急いで執筆してるとどうしても見逃しがね・・・(白目
海外での災害と呪術的な意味で大変革が起きた2010年が終わり、遂に2011年になった。
整地から何からが大変だったものの、何とかある程度の建て直しの終わった東京校が2011年度から再起動する事もあり、今年は更なる呪霊災害の削減を目指しつつ、呪力発電の拡大を目指す予定を立てた総監部を始めとした呪術界であったが、彼らの目論みは儚く消えてしまった。
2011年3月11日、東日本大震災の発生である。
マグニチュード9.0という日本観測史上最大規模の地震で、震源地は宮城県牡鹿半島東南東沖だった。
更に地震発生後から30分後に断続的に巨大津波が東北から関東の太平洋沿岸を襲い、特に岩手・宮城・福島県を中心に壊滅的な被害をもたらした。
この被害による死亡者の約9割が津波による溺死であり、改めて地震と津波の恐ろしさを世界中の人々が思い知った。
更に地震・津波の影響で東京電力福島第一原子力発電所が被災、稼働こそ呪力発電への切り替えもあって停止し、解体作業中だったものの、原子炉が大破した事で国際原子力事象評価尺度(INES)で最悪レベル6の深刻な原子力災害となった。
こうした一連の震災とその関連死を含め最終的に2万人以上の死者・行方不明者を出した、第二次世界大戦以降最悪の自然災害と記録される事となった。
そして、被災者やその親族、更にその様子を見た大勢の人々の恐怖や不安、悲しみにより、第二次大戦期に届こうかという程に日本国内の呪いが高まっていた。
「呪術総監部より非常事態を宣言する。御三家及び高専は全ての人員を出す。在野の術師にも連絡がつく者は全て雇え。総力戦だ。」
折角のフィーバータイムを邪魔された総監部は初手で全ギレし、あらゆるリソースを事態の沈静化のために出す決断を下した。
もしこのまま座していた場合、地震や津波系の強力な呪霊がダースで湧いてくる可能性があるとなっては、幾ら腐った蜜柑達(仕事は出来る)と言えども本腰を入れざるを得なかった。
これには現在動ける特級術師達も即座に動き出し、一路東北へと動き出したのだが・・・
「私が休みってマジかい!?」
「当たり前やろがい!!」
禪院家ではちょっとモメていた。
東北出身の当主の奥方(現在妊娠6ヶ月)が地元の危機だからと現場に出ようとしたからだ。
頼むから座ってて! by関係者一同
「いや地元だよ!?両親や友人達とも連絡付かないんだから、ここで動くでしょ普通!」
「妊娠しとるんやから、動かんといて!オレが何とかするさかい、大人しくしとき!」
「うぎぎぎぎ・・・!」
勿論、今この瞬間も予備含めた1500もの蜂型式神も全て投入し、呪霊退治と密かに知り合いの人命救助もしている万穂であるが、勿論本人が頑張った方が活躍できる。
だがそれ以上に、妊娠中の若妻を現場に投入とか、幾ら倫理観極薄の呪術界でも論外な行動なのである!!
何が出てくるか分からん状況で、子供ガチャSSR確定の愛妻と腹の子供を守るためにも直哉は絶対に退かなかった。
「・・・分かった。一応両親の無事は確認できてるから、直哉も無事に帰ってきてね。」
「分かってるで。義両親のことはこっちできっちり見るし、無事に帰ってくるからな。」
直哉の決意が分かったのか、万穂は割とあっさり引き下がり、直哉を見送る事にした。
こうして、ちょっとモメていたが禪院家当主と精鋭部隊の炳、躯倶留隊の半数が東北へと出撃する事となった。
・・・・・・・・・・・・・・・
「やれやれ、こりゃキリが無いや。」
五条家現当主たる五条悟は総監部の非常事態宣言を受け、その術式による長距離転移によって即座に東北へと現着、現在は岩手県を中心に呪霊を祓っていた。
現着し、上空から蒼で地上の呪霊に対し、爆撃するかの様に吹き飛ばしているが・・・余りに数が多い。
余りにも広範囲に呪いが満ち満ちており、五条と言えどもとてもではないが単独では手が足りなかった。
元市街地だからと茈ブッパも考えたが、この状況では呪力の無駄遣いは避けた方が良い。
高専の仮設拠点用コンテナや野外浴槽型呪具もヘリやトレーラーが何処も手一杯で運び込めず、補助監督の情報支援すら無い。
普通の物資の補給も見込めない程に地震と津波、火災や土砂崩れによって荒れ果てた場所には碌な物が見当たらない。
元あったインフラが壊滅し、辛うじて補修の終わった道路から自衛隊が物資をピストン輸送しているが、まるで足りていない。
幸いにも電気だけは風車呪具による発電で避難所は勿論、無事な家庭の多くが停電を免れているが、それ以外は事前の備蓄くらいしか残っていない。
あるのは瓦礫と泥、漂流物、そして死体しか見当たらないという、呪術師視点からしても凄まじい修羅場が一面に広がっている。
被災しながらも東北地方在住の呪術師達も懸命に頑張ってくれているが、彼らもまた数が多いとは言えない。
他の一般術師達が応援に駆け付けるには今暫くかかる事を考えれば、このままでは遠くない内に避難所等の人口が集まっている場所にも呪霊被害が発生する事だろう。
「ん?おーい傑ー!!」
「おーい悟ー!!」
そんな時、五条の六眼は遠方から接近してくる飛行可能な呪霊達に乗った多数の呪術師達、それらを指揮する親友の姿に声を張り上げた。
仮設拠点用コンテナや野外浴槽型呪具を吊り下げた呪霊も複数おり、長期戦にもばっちり対応できる布陣だった。
「ひっさしぶりー!どう、そっちは元気だった?」
「そっちこそ久しぶりじゃないか!前に会ったのは君の婚約の時だっけか。」
「そーそー!家の連中ったら万歳三唱で参っちゃうよホント。」
げんなりとした顔する五条だが、親友である夏油傑と会えた嬉しさを隠し切れておらず、その口角は上がりっぱなしだった。
婚約者も勿論愛しているが、五条悟が別格の友情(と執着)を向けるのが夏油傑であり、ちょっと間を置いて家入硝子なのだ。
そんなだからホモ扱いされて跡継ぎの心配をされるのだが、それでも親友とイチャイチャするのが大好きな五条だった。
婚約者?ちゃんとイチャイチャもする事もしてるから許してくれてます。
逆らえないだけ?それはそう。
「悟は先行してもらったし、今降ろしたコンテナの方でちょっと休憩してね。2級以下は避難所や無事な市街地の巡回を。火消しは一級に担当してもらう。」
「えー僕まだいけるんだけどー?」
「まだいけるは死亡フラグでしょ。先に頑張ってたんだから少し位休みなよ。」
「傑はー?傑と一緒がいいー。こっちじゃないの?」
「高専の術師を送りに来ただけだよ。・・・福島の解体中の原発が被災して不味いらしい。呪霊なら放射線も大丈夫だから私が行く予定だ。」
「禪院は?直哉はどうしたよ?」
「そっちは宮城県だ。女川原発も福島ほどじゃないけど被災したし、津波被害が凄かったらしい。」
「まぁそれなら仕方ないか。終わったら飯でも食いに行こうぜ。」
「その時は硝子も誘ってだね。」
「いいねいいね!終わったら同窓会だ!」
「たまには夜蛾先生にも声かけてあげよっか!」
にっと笑って己の戦場へと二人は向かう。
五条は着地地点にいた大型のスライム状の呪霊の上へと着地、同時に爆散させる。
夏油も呪術師と行きがけの駄賃とばかりに空中や建築物の上に陣取っていた呪霊を従えた呪霊達によって蹴散らしていく。
「じゃぁまた後で!」
「あぁ、またな!」
この約束が果たされず、最後の会話となってしまう事を、この時の神ならぬ五条達は知る由も無かった。
・・・・・・・・・・・・・・・
「あーこれは・・・想定よりはマシかぁ。」
一方その頃、空を駆けて宮城県へと他の禪院家の術者より先に現着した直哉は眼下の仙台市を見据える。
福島と違い、女川原発は立地の高さから地下への浸水が確認されたものの、冷却施設の電源喪失からの炉心融解という最悪のパターンは免れた。
確かにその点は炉心の解体作業中に被災して中身の燃料がぶちまけられた福島原発よりはマシと言える。
しかし、東北でも随一の人口密集地である仙台は無数の高層住宅が建っている事が災いし、地震と津波も被害は勿論の事、沿岸や河川に近い建物が倒壊し、他のビルや建物へと倒れ込む等して被害が広まっていた。
幸いな事にドミノ倒しまでは至っていないが、このまま揺れが続けばどうなるか分かったものではない。
少なくとも、高層住宅に関しては大幅な規制見直しが入る事だろう。
「万穂の親御さんは無事みたいやし・・・粛々と仕事せなあかんな。」
瞬間、直哉の姿がかき消えた。
人の眼では捉えきれない程の加速を瞬時に行い、仙台市内に蠢く無数の呪霊の群れ目掛けて突っ込んだのだ。
投射呪法の順転、即ち機動力の強化にのみ使用し、後はただすれ違い様に打撃を叩き込んでいく。
術式である事を除けば、ただ速く走って殴っていくだけなのだが、それを特級術師がやればそれだけで並の呪霊では対処不能の暴威と化す。
その様はあたかも直哉が憧れる天与の暴君のそれに匹敵するものだったが、本人は未だ遠く及ばないと思っている。
「うーん、予想よりは少なぁなぁ。」
万穂の自律型蜂式神、総勢1500体が人命救助含めフル稼働で動いている事が直哉の予想が外れた原因だが、それでも余りの呪霊の多さに仙台市一帯の呪霊に対応するだけで精一杯の有様だった。
以前の様に自己増殖していれば話は別だったのだが・・・現在は数増やせないなら質を高めれば良いじゃないと一体当たりの強さが2級から準1級まで上がった上で、一部を1級にまで強化する事で対応力を上げている。
それでも以前の様に宮城県全域をカバーする事は出来ず、討ち漏らしも多数出ていた。
今直哉が狩ったのはそうした一群であり、沿岸部の津波被災地域から進出してきた呪霊達だった。
「あーオレや。炳は宮城県内の大都市優先に三人一組になって配置な。灯は五人一組。それ以下だと数に飲み込まれかねんから気ぃつけや。」
『了解しました。ご武運を。』
万穂が事前に作った禪院家実働部隊内通信用呪具により、インフラや電話回線の死んだ地域でも問題なく連絡は取れる。
同様のものは既に高専側にも配布しており、領域にでも取り込まれない限りは特に問題なく機能すると特級呪具師の保証済みの逸品だ。
「さて、オレは遊撃担当やな。万穂が心配で出てこないように、しっかり仕事せなあかんわ。」
そして、宮城県全域に超音速の暴威が駆け巡る事となる。
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「状況は想定範囲内か。いやーやっぱこの世代異常だね!このレベルの特級術師が一時代に4人とか、普通なら何も出来ずに諦めてる所だよ!」
額に縫い目のある呪術師、誰あろう羂索がけらけらと笑いながら告げる事は事実だ。
通常、極めて警戒心が強い羂索ならばこんな時代に表立って活動しない。
しかし、今この時代は余りにも羂索にとって天地人が揃っている。
これを利用しない手は無かった。
まぁ、ここで動かないと何れ宿儺に殺されるからという理由もあるが。
「じゃぁ漏瑚、主役は君だ。夏油傑に適当な呪霊をぶつけるから、それで隙が出来次第しかけてくれ。何度も言うがくれぐれも無理はしないでくれよ。ソレはまだ調整中だからね。」
「分かっておる。貴様から貰ったこの呪具の試運転も兼ねておるのだろう?壊さんように注意する。」
応じるのは老人の様な声と雰囲気を持つ、小柄ながら火山の様な頭、大きな単眼、お歯黒のように黒い歯が特徴的な呪霊だった。
「どの道、特級術師の中では最弱の夏油傑にハンデ有りで勝てねば、他の特級には祓われるばかりよ。」
その名を漏瑚、人が大地を畏怖する感情から生まれた、高専未登録の知性を持つ特級呪霊である。
大地というこの国の人々から向けられる余りに大きすぎる呪力により産まれ、呪霊としての形を得る前に知恵をつけて長らく潜伏し、そのお陰で呪霊でありながら言葉を流暢に話せる明確な知性と特級呪霊の中でも最上位クラスの実力を得て誕生した。
その成り立ちから自然を司る精霊に近く、現在この国を襲っている未曾有の大震災により、今まで経験した事が無い程に呪力が高まっている。
加えて呪物、時々呪具をコレクションする趣味があり、そこを突かれて羂索との取引に乗った。
「儂は今とても調子が良い。今の儂が生まれて初めて経験する程に、な。」
ニタリと黒い歯を見せて笑む漏瑚。
その腰には漏瑚の纏う衣服とは全く異なる意匠を持った、ベルト状の呪具が巻かれていた。
Q、あのベルトって・・・?
A、3本目は総監部に提出済み。つまりそういう事。