呪霊で試してはいたのだが、そのどれもよりも遙かに重く、早く、強い一撃が防御や往なしの上から五条を削り続ける。

 だが、致命打だけは決して受けず、反転術式で回復し続ける事で動きに支障は来さない。

 

 「どうした五条君?そのまま終わる気かな?」

 「は、言ってろ。」

 

 更にギアを上げ、互いに対応がギリギリ間に合わない程の高速の近接戦闘が繰り広げられる。

 3秒、4秒、5秒。

 5秒目と共に互いが相手を弾き合い、距離を置く。

 五条と万穂、互いにその手には掌印が結ばれていた。

 帝釈天印と文殊菩薩印を互いに組み、呪力が極限まで高まる。

 

 「「領域展開」」

 

 無量空処

 有漏苦欲界

 

 同時に展開した領域は、そのまま甲高い音を立てて砕け散った。

 

 「意外な顔をしているね、五条君。」

 

 掌印を組んだまま驚きで固まった五条に対し、万穂は出来の悪い生徒へ聞かせる様に語った。

 

 「何も必中効果を、何なら術式すらも必ず領域に採用する必要は無い。大事なのは必要な時、必要な機能を発揮する事だ。」

 

 勝利を確信した側として、万穂はゆっくりと語った。

 

 「君が普通の必殺必中の領域で助かったよ。確かに領域は当たれば脅威だが、その分複数の対策がある。領域同士の押し合い。簡易領域に落花の情。最近では私が設計した結界破壊呪具なんかだ。」

 

 これ以上隠し球が無いのなら、その時点で自分の勝ちだと、相手に教えてあげるように。

 

 「だが、私はそれで満足しなかった。それら全部を踏み潰せる領域を知っていたからだ。」

 

 実際、両面宿儺ならば今上げた例は全て押し潰し、蹂躙出来る。

 あの伏魔御厨子に対抗するに当たり、万は随分と悩んだ。

 悩んで、悩んで・・・・・・最終的に自分の領域の一切を捨てる事にした。

 当時、数少ない必殺必中の領域であったにも関わらずにだ。

 

 「私の領域は他者の領域と接触した時点で相手の領域と共に自壊する、対領域特化領域なんだよ。」

 

 より正確に言えば、万穂は複数の縛りを設ける事で押し合いに絶対勝つ領域を構築している。

 1、自分だけでの領域展開はしない

 2、必中・術式効果は付与しない

 3、領域同士の押し合いが発生した時点で領域を強制解除する

 

 「じゃあね、五条君。」

 

 互いに術式が焼き切れて行使できない現状において、蟲の鎧という特級呪具を纏い、近接戦のスペシャリストでもある万穂は圧倒的有利な状況だった。

 そうして始まった蹂躙は、一年前の戦いを想起させる程に一方的だった。

 呪力操作と体術で凌ぐ五条だが、それだけで耐えきれない事はもう分かっていた。

 6本の腕により繰り出される無数の打撃は五条による精一杯の対応を嘲笑うかの様にその対処能力を超え、次々とその身体へと突き刺さっていく。

 瞬く間にボロ雑巾へと変貌していく五条は、ものの1分と持たずに戦闘能力を喪失してしまった。

 

 「君の事は覚えておくよ、元最強って。」

 

 その右拳に黒い火花を迸らせながら、万穂は全力で止めとなる一撃を放った。

 

 

 

 




次回 覚醒

有漏苦欲界(うろくよくかい)
万穂の領域展開。
本来ならば無数の棚とそこに配置された呪具や素材が広がる倉庫
術式効果は対象を分解し、通常は効果対象にはしていない魂や精神、記憶を含めた全てをリソースにする事
その分だけやや分解まで時間が掛かるが、大体1分もあれば同格の相手も分解しきれる
ただし閉じない領域ではなく通常の領域なので、外側からの干渉には弱い
そのため宿儺との領域勝負では負ける事が多かったため、現在の対領域特化領域へと改められた。

仏教用語で有漏は煩悩(心の汚れ)があって迷っている状態や、その煩悩のある人(凡夫)を指し、「漏(ろ)」が煩悩や汚れを意味し、それが「流れ出る」ことから来ている。
苦は単なる「つらい」ことだけでなく、「思い通りにならない」「不完全である」「無常である」という人生の本質的な状態を指し、「一切皆苦」=「この世のすべては思い通りにならない、苦しみを伴う」という真理を指している。
欲界は教における迷いの世界「三界」(欲界・色界・無色界)の一つで、食欲・睡眠欲・性欲などの本能的な欲望にとらわれた衆生(生き物)が住む世界を指す。
具体的には地獄・餓鬼・畜生・修羅・人間界、そして天界の下部である六欲天(ろくよくてん)までが含まれ、人類が日常で経験する感覚的な世界そのものでもある。

つまり、有漏苦欲界とは煩悩と苦しみだらけの世界を指す。
仕方ない状況だったとは言え、平安時代に転生してからずっと前世とのギャップに苦しみながら、物理的欲望に従って行動している万穂らしい領域である。
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