呪術廻戦で万にチート転生   作:VISP

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第二十四話 次へ

 2011年6月末、禪院家当主夫婦に待望の男児が誕生した。

 

 「ふぅ・・・予想以上に大変だったー。」

 「お疲れさん。母子共に健康やで。」

 「ありがと。この子は・・・投射呪法か。良かった、直哉と同じだね。」

 「ほならオレがきっちり教えてやらんといかんなぁ。」

 

 しかも産まれて早々に六眼を持つ両親により、父親と同じ相伝の投射呪法持ちが確定した。

 

 「名前どうしよっか?直の字は入れるんだよね?」

 「ん~~・・・直喜、直に喜びと書いてなおきや。」

 「いいね、凄くいい。」

 

 この一報を聞いて禪院家、若干名を除いてフィーバータイムの始まりである。

 

 「いや目出度い!これで禪院家は安泰ですな!」

 「一時はどうなるかと思ったものだが・・・漸く安定するな。」

 「五条の六眼が暴れ回っていた頃は冷や冷やしたからな。」

 「これも奥方のお陰だ!禪院家万歳!」

 

 普段から酒飲んでる禪院家の術者達が以前にも増して酒を消費し、連日宴会状態である。

 流石に普通ならば酒量が多過ぎると誰かしら苦言が飛んできそうだが、生憎とここは呪術界の魔境が一角たる禪院家である。

 日々呪霊(呪詛師はめっきり減った)というクッソヤベー化け物と命がけで戦う呪術師の中でも最古参の御三家の中でも特に武闘派で知られる禪院家である。

 明日の健康よりも今の快楽、そして禪院家以外は全てを見下す男尊女卑の家風も、そうした呪術師として生死の境を生き抜く中で蓄積するストレスを特権を与える事で宥めてきた。

 所謂ノブリスオブリージュなのだが、呪術師という自他の負の感情と向き合い続ける職業故に捌け口にされる側への扱いは凄まじい。

 

 「良かった。これで奥方も安泰ね。」

 「まぁもし駄目でも呪具師や術師として生きられるから大丈夫よ。何せ特級なんだし。」

 「もしそうでなくてもご当主様が逃がさないと思うわよ。あの熱愛ぶりだし。」

 「「それはそう。」」

 

 だが、そんな落伍者扱いされてきた使用人達も、直哉と万穂の代になってからは待遇が随分と改善した。

 呪具工場や電力会社の方へ大量に人が必要になったため、呪術師としての素養が無ければ頻繁に使い捨てられる無賃の使用人一択だったのが他の選択肢が出来たのだ。

 呪具工場と電力会社での事務や清掃員コース、呪術名家向けの各種工事技師になるコース、最近では弁護士や公認会計士などの資格を取って事務方として禪院家に出戻りするコース等が存在する。

 これによりミッチミチだった禪院家の使用人達は四分の一まで減り、これ以上人手を減らす様な真似は許さんとする新当主の命令が最も大きかったのはご愛敬。

 

 「あーこれで禪院家も落ち着くな。」

 「ご当主様が高専行く前は皆ピリピリしてたからな・・・。」

 「マジであの頃は酷かったよな・・・。」

 「奥方様と出会って変わられて良かったよ。オレらの扱いも良いし。」

 

 だが、それは家人への扱いだけが良くなった訳ではない。

 実戦に出る呪術師達全員へのサポートはもっと手厚くなっていた事も、彼らが人望最底辺だった直哉に素直に従う理由だった。

 治療用浴槽型呪具の更なる設置に量産型一級呪具、対領域用結界破壊呪具に加え、索敵用呪力探知呪具(風車呪具の応用)に呪力の詳細な視認可能な望遠鏡(コピー六眼の応用)の配備。

 これに加え、六眼を持つ特級二人による鍛錬を施す事で全体的な底上げを図ったのだ。

 更に更に、呪力の蓄積や領域対策、更に反転術式を可能とする平安時代産の全身鎧型特級呪具を訓練に用いる事で反転した+の呪力の体感や反転術式の修行などを実施した。

 これにより術式無しとは言え、禪院家の戦闘部隊「躯倶留隊」は2~3級から準一級レベルまで底上げされる事となった。

 呪力以外はマジで才能が無い奴?そっちは補助監督か呪具工場で呪力タンクルート行きになります。

 また、術式を所持しているが戦闘向きではない「灯」は専ら呪具工場勤務行きになったため、実質サポート専門の裏方部隊になった。

 

 「漸く安定した、か・・・。」

 「良かったですね甚壱さん!」

 「まだ分からぬ。直哉がやらかすやもしれん。」

 「(あの奥様なら殴って修正しそうですが)そうですね!」

 

 そしてサポートが最も手厚くなったのが精鋭部隊たる「炳」である。

 総員に呪具ベルト及び量産型特級呪具の配布に加え、申請して許可が降りれば特級呪具師たる万穂の手によるオーダーメイドの呪具を作成してもらうという至れり尽くせりである。

 これにより炳は全員が基礎性能が大幅に底上げされた上に反転術式・簡易領域(彌虚葛籠)、一部の者は更に術式反転や拡張、そして領域展開にも目覚め、特級術師数歩手前と言える程にその総合力が向上した。

 

 「ブハハハハハハッ!!これぞ我が世の春と言うものよ!!」

 

 そして前当主たる直毘人は特製の呪具ベルトを装着した事で、初代仮面ライダー風(ただしマフラーは黄色)の姿へと変身可能になった事で鍛錬も兼ねて上機嫌に任務に出かけるようになった。

 なお、特製ベルトの性能面は通常の量産型呪具ベルトと変わらない。

 あくまで変身先が初代仮面ライダー風の姿に変身できるだけである。

 現在は特注のサイクロン号風呪具バイクを万穂に注文しており、本人も大型バイクの運転免許取得のために勉強中だ。

 こんな感じで禪院家は上から下まで全ての者に恩恵が齎されており、反乱の芽はほぼほぼ潰えたと言って良い状況だった。

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 「責任」

 「取りましょうね?」

 「ハイ喜んでー!」

 

 一方の五条家もまた、五条悟の婚約者ともう一人の懐妊により揺れていた。

 その相手とは誰あろう五条悟のもう一人の同期こと家入硝子その人である。

 完っ全にほぼ同時期に妊娠が発覚したため、今この段階から家人達は深刻なお家騒動が勃発する事を恐れていたのだが・・・

 

 「適性と本人の希望が合う子供を優先して跡継ぎにします。」

 「その上でそっちが優先でしょう?別に私は嫁入りしなくても良いし。」

 「いえ、悟様の御子なのですから絶対にしてもらいますし、希望しても適性が無いのなら私の子であろうと跡継ぎには出来ません。」

 「それいいの?正式な婚約者はそっちでしょ?」

 「悟様の御意志、そして五条家の存続こそが最優先です。貴方様もまた特級と言って良い程に希少な技能をお持ちの方です。みすみす余所にやる様な真似は出来ません。」

 

 実際、夏油が死亡した事で禪院家とのパワーバランスが傾いた現状、優秀な次代の子供の確保は必須であり、本家六眼の子供は何人いても良い。

 現状では禪院家と事を構える様な事態になるとは考えにくいが、次代以降はどうなるか分からないのだし、パワーバランスは可能な限り五条家有利、最低限でも均衡を維持したい。

 また、例えコピー六眼と無下限の併せ持ちが何人いようとも、供給元が対立が長かった禪院家では不安は大きい。

 

 「んー・・・才能の無い子供もちゃんと面倒見て、私が高専を退職しないで済むなら籍を入れる。あ、私が第二夫人だからこの場合は内縁の妻って事になるのか?」

 「法律上はそうなりますね。ですが生活面では決して不自由させない事を誓いましょう。」

 「OK、それなら了承。」

 「あの、僕の意見は・・・?」

 「高専の教師になりたいんだろ?家に術師に教師で妊婦に時間割く余裕あるのか?」

 

 なんと五条、夏油がやっていた高専の教師になろうとしていた。

 しかし、親友の死後に嫁と同期の女子の所でヤる事ヤッてヒットしてしまったため、それ所では無くなってしまったのだ。

 それでも諦めきれないんだろうなと女性陣からはっきりと思われている辺り、五条悟の夏油に対する執着は凄まじいと言える。

 

 「大親友の夏油様の夢を継ぎたいのは分かりますが・・・産まれるまでは勿論、産まれてきた子が落ち着くまで暫くかかります。資格を取って非常勤、いえ、定期に開催する特別講師位が限度かと思われます。」

 「まぁこっちはこっちでやる事やってるから、お前は教員免許頑張れ。」

 「待って、流石に待って。僕だって自分の子供妊娠してる奥さん二人と我が子が大事なんだ。育児はあんまり参加できないかもだけど、傑の夢を追うよりも皆を気遣う事の方が優先だよ。」

 

 一時ホモ疑惑のあった五条は必死に弁解する。

 このままでは家庭の中で自分だけハブにされるからそりゃもう必死だ。

 でも母親二人は君に普通の父親がする事を期待してないし、無理だと最初から思ってるから別に気にしなくて良いと思うぞ?

 余計に酷いって?

 だってコイツどう足掻いてもイカレ呪術師の屑だし(事実)。

 寧ろ最低限とは言え倫理観あるのが驚きまである。

 

 「悟様・・・立派になって・・・っ!」

 「そこまでか?いや、コイツも最初は傍若無人が服着てるような奴だったな。」

 「終いにゃ僕でも泣くからね君達???」

 

 割と普通に交流できている事に、五条家の家人達はほっと胸を撫で下ろした。

 後に、産まれてきた子達全員が「当主やだー!」と言って跡継ぎに難儀する五条悟他五条家の家人達の今はまだ平和な頃の姿だった。

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 五条家本邸、悟の私室にて

 

 「で、急に何なの?懐妊祝いは嬉しいけどさ。」

 「いやーすまんね五条君。」

 「ホントはうちの子の首が据わるまで待とうと思ったんだけど・・・夏油君がやられちゃったしね。色々情報公開しようかなって。」

 

 そこには歴史上前例の無い者達の姿があった。

 五条悟に禪院直哉、禪院万穂。

 特級術師3名に五条家と禪院家という日本呪術界でも犬猿の仲で知られる二家の当主とその妻という、本来ならば絶対に有り得ない面々の姿がそこにあった。

 

 「ちょっと待ってね。準備準備。」

 

 ラジコンのコントローラーの様な機器を取り出し、部屋中を歩き回る万穂。

 やってる事は簡単、盗聴器等の確認である。

 呪術的には高専を除けば御三家のそれが最高峰の守りを持つが、現代機器には未対応な面が多い。

 そのためにこんな手間をかける必要があるのだ。

 

 「夏油君が殺された件の黒幕とその理由。知りたくはない?」

 「聞かせろ。」

 「オレも全部は知らんし、この際やからしっかり教えてや。」

 

 こうして、五条悟と禪院直哉は知る事となる。

 呪術全盛期の平安時代、その少し前から始まったこの国を、この世界の在り方を定めた呪いの話を。

 それを巡る二人の不死の術師、呪いの王を始めとした呪物となって目覚めの時を待つ歴代の呪術師達の存在。

 何より、同化を阻止された天元が呪霊操術の対象となり、何れは全ての人類の命運が羂索の掌中となる事を。

 そしてもう一つ、何故万穂が構築術式という大凡戦いに向かない術式を持ちながら余りに強いのか。

 その前世に何があったのか、初めて直哉と悟は知る事になるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「つまり、天元様が呪霊操術の対象になるまでまだ猶予はある訳だ。」

 

 「じゃぁ僕らがやる事はそれまでに戦力を蓄え、力を付ける事。」

 

 「羂索は恐らく僕らや呪術界を孤立乃至対立させてリソースを削った後、宿儺や過去の術師を受肉させ、手駒としてぶつけてくるだろう。」

 

 「羂索を倒すには、奴のプランがある程度成功する事が絶対条件だ。特に宿儺の受肉とかね。」

 

 「じゃなきゃあいつは絶対僕らの前に出てこない。千年を超える術師だ、警戒心や権謀術数は僕らよりも遙かに上手と見て良い。」

 

 「敢えて罠にかかり、内側から食い破る。これだけが唯一の突破口だ。」

 

 「そのためにも今後暫くは力を蓄え続ける。最後の勝利を手にするためにね。」

 

 「・・・傑の仇討ち、手伝ってもらうよ。」

 

 こうして、五条家と禪院家は全面的に和睦し、過去の遺恨を流す事を公式に発表した。

 以降、この二家は協調体制を取り、呪術界の安定へと注力していく事となる。

 誰もが驚く中、しかしその本来の目的は誰にも知られる事は無かった。

 友の仇を討つ、ただそれだけのための仮初めの平和だった。

 

 「やるねぇ。こっちも暫くは準備期間だけど・・・いやぁ楽しみだ。」

 

 それを見て、縫い目の術師は心底愉快そうに嗤った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 第一部 完

 

 

 

 

 

 




幾つかの幕間を挟んで原作時間軸にいきます
まぁ最初は0からですが
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